無慈悲な暴君
遅れて大変申し訳ございませんでした、5月くらいからやられてたメンタル(瀕死)がさらにやられたりしてました。
生きている限りはこれともう一つの小説の方も書き進めていく所存です。半分趣味ですからね。
ある晴れた日の朝、魔族領の外れの森の機械工場の一室でレクターは自身の目的のために新たなる機械兵を作ろうとしていた。しかし問題が一つ発生していた。ここしばらく工場の外で一部の魔族が工場で生み出される機械兵やレクターが十傑にいることに対して大規模なデモ活動が行われていた。その都度機械兵を使い追い出してはいるものの、しばらくするとまた戻ってきてはデモ活動をするというサイクルが起きている。さらには夜の間に工場に忍び込み備品などを破壊していくという悪質な問題まで発生している。今日も外ではデモ隊の叫び声が響いている。
「暇な奴らはいいねえ。あー、ムカつく。おいリザ!あいつら黙らせてこい」
毎日繰り返されるデモ活動に腹が立ったレクターは壊された備品を治すために忙しそうに働いているリザに命令を出す。
「工場の修理もしないといけないのに無理ですよレクターさま〜!」
「ああ?誰が口答えしろって言ったよ、やれ」
「そんな〜」
そんなやりとりをしているところへマリアがやってくる。
「レクター様、外にいる魔族の仲間と思しき人物たちが屋敷で暴動を起こしました。幸いにも損傷は軽微でしたが」
それを聞いたレクターは怒りに顔を歪ませた。
「は?なにやってくれてんの?テメエの仕事も満足にできないわけ?」
「申し訳ございません」
「誰が謝れって言った?おい、まあいいや、めんどくさいからあいつら殺してやる。おいリザ、あれ持ってこい」
「え・・・あれは人間に使うって・・・」
「いいから持ってこいって言ってんだろ!」
その怒声に押されリザは目に涙を浮かべながら言われたものを取りにいく。持ってきたのは一抱えもある箱だった、レクターは箱をリザから受け取ると蓋を開き中から一つ取り出す。取り出したのは手のひらサイズの小さな機械だった、丸い胴体の横から4本の鉤爪のような足が生えているそれのスイッチをオンにする。
「音声デ命令ヲ入力シテ下サイ」
と機械特有の無機質な音声で命令を促される、それを確認したレクターは命令を下す。
「外で迷惑行為をしている魔族どもを一匹残らず殺せ」
「命令確認、行動ヲ開始シマス」
その音声とともに箱の中で機械たちが一斉に起動した。
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「悪逆非道な兵器の開発を許すなー!!!」
「レクターは今すぐ十傑をやめろー!!!」
「レクターを許すなー!!!」
デモ隊たちは勢いを衰えることなく抗議活動をしている、中には工場に入るため壁に攻撃を行なっているものもいる。デモ隊たちの狙いはレクターを十傑の座から引きずり下ろし機械の製造をやめさせること、そのためにはどんな手を使おうが関係ない。抗議を続けていると工場の壁の一部に穴があきスピーカーが出てくる、デモ隊の魔族たちは見たこともないものが出てきたことでそれを警戒するようにスピーカー周辺から離れ、戦闘態勢をとる。するとスピーカーからレクターの声が聞こえてきた。
『ゴミクズども、よくもやってくれたな。設備の破壊、施設への侵入、まあなんでもいいや。とりあえずてめえら全員死刑だ。死ね』
それだけ告げるとスピーカーは引っ込んでいく。このことに拍子抜けしたデモ隊たちは、仮にも自軍の上層部の者が自国の国民を傷つけないという慢心と、魔族特有の高いプライドを傷つけられた怒りが爆発する。
「それでも十傑か!」
「市民を傷つけるつもりか!」
「ふざけるな!」
「もう我慢の限界だ!さっさとこの壁ブチ壊してあの野郎をリンチしてやる!」
デモ隊が思い思いの怒声をあげていると壁の一部が扉のように上にスライドし、中から小さな4足歩行の機械が群れをなして出てくる。ガションガションと可愛らしい駆動音を立てて向かってくる手のひらサイズのそれを見て警戒していたデモ隊たちは思わず吹き出して笑い出してしまう。
「おいおいこんなので俺たちを始末するつもりだったのかよ」
「舐められたもんだぜ」
「威勢がいいのは口だけか?」
デモ隊のうちの魔族の青年が1人前に出てくる。
「こんなの拳一発だぜ」
手のひらサイズの機械の1体に拳を振り下ろそうとした瞬間、顔面めがけてジャンプし張り付く、そして頭頂部まで移動すると4本の足を食い込ませる。魔族の青年も振り払おうとするがガッチリと固定されていて離すことができない。
「っ!くそっ!はなせ!」
そうこうする間に機械は体の底面から内蔵されているドリルを突き立て頭骨を破壊しようとする。
「痛い!助けて!だれっ誰か!があっ・・」
魔族の体は少なくとも人間の数倍は頑丈で、骨もその例に漏れず頑丈である、従って頭を砕かれる苦痛は人間よりも長く続く。
「嫌だ!誰か助けて!痛い、痛いよぉ・・・ア・・・アァ・・・ガ・・・」
必死の抵抗も虚しく頭蓋は砕かれ、脳が破壊され、意識を失った魔族の青年の体は重力に従い地に伏せる。
破壊された頭に機械は体を潜り込ませる、その際に邪魔な角などを取り除く。そして脳があっていた位置にぴったり収まると体を乗っ取り動かし始める。乗っ取られた青年は立ち上がり、静まり返ったあたりに無機質な声が響く。
「殲滅ヲ開始シマス」
そこからは早かった、青年が乗っ取られるまでほんの1分弱ではあったが皆が釘付けだったため小さな機械に接近を許してしまいおんなじ末路を辿っていった。接近に気づき、機械には買いに成功した一部のものもグロテスクな見た目で襲ってくる元仲間にパニックを起こし冷静な判断ができずに死んでいった。
レクターは一連の様子を心底楽しそうに見ていた。
「ハハハ。傑作だなぁ、まさに俺の最高傑作だ。壊されたのはしょうがねえ・・・いやしょうがなくねえ、なに壊しちゃってくれてんだあいつら、くたばれや」
急に機嫌が悪くなったレクターはイライラしながら新たな機械の開発に戻った
小さな機械兵
悪名高いレクターの兵の一つ
見かけは小さく脅威にはならないようには見えるが
そう見えないことこそ真の脅威である