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砂漠に突然


 退屈な日々を送っていたニートの、ハラダダイキはトイレに居た。腹の調子が悪くいつもより長居していたが至って普段と変わらない……筈だった。


「なんだよ……これ……どうなってんだ。部屋が無くなってる」


 訳わかんねえぞ、トイレを出たら砂漠って何がどうなった。俺が篭っていた1時間の間に世界が滅んでる!

 ——嘘だろ。どうすりゃあ良いんだ、周りにを見渡しても——砂——砂——砂。

 どっちに行けば人に会えるんだ。誰でも良いから出て来てくれ、このままだと水も飲めずに干からびて死んじまうよ。

 

「おーい、そこの人」


 少し離れたところから声をかけられたようだった。女の人の声……よかった世界は滅んでなかったんだ。その声のする方に振り返った。きっと泣きそうな顔だったろう。

 そこには、少女が立っていた——犬の耳と尻尾の生えた。あれって本物?砂漠でコスプレなんて、しないよな。座り込んでいる俺の元に、少女がゆっくり近づいて来てくれた。


「大丈夫、足でも痛めたの?そんな装備で……手ぶらで、砂漠に来るなんて無謀すぎない。ここは街から近いけど準備はちゃんとしなきゃ——」


「街が近いのか!」


「キャッ———⁉︎」


 ドンッ————! 両手で突き飛ばされた。

 痛い……尻と…………心が。


「何すんだいきなり!」


「それはこっちのセリフ。初対面の相手に鼻が当たりそうなくらい顔を近づけるってなんなの一体」


「だからって突き飛ばす事ないだろ。俺はただ嬉しくて」


「あたしに会えて嬉しい、…………危険だわこの人」


 少女の警戒レベルが、急激に上がるのを感じる。

 ここで見捨てられたら死んでしまう。


「違う。俺は突然こんなところに放り出されて、どうしていいか分からなかった所に街が近くにあるって聞けた事に対して喜んだだけだ」


「放り出された?」


 俺は、事情を話してみる事にした。


「ニホン?何言ってるの?益々危険だわこの人」


 少女の警戒レベルが、アップした。


 俺は彼女からここがどこなのか教えてもらった。

 アークランド公国……それがこの砂漠に囲まれた国の名前らしい。犬の耳を見た時に少し思ったが、異世界に来てしまったか。ヤベーめちゃくちゃ不安なんだけど。俺どうやって生きていけばいいの。


「あたし、クエストの報告の為に街に戻るけど、どうする?」


「もしかして、案内してくれのか?」


「だってあんた、街がどこにあるかも知らないんでしょ、案内してあげるわよ。」


 怪しいと思いながら、街まで案内してくれるなんて……良い子だ。


「その代わり、荷物運びよろしく」


 凄い量の荷物がソリに載せられていた。

  

「はぁ……はぁ……」


「ちょっと大丈夫?」


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 喋る気力もない。砂で歩きづらいし、喉も渇いた早く休みたい。

 重たい荷物を引きづりながら、俺たちは街に着いた。なんとなく、エジプトみたいな街並みだなと思った……行った事ないけど。


「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」


「もう少しで、依頼人のお店だから頑張って」


 もう少し、もう少しって、街に入ってからずいぶん歩いてるし、だんだん人通りも少なくなってる様な気もするし、何よりこの辺の人達の格好が世紀末みたいなノースリーブに肩パットスタイルなのを見ると、更に不安になってくる。

「よう、兄弟」みたいな感じで話しかけられたりしたくないな。


「よう、兄弟……見ねえ顔だな」


「へ⁉︎ あの、えーっと」


 ヘイ!ブラザー気にしないでー!

 怖いよこの人達。


 すると——


「クエスト中に知り合って荷物運びとして一緒にここまで来てもらったの。見ての通り武器もろくな装備も着けてない間抜けだから安心して」


 間抜けは余計だ。


「よう、レーナじゃねえかしばらく見なかったが、そんな遠方のクエストに出てたのか?」


「ちがうわ、今回は獲物を見つけるまで時間が掛かったの」


「鼻のいいお前が見つけるのに苦労するなんて何を狙ったんだ」


「オウトカゲよ」


 大蜥蜴?——そう言うと彼女は背中のリュックからそれを取り出した。

 大蜥蜴という割には大してデカくない、20センチあるかないかってくらいだ。

 だが、名前の由来はすぐに分かった。


 オエッ!オエッオロロロロ


「汚え⁉︎」


 蜥蜴が突然吐いた。嘔吐する蜥蜴。


「おおおおお⁉︎」


 沸くノースリーブ達。蜥蜴がゲロ吐いただけだろ何をそんなに興奮するんだ。


「スゲー上物じゃねえか!」


「まあ、あたしに腕に掛かればこれくらい当然よ」


 何が凄いのか全然わからん。


「じゃあ、あたし達はこれを届けなくちゃいけないから、またね」


「おう、またな」


 ノースリーブ軍団と別れまた歩き出した少女に俺も着いて行く。


「えっと、レーナさんだっけ……さっきの蜥蜴ってどこら辺が凄いのか教えて貰えるとありがたいんだけど」


「コイツらは、餌を食べる時、砂ごと獲物を丸呑みにするんだけど、当然砂以外の物も呑んじゃうわけ」


「砂以外の物って雑草とか?」


「それもだけど、比べ物にならないくらいいい物よ」


 ————?

