第一章 産み落とされたのは悪役令嬢 〜04〜
皆さまごきげんよう。
もう毎回この挨拶をすることを目標にしようかな…。
え?今私が何をしているかって?
「お嬢様にはフリルがたっぷりついた可愛いワンピースが一番似合います!!」
「もちろんそれも似合いますが可愛らしいシフォンスカートの方がほわほわしたお嬢様の雰囲気にあっています!!」
「やっぱりこう言うお上品な黒いワンピースの方が、お嬢様の可愛さを一番引き立たせられます!」
「ああ?」
「喧嘩売ってんのか?」
「お嬢様は私が選んだお洋服を着るのよ。」
あぁー…私のために争わないで〜…
はい。昨日の今日でいきなりやってくることになった私のお友達候補ちゃんに、私がちゃんと可愛く見えるようメイドさん達が作戦会議という名の下で私を着せ替え人形にして死闘を繰り広げております。
は?四歳児泣いてやるぞ?
殺気立つメイドさん達からそっと離れて私専用のクローゼット(学校の教室ぐらい広い)を練り歩く。
いやねー私にも好みぐらいありましてよ。
お父様が狂ったように私の洋服を買ってるから全部着るまでには2年ぐらいかかる気がする。すぐ成長して着れなくなるから意味ないですね。
お、これかわいいな。
目に留まった、大きな花柄のふんわりとした可愛いワンピースを手に取ってメイドさん達の方へ駆けていく。
「ねえねえ!」
「どうされたんですかお嬢様?」
「やっぱりフリフリのワンピースを着てくださるんですよね?」
「可愛いシフォンのスカートですわよね?」
「このおはなのワンピースがいい!」
上目遣いでそう言えば、最高ですわ!!と3人が鼻を押さえながら叫んだ。
あーやめてやめて、鼻血はつけないでね。
応接間でお父様の隣にちょこんと座る。
わ、ソファーふっかふか。
「華流羅ちゃん今日もとても可愛いね。お洋服もとても似合ってて可愛いよ。」
「ありがとうございます!自分でえらんだんです!」
「そうかいそうかい。」
顔をでろでろに溶かしながら私をなでなでしてくるお父様。
やめて、せっかくセットしてもらった髪の毛が!
ワンピースを着た後メイドさんが毛先をゆる〜く巻いて、かわいい花の飾りがついたカチューシャをつけてくれた。
「旦那様、天道様がいらっしゃいました。」
「ああ、お通ししなさい。」
「かしこまりました。」
部屋に入ってきた執事さんは一度去っていき、再びドアが開くとこれまたイケメンさんと私と同じぐらいの男の子が部屋に入ってきた。
「天道様、お久しぶりです。今日は大御神家にようこそお越しくださいました。」
「大御神様、こちらこそご招待ありがとうございます……というか、この敬語やめていいか?」
「ははは、ごめんごめん。いや、来てくれてありがとう、誠。」
「本当に久しぶりだな、綺羅。何年振りだ?」
談笑する二人のイケメン。くっ…目が霞んできた…。
どうやらお父様と私のお友達候補のお父様はお友達らしい。男の子をチラッと見てみるとこれまたびっくり。
超美少年やないですか。じーっと私のことを見ているが何なんだろう。
でもまあ大きくなったらきっと彼のお父様を余裕で超えるイケメンになりそうだ。
目の保養万歳。
「ああ、そうだ本題を忘れていたな。この子が僕の息子の祐麻だ。ほら、祐麻。挨拶しなさい。」
「てんどうゆうまです。4さいです。よろしくおねがいします。」
舌ったらずに言った祐麻くんがペコっと頭を下げる。
ひょええええなんて可愛いんだ〜〜〜。
あ、私も挨拶しなきゃ。
「はじめまして、おおみかみかるらです。わたしも4さいです。こちらこそよろしくお願いします。」
「華流羅ちゃんはしっかりしているね。僕の息子の相手をしてやってくれるかい?」
「もちろんです!ゆうまくんとあそぶのたのしみにしてました!」
「そうか、ありがとう。」
はうっ、イケメンの微笑みがっ!
誠さんの美しい微笑みが私の鳩尾を直撃する。
くそっ、前世女子校だから耐性ないんだって!それに今世も周りにお父様ぐらいしか異性の大人いないし!
何か不満そうな顔をしているお父様に違和感を覚えながらも、ソファーから降りてソワソワしている祐麻くんに近寄って話しかける。
「わたしのおへやであそびませんか?」
「う、うん!」
「嘘でしょ華流羅ちゃん?!いきなり男を部屋に上げちゃうの?!だめだよ!!」
誠さんに押さえ込まれるお父様を無視して応接間からとっとと退散した。あんたが祐麻くん呼んだんだろ。