第一章 産み落とされたのは悪役令嬢 〜01〜
駆け出しの新人ですが温かい目で見守ってくれると嬉しいです!!
皆さまごきげんよう。突然ですが私は自分の名前がわかりません。そんなの知らねーよ、って?はっはー、そんな冷たいこと言わずに〜。
ま、それはいいとして。わたしは自分の名前を一ミリも覚えていないのだが記憶はしっかりある。
私は超名門中高一貫校女子校に通う高校二年生、そうです華も恥じらう乙女です。自分で超名門ってなんやねんと言う話ですが、どうか許してください。事実です。
顔はまあ大体偏差値61とか2ぐらいのそれなりには整った顔。頭はかなり良くて学校の偏差値は70後半とか。まあ世間で言えば天才枠になるような子供であった。
だがしかし1を聞けば100まで分かる本当の天才なんて世の中に数人しかいなくて、私はただの努力型秀才だ。あ、学校の中ではまあ平均をうろつくぐらいよ?
部活も引退して高校三年生も目の前、さあついに受験勉強…!!という状況であるが、はっきり言わせてもらう。
大学受験とかめんっっっっっどっっ?!?!
受験なんてもう真っ平御免である。
死ぬ気で中学受験して、受かって、まあ楽しい学校生活は送れたものの、受験なんてもういやだ。なんであんな先生やら同級生やら問題集やら赤本やらカレンダーに追い立てられる人生を送らなきゃいけないんだ!!
と、まあそれが最近の私の悩みであったのだが、駅のホームで受験への恨みをつらつらと友達に愚痴っていたところ、何もない所でグキッと足首を捻ってしまい、そのまま線路へ落下。
ちょうどホームに入ってきた電車にスカッと跳ねられて昇天してしまった。天に登ったのかどうかは別として。
いやなにもないところで足捻るって。恥ずかしすぎた。
さらに転ぶとか。まじで恥ずかしい。
恐怖心どころか恥ずかしさで心がいっぱいのまま気がついたら電車がごっつんこして来た。
てな訳で一度意識が吹っ飛んでしまったのだが、ふと気がつくと暗闇の中にいた。
え?あの鉄の塊に体当たりされて私生きてんの?やばいチートじゃん。
目を開いてみると何かぼんやりと明るい。
え?なに?なにこの状況?あれ、なんか周りが動いてる…というか縮んでる…?
って、痛い痛い痛い痛い痛いィィィイイイ!!!
頭が押し潰されてるゥゥゥウウ!!!!やばい潰れる潰れる今度こそぺっちゃんこだよおおおおおお!!!
と、頭が何か細いところを通り抜けて冷たい空気が顔に触れた。
視界が突然明るくなり、思わず体がはねる。
え?なに?!何事?!
アワアワしていたら何かが私を抱き上げて高度が急上昇する。
くおっ、やめてくれぇ!気圧で耳が痛くなっちまう!!(ふざけてます)
「オッ、オッ……オギャァァァアアアアア!!(ちょっ!!やめて!……って、ええぇぇぇえええええ?!?!?!)」
「おめでとうございます!元気な女の子ですよ!」
「はあっ、はあ…わたしの、子…」
「ああ、華奈、そうだよ。私たちの、可愛い一人娘だ。」
「綺羅さん…みて、この子貴方と同じ髪の色だわ。」
「きっと瞳は君と同じ色さ。」
「ふふ…生まれてきてくれてありがとう、華流羅ちゃん」
いやまってくれ、話進みすぎだよ。
私はまず自分の声がまるで赤ちゃんの泣き声のような物凄い音として発声されたことに驚いているんだよ。えっ、なんで?!?!
よし、話を進めよう。
目は全く見えない。つーかほぼ開けられん。
この頭脳明晰(笑)な私が推理したところ、おめでとうございます!と言った女性の声は助産師さん。
息も絶え絶えに華流羅ちゃん、と呼んだ女性の声は今産み落とされたであろう赤ん坊の母親の声。
優しさで満ち溢れたイケボはその女性の旦那さん、つまり父親の声。
そして……その赤ん坊の正体こそ、私なのだッ!!!!!
……いや、ええぇぇぇえええええええ?!?!?!