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第九  作者: 天上/トロあ
第一章 始まりの夢
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一話 始まり?

 まだ慣れてません。ラノベ書くのって難しい!

 目が覚めると、知らない部屋に居た。

 どうやら寝室のようだが、それにしてはいやに広い。一人用の部屋とは到底考えられない。

 第一、ベッドが広すぎるのだ。これでは手足を広げて寝転がったとしても尚もう一人寝転がれるだろう。

 そのうえ部屋を見渡すとあちこちに装飾が施されており、いつもならば街中では目をやることすら無いような調度品も飾られている。

 更にはその全てが主張を控え、部屋に溶け込んでいる。贅沢な部屋だがどうやら部屋主の趣味は悪くないようだ。


「何だこれは」


 答える者はいない。

 あくまで現状を把握しきれずにいる自分に対して頭を整理するよう促すための問いかけだ。


 まず、左腕と右脇腹を確認する。異常は無い。

 しかし、目が覚めた時からずっとピクリとも動かない右目とこの部屋に居る事実から、昨晩の出来事が夢では無かったということを認識する。

 いや、果たして昨晩と言ってもよいのだろうか。

 どれだけの時間眠っていたのか分からないうえ、この部屋には暦を知らせる物は無いように見える。


(こうしていても埒が明かないな)


 この部屋だけでは情報が足りなすぎる。

 部屋を出るためベッドから降りると、絨毯が足を柔らかく包み込む。

 裸足で床を歩くのは躊躇われたが、なるほどこの絨毯の上をブーツで歩くほうが躊躇われるというものだ。危うく横になりそうになる。

 心地の良い絨毯に足音を吸収されながらドアのほうへ歩いていくと、ドアの前で絨毯は無くなり、床が一段低くなっている。

 そこに自分のブーツを見つけた。

 貧乏ながらも奮発して買ったブーツだけにそれなりに愛着はあり、無くなっていなかったことに胸をなでおろす。


 部屋を出るとそこは廊下になっており、向かいにはドアがある。

 とりあえず開けてみると中は自分が目覚めた部屋と同じような造りになっている。

 再び廊下に出て目についたドアを開けていくもどの部屋も同じような造りで、たまにトイレがあるくらいだった。


 幾つか部屋を見て回ったが、分かったことは廊下が環状になっていることと、中央には部屋が一つしかないことくらいだった。あとはせいぜいドアノブの飾りの色が部屋ごとに何色かあるくらいか。

 何かの魔法がかかっているのかとも考えたが、魔法の反応どころか魔力の痕跡すら感知できない。

 ずっと歩き続けているわけにもいかず、部屋に戻ろうとドアに手をかけようとしたその時だった。

 ドアノブが遠ざかる。


「そこを動くな」


 思考停止しかけたところに中性的でありながらしかし威厳を感じさせる声が響く。

 かと思えば辺りの壁や床や天井が大小さまざまな大きさの立方体となり、それぞれが直線的な動きを繰り返して空間の形が変わっていく。

 やがて廊下だった空間は正方形の縦穴となり、自分の立っている足場だけが残された。

 途端、足場が消えた。

 重力に身を引かれ、浮遊感に襲われる。

 しかし、落下の感覚を味わったのは束の間。浮遊感が消え、だというのに一定の速度を保ったまま体が降下していく。

 体の自由が利かないまま眼下に穴の底が迫る。

 衝突を覚悟し、不自由ながらも受け身を取ろうと構えた瞬間、底が開きそのまま穴の底の向こうへと突入する。

 そこはすぐ床になっていたようで、受け身のタイミングがずれたために体が打ち付けられる。

 が、痛みは無かった。


「何なんだよほんと」


 悪態をつきながら辺りを軽く見渡す。

 石造りの居間のようになっているようで、自分が倒れているのは部屋の中央のようだ。

 情報を集めていると、白く華奢な手が差し伸べられた。


「大丈夫?ごめんね、君を驚かせたかったらしくて」

「どうだろう、驚いてくれたかな?」


 聞き覚えのある声の後に先ほど聞いた中性的な声が続く。

 差し出された手を取って体を起こすと金髪の少女が目に入る。


「確かお前は、レイン…だったか」

「そう。覚えててくれたんだ!」


 最初に会った時は分からなかったが、見たところ十七歳くらいだろうか。そしてどうやら明るい性格のようだ。


「えっと、ひとまず色々と説明をしちゃいたいんだけど…」

「あっ、それもそうね」

「それと君も腰かけてもらって構わないよ」


 レインが立ち上がり、近くにあったソファに腰をおろすと横をポンポンと叩いて手招きする。

 素直に従いソファに腰をおろす。

 ふと前を向くと、先ほどまでレインで隠れて見えなかったソファに男が座っていることに気がつく。自分と同じくらいの年齢のように見えるが、どこか幼い印象を受ける顔立ちだ。