 俺が首を傾げると、彼女は嬉しそうに


「それはね、砂金よ」



※ ※ ※ ※ ※ ※  ※  ※  ※  ※ ※



  何だ此処————誰もいない

  ——真っ白な空間

  どこまで広がっているのかも分からない。


  『まだ、繋がりが浅いのか……面倒だ』


  誰かの声がした。

  いや、声と言っても耳で聞いたわけじゃない

  頭に直接語り掛けられているそんな感じだ。


  『はぁ……お前が大人しく待ってねえから、

   こんな面倒なことしなくちゃいけなくなっ

   たんだぞ。はぁ……』


  めちゃくちゃ溜息つくなコイツ。


  『こんどはちゃんと、いい子で待ってろよ』


  グラっと体が揺れた



「ちょっと……ねえってば!」



 ——あれ?



「大丈夫?急にボーっとして」


 気がつくと俺はガラクタが散らかってる店に居た。


「お客さん、重たい荷物を運ばされて、疲れちゃったのかな。ほんと、レーナは人使いが荒いよね」


 ぶかぶかの白衣を着た小ちゃいリス獣人の女の子がニヤニヤしながら俺達を見てくる。


「そんな事ない!あたしは、ただ迷子を街まで案内しただけで、荷物を引いて貰ったのは道案内の対価って感じでえっと…………そう言えばまだ名前聞いてなかったわね」


「ああ……俺はハラダダイキ」


「あたしはレーナ。あなたの恩人よ」


 自分で恩人って言うなよ。


「変わった名前よね、ホントどこから来たのあんた」


「それは会った時に言っただろ」


「あーニホンって国だっけ?全く聞いた事ないのよね。テルルは知ってる?」


「いやぁ、知らないねぇ。その聞いた事ない国がどうかしたの?」


「いや、実は……」


 俺は別の世界から来た事を話した。


「ごめんねぇ、ちょっと信じられない」


 やっぱりそうか……


「あなたさ、その別の世界から来たって話しあまりうかつに話さないほうがいいんじゃない」


 そうか⁉︎考えが足りなかった。いい人達ばかりじゃ無いって事だよな、早めに気づけてよかった。


「そんな事より、早くオウトカゲを頂戴って、持ってきてくれたんでしょボクずっと待ってたんだから」


「分かったわよ、今回のは凄いわよ」


 さっきの蜥蜴がリュックから出できた。砂金を溜め込むのってのは凄いかもだけどゲロ塗れの蜥蜴に何の価値があるんだ?


「凄いねこれは上物だぁ」


「いつも通り[金]はあたしが貰うからね」


「金?」


「オウトカゲが金を吐くってこと知らないなんて、別の世界から来たって本当っぽいね」


「蜥蜴が金を吐くって、どんな常識だよ」


「この蜥蜴が砂金を溜め込むのは話したわよね。じゃあ、その砂金達はどうなると思う?」


「どうなるんだ?」


「胃の中で溶かされて固まるのよ。それが許容量を超えたら吐き出されるの。すごく純度の高い金になってね」


「すげえな!じゃあ、テルルちゃんはその金を求めて……あれ?でもさっき、金はレーナさんが貰うって」


「そうよ。あげないからね」


「ボクが欲しいのは、胃液だけだからね」


「胃液が欲しいってどういう事だ?」


「この胃液はねどんな金属も溶かせるの、だから私の金属細工の仕事には欠かせないのよ」


「そして、あたしはクエストの報酬と、金が貰える」


 なるほど、美味しいクエストなのか。


「ところで、これからどうするの?」


「どうするって……」


 帰る方法を探すか、だけど……そもそも帰りたいのか?

 彼女もいないニートの俺が帰ったところで意味があるのか?

 何の為に帰ろうとするんだ?

 元の世界なんて、面倒な事しかない世界だ帰るメリットがないだろ。

 もう考えるのも面倒だな。このままこっちで適当に生きていこうか。はぁ、どうすればいい。


「とりあえず、働いてお金を稼がないとね」


「えっ」


「だってそうでしょ、お金あるの?」


「無いです。でも俺何も出来ないし」


「まずは簡単なクエストに行ってみたらいいじゃない」


「どんなクエスト?」


「それはギルドに行ってみないと何が募集されてるか分からないけど、〇〇を取ってきて欲しいってものを選べばいいのよ。今回のあたしみたいに」


 働きたく無いなー


「じゃあ、ボクのクエスト受けない?」

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