番外編 死竜のシードの呪い
テレーズ王国の街の一つ、ラテルの街があった。
冒険者達が集う街で武器屋、道具屋にシード屋等と活気に満ちていた。
その内のシード屋の一つ、モーリスという店主がいた。
「アッシュ、壊れたシードはアクセサリー屋に卸して来るから、お前はいつも通りこっちのシードに魔力を補充してきてくれ。」
街の外の森には、竜脈があり、シードに魔力を補充する事が可能だった。
そのおかげで、この街は冒険者の街としてそれなりに栄えたのである。
アッシュはいつも通り竜脈へと向かった。
「今日はいつもよりシードが少ないな。これならすぐに終わるな。」
アッシュはそうぼやきながら行った。
予定通り終わるが、アッシュはどうせすぐに帰っても、休みなく仕事があるんだ、たまには少し遠回りしてゆっくり帰ろう、とサボりながら帰る事にした。
いつもと違う道を歩いていると、アッシュは洞窟を見つけた。
(こんな所に洞窟があったのか)
アッシュはただの好奇心で洞窟に入った。
洞窟の中は禍々しい魔力があったが魔法の才能のないアッシュは気が付かなかった。
洞窟を歩いていると瘴気を出しているようなシードを見つけた。
「なんだ?このシード?魔力が溢れているのか?結構大きいし、売れば金になるかも。」
アッシュは持って帰ろうと触れた時、シードは瘴気をだし、アッシュに襲いかかった。
「うわあぁ!?」
アッシュはシードの瘴気の中で禍々しい竜に対面した。
「シード持ちだが、貴様魔力がないな。
だから、この魔力の中ここまで来たのだな。」
魔力を持つ者ならこの禍々しさに気付き恐らく入ってこれなかったのであろう。
アッシュはこの竜に恐怖した。
「私は死竜だ、シードをよこせ。」
「まさか、ドラゴニアンシード!?」
アッシュは恐怖の中どこか嬉しそうだった。
「シードなら差し上げます。その代わり俺に力をくれ!」
アッシュは魔法の才能がない事にコンプレックスがあり、ドラゴニアンシードを見つけた事でチャンスだと思っていた。
「貴様には、私の力は過ぎたものだ。
貴様では、シードに耐えられん。」
「そんなッ!?」
「…まあいい、それでも欲しいならくれてやる。その代わり、私に力を捧げねば朽ちてしまうぞ。よいな。」
「必ずシードを差し上げます!」
禍々しい瘴気がアッシュの身体の中に吸い込まれていった。
アッシュは身体が重くなり力が無くなるのを感じた。
シードを捧げねば朽ちてしまうぞ。
死竜の言葉が頭に響いた。
「まさか!?」
アッシュは慌てて、バックの中にある補充したばかりのシードを出した。
シードから魔力を吸い上げ、アッシュは身体の重苦しさが軽くなるのを感じた。
(捧げるとはこういう事か!?
だが足りない!?
もっとシードがいる!?)
アッシュは一心不乱にモーリスの店へと戻った。
カランカランとドアが開くと、モーリスが店番をしていた。
「遅かったな。?どうしたんだ?アッシュ。顔が悪いぞ?」
「…せ。シードをよこせ!!」
アッシュはモーリスを襲い、店のシードを奪った。
異変に気付いた冒険者達が、モーリスの店に来ると、アッシュの異様な力に驚愕した。
アッシュは店中のシードを吸い上げ、冒険者達を攻撃しそのまま、アッシュは逃げた。
死竜のシードの力は凄まじいものだった。
(やった!あいつらを倒せた!)
だが、すぐに身体が重くなるのを感じた。
(もっと強いシードなら!?
だが、魔法を使うとすぐにシードが枯渇するのか!?
あまり派手に動くと騎士団が動くかもしれない!?)
そうして、アッシュは密かにシードを集め始めたのである。




