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受付嬢

「何なのこの鳥!喋ったわよ!」

 

 それはさっき俺が言った。

 でも、ほんと何なんだこの鳥。どう見てもニワトリだよな。

 

「失礼な連中だ。まったく吾輩を誰だと思っている」


「誰っていうか、ニワトリ」


「コケコッッコ‼︎」

 

 ドバァァァン‼︎ と、物凄い音がしてニワトリの脚が俺の腹にめり込む。

 

「ゲボォォォ⁉︎」

 

 ……腹痛え。

 

「頭の悪そうな貴様に教えても3歩歩いたら忘れてしまいそうだが、一応名乗っておこう」

 

 ニワトリに言われたくない。

 

「吾輩は不死鳥——ナッハバール!」

 

 は? 不死鳥?

 

「ふっ……驚きの余り言葉も出ない様だな」


「いやいや、今コケコッコって言ってたじゃん。お前みたいなニワトリが不死鳥だなんて絶対ないだろ」


「コオオオオオオケコッッッコ‼︎」

 

 ドカドカドカドカドカドカアアアアン⁉︎

 

 今度はラッシュか……超痛え。

 

「吾輩の、この美しい姿を目の前にして、そんな態度を取った異世界人は初めてだ」

 

 異世界人⁉︎

 

「お前、いま異世界人って言ったか!」

 

 このニワトリは、俺が別の世界から来たことを知っている。何なんだこいつ。

 

「あんたが、別の世界から来たって知ってるって、ますます気味が悪い鳥ね」

 

 レーナがヒソヒソと話しかけてきた。

 

「聞こえているぞ、犬娘イヌムスメ


「犬……いま犬って言った?」


 レーナが怒っている事は、誰が見ても明らかだ。犬って言われた事が、相当嫌だったのか。

 

 すると今度は、レーナが……

 

「あんた、不死鳥とか言ってたけど、ほんとなの? 試しに切り刻んで焼き鳥にしてちゃんと生き返るのか確かめてあげるわ」

 

 めちゃくちゃ物騒なこと言ってる。

 頼むからこれ以上、レーナを怒らせるなよニワトリ。

 

「吾輩を不死鳥と知って、焼き鳥にするだと。つまらん冗談だ。それにだ、出来もしない事を言うのは感心せんな」


「出来もしないですって……舐めてると後悔するわよ」


「それは貴様だろう。吾輩の美しく愛くるしいこの姿を見て油断しているようだが、吾輩は貴様より強い。相手の力量を測れもしない愚か者は家に帰ってだ惰眠を貪っていろ」

 

 このニワトリは馬鹿なのかもしれない。

 

 1人と1羽は取っ組み合いの喧嘩を始めた。

 喧嘩というより、動物が戯れている様にしか見えない。これなら、心配なさそうだな。さっきまでの物騒なやり取りは何だったんだ。

 

「そろそろ良いかな、話を戻したいんだけど」

 

 暫く喧嘩を観戦してから、俺が口を開いた。

 

「邪魔しないで、馬鹿なの」

 

 何で俺が、馬鹿呼ばわりされなくちゃいけないんだ。

 

「この犬娘が負けを認めるなら、やめてやっても良い」


「認める訳ないでしょ、馬鹿じゃないの。それに犬じゃない!」

 

 コイツら仲良いんじゃないか。

 

「もういいよ……長いよ」

 

 つい本音が口から出てしまった。

 

「何だその言い草は」


「そうよ、こっちは真剣なの」

 

 めんどくせえ

 

「あのさぁ、盛り上がってる所悪いけど、ボク疲れちゃったんだよねぇ。それにこの子も休ませてあげたいし今日は帰ろうよ。その変な鳥さんの話は、帰ってからで良いんじゃないかな」

 

 テルルちゃんが提案してきた。2人に気を取られて忘れていた。この子を休ませないと。

 それに、俺もなんだか体が熱いし、なにより怠い。早く休みたい。

 

「だい、じょう、ぶ、です、か?」

 

 ぶつ切りな大丈夫が、愛おしかった。

 

「ああ、うん。君こそ、疲れたよね」


「い、いえ」


「良いんだよ」


「えっと……?」


「疲れた時は、疲れたって言って良いんだ」


 少女が目を丸くしている。

 

「どうかした?」

 

 俺が顔を見ながら不思議に思っていると、少女の目から涙が流れてくる。

 

「どうした⁉︎」

 

 突然泣かないでくれ。

 俺が、泣かせたみたいじゃないか。

 

「ちょっと、なに泣かせてんのよ」

 

 レーナさん、ツッコミのタイミングばっちりですね。

 でも、俺じゃない。つか、聞いてだろ。

 

「この子が勝手に」


「ダイキくん、子供のせいにするなんて、サーイテー」

 

 バッチリ見てただろ。

 

「ご……ごめん……なさ……い」


「ほんと、どうしたんだ?」


「ちょっと、やめなさいよ!あんたが近づいたら、もっと泣いちゃうでしょ!」


「ちょっと待ってもらえますかね。お前ら!俺をなんだと思ってんの!」


「お前だってさ、レーナ。行く宛もなく、途方に暮れてた所を助けて、仕事の探し方まで教えてあげた恩人のボク達に対してあんまりだよね」


「本当よ。助けて損した」


「助けてもらったことは感謝してるわ!ちゃんとしてるわ!」


「どうだか。もうボク達が居なくても、1人でやっていけるとか思っちゃってるよ」


「思ってねえよ!どんだけ俺の印象悪いんだ!」


「あ、あの……」

 

 少女が、涙を拭いながら何か言おうとしていると、ニワトリが口を開く。

 

「いつまで戯れ合っているつもりだ。その娘を、休ませるのではなかったのか」

 

 ニワトリに注意されてしまった。

 俺達が悪いんだけど、なんか複雑な気持ちだ。

 

「お前もついてくる気かよ」


「当然だ。吾輩がなぜここに居るのか話していないではないか」


 俺達は、鉱物の計量を終えて、ギルドにクエスト完了の報告をしに街に戻って来たきた。道中、周りから変な目で見られているを感じる。

 ニワトリのせいかな?


「すみません、クエストの完了報告をしに来たんですけど」


「は〜い!」

 

 元気よく返事をしながら、受付嬢の人がやってくる。かわいい⁉︎ こんな可愛い人が居たのか。もっとクエスト頑張ろうかな。

 

「あら〜あなた方でしたか、坑道に採掘に行っただけなのに帰りが遅いから、心配しましたよ」

 

 しかも、俺を心配してくれるなんて……良い人だな。

 だけど、何でこの人……俺達が受けたクエストのこと知ってるんだろ。

 

「ところで〜……その子は?」

 

 受付嬢さんが、奴隷の少女を見ながら俺達に聞いてきた。

 何か気になる事があったのかな。ギルドに奴隷を連れて入ってはいけないとか?でも……荷物持ちの奴隷らしき人は沢山居るしな。

 

「確か〜、出発前の受付書には3人と書かれていた筈ですけど。ど〜されたんですか?」


「えっと……その……クエストの途中で保護したんです」


「保護……ですか……。誘拐ではないんですね〜」


 誘拐⁉︎ ほんと俺は、どんな風に見えているんだよ。

 

「違いますよ」

 

 レーナが受付嬢さんと俺の話に割って入る。

 

 

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