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始まり

スペースオペラとかSFとかいろいろタグ付けしましたが、国防長官とその周りの人間模様を勢いで書きました。ハイテク技術とか、格好いい戦闘シーンとかは一切出てきません。予定では一発の銃弾も発射されません。

 それは一本の電話から始まった。

 「首都の通りに地上部隊が完全武装で展開していますが、これは演習か何かですか」

 首都にある議会での公聴会に出席するべく軌道艇で移動していた国防長官への電話であった。

 電話は首都防衛を担当している第2海兵師団の当直将校からだった。演習はすべて事前通告されるし、まして首都に完全武装の兵士を展開させたら目立つどころの騒ぎではない。

 「少なくとも私は何も聞いていない。第2海兵師団は即応体制に入り、あらゆる事態に備えるように」



 まずは政府首脳の安全を確認する必要があった。平時であれば政府幹部に適宜電話をしてどこにいて安全かどうか確認するが、異常事態であることを直感で判断した長官は、戦時体制下で政府首脳の安全に対して責任を負う戦略軍司令部に電話を掛けた。

 「戦略軍として把握している状況を報告してくれ」



 同時に軌道艇のパイロットに対し太陽系内惑星ラグランジュポイントにあるマザードッグへ直行し、超光速巡洋艦に直接横付けするよう命じた。



 「戦略軍が持っている情報としましては、閣僚の首都からの避難が完了していることは確認済です。ただ、政府要人のうち何名かや、議会にいた軍幹部の脱出が確認できていません。安全なシェルター等に避難しているとも聞いていますが詳細は不明です。演習等の情報は受けていませんので、大統領避難命令を発令しました。」

 


 避難命令が発令されたため、大統領の所在は政府や軍に対しても秘匿される。国防長官も少なくとも当面は大統領と連絡が取れない。いかに対応すべきか一人考えざるを得なくなってしまった。戦略軍に対しては首都にいる出所不明の部隊に対する警戒を厳にするとともに、第2海兵師団と連携するようにも命じた。



 国防長官は少なくともしばらくは自らが軍の最高指揮官であることを自覚し、自らの身の安全を確保することが非常に重要であることをこれまた直感で判断した。超光速巡洋艦に乗り移り、そのまま太陽系をワープ航行で脱出し、第1~3艦隊が合同演習を行っている空域に向かうよう命じた。名目は抜き打ちでの演習視察とした。首都で起きている事態をまだ把握できていなかった。



 演習空域に到着した長官は、まず首都で起きていることが何なのかを考えた。同時に、そこにいた第1~3の各艦隊司令官に対してそのまま演習を継続するよう命じた。

 「演習はそのまま継続してくれ。この際だ、練度がどの程度かチェックしてやる」


 そもそも、首都に展開している部隊はどこの誰なのかもわからない。誰かが展開命令を発出したのか、ただそれは国防長官の与り知らないところで出された命令ということになる。大統領から直接出された命令という可能性もありえたが、その場合自分はクビになったのだなと勝手に納得した。



 戦略宇宙軍参謀本部から秘匿回線で通話が来た。

 「ご命令を」

 戦略宇宙軍参謀総長からだった。

 「統合参謀本部と話がしたい。ほかに意味不明な行動を取っている部隊がいないか直ちに確認してくれ」


 統合参謀本部の会議はすぐに招集でき、秘匿回線で会議が始まった。

 「これはクーデターだと推測しますが、犯行声明がどこからも出ていません。目的も不明です。」

 「鎮圧すべきなのは間違いありませんが、方法は慎重に検討する必要があります。首都には多数の民間人が残っていると推測できます。」

 「動員令の発令、少なくとも州兵を連邦軍の指揮下に入れることを検討すべきです。」


 

 「情報が少なすぎる。動員は大統領の許可が欲しい。今すぐに攻撃を加えることはしない。二次被害が大きすぎる。要するに何もしないし何もできないということか。」

 沈黙が答えとなった。



 そのとき突然警報が鳴り響いた。核ミサイルの一部が発射体制に入った警報だった。

 「発射を阻止しろ。必要ならミサイルをサイロごと自爆させても構わん」

 発射プロセスはマザードッグにある戦略軍指揮所から出ていた。実行犯はただちに身柄を拘束された。



 「これで、首都だけではなくどこかにも犯人がいる可能性が出てきてしまったな。首都の部隊もクーデターで間違いないだろう。対処方針を検討したいから選択肢をいくつか用意してくれ」

 国防長官の命令により統合参謀本部は一旦散会し、各軍で対処方針を検討することとなった。



 戦略宇宙艦隊司令長官が超光速巡洋艦に移乗してきた。マザードッグから追いかけてきたらしい。

 「この状況下で、国防長官と同じ艦に乗船し万が一同時に死亡しても問題がない最高位の軍人はおそらく私だろうと判断しやってきました。」



 国防長官への最初の電話から3時間。いまだどこからも犯行声明が出てこなかった。核ミサイル発射騒動以外に大きな動きもなく、首都に展開している完全武装の兵士の様子はテレビで全宇宙に同時中継されていた。

 「これ以上自体が継続すると、これ幸いとばかりに周辺諸国からきな臭い軍隊がやってくる恐れがある。そろそろ何かしらのアクションを取る必要が出てくる。」



 秘匿回線で大統領とようやく通話ができた。

 「状況はテレビでやっている程度の内容しか把握できていない。君の方で全軍を掌握しているようだから、すべて任せた。」

 「わかりました。」

 いわゆる投げ槍である。国防長官は思わず天を仰いだ。



 国防長官は統合参謀本部を再招集した。

 「とりあえず州兵を連邦指揮下に入れる。首都にいる反乱軍を鎮圧するポーズを見せる必要があるから、首都の地上部隊による包囲も実行する。陸軍か海兵隊で部隊を出してくれ。あわせて戦艦を大気圏内に待機させ威圧しろ。場合によっては戦艦からの質量弾攻撃も選択肢に加える。」

 「「「「イエッサー」」」」



 「君の出番は今のところない予定だ。もしあるとしたらおそらく相当事態が悪化したときだろうな。」

 後ろにいる戦略宇宙艦隊司令長官にそう話しかけた。

 「私はあくまで国防長官の補佐役と考えております。この件で指揮下部隊に何かを命じるのはつらいですね。」



 クーデターの首謀者を名乗る男から電話がかかってきたのはそんなときだった。

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