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泣き声

 レーナどうしたんだ?なんだか怒っている様な……いや、ちょっと違うな。

 

「そ〜ですか、申し訳ありません。レーナさんが仰るのであれば」


「あたしのこと、知ってるんだ」


「勿論です〜。ここで働いている者で、あなたの事を知らない者なんていませんよ」


「そうなの、ありがとう。あたしって有名人なのね。でも、あたし、ここの受付嬢とは、みんな顔見知りなんだけど、あなたを今まで、見かけたことが無いのよね…………あなた、だれ?」

 

 え? なに、これ。なんだか、空気が重い。

 

「知らないのも当然だと思います〜。だって、私今日から働き始めたんで。これからよろしくお願いします」


「そう、今日から……なら、今まで何をして過ごしてきたのかしら」


「ど〜いう事でしょうか。お話が見えないのですが?」


「あたしね、鼻がとても良いのよ。だから……いくら、香水や化粧品でニオイを誤魔化していても……あなた、凄く臭いのよね。血と死体のニオイがするわ」

 

 レーナが、ダガーを腰から抜いた。

 

「あたしも疲れているから何もせずに、ここから消えてくれるなら今回は見逃すけど、どうする?」

 

 レーナの声から凄みを感じる。

 

「さあ! どうなの!」


「さ〜て、どうしましょう」

 

 臭い受付嬢が、とぼけた態度をとる。

 

「もっと上手く、スマートにできると思っていたのに……此れだから獣人は嫌いよ」


「あたしもあんたの事は好きに成れないは、きっと。相性バッチリじゃない」


「ええ……本当に……」

 

 ゴトッ⁉︎

 

 今なにか、物が床に落ちた様な音がしたけど。

 

「⁉︎ みんな逃げて!」

 

 レーナが慌てて叫ぶ。

 

「どうしたんだ!」


「いいから早く!テルルも!」


「ダイキくん!レーナに従って!」

 

 テルルちゃんは、奴隷の少女の手をしっかり握って、一緒に逃げてくれてる。

 よかった。よし、俺も……

 

 そう思った矢先——

 

 とてつもなく大きな衝撃が俺を襲う。

 

 耳がキーンとする……

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁっ」

 

 体が痛い……

 

「ダイキ!」

 

 レーナの声が遠くなって……

 

 

 

 

 うっ……あ……ここは……?

 知らない天井、硬いベッド、知らない部屋おはよう。

 レーナとテルルちゃんはどこだ。それに、あの子も居ない。

 

「気が付いたか」


「お前は居るんだな、鶏貴族とりきぞく


「何だそのおかしな呼び方は」


「いや、なんか喋り方が貴族っぽいから」


「確かに、爵位は得ておるがな」


「おっ、ならちょうど良いじゃん」


「だが、吾輩の爵位は侯爵こうしゃくだ、せめて鶏侯爵と呼べ」

 

 名前で呼ばなくて良いんだ。

 

「うん。じゃあ、トリコウで」


「悪口ではないか!」

 

 また殴られた。

 この鳥は短気らしい。

 

「なあ、戯れるのはそろそろ終わりでいいか?」


「貴様が、始めたのだろ」


「ノってきたのはそっちだ……ところで、みんなどこに行った? というより何がどうなったんだ」


「さて、誰のことから話すのが良いのか」

 

 何?みんな別行動なのか?

 

「じゃあ、奴隷の女の子から」


「居なくなったぞ」

 

 え? 何、言ってんだ……

 

「何があったんだ!」

 

 ナッハバールは落ち着けと言うと、何が起こったのか話してくれた。

 

 あのとき、俺を襲った衝撃の正体は、あの臭い受付嬢が起爆させた魔宝石によるものだった事。その所為でギルドの集会場も崩壊。現場が混乱する中、テルルちゃんと奴隷の子が、何者かに連れ去られるところを、レーナが目撃し後を追ったが妨害され、取り逃した挙句、負傷したとの事。

 

「レーナは無事なのか?」


「ああ、犬娘の傷は安静にしていれば大した事ない」


「安静にしていればって?」


「あの犬娘が、目の前で友人を連れ去られて、大人しく寝ているような女に見えるか?」

 

 いや、絶対に無理だろう。自分の事は大丈夫だと言って、テルルちゃんを探しに行こうとするはず。出会って半日だが、容易に想像が出来てしまう。

 

「で、レーナはテルルちゃん達を連れ去った奴等を追ってどこかに行ったのか」


「いや、隣の隣の部屋に縛り付けてある」


「はい?」

 

 縛り付けてあるって言ったよな、今。

 

 その時だった——

 

「あああああああああああああああ!外せええええええええええ!クソがあああああ嗚呼!」

 

 多分、レーナの声だろう。いや、きっとそうだと思う。だけど、断言出来ない程、別人の声に聞こえるほど、叫びすぎていて、恐怖すら感じる、そんな泣き声だった。

                                                       

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