「それじゃあまずは自己紹介といこうか。僕はジークレクト・ホーン、レクトって呼んでね。こんなだけどここのリーダーだよ。君は?」

「…俺はスメラギ。そのまま呼んでくれ」

「じゃあスメラギ、唐突で悪いんだけどこれからの君のことを決めてほしい。ここで暮らすかいままで通り生きるか」


 本当に唐突な話だ。

 だが確かに考えなくてはいけないことだ。

 目が覚めてから見て回った部屋や今いる部屋を見るにここはおそらく屋敷なのだろう。ならば、これまでの貧乏生活に戻るよりはここで暮らすほうがいいかもしれない。

 しかしただでここに住めるとは思えない。


「ここで暮らす場合の対価は?」


 そう問うとレクトの口角が少し上がったように感じた。


「その場合君には強くなってもらう。それと、君が知りたがっている情報も開示しよう」

「ふむ。一つ聞いていいか?」

「何かな?」

「その情報はあのよく分からん生き物のことか?」

「まあ、そうなるね」


 なるほど。となればおそらく七つの大罪とかいうこととあのよくわからない化け物に関することか。


「取引として成り立っていない。戦力が欲しい訳でもないだろう」


 今度は分かりやすくレクトの口角が上がった。


「やっぱり分かっちゃう?まったくもってその通りだよ。あ、ちなみに君に強くなってもらうっていうのは本当だよ。戦力として僕らに協力するかは別としてね」


 本当にこいつがリーダーなのか?

 だとすれば割と抜けている。情報に関してはあの時黒髪の男が少し漏らしていたろうに。


「で、どうする?僕は君を歓迎するけど?あとレインもね」


 横をみるとレインが頷いていた。


「決めた。ここで世話になろう」

「本当!?じゃあこれからよろしくね!」

「…ああ」


 金髪の少女に笑顔が咲く。


「それじゃあ皆、集まってもらっていいかい?」


 レクトがそう言うと部屋の形が変わり出し、壁があった場所にドアやひとつながりの部屋が現れた。


「良かったな、お嬢」


 そう言いながら後方から黒髪の男が現れる。あの夜いた男の一人だ。


「彼はギル・グリネアド。亜空間にアクセスできる異能力者で、科学界にあるニホンって所の文化が好きな内弁慶」

「よろ」

「ああ、よろしく頼む」


 前に会った時とは雰囲気が違う。少なくともこんな軽い挨拶をするような印象ではなかった。

 挨拶を済ませるとギルはそそくさと部屋に戻っていった。

 それと入れ替わるようにしてギルの入っていったドアとはまた違うドアが開き、赤髪の男が入ってきた。あの夜いたもう一人の男だ。


「やっと起きやがったか。ったく二週間も寝てやがるたぁいいご身分だ」

「もう。そういう事言わないの」

「わかってらぁ。別に取って食おうってわけじゃねぇんだ」

「彼はディー・ナハルトヘイン。空間を削る異能力者で、シスコン」

「誰がシスコンだぁ!?」

「彼はこう言っているけど、そのうちわかると思うよ」


 日付がさらっと判明した。

 二週間と言ったか。本来それだけ眠ることなど無いが、なぜか驚かない。

 どこか無意識のうちに納得しているような感じがするのだ。

 ディーは目の前まで歩いてくると顔を近づけては獣のような鋭い歯を剥き出しながら言う。


「変な気ぃ起こすんじゃねぇぞ。レインに何かあったらオメェにかじりついてやっかんな」

「そこら辺にしときなよ~。そんなんだからシスコンなんて言われんだ~」


 今にも噛みつきそうな距離で言うディーの後ろから間延びした声が響く。


「オメェが出てくるなんざ珍しいじゃねぇか」

「…別にリーダーの指示なんだから当然でしょ~」

「いっつもその指示を無視してるのはオメェだろうが」

「毎回無視してるわけじゃないし~。必要があれば従うし~」


 ディーがソファに腰掛けると、別のソファに毛布にくるまった少女が寝ているのが見えた。

 先ほどまでそこには誰もいなかったはずだが、いつ横になったのだろうか。


「彼女はレリア・ウィンレイジー。四次元を出入りする異能力者で、よく僕の指示を無視する」

「なあ。聞いていいか?」

「何だい?」

「さっきから度々耳にする異能力者っていうのは何だ?」

「ああ、確かにその説明をしていなかったね」


 全くだ。聞きなれない単語がちょくちょく繰り返されているのに、それについての説明が一切ないせいで紹介されても分からない。


「まず、異能っていうのは定義が難しいんだけど…まあ魔法という枠組みを超えた力だと思っておけばいいかな。で、その異能を持つ者を異能力者と呼ぶんだけど、中でも僕たちは空間をどうこうする異能力者なんだよ」

「時間のほうが便利なんだけどね~」


 レクトが苦笑する。


「ざっくり言うとここに暮らしてる七人は同じルーツを持っているから、同じ系統の異能力を持っている。例えば僕は空間を分割して操作する能力、レリアは四次元空間を往来する能力、みたいに空間に関する能力さ。ちなみに君がこの部屋に来たのは僕の異能だよ」


