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目醒め

「ダメだよっ————!」

 

 テルルちゃんが腕を掴んできた。掴まれた筈だった。それなのに気が付いたら俺は、奴隷の少女の作業を手伝っていた。

 

 えっ……俺なんで勝手に動いてるんだ。

 

 『お前がチンタラやってるからだ少し変われ』

 

 クソッ、声も出せない何なんだこれは。

 まるで、一人称視点のゲームをやっているみたいだ。

 

「おいおい、あんた何やってんだ」


「……」


「シカトしてんじゃねえよ」

 

 少女の横にいた男の1人が、胸ぐらを掴んできた。

 

「————離せ」


「ああん?」

 

 ドスッ! 視界が激しく揺れる。

 殴られたのか俺。周りから悲鳴が上がってる。あれ? 殴られたのに全然痛くない。そしてまた意思に反して俺の身体は立ち上がった。

 

「うあああああ—— ——————」

 

 俺を殴った男が叫び声を上げた。

 観ると手から血を流している。

 

「なんでだ、殴ったのは俺だ、なんで殴られてんだ」


「アニキー てめえアニキに何しやがった」

 

 もう1人の男がナイフを向けて迫って来る。ヤバイ身を守れそうなものなんて無い——刺される。

 

「ぎゃあああああああああああああああ」

 

 何が起こったか分からなかった。

 いま確かに刺された。刺された筈なのに血を流しているのは、俺を刺した相手の方だ。

 

 俺の身体は、今度は奴隷の少女に向かって歩き出す。そして先ほど行っていた作業を再開した。なんなんだ一体どうなってんだ。

 

「てめえ、何なんだ。まさか魔術師だったのか」


「魔術だと……貴様ら程度を相手にそんなもの、使うわけが無いだろう面倒くさい」


「だったらこれは何だ、俺の手から血が出てる、弟は腹から。これが魔術を使ってないなら何だってんだ」

 

 

「面倒だから————押し付けただけだ」

 

 

 は? おい、なんだ俺の中の奴それで説明してるつもりかよ。周りから見たら俺がそれを言ってることになるんだよ、訳わからん事を抜かしてる頭のおかしいやつに思われちゃうだろ。

 

「訳わかんねえ事、抜かしてんじゃねえぞ」

 

 はい、思われちゃいました。

 

「中も外もうるさい。面倒くさい」

 

 はい、また言った。

 

「面倒だが、これ以上騒がれるのはもっと面倒だから特別に教えてやる。さっきのは魔術では無く、俺の固有スキルだ」

 

 固有スキル————?

 

「こ、ここここ固有スキル持ちだと」

 

 なんだ急に。怯えてるのかこいつ?

 

「わ、わかった。俺達直ぐに退くからあんたが先に計量すれば良い、なんなら俺達は1番最後で良い。悪かったよ許してくれよ」

 

「駄目だな」

 

「じゃあ、クエストも失敗と報告する。いま取ってきた物はギルドに全て渡す、もちろんカネは受け取らないだからどうか」

 

「駄目だ」

 

 今度は俺の身体が、男達に詰め寄る。

 

「オレの話が終わっていないだろ。それに、お前達は謝る相手を間違えている」


「他に謝る相手なんて……ああ、行列出来てるもんな並んでる人達に謝りながら最後尾に行くよ」

 

「間違っている」

 

 そうだ、間違っている。謝るべき相手は……

 

「そこの奴隷のガキにだ」

 

 

 

「そんなことできるかああああああ」

 

 男が汚い声で叫んだ。

 

「こんな奴に頭を下げる訳ねえだろ、こいつらはヒトじゃねえ奴隷だ、その辺に落ちてる石と変わんねえんだよ。てめえは、蹴飛ばした石ころに、ごめんなさいって、謝んのかよ」


 男が懐から何か取り出した。その瞬間周りが騒然となった。

 

「お客さんその男から離れて‼︎」

 

 テルルちゃんが慌てているのが伝わってくる。それだけじゃない、計量する為に並んでいた他の人達も荷物を捨てて逃げ出している。

 そんなにヤバイ物なのか、あの紅い石は。

 

「その魔宝石をどうするつもりだ」


「どうするだと……こうすんだよ!」

 

 男が奴隷の少女に向かって走り、彼女の首の鎖を掴んだ。

 

「こいつは、魔力を限界まで溜め込んだ魔宝石だ。こいつにあと少し魔力を注いだらどうなると思う」


「魔力の量に耐えられず石に亀裂が入りその直後に爆発。 そんな所だろう」


「正解だ。分かってて逃げねえとは、お前バカなのか」


「アニキ其れは、魔物に襲われた時に逃げる為の最後の手段だろこんなとこで使っていいのかよ」


「うるせえな!テメエは腹の傷おさえとけ。それに、いま使わなくていつ使うんだよ。殴っても刺しても攻撃を跳ね返しやがる奴でも爆発に巻き込まれたら、無傷って訳にはいかねえよな」


「だがそれでは、お前達も炎で焼かれることになるが」


「そうならねえ為に、コイツが居るんだろ」

 

 男が奴隷の子の首輪に石をはめる。

 

「俺達が離れたら首輪から魔力が注がれる」

 

 彼女の顔が、恐怖に歪んでいく。

 あの野郎、あの子を起爆装置として使う気だ。

 

「お前も良かったなあ、これで漸く両親と同じ所に行けるぞ。アイツらはかなり派手に弾けたけど、お前はどうだろうなあ。おいおい喜べよ、ヒトの役にたって死ねるんだからなあ!」

 

 少女が泣いている。恐怖の余り声が出せずに……あんな小さな子がする泣き方じゃない。クソ……クソ、ふざけるな

 

「ふざけんじゃねええええええええええええええ」

 

 ⁉︎ オレから体の支配権を奪った。

 

  予想以上だ。

 

「その子を解放しろ」


「あ? 解放しろだあ、なに言ってやがる解放するって言ってんだろ。最後の仕事をこなしたらなぁ」

 

 奴隷の少女は激しく突き飛ばされ、そのまま砂に倒れ込んだ。そして男はそのまま走り去っていった。


「ア、アニキ待ってくれよ俺を置いていかないでくれよ」


「馬鹿かテメエを担いで走ったら爆発から逃げられねえだろ」

 

 

「おい、聞こえてんだろ。おい、返事しろよ。俺の中にいたお前に言ってんだ!」

 

 『聞こえている。何の用だ』

 

「さっきの跳ね返す力を使えば爆発を何とか出来るか」

 

 『出来ると言ったら』

 

「俺に力の使い方を教えろ」

 

 『ククッ、良いだろう。だがお前は勘違いしている、オレの力は攻撃を跳ね返す物じゃない』

 

「どう言うことだ、説明しろ」

 

 『説明してやる時間がない、今回はオレがお前の体を使って直々にレクチャーしてやる』

 

「あの子を助けられるんだろうな」

 

 『お前が望めばな』

 

「絶対に助ける」

 

 『ククッ、全力で行くぞあのガキを抱きしめてやれ』

 

 俺は言われるがまま奴隷の少女を抱きしめる。

 

  『面倒だから押し付ける』

 

「糞が、あの男のせいでとんでもねえ出費だ。アイツが死んだことを報告もしなくちゃいけねえし、糞」

 

 ガシャン!

 

「あ? ⁉︎  どど、どうなってんだ何であのガキの首輪が俺の脚に付いてんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 ズドン‼︎ 

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