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第11話「継承の書」

「この小屋は色々あるんだね」ヒナは部屋の中を歩き回りながらイアに言う。

「そうね。この部屋に関するほとんどのことは『継承の書』に書いてあるよ。見たこともない不思議な道具とか。」

「…不思議と言えば、さっきエルトがしてた、扉を出現させるセリフも?それともああいうのは普通なの?」

「普通…?うーん、魔法のことよね。存在はするけど、こんな田舎に魔法が使える技術者はいないんじゃないかな。私はあったことないわ。そういう意味では普通ではないかな。もしかしたらセレスさんなら知ってるかもね。」

 どうやら、この世界には魔法が存在するが、高等学問のようだ。ヒナはエルトの使った魔法の珍しさに魅了されていた。

「あれ、でもエルトは魔法が使えるよね」ヒナはイアが「会ったことがない」と言ったことに違和感を覚える。するとエルトがため息をついて言った。

「だから言っただろ?よくわかんないんだよ。別に俺は魔法使いじゃないし、あの言葉も本に書いてあったんだ。扉の合言葉ってな。」

「そうなんだ。でもすごいね!魔法なんて!」ヒナは目をらんらんと輝かせた。その姿は初めて魔法を見たかのようだった。その様子を見てイアが言う。

「もしかしたら、ヒナは魔法のない場所で育ったのかもね。」

「ってことは王都みたいな大きい街ではなさそうだな。でかい街にいれば魔法使いの一人や二人は見るだろ。」

「うーん…そうなのかな…?」ヒナはそう言われても何か思い出すような気持ちにはならなかった。

「それに、俺はこの本のすべての言葉が読めるわけじゃないんだ。」

「え?」ヒナの前にエルトは本を開いて置いた。

「例えば、ここ。前の文章的にここからは第3章のはずなんだ。でも読めない。同じ形の文字を探しても見たがなぜかわからない。この本に魔法がかけられているのであれば、このページにはもっと重要な何かが書かれているはずなんだよな。」

「…本当だ、私も読めない。」ヒナは開いてあるページと、前のページを見比べる。なぜか読むことができなかった。エルトはため息をついた。

「やっぱお前も読めないか。まあ読めるところだけでも読んでみろよ。面白いぜ。」

 ヒナはエルトから本を受け取り、椅子に座った。

「えーっと…」適当にページを開いてみる。そのページは読めるようだった。ヒナは声に出してそのページを読んでみる。

「ここは、第1章ね。えっと、青き月光の拠点について…?ここのことかな?」ヒナはあたりを見回す。この小屋は、かつての『青き月光』の拠点だったようだ。本に間取りが書いてあった。

「あれ?でもこの間取り、2階があるはずだよね。階段なんてどこにも…」

「そうなんだよ。探しても2階に行く道がない。この本にも書かれているみたいなんだけどさ、次のページ見てみろよ。」

 エルトに言われるがままに開く。そのページは同じように読むことができる。しかし…

「あれ?この『2階への行き方』の項目だけ読めない…。」どうやら章ごとに読める読めないが決まっているのではなく、情報ごとに違うようだった。

「この本で読めないのは、青き月光に関する込み入った内容ばかりなのかもしれないって予測してる。題名すらも読めないから何が書いてあるのかわからないけどな。そしてその秘密や読み方も、きっと2階にあるはずなんだ。」

 エルトが真剣な表情で話す。イアやデレ達もうなづいていた。

「そうやって私たちはこの青き月光の秘密を暴こうと頑張っているわけよ!」

「な、なるほど…」ヒナは改めて本を眺める。見たことのない文字は何回見ても見たことのない文字だ。ヒナはページ内の読める部分を見てみると、さっきエルトが扉を出現させた魔法について書かれていた。

「拠点開錠魔法…これがさっきエルトが言ってたやつね」

「ああ。そこは読めたんだ。呪文もあるだろ?」

「うん。そういえば、これをイアは読めないんだよね?」ヒナはイアに質問する。イアはうなづいた。

「ええ。ちなみに呪文の言葉をエルトに教えてもらったけど、読んでも何も反応しなかったわ。多分ちゃんと読める人にしか使えないのよ。」

「ふうん…じゃあ私は使えるのかな。」ヒナは腕を組んで考え始めた。

(この呪文、なんでこの読み何だろう…?ていうか、どういう意味?呪文に意味なんてあるのかな?まあないわけないか。)

