第75話 亡国ルーラへ
亡国ルーラ
この国はかつて「魔王竜ハディエス」と呼ばれる竜の王が滅ぼし住処としていた場所。しかし800年前にエルディアより派遣された勇者一行によって討伐されてしまった。ここに残っているのはかつての人々が生活をしていた跡のみ。
青空の下その亡国ルーラに向かう冒険者一行の姿があった。
「ヴァルキルくんこれ後どれくらい?」
「もうすぐだ、ほら壁が見えてきたぞ」
金髪の少年ヴァルキルが指をさす方角に僅かだが見慣れた壁が見えてきた。
「やっぱりどの街も壁に囲まれているんですね。確かモンスターが入ってこられないようにバリアが張ってる.......とかだっけ?」
「じゃあ魔王竜はどうやって入ったんですかね?モンスターなのに?」
そんな話をしながら歩いていくと向かい側からもう一つの冒険者の一行とすれ違う。その一行の会話がヴァルキルの耳に入った。
「あの国には何もありませんでしたねアーサーさん!」
「あぁだが少しエクスカリバーの記憶を見ることができた。」
「彼女は置いていって良かったのだろうか?まだやり残した事があると言っていたが.......」
「それより俺腹減りました!近くに村があったはずです急ぎましょうよアーサーさん!」
ヴァルキルの視界に一瞬目に入った背中に大剣を背負った金髪の男の顔、その瞬間にヴァルキルはすぐに振り返ったが顔を見て確かめる事はできなかった。
「ヴァルキルくんどうしたの?」
「いや......なんでもない.....気のせいだ.....はずないんだ.....」
最後の方は小声で聞こえなかったがマサムネはヴァルキルの顔を見て何か察したのかこれ以上聞かない方がいいと思った。
数時間後
彼らがルーラに到着したのは太陽が一番高く出た頃だった。国の中に入るとそこに人の姿はない。焼け焦げた民家の跡に苔やツルが絡みついている。国一つが廃墟になったという例えであっている気がした。
「ここがルーラ.......なんでここに来たんだっけ?」
「忘れたのか?ここのクエストを受けにきたんだろう?「流星祭」以来の運営からイベントのクエスト「復活の魔王竜」あと2日でイベント開催予定のはずだ。」
数ヶ月間動かなかった運営からの数ヶ月ぶりのイベントだ。しかしその難易度は他とは比べものにならないほどの難易度となっていた。
「そうだよヴァルキルくん!だから僕たち紅桜の力を必要としたわけだね!君に頼られるなんて僕は嬉しいよ!君はなかなか心を開いてくれなかったからね」
マサムネは笑いながらそう答えるとヴァルキルの肩の鎧の装甲をポンポンと叩いた。
「勘違いしないでほしい、ファンタジーモールは多くが戦闘に向いてない職業が多いし黄昏の流星は街を離れている事が多い、だから残った君達を頼ったんだ。」
「あれ、ジェネシスは?」
「ジェネシスの力は頼りたくない.........ちょっと周りを歩いてくる。1人にさせてくれ」
そう言い残すとヴァルキルは1人でどこかへ歩き始めた。マサムネの元に数人の屈強な男達が近づいてお辞儀をする。
「すみませんうちの団長が.......内心は紅桜と一緒にクエストできるのが嬉しいんですよ。たぶん......」
「うんうん分かってるよ、ジェネシスに頼らないのも嫌いってわけじゃないと思うし.....たぶん流星祭でほとんど活躍取られちゃったからね....今回のクエストこそ自分の力で倒したいんだと思う。僕だってそうだもん!ジェネシスだけ目立ってずるいもんね!僕達もすごいって事を証明しなくちゃ!」
「マサムネさん.......」
「そういえば君達ってなんでヴァルキルくんのギルドに入ったの?君達はヴァルキルくんや僕より年上のはずだよね?」
「俺達は突然この世界に来てどうすればいいのか分からず街を彷徨っていた。そんななか俺達に行く道を作ってくれたのがあの人だ。年下だろうと関係ねぇ!俺達はあの人についていくと決めた!それにあの人の鍛え方は並じゃねぇしな!」
「なるほどね、僕も自分の仲間達にそう慕われたいもんだよ」
マサムネが自分のギルドの仲間の方を振り返る。
「何言ってんですかお頭!あんたも同じさ!」
「え?」
「あんたも彷徨ってた私達をここまで導いてくれた立派な人だって事だよ!恥ずかしいから言わせんなよ!」
紅桜の仲間達は笑いながら騒ぎながらそう答えた。
「みんな....ありがとう....よし!僕達も頑張ろう!!僕達でクエストを攻略するんだー!!」
「「「「「「オォォオォォオオオォォオォォオオーー!!!!!」」」」」
誰もいないルーラで冒険者達の声が響き渡った瞬間である。
一方その頃ヴァルキルは1人ルーラを歩き散歩をしていた。
