想定していない展開
海軍企画部艦隊計画課。
建艦計画、艦隊編成計画の策定を担当している。
テレビを見つつ
「なんかとんでもないことになっているな」
「副課長。おそらくこれ他人事ではないですよ」
「どういうことだ」
「あいつの妄言癖はもうご存じの通りでしょうが、実力行使に出たようです」
「うそだろ・・・」
「なんかそんな話をしていたのを聞いた者がいたみたいで」
副課長は企画部長室直通電話を取った。
「企画部長と話がしたい」
国防長官と人事担当副長官の秘匿通話。
「一体何がどうしてそうなった?」
「海軍企画部長がいうには、艦隊計画課の将校の中に過激思想を持つ者がいて、今回のクーデターに加担した者がいるらしいと」
「国防省で過激思想は別に珍しくもなんとも思わないが、それが何をどうしたらクーデターを起こそうなんて気になるんだ」
「そこはもう本人に聞いてみるしか」
「そうだよな。さてどうしたものか」
国防省政策担当副長官執務室
「だそうですよ。情報担当副長官」
「クーデターなのだから当然ではあるが、身内から出たというのはつらいな。それで?」
「長官はほかにもそうした勢力が今回のクーデターに加担していないか調査するように命じられています。マザードッグで核ミサイルを撃とうとした人物が同じ海軍企画部出身なのかどうか含め、全体的に洗い出せとのことです。」
「今か」
「芽は早いうちに潰したいとのご意向です。クーデター鎮圧は首都防衛部隊、犯罪捜査は憲兵にさせるので、情報局はそうした方面から調べるようにと」
「政策担当副長官としてはどう考えている?」
「まずは組織の改編でしょうね。人事も洗い出しをするしかないでしょう。問題はどのように進めるかですが、そこは長官と相談です」
「副長官会議はどうする?」
「陸海空軍長官は今まさにクーデター対応中ですし、我々もしばらく自分の担務で手いっぱいになるでしょうから開けないと思いますよ。」
大統領から国防長官への秘匿通話
「まず現状から聞こう」
「第2海兵師団全力を首都内に入れています。幾重にも防衛線を展開することで、出入りが一切できないようにしています。増強部隊として第6海兵師団、第4重歩兵師団を待機させています。なお首都封鎖には州警察の助力も得ています。」
「通信もできうる範囲で遮断していますが、おそらく漏れています」
「対処方針は?」
「海兵師団による鎮圧が基本線です。といいますか、ほかに投入できる部隊はいません」
「鎮圧するのは当然として、武器使用はどこまで許容するつもりだ?」
「そこは大統領に決めていただきたいところです。国防省内で勝手に決めるわけにもいきません」
「できれば死者は出したくない。負傷者も出さないのが一番だが、そこまでは無理だと思っている」
「ご参考までにお伺いしますが、警察特殊部隊や州兵による鎮圧は想定されていませんよね?」
「わからん。まだあらゆる選択肢を排除したくない」
「わかりました。現時点ではいかなる措置もとりません」
国防長官から州知事への電話
「州警察と州兵をどこまで使わせてくれる?」
「いますぐ撤退させたいのが本音です。正規軍への対処なんて荷が重いにもほどがあります。一応本来任務なので州警察による交通管制と、州兵による首都封鎖までは引き受けますが、それ以上のことはさせたくありません」
「連邦軍同士の撃ち合いを避けたい。まだ警察や州兵による穏便な武装解除なら政治的に許容できる。本当にできるかどうかは別にして」
「そのために無用な血は流せませんよ?」
「それはこちらも同じだ。連邦軍の投入が避けられないのは覚悟の上だが、何もせずいきなりというところがちょっとな」
「・・・少し時間をください」
「それは私には決められん。首都にいる奴らに聞いてくれ」
「確かに」