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奴隷の少女

 俺達は、テルルちゃんのクエストを受ける為に、ギルドに向かっていた。

 それにしても、なんかこの街の人達って服装の差というか、身なりの良い人と普通の人がいるのは、分かるんだけど……ボロ布みたいな物しか着てない人もいる。あの人達ってもしかして……

 

「奴隷がそんなに気になる?」

 

 睨むようにこちらを見ながら、テルルちゃんが声を掛けてきた。やっぱり————奴隷なのか。


 

「ああ、俺が居た国には居ないから、初めて見た」


「奴隷が居ない国なんてあるんだ。……素敵な場所なんだろうね」

 

 なんか空気が重くなってしまった。話題変えないと。

 

「ところで、これから受けるクエストってどんな内容なんだ?ボクのクエストって言ってたけど」


「ボクからの依頼は近くの坑道で鉱石採取だよぉ。持って帰る時、重くて大変だから男手が必要なんだよねぇ」

 

 ニートに力仕事求められてもな。

 

「あたしは護衛役。少しは採取も手伝うけど、いざって時に動き辛くなるからあんまり沢山取れないの。だから採取係が一人欲しかったんだ」

 

 そんな笑顔で言われても、もやしっ子の俺は戦力外だと思うけど。

 

「あとさ、テルルちゃんからの依頼ならなんで直ぐに坑道に向かわないで、ギルドに寄るんだ?」


「坑道はギルドに許可を貰わないと入れないからさ。何をどれくらい取るのか申請しないとなんだよ。」

 

 意外と面倒な手続きなんだな。

 

 そのあと俺たちは、ギルドにクエストの申請をして坑道の入口までやって来た。

 他にも人が居るんだな。

 

「クエストの申請書を拝見します」

 

 黒光りするボディビルダーみたいなマッチョが申請書を確認してテルルちゃんと何か話してるが、上半身裸にサスペンダーが気になり過ぎて全然話が入ってこない。

 

「取ったものをここで計量して申請書通りか確認してもらうのよ」

 

 なるほど、重たいものを毎日秤に載せるからアレだけ筋肉が必要なのか。

 

「ちなみに、取りすぎると没収。さらに持ち逃げしようとしたらゲンコツです」

 

 筋肉、ゲンコツ用だった⁉︎マッチョさんの笑顔が怖い。

 マッチョさんに見送られながら俺達は坑道に入った。

 

 ——2時間後——

 

「いや〜ホント体力無いねキミ」


「テルルちゃんは意外と体力あるのな」

 

 座り込んでる俺をテルルが笑いながら見てくる。

 あ〜もう腕が上がらない、立ってるのも辛い。

 俺が現代っ子だから体力がないのか、2人が獣人だから体力があるのか、その両方かな。

 

「レーナそろそろ戻ろうか、十分な量は取れたし、帰り道に魔物に遭うのも嫌だし」


「魔物なんて出るのか⁉︎」


「そうよ、早いと夕方から出現するから、その為の護衛なの」

 

 レーナは自慢げに胸に手を当ててるが、正直全然強そうに見えない。

 気持ちが顔に出てしまったのかレーナが不満そうにみてくる。

 

「あたしの力、信じてないでしょ」


「レーナは見た目よりかなり強いから大丈夫だよ」

 

 その言い方だとあまりフォローになってないよテルルちゃん。

 機嫌の悪くなったレーナをなだめて俺達は坑道を出た。

 おや? 出口で行列が出来てる。

 列の先を見ると、掘り出した鉱物の重さを測ってるいるみたいだ。 なるほど、あの秤で申請書より多く取ってないかの確認をしてるのか。

 

「これは暫く掛かりそうだな。毎回こんなに長い列が出来るの?」


「いやあ、こんな行列は初めてかな。何かあったのかなボクちょっと見てくるよ。さあ、お客さんも一緒に行こう」

 

 え? 俺も一緒に?


 そう言って、テルルちゃんは俺を引っ張り列の先頭に向かった。

 

「ねえ、どうして俺も一緒に行かなきゃなのか聴いても良い?」


「獣人の言葉を聞いてくれない人がいた時、代わりに話してもらう為だよ」


「どういう事?」

 

 そんな話をしてるうちに先頭に着いた。

 

「やっぱり……今日はかなり待たされるかもね」

 

 テルルちゃんがボソッと言った

 

「女の子が鉱物の入った袋を秤に載せようとしてるのさ」

 

 俺はテルルちゃんの視線の先に目をやる。

 ——そこにはボロボロの服を着た7歳くらいの女の子がいた。もの凄く痩せてる。

 

「……奴隷なんだよあの子。大人でも持つのに苦労する鉱物が入った袋を、1人で持ち上げようとしているんだよ」


「周りには大人がいるのに、なんで手伝ってやらないんだ?」


「……誰も手伝ってくれないよ」

 

 テルルちゃんの声に怒りがこもっている。

 

「奴隷の仕事を、主人の許可なく手伝う事は禁じられているんだよ。だから手伝いたくても誰も何も出来ないんだ。……ボク達も」


「……なんだよそれ。 あんな小さい子が大変そうにしてるのに、手伝っちゃいけないなんて」


 そんなのおかしいだろ。

 それに、アレは仕事をしてるんじゃない虐待されてるだけだ。

 

「あの連中、————笑ってやがる」

 

 俺は奴隷の子の近くに居るいる男達を睨みつけていた。

 

「早くしろ愚図。お前のせいで、行列が出来ちまってるだろうが、他の人に迷惑かけちまってんだよ奴隷のお前が」


「…………ご、ごめんなさい……」

 

 女の子は震えながずっと謝っている。

 クソッ!なんであの子が謝らなきゃいけないんだ、なんであんなに怯えなきゃならないんだ——こんなのおかしい……こんなの間違ってる‼︎


——上空から一連の騒ぎを覗き込んでいる者がいた——


 『いいぞもっとだ……もっと怒れ。そしてオレを求めろ』

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