(ハディエスがどのくらいの大きさなのかも分からない。前回の流星祭のギャラクシーファブニスのように小さければいいが.......しかしこの国は入り組んでいるな。避難する時は大変だろうな)
そんな事を考えながら歩いていると人影を見つけた。
(誰だ?わ.....いや僕達以外にも誰かいるのか?3人だな.....しかも声からして女性だ会話をしているようだな)
彼女達の様子を民間の壁からひょこっと顔を出し見つめる。すると見たことある人物達がいた。
「リーシャ、ここの調査は終わりました。次へ向かいましょう」
「なぁサファイアぁぁなんでアタシはこんな廃墟の国の調査をしないといけないんだぁ?アタシはもっと数千年前の遺跡を調べたいのにぃぃぃ」
茶色い長髪の眼鏡を掛けた女性が水色の髪の毛でおでこから青い宝石のツノが生えた女性の肩を勢いよく揺する。
「貴方が考古学の協会に依頼された仕事なんですよね?その仕事の手伝いを貴方が私に依頼した、ただそれだけですよ.......あと揺するのをやめてください.....脳が揺れます...」
「依頼とか言わないでくれよぉぉアタシ達良き友人だろ?一緒に古代の秘密を解き明かそうと約束したじゃないかー?」
泣きながら茶髪の女性はサファイアにそう言うがサファイアはそれをめんどくさそうな顔でこう答えた。
「そんな約束した覚えありませんけど....気のせいじゃないですか?あと揺するのをやめないと.......って」
グサッ
「「あ。」」
リーシャという女性がサファイアの身体を揺するせいでサファイアの頭が揺れおでこに生えている青い宝石のツノがリーシャのおでこに刺さってしまった。その瞬間にリーシャはうずくまり石畳をゴロゴロのたうち周り始める。
「ぎゃぁぁぁあ!!サファイアがひどいぃぃぃぃい!!痛いぃぃぃぃいぃ!!」
「はぁー仕方ないですね回復魔法をかけるのでそこでじっとしていてください。」
その様子を近くでめんどくさそうな顔でクッキーを食べながら見ているピンク色の長髪の女性が口を開いてた。
「ねぇ~いつになったら終わるの?私早くサファイアちゃんとデートに行きたいんだけど?」
「イバラ、勝手な事を言わないでください」
回復魔法をかけてもらって傷を治したリーシャが立ち上がって指を差しこう言った。
「だいたいアンタは誰なんだ!会った瞬間にサファイアに抱きつきやがって!アンタとサファイアはどんな関係なんだ!」
イバラはサファイアに近づくとぎゅーっと抱きしめた。彼女の膨よかな胸がサファイアに当たる。
「私の名前はイバラ!サファイアちゃんとは友達以上恋人以上の関係よ!!」
「何言ってるんですか?」
「なるほど理解した!」
「しないでください!」
「そう.....あれはサファイアちゃんが小学生の頃....50メートル走で1位でゴールできるはずだったのにゴール終盤にこけてしまって結果最下位になってしまい帰り道ずっと「泣いてないもん.....悔しくないもん....」って言いながら泣き始めちゃった時のこと.......」
ぽわぽわぽわぁ~
「妄想の記憶の回想シーンなんていりません!」
イバラは抱きついたままクッキーを取り出すとサファイアの口に近づけた。彼女の鼻にチョコチップとクッキー生地の甘い匂いが漂ってくる。
「まぁ落ちついてよサファイアちゃん、は~いサファイアちゃんが大好きなチョコチップのクッキーですわよ~はいあ~ん♪」
「.......あ~ん」
ぱく!もぐもぐ
「おいしい?」
サファイアは美味しそうに食べながらうなずいた。ヴァルキルはその様子を見てこう思った。
(なんなんだコイツら.......なんでここにいるんだ?)
「よし!次の場所へ向かうぞ!早く終わらせてこの国の外れにある遺跡を調査しに行こう!」
「近くに遺跡があるの?これは考古学者の血がたぎりますわね!」
「あなた考古学者じゃないですよね?」
おまけ
リーシャが遺跡と呼ぶものは数千年前の人間の文明の建物跡つまりビルや駅などをさしています。しかしそういう数千年前の建物跡の付近にはモンスターが住み着いている可能性が高く多くの考古学者は冒険者と同伴で行くことが多い
サファイアちゃんが好きなクッキーはイバラちゃんのお手製でチョコチップが入ったバニラ生地のものとチョコチップが入ったチョコ生地の2種類がありどちらもお店を出せるくらいの美味しさだががイバラちゃんはサファイアちゃん以外にお菓子をあげたりする事は滅多にない。レシピも秘密にしているらしい。
ちなみにイバラちゃんは考古調査士の資格を800年前にとっている。今も使えるのかどうか本人も分からない。




