来客
レクターはかっこいい悪役ではありません、クズです
魔王は胃を痛めていた。魔王軍の兵士は十傑の1人、『大錬成』のセラスによって作られたゴーレム系統が大半を占めている。この世界には魔族の支配する魔族領とそれ以外の二つに別れていて二つとも同じ大陸に存在している。そして数の多い人間の方が圧倒的に領土が広い、そのため人間と全面戦争をしている現在圧倒的に兵が足りないのだ。現在も志願者等を中心に徴兵しているが訓練のための時間がかかる上に費用がバカにならない。そこで彼女の出番だ、ゴーレムなら素材となるものさえあれば比較的簡単に作れる上にセラスにはゴーレム作りの才能があり通常の数十倍の性能で働く、さらに大錬成の二つ名の通り大量にゴーレムを生産できる魔力と技術を有している。彼女のおかげで今の魔王軍があるのだ。
しかし先日レクターがマリアとともに城に現れた、正確にはマリアのテレポート能力を使って魔王の前に直接・・・見たこともない兵士1体を携えて。
「ごきげん麗しゅうございます魔王さん、アンタにプレゼントがあってさ」
そう言うと兵士が前に出てきた
「それがお前の言うプレゼントか?」
それは全身がレクターの腕のような材質でできているように見える
「そう!こいつはあのお粗末なゴーレムに変わる新たな兵士さ!自立稼働で、命令を理解して最適な行動をとり、何より学習機能がある。こいつにはいちいちゴーレムみたいに指示をーーーーー」
魔王にはレクターの言ってることがあまり理解できなかった、彼にしか理解できない専門用語を並べてまくしたてられては大半の人が理解することを放棄するだろう、しかし彼がどれだけ優秀で有用な兵士を作ったかは理解した。
そこへ異を唱える者が現れた。
「待ちなさい!私のゴーレムより優秀ですって!?魔王様、毎日遊んでるような奴がバカ言ってるだけです!」
「アァン?んだとセラス・・・土塊風情が俺の機械兵に敵うわけねーだろうが!ガキなのは見た目だけにしとけクソガキャぁ!」
口喧嘩している様子を魔王は呆れた様子で眺めている。レクターが誰かに喧嘩を売るのはこれが初めてではない、大抵誰かの得意としていることに対抗するようなものを作りプライドを傷つけるような煽りを行う、中にはレクターを好意的に捉えその技術を有用に使う者もいる。
「アンタのその機械?とか言うよくわからないものなんか私が木っ端微塵にしてやるわ!」
口論がヒートアップしついには争いに発展したようだ、セラスが杖を取り出し何かを唱える、地面に魔法陣が現れそこから十数メートルはある中型ゴーレムが現れた。
「アンタのそのなんちゃら兵なんかこの青銅ゴーレムで十分だわ!捻り潰してあげなさい!」
指示を出されたゴーレムは機械兵をなぎ払おうとする。普通ゴーレムの動きは緩慢としていると思われているし実際そうである、しかしさすが才能があると言うべきかセラスのゴーレムは俊敏であった。「確実に潰した」セラスはそう確信した、しかし兵士達のいた場所に残骸は一つもない。確信が動揺に変わる、それが勝負を分けた。機械兵が上から降ってきた、上空に退避していたのだ。そのままゴーレムの体を登り関節部に腕に内蔵された銃による攻撃を開始した、少し遅れてセラスが振り落とすよう指示するがもう手遅れでみるみるうちに両手が落とされ足が壊され見るも無残な青銅の塊と化してしまった。
自信たっぷりだったセラスは力なくその場にへたりこんでしまった、その様子をレクターは心底楽しそうにニヤニヤと見つめる。
「どうだ?魔王サマ、俺の最高傑作は!少しランクが低いとはいえなんの指示も出さずにセラスのゴーレムを倒した」
「なるほど確かに優秀なようだ、だがそいつ一体作るのにかなりの時間がかかるであろう、実践配備は夢のまた夢だな」
「まあまあそう焦らないでくださいよぉ魔王殿、機械兵は今俺の工場で大量製造していてさ、日に300体はできるのよ、こいつはそのうちの1体。ま!セラスはもう用済みだな」
日に300体同じ性能のものができる、それは体調や調子によって性能が左右されるゴーレムより安定した戦力が得られると言うこと、しかし
「なるほどそれは素晴らしい、しかしそれでも戦力が足りない、ので引き続きセラスにも頑張ってもらうとしよう」
そう、戦争において数の暴力というのは非常に大きい。おまけに敵は人間の軍だけではなく冒険者と言ったものまで出てくる上に最近では転生者まで出てきた、数が多いに越したことはないのだ。
「・・・・ケッ、面白くねえ」
レクターはそういうとマリアを連れて帰っていった、一方。
「ううぅ・・・私の・・・私のゴーレムがぁ・・・あんなのなんかにぃ・・・うええぇぇぇぇん・・・」
セラスは泣いていた
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あの後エヴェリーナ等がなんとかセラスを慰めた、セラスはあんなのに負けていられないとやる気を出し今まで以上に頑張っている。正直に言えばレクターのあの動きは闘争心の強いものが多い十傑のメンバーのやる気を焚きつけることが多く結果的にプラスに働いているがその後のケアが大変な上に魔王としては十傑がギスギスしているのは嫌なのでレクターにも自重してほしいと思っている、あの時も魔王としての威厳があったので冷静に努めていたが内心ハラハラしていたのだ。
「はあ・・・」
魔王は大きなため息をついた
十傑紹介 第8席『百面相アリバイ』
本名「不明」 怪盗のような格好をした美しい女性、一度見た人物に変装できるだけでなく魔力の質や癖なども完全にコピーできるので変装を見破るのは至難の技、唯一の欠点は魂までは変えれないので魂などの本質を見られるものには効かないこと、しかしそのような人物はごくわずかな上にそのような道具もないので実質見破るのは不可能。十傑に入っているだけあって戦闘力も高い。
現在転生者と接触し、その情報を随時魔王の元へと送っている。