「デネポ、エブオト、ツナウ、スロティレフニ…。うーん…」エルトが首を横に振って頭を抱えた。

「だめだよ、どの辞書を見てもその言葉はねえ。少なくとも、この村にある辞書はほとんど調べ上げた。でもそんな言葉どこにもなかった。」

「そうなんだ…。でもね?」ヒナは自分が気付いたことを全員に言った。

「えっと、さっきのエルトの呪文は、扉を召喚する、ここでは開くって表現がいいのかな。そういう魔法でしょ?ていうことは、デネポ、エブオト、ツナウ、スロティレフニの中に『開け』って表現があるんじゃないかな?」

 ヒナが話終わると、沈黙が訪れた。全員がぽかんとしている。ヒナは自分が言っていることが的外れだった可能性に気づき、顔を赤くしてしまう。

「ご、ごめんなさい、変なこと言ったよね…。」しかし、イアがヒナに駆け寄って嬉しそうな声を出した。

「すごいわヒナ!確かにその通りだわ。『開け』って言葉が分かれば、あとは『2階』って言葉を見つければ、呪文がわかるかも!」

 エルトがイアに遅れて気づき、飛び上がって喜んだ。

「確かにそうだよ!なんで気づかなかったんだ、呪文は単語の羅列だ。読みから同じ言葉を探すんじゃなくて、意味を予想して、元から知らない言語であると断定して調べればよかったんだ!」

「ヒナすげえ!」「ヒナかっけえ!」「さすがは6人目の仲間だぜ!」デレ達も口々にヒナをほめたたえた。ヒナは恥ずかしそうに顔を少し赤らめた。

「そうと決まれば、今日の活動は、俺とヒナが読める言語をまとめつつ、『2階』を探そう!」

「「「「「おー!!」」」」」


 + + + + +


 それから数時間かけて、ヒナたちは小屋にあった真っ白な紙にヒナとエルトが読んだ言語と意味をまとめていった。

「はあああ疲れた…」ネルグが机に突っ伏して悲鳴を上げている。

「さすがに疲れたわね…。」イアも肩をぐるぐると回した。エルトとヒナはまとめられた言語を二人で眺めている。

「…階、だな。」

「…階、ね。」

「カイ?何が?」デレが首をかしげる。

「『2』はあった。第2章の言葉を分解したら大体わかる。第1章と書かれたページと見比べてもおそらくこれであってる。読みは多分…ドノセス。でも、『階』がないんだ。」

「そもそも、『2』と『階』がわかっても、それじゃ文にならない。ダメだわ…。」

 全員が同時にため息をつく。

「とりあえず、そろそろ夕方だし、帰りましょうか。」イアが疲れたように立ち上がるのを見て、ほかのメンバーも席を立った。

「…あれ?扉があかないよ?」ヒナがドアノブに手をかけると扉は頑として開かなかった。すると、ヒナ以外の5人に緊張が走る。

「扉が開かないのは、あの広場に人がいる時だ。誰だ…?」エルトが険しい表情で話す。

「エウルブ、あれもってる?」イアが聞くと、エウルブはポケットからイアの求めるものを出した。それは、手のひらサイズの金属片だった。

「イア、それは?」ヒナが聞くと、イアはそれを左耳に装着し、扉に耳を当てた。

「これは、この小屋に会った道具。私たちは『聞く耳』って言ってるけど…。これは外の音を聞くことができる道具なの。多分、昔の『青き月光』のメンバーが、この居場所をばれないように作ったものなんだと思うわ。」そう言ってイアは目を閉じて集中した。沈黙が訪れる。だんだんとイアの表情が険しくなる。そして、突然目を見開いて扉から離れた。エルトが駆け寄る。

「どうしたイア!何を聞いたんだ。」イアは目を見開いたまま震えている。ヒナたちも心配そうにイアの周りに集まった。イアは震える手で扉を指さした。

「男の人が、二人…。」

「男?農場の大人たちか?」エルトが聞くとイアはぶんぶんと首を振った。

「絶対違う!聞いたことのない声だった!」イアは体を抱えて下を向いてしまう。エルトがそれを支えてさらに聞いた。

「い、いったい何を話してたんだよ…?」

 沈黙の後、イアは、ゆっくりと自分が聞いた恐ろしい計画を口にした。

「今夜…この村を、盗賊に襲わせるって…。もう何人も村に潜んでるって…」



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