 なるほど。空間が操作されていたから落下速度が一定だったわけだ。


「だいたい分かった」

「それは何より」

「あとはおいおい聞くとしよう」


 ソファから立ち上がり近くのドアへ歩いていく。


「あ、じゃあ私がこの屋敷の案内をしてあげる」

「ああ、頼む」

「任せて」

「俺ぁこれから仕事だが、わかってんだろーなぁ?」

「ディー。スメラギはそんな人じゃないわ」

「念のためだよ、念のため」


 そう言って赤髪の男は部屋を出ていった。


「じゃあ行こ?」

「そうだな」

「ああそういえば」


 部屋を出ていこうとしたところでレクトから声を掛けられる。


「何?」

「そろそろウィズが帰ってくると思うから、後で寄ってみて」

「うん。分かった」


 レインがドアを開けると廊下に出た。

 ゆったりと歩いていくレインの横を歩く。


「この屋敷はね、一つのドアからいろんな部屋に行けるようになってるの。行き方は簡単で、行きたい部屋を思い浮かべて対応したドアを開けるだけ」

「なら、普通にドアを通りたい時は?」

「その時はただ開けるだけでいいけど、一部のドアは転移用で、開けても壁しかないから気を付けて」


 対応したドアということはつまり、ドアノブの色で区別しているのだろう。

 ドアで転移するのもレクトの言う空間に関する能力の影響だろうか。

 他にも質問をしながら歩いていると、レインがドアの前で立ち止まった。


「(ここがいいかな)」

「?」

「じゃあ、この部屋が今日からスメラギの部屋ね」


 そう言いながらレインはドアを開ける。

 中に入ると、そこは木造の部屋だった。

 これまで見て回った石造りの部屋とは打って変わって暗い色の温かみのある部屋だ。

 派手な装飾もなく、スメラギが目を覚ました部屋よりも二回りほど小さい。その上、どちらかというと芸術性よりも機能性を重視した造りだ。


「気に入らなければ他の部屋に移っていいからね。あと、必要な物があったら言って」

「ふむ、俺好みの部屋だな。」

「本当?良かった」

「それと、俺が寝ていた部屋にあった絨毯をもらえるか?」

「あ、あれ気に入ってくれたんだ。私のお気に入りなんだよ。後で置いておくね」

「ああ」


 あの絨毯は中々に心地よかった。あって困る物でもないだろう。


「それじゃあ、部屋を作るのは後にして、一旦ウィズのところに行こう」


 部屋を出るとドアにはスメラギと書いた札が掛かっていた。いつの間に付けたのだろうか。


「ウィズっていうのは?」

「ウィズは嫉妬の異能力者で、フルネームはウィズ・ヘラノート。多分そろそろ帰ってきてると思う。中庭に居ると思うんだけど…」


 レインは大きめのドアへと駆けていく。

 中庭か、そういえばこの屋敷の外を見ていなかった。

 これまでに見てきた部屋はどこも窓が無かったうえ、廊下もそれは同様だった。


「あ、いた!スメラギ、こっち!」


 レインは開いた状態のドアの前で手を振っている。

 そこへ追いつきドアの向こうを見ると、そこには庭園が広がっていた。

 しっかりと手入れがなされており、水路もある。中央は小さな丘になっており、その上には屋根が掛かっている。

 そして、丘の上に人が二人いるのが見えた。

 レインと共に歩いていくと、だんだんと姿がはっきりしてきた。

 片方はレクトだ。

 そしてもう片方は、黒髪の少女だ。恐らく彼女がウィズなのだろう。

 二人は何か話しているようだ。


「それで、首尾はどうだった?」

「はい。犠牲になった村は魔獣災害にあったということにして、一部の情報を公開することにするみたいです。ただ、隠蔽の都合上本来払われるはずだった報酬が減額されるとのことです」

「そうか…。まあ、事が事だけに仕方ないね。それにお金が目当てじゃないしね」

「はい。それと…彼はどなたです?」


 スメラギ達が十分に近づいてきたので、黒髪の少女がそう切り出す。


「彼はスメラギ。今回の件に巻き込まれてここで暮らすことになった」

「…そうでしたか。私はウィズ・ヘラノート。空間を歪める異能力者です。これからよろしくお願いします」


 ウィズがペコリと頭を下げる。

 近づいてみて違和感を感じたスメラギは左目を凝らす。

 すると、髪に違和感を感じた。


「その髪、染めているのか?」

「珍しいねスメラギ。ウィズの髪に気付く人なんて初めて見たよ」

「確かに、私は髪の毛を染めていますよ」

「よく気づいたね。普通は気がつかないんだけど。君は眼がいいみたいだね」


 右目が見えず確証がなかったが、正解らしい。


「君は、魔法は使えるかい?」

「これでも中級冒険者だからな。わけないだろう?」


 おかしなことを聞くものだ。


「近接戦闘は?」

「片手剣ならそれなりに使えるが」

「そうか…。よし!じゃあ、付いてきて。君に戦い方を教えてあげよう」

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