第71話 百獣を率いて
「こっこれがあれば......本当に俺は人生やり直せるのか?」
「あぁそうだよ、それを飲めば君を見下してたやつをみんな見返せるよ」
ボロボロの服を着た中年男性にモーゼは黒い液体が入った小瓶を渡す。中年男性はモーゼに礼を言うとそそくさと門の中に入っていき街に戻ってしまった。中年男性を見ながらモーゼはニヤニヤしている。その様子を少し離れたところからジンブは覗いた。
「覗きなんて趣味が悪いよジンブ」
「あの人間に今何を渡した?」
「ラグル族の血だよ?」
「何の為にだ?前やったようにエルフ族に渡すならまだしもあの男は何の才能も持たない人間だ。ラグル族の血を飲んだところで血に耐えきれず暴走して化け物になって終わりだ。」
「そうだよ、何の役にも立たない人間のクズだよ。だから僕の実験材料しちゃおっかなーって。ほらゴミの再利用だよ、再・利・用」
モーゼはそう言うとどこかへと消えてしまった。モーゼが消えた直後にジンブは近くにあった木に拳をぶつける。木は音を立てて倒れてしまった。
「なぜ....なぜ俺があのような者の下につかなければいけないのだァ!!俺は強き者と共に同じ道を進むと誓ったはずなのに!なぜノア様はあのような者を放置している!!俺には理解できないッ!!あぁ.......帰ってきてください......アライブ様ァァァアァ!!」
ジンブの叫びは森中をこだました。
その頃 オリオンの街 ギルドジェネシスにて
「ついに.....完成しました......」
目元にクマを作ったサファイアがフラフラと一階にやってきた。おでこから生えた青い宝石のツノが色を失っている事から相当疲れている事が感じ取れる。
「大丈夫ですかサファイア?」
朝食を作っているメガネくんが心配そうにサファイアを見つめる。
「はは.....大丈夫ですよロード.....私は至って健康です......」
「あぁサファイア...今君が話しかけているのはメガネくんじゃなくてこの間の感謝祭の福引きで当たった4等のマネキンだよ?」
リオがそうツッコんだ瞬間にサファイアはパタリと倒れてしまった。するとすぐにサナが現れてサファイアをお姫様だっこするとソファーに横になった状態にしてあげた。そのあとリオが気絶するように眠ってしまったサファイアに毛布をかける。
「で、そんなサファイアが何徹もして作ったのがこの銃と.....え?これなに?」
リオが銃の横に置いてあった何かを持ち上げる。四角いゲームのカセットのようなものだ。リオはテーブルに置いてあった折り畳まれた紙を開いて読み始める。
「えーーっとなになにこれはガジェットキーというものでそれにはいろんなもののデータが入っていますわ♪使う人によって変わるのでいろんな種類がありますわ。今回用意したものはサナちゃん専用だからサナちゃんが触ると起動しますわ」
「なんでお嬢様言葉.........」
リオはサナに手に持っていたガジェットキーを手渡した。すると銀色だったガジェットキーが緑色に変色しゲームのパッケージのようなもの絵が浮き上がってきた。
世界獣王新記!!
「「「おー!!なんかかっこいい!!」」」
「なんかたくさん動物描いてある!」
「よし今日からこの銃とこのガジェットキー?は私の新しいアイテムだね!」
「「いいな~」」
ドンドン!
誰かが突然ドアを叩く。玄関の方だ、3人が玄関に向かって廊下を走りドアを開ける。そこにはソードオブベルサイユの団員のウィルターという黒髪の少年がいた。
「あれどうしたのウィルターくん?」
「あ!リオさん達僕についてきてください!今街が大変な事になってるんですよ!」
「え?」
外を見渡すとそこら中にシャドウが出現し人を襲っている。それを食い止めようと冒険者の人達が戦っていた。
「なっ何この状況!?」
「じっ実は!!」
1時間前 オリオンの街 宝石店にて
「きゃーーー!!」
「動くな!.......こっこいつがどうなってもいいのか!おっ俺にはこっこれがあるんだぞ!いっいいのか!早く金もっもってこいぃぃ!!」
「金が欲しいなら銀行とか襲えよ!てかなんだその黒い液体が入った小瓶は!あれか?ご飯かけたら美味しいご飯のお供のやつか?」
「副団長.....何言ってるんですか.......」
ソードオブベルサイユの副団長が女性店員を人質にとった中年男性を煽る。すると男は瓶をポン♪と開けゴクゴクと飲みました。次の瞬間男は目と口から血を流し始める。
「なっなんだよぉコデェ!?!?いっいでぇぇぇえぇ!!」
中年の男が困惑している隙に副団長は人質になっていた女性を救出した。中年の男の身体の血管がどんどん浮き上がって血がピューピューと噴出した。
「なんなんだアイツ.....ご飯のお供をご飯に乗せずに全部食べやがったぞ!」
「副団長!たぶんご飯のお供じゃないと思......ひ!!」
中年の男の身体は膨張し始め男が身に纏っていたボロボロの服も引き裂かれそこら中に散らばってしまい男はもう人間ではなくなっていた。
「きっ気持ち悪りぃ!もう人間じゃねぇアイツは化け物だ!団長が旅に出かけた途端これかよ!今オリオンの街で頼れるのは........おいウィルター!お前はジェネシス行ってリオ達呼んでこい!ここは俺達が食い止める!!」
「わっ分かりました副団長!!」
そして時は戻り........
