激昂
クライスはリアの名を叫んで探した。
「リアッー!?」
邸にリアの悲鳴が響き渡り、叫び声の聞こえた方に急いだ。
リアのいる部屋が乱暴に開けられた。
部屋にはベッドの上でリアを押し倒し上に覆い被さっているアッシュをクライスは見た。
その瞬間クライスは身体中の血が吹き出る程の怒りを感じた。
激昂しアッシュにクライスは向かった。
クライスとアッシュはそのまま窓をバキンと壊し外に出た。
外に出た二人は対峙した。
クライスの周りには風が集まり、まるで竜のように集まった。
クライスは怒りのまま全力で攻撃した。
風が竜巻のように向かう。
アッシュはあまりの魔法に圧され気味だった。
(まずい、まだあの女から全快するまで力を吸い上げてない!?これ程の魔法の使い手がいるなんて!?)
「クッ、ダグラス!手を貸せ!!」
アッシュは必死でダグラスを呼んだ。
「ダグラスは来ませんよ。時間をかけるわけにいかないので、少々無理をしました。」
マルクが近付いて、静かに話すと、アッシュはマルクの後ろにダグラスが倒れているのが見えた。
その瞬間クライスはアッシュに斬りかかり、風で切り裂いた。
「しまっ…!?」
しまったと言い切ることなくアッシュはかまいたちのように身体が切り裂かれ、倒された。
アッシュの身体は瘴気のような煙に包まれ、姿がなくなった。
クライスはすぐにリアの元へ走った。
リアはフラフラな足取りで邸から出てきた。
「リア!?」
「クライス…」
クライスはすぐにリアを抱き寄せた。
リアは震えており、クライスの腕の中で涙を流した。
マルクはアッシュの跡に不思議に思っていた。
(何故、姿が残らないんだ?まるで死人のようだ。)
「マルク、早くリアを休ませたい。帰ろう。」
「リア、無事で良かった。」
「マルク、あなたまで来てくれたのね。本当にありがとう。」
クライスに抱きかかえられたリアを見て、マルクはホッとした。
クライスの腕の中でリアの震えは止まっていた。
「クライス、少し待って下さい。
クライスが倒したのにアッシュの姿が残ってないんです。まるで死人のように。」
「アッシュは死竜のシードに呪われているって話してたわ。」
「死竜!?まさか、そのせいで…」
マルクはどこか納得したようだった。
「さぁ、帰ろう。」
クライスの一声で三人は、持ってきた転送のシードを使い城へと戻った。




