火花が見えるようなお茶会
「ローラ様、お茶会のご招待ありがとうございます。」
リアが挨拶をすると、いつの間にか執事のケインがやって来て、ローラに手土産を渡した。
(しまった!手土産がいるんだった!?)
リアはいつの間にか準備されていた手土産に焦った。
「クライス様とリア様からです。」
ケインがローラに差し出し下がろうとするとマルクはケインにありがとう、といい何か耳打ちした。
「ローラ様はクライスと同級生と伺いました。」
「ええ、クライス様とリヒト様は人気者でおもてでいらしたわ。私はよくクライス様といたんですの。」
ホホッ、と笑うローラにリアは戸惑った。
「ローラはクライス様と恋人だったんじゃないのか?」
ロイドがあっさりと言う。
「まあ、そんな。」
ローラはニヤリと笑った。
「今は、リア様に夢中ですけどね!」
マルクはギスギスしたままだった。
ローラは何だか学院時代のクライスの話をし、よく二人でいた事を自慢のように話した。
リアは作り笑いで話を聞き、マルクは苛ついていた。
「まあ、お茶のお代わりがほしいわ。」
そういいながらリアにカップを向けた。
これにマルクは怒りを隠せなかった。
「お代わりが欲しいなら使用人に言えばいいでしょう!リア様はクライス様の大事な方です!」
「ええ、でもこの場では私が一番身分が高いのでは?」
「マルク、私は」
とリアが言いかけると、マルクはバンと立ち上がった。
「では、私があなたを使用人の所にご案内しますよ。どうも、あなたは使用人の姿がお見えにならないようですので!」
マルクは笑顔だったが目が笑ってなかった。
ローラは不機嫌ながらマルクに連れられて行った。
リアとロイドは二人残され、ロイドも少し苦笑いだった。
「はは、何だか火花が見えるようなお茶会になりましたね。」
(あっ、やっぱりそうなんだ。)
リアは同じ事考えてたと思った。
「それにしても可愛らしい方ですね。」
貴族の社交辞令と思いリアは本気にしなかった。
「ローラ様の方が美人ですわ。」
「ローラにはない魅力がありますよ。一目惚れしそうだ。」
ロイドは慣れたように口説き始めリアを見つめた。
リアは何だか不思議だった。
(これがクライスならドキドキするのに)
ロイドに口説かれているのがわからないのかと思う程全くリアの心に響かなかった。
するとスッとリアとロイドの間に手をつき二人をさえぎった。
「俺の女を口説かないで頂きたい!」
いつの間にかクライスが来ていた。
日焼けを嫌うローラが日陰を選ぶ為通路の側にお茶会をセッティングした為、クライスが近付いて来た事に誰も気がつかなかったのだ。
「クライス、どうしたの?お仕事は?」
「終わらせた。」
クライスはロイドを睨んだかと思うと自分のものだとアピールするようにリアの額に軽くキスをした。
「まあ、クライス様、来てくださったんですか?」
ローラはクライスを見て嬉しそうに近付いた。
「マルク、何をしているんだ?」
ローラを無視し、マルクに声をかけた。
「ローラ様は使用人の姿がお見えにならないようで、リア様にお代わりを頼もうとしましたので、私がご案内しました。」
マルクはあっさり白状した。
「まあ、そんな事、リア様とはクライス様との学院時代のお話を楽しくしていたんですのよ。」
ローラは面の皮が厚いのかペラペラと話、クライスによろうとした。
「大体、なぜ男がいる!?聞いてないぞ。ローラ、どういう事だ?」
「私の友人ですわ。リア様にご友人をと」
「リアを勝手に男に会わすな!」
「クライス様?」
ローラはクライスが怒っている事に驚いた。女の事で怒る姿を見た事がなかったからだ。
「クライスやめて下さい。」
リアはクライスを止めようと、なぜか必死になった。
自分を見下していたローラの為に。
「私は大丈夫です。」
「リア、男が来ると分かっていたら行かせなかったのに。」
「クライス、みんなが見ています!」
クライスはお構い無しにリアを抱きしめた。
「では、今日はお開きにしましょう。」
空気を呼んだマルクの一声でお茶会は終わった。