「という事で急いできてください!こっちです!」
「ソードオブベルサイユって副団長いたんだね」
「あ、団長が団員の半分引き連れて旅に行っちゃった残った団員でくじ引きで決まったんですよ。それより早く!」
「よぉーーし新しいサバイバーのお披露目だよ!」
ウィルターについていく3人(サファイアはおうちで睡眠中)そして彼らは化け物のいる宝石店付近へ。そこには宝石店に寄生するかのように内臓のような脂肪のような塊が無数の口から黒い液体を垂れ流しながら蠢いていた。
「「「気持ちわる!!」」」
「だろ?気持ち悪いだろ脂肪の塊みたいで!脂肪は我々の敵!筋肉こそが我々のベストフレンドフォーエバー!!」
「あ、この人が副団長に選ばれたガルドさんです。」
緑髪の高身長男性が二刀流の剣を持ってシャドウを倒すとこちらに近づいてきた。
「ガルドだ!よろしく頼む!好きな食べ物はサラダチキン!好きな飲み物はココアのプロテイン!」
「よっよろしくお願いします!よし俺達も戦おう!!チェンジ!」
太陽展開!!プロミネンスドラゴォォォン!!!
「僕もいきます!チェンジ!」
「わっ私も!ってあれ?これどうすれば変身できるの?変身の仕方分からない!」
「まずい!肉の侵食が広がって......危ない!!」
肉の塊が逃げ遅れた子供の足を掴み自分の体内へと吸収しようとしていく。
「まっママ!!」
「ノノ!!」
女の子の身体はどんどん飲み込まれていく。
(お前はそれを使えない......ほら怒れ....ボルテックサバイバーに変身して私を解放しろ!周りにいる冒険者達は大量に溢れたシャドウ達を対処するのに精一杯だ!変身するしか道はな......ってお前何してる!)
その時既に彼女の身体は肉の塊に向かって走り出していた。
「さっサナさん!?」
(変身せずに突っ込む気か!?!?)
肉の塊につくとサナは女の子を手を掴み精一杯引っ張ろうとする。
「うおおぉぉぉぉぉ!!待ってて私が助けるから!!少しの我慢だよ!」
(無理だ!人間の力じゃ引っ張りあげられるかよ!)
「怒ってる時間があるんだったら私はこの子を助ける!!私が強くなりたいのはぁぁ!この街のみんなを守りたいからぁぁぁ!!絶対に諦めない!!」
(なっ何!?そんなバカな!人間の力じゃ助けられないはず......まっまさか「ソレ」か?そのコートのポケットに入っているものがお前を強くしているのか!?)
生身のサナが女の子を助けようと必死に手を掴んで引っ張っている。肉の塊から触手のようなものが伸びサナを振り払おうと彼女の顔をムチのように叩き続けた。彼女の口から血がポタポタと垂れていく。その様子を路地裏から1人見つめるピンクの長髪の女性が1人いた。
「そのガジェットキーは貴方の為のデータがたくさん入っている。貴方の為のガジェットキーよ。それを所持しているだけでも人間よりも遥かに強いパワーを引き出せる。」
「うぉおぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉ!!」
そして彼女は肉の塊から少女を助け出す事に成功した。彼女は少女をぎゅーーっと抱きしめすぐに少女の母親の元へと運んだ。
「よく頑張ったね.........偉いよ!あとはお姉ちゃんに任せて..........」
少女と母親は共に泣いていた。母親が感謝の言葉を述べながら何度もお辞儀している。サナはコートのポケットからガジェットキーを取り出しボタンを押す。
空!陸!海!百獣を率いて世界を制した一体の獅子王が今動き出す!!
「そう.....分かった.....そう使うんだね!」
彼女はそう言うと銃にガジェットキーをセットする。すると同時に彼女に後ろに大きな緑色の魔法陣が現れそこから大量の動物が現れ肉の塊やシャドウ達を攻撃し始めた。
「モンスター?いやこれは.....俺達の世界に動物達!?久しぶりに見たぜ」
大量の動物達が現れた後に一体の傷だらけの巨大な獅子がゆっくりとサナの背後に現れた。サナは銃の銃口を肉の塊へと向け引き金を引く。
「チェンジ!」
バァン!!
ガォォォオォォ!!
弾丸は肉の塊ぶつかると跳ね返りサナの方向へと軌道を変えた。弾丸は変形し緑色の魔法陣を発生させる。魔法陣をくぐった彼女の姿はロボットの姿になり背後にいた獅子が彼女に雄叫びをあげながら飛びかかる。獅子は鎧に変形し彼女の身体に装着されていった。
プシューーーーー!!!!
ブラストアップ!
Sky! land! Sea! All animals gather at the survivor! ワールドサバイバー!!
「私には守りたいものがある.......例えこの命に変えてでもッ!!」
その様子をイバラは楽しそうに見つめる。
「ついにサナちゃん.....いえサバイバーの最終形態「ワールドサバイバー」のお披露目ですわ♪」




