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クロノスゲート 2話

俺の目の前、エレーナの背後で扉が開かれる。ガラリッとスライドされたところ、現れたのは俺と同じブレザーに身を包んだ人間である。


「その怪我はなんだ?」

「いや、これは……」


よく見なくとも、現れたのは二人の男。というより、ここが学校だとするなら男子生徒だろうか。一人がもう一人の肩に担がれるような形で現れる。致命傷まで行かずとも、ちょっとこけただけとは思えない傷を負っていた。服は埃と土で汚れ、膝からは赤い血が滲んでいた。



「まさかまたクロノスゲートを勝手に……」

「いや、だけど、今回もミゲルの奴が……」

「またかあのガキは……」


 美人も台無しになるほど、エレーナは頭皮をガシガシと掻き毟る。いかにも面倒事に苛立ってる様子だ。


「それで、バカをやっているのは何処だ?」

「……っ。さ、3-Bゲートです」


 エレーナの強面に恐れをなしたのか。怯みながら男子生徒が即答する。俺は立ち位置的にエレーナの背後にいたので、一体どんな顔しているのか見れなかった。


(……どんだけ怖い顔なんだろう)


 整った顔立ちなだけに少し興味が出た。が、エレーナは場所を聞くとそそくさと保健室を出て行こうとする。


「私が止めてくる。勝手にベッドでも使え」

「は、はいぃ」


 扉を閉めることもないままに颯爽と走り去ってしまった。残ったのは、俺と見知らぬ男子生二人。一人は負傷中だ。

 気まづい。気まづいのでやることもない俺は、エレーナを追いかけることにした。


「じゃ、そういうことで」

「お、おう」


 名も知らぬ男子生徒に挨拶を交わすと、俺もエレーナに倣って颯爽と駆け出した。


「なんだ、お前もついてきたのか」

「記憶がないのでどうしたらいいのか分からないんですよ。もう少しチュートリアルがほしいというか」

「チュ……? よく分からん。それより私は暴れているらしいバカを止めねばならん」


 エレーナに追いつくと、二人して早足になりながら会話を続ける。エレーナの巨乳がぶるんぶるんと派手にに揺れているのが気になるところだ。


「じゃあ見学してます」

「構わない。私の邪魔をしなければな」

「もちろん」


 ここがどこで、俺はいったい誰で何者なのか分からない。そんな境遇のなかでしゃしゃり出るほど俺は傍若無人ではないはずだ。記憶ないけど。

 邪魔はしない。それを確認すると、エレーナの速度はさらにあがったように感じた。


「ここか」


 エレーナについていった先は、デカい競技場とも呼べる場所であった。厳密には少し違うかもしれないが、白線がしきりに引かれており、スポーツができるような広さだ。バスケのゴールリングが収納されているのが、上からも確認できるあたり間違いないだろう。

 バスケのゴールリングを上から確認できるのも、観客席に出てきたため、競技場全体を上から見渡せるからに他ならない。

 その中央付近で、何人かの人だかりが出きていた。


「お前ら何をやっているっ!」


 エレーナが叫ぶ。そのまま階段を下り、群衆へと向かう。


「エレーナ先生。決まってます。クロノスゲートですよ」


 ひときわ目立つ一人が自信満々に答える。雰囲気にから察するに、何かしら禁止されているはずだが、不良的ポジションの連中がタブーを犯したってところだろう。それより俺が気になるのは……。


「またアンティルールで他人のカードを奪っているのか」 


 エレーナの疑いにもひるまずに、ひときわ目立つ男は悠々と答える。


「そうですよ。クロノスカードの勝者は絶対。敗者に何をしても許される。それがこの学校の絶対のルールのはずですよね?」


 男はワックスで紫色の髪を逆立て、シルバーピアスでつけて派手な印象だ。俺と同じグレーのブレザーに身を包むが、前は開けており、僅かに腰パンをしている。


「ぐっ……」


 とんでもないルールだな。


「だからほら、さっさと機械仕掛けの城下町くれよ」


 エレーナがいるというのに、ピアスの男は近くで膝を落とす小柄な少女に向かって言い放つ。青みをのある白髪。グレーのブレザーをきっちり着込んだ気弱そうな少女は、おどおどとながらも、そのカードを手にしてピアスの男に納めようとしていた。


「ミゲル貴様っ!」

「何を怒っているんですかエレーナ先生。貴方も知っている筈だ」

「随分と生意気を言うようになったな。タツマキボーヤ」


 エレーナが煽るように、侮蔑を込めた呼び名を口にする。だがミゲルは、くっくっと笑みを浮かべながら口を握り拳で抑える。


「いつの話をしてんだ? もはや俺はあんたより強い」

「ならやるか。私と」


 エレーナがカードの束。いやデッキを手に勝負を仕掛ける。何とこの人も時の魔術師クロノシストだったか。


「やですよ」

「な、に……」


 だがミゲルははっきりと断る。


「そんな勝負に何のメリットがあるというんだ?」

「っ……」


 当然の返答だった。ミゲルには何のメリットもないのだ。仕方ないと言える。


「なら俺がやる」

「は……?」


その場にいた全員、ミゲルも、その取り巻きも、エレーナも、小柄な少女を含めて注目が集まる。いやそんなにおかしなことは言ってないだろ。


「誰だお前」

「……まぁ誰でもいいだろ。それよりクロノスゲートで決めるんだよな? その『機械仕掛けの城下町』を賭けて」

「誰がそんなことを言った?」

「怖いのか?」


見知った人間ならいざ知らず、見知らぬ人間の煽りならブチ切れるよな?


「てめぇ!? 潰すぞ」

「やってみな」

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