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おばあちゃん(28)は自由です、ヨ?  作者: 美緒
メルディ国編番外
68/74

閑話 実はこんな事が起こってましたヨ by作者

ポチリと拍手等、ありがとうございます。

今回は……どの神視点にも出来なかった為、作者視点(?)です。

「あ……」


 微かに零れ落ちた音を耳聡く拾い、その場に居た神々は声の主――魔術神に注目する。

 一方。注目を集めてしまった魔術神は、リジーと関わる様になってからというもの地獄耳化している他の神々の妙な執着心(?)に呆れると同時に感心してしまう。長い付き合いだが、ここまで過保護だとは知らなかった。

 取り敢えず。妙な詮索をされたり、根掘り葉掘り聞いてこられたりは面倒なので、魔術神は呟きを落とした理由を説明する。


「リジーにカードを渡すのを忘れていました」

「身分証は冒険者ギルドのを取得する筈では?」

「その他です。討伐カードとか」

『ああ……』


 成長神の疑問に魔術神が答えると同時に、全ての神々が納得する。確かに忘れていた。神という立場に居ようと万能ではないので、抜けている所は抜けている。そんなものである。

 そしてこの瞬間、魔術神の合図と共に時空神が動いた。神界と地上界の時間の流れを変える。完全に止めてしまっても良かったのだが、そこまでしなくていいと魔術神に止められた。そんなに時間は掛からないからと。


 この世界には様々なカードが存在する。討伐や取引、預金等、本当に様々である。

 そのどれもが異世界より召喚された者達が広めた物だが、有用性が高い事から一般的となり、活用されている。

 その中で、誰もが取得しようとするのが身分証代わりのカード。このカードがあるだけで、受けられる恩恵は大きい。

 身分証代わりのカードは国か各種ギルドしか発行する事が出来ない。ギルドもその職種によって様々で、異世界定番の冒険者や商人、各種生産系等がある。


 この中で、冒険者の持つギルドカードだけは別格だ。他のカードはその人がどこに所属しているかというまさに身分しか証明しないのに対し、冒険者のカードはその仕事柄、様々な機能が付随されている。

 その中のひとつが『討伐記録』。魔物等を倒すのが仕事の一環である以上、嘘の報告等されては信用に関わる。その為、ギルドカード自体にその人が何を討伐したのかが記録される。


 他のギルドに所属している者達は、身分しか証明しないカードの他に、自分が必要と思われるカードを神殿にて多額の金銭を払い、発行してもらう。

 なぜ神殿なのかというと、その特殊な技術を継承しているのが、冒険者ギルドと神殿だけだからだ。

 冒険者ギルドは、冒険者となる者にしかカードを発行しない。これはもう定番だが、他のギルドに登録していようと、冒険者登録は可能だ。しかし、一定期間、冒険者の仕事をしないとカードは無効となり、使えなくなる。使えなくなると、それまで討伐した魔物等の情報も消える。

 他のギルドに先に登録した者は、そのギルドの方こそ本職である。定期的に冒険者の仕事まで行うのは実質難しい。だから、最初の出費は痛いが神殿で発行してもらう事を選ぶのだ。


 神も、その技術は持っている。(というか、持っていなければおかしいのだが。)

 リジーの身分証もサクッと作って渡しても良かったのだが、それでは偽造になってしまい、後々、リジーに迷惑が掛かる恐れがあった為、手間だが冒険者登録してもらう事を選んだ。

 本来なら最初に訪れたカジス村で普通に作れた筈なのだが……トラブルを引き寄せたのはリジーなのか、加護なのか、神なのか……。

 全ての物事は予定通りとならず、現状、最低1カ月は掛かる遠方の地・メルディ国の王都でしか発行出来ないときた。

 その時点で他のカードの事を思い出し、フォローの為にも普通に作り、時空神の贈り物の中に紛れ込ませておけば良かったのだが……。


 彼等はその存在を綺麗さっぱり忘れていた。

 他の事等、全く思い出さないくらいリジーしか目に入っていなかった。視野が狭すぎである。


「じゃあ、早く作ってリジーに届けてやらんとな!」


 技工神が妙にウキウキしながら力を振るおうとする――が。


「待て」

「そうです。待って下さい」


 成長神、魔術神が止める。


「ここに来るまでにリジーが倒した存在の情報が入っていないとおかしな事になってしまう」

「そうです。リジーの不利になるのは避けるべきです。……あれ? あの山で遭遇した野犬は倒した事になるのでしょうか……?」

『さあ?』


 魔術神の疑問に全ての神が一斉に首を傾げる。(そこで闘神まで首を傾げるな――というツッコミは誰からも入らない。)


「仕方ありませんから、リジーの敵だった存在が表示される様にしたらどうでしょう~?」

「いやそれだと、魔物等が必ず表示されるとは限らないだろう?」

「魔物の全てが敵って訳じゃないからなぁ~」


 幸運神、時空神、農商工神がう~んと唸る。


「あ、素材はわたしが準備しますからね!」

「地上で、使われているモノで……」

「そうだ。他の特殊素材で作ると、リジーに面倒が掛かり兼ねん」

「分かってますよ、もう! 仕方ないから、希少銀で留めておきますぅ!!」


 資源神の言葉に、獣神と表裏神が速攻でダメ出しし、資源神が拗ねる。(――いや、その『希少銀』に誰かツッコミ入れろ!!)


「面倒だから、リジーが何かしらの攻撃を加えた存在が表示される様にしとけば良いんじゃねーか?」

「それだと、赤竜王も表示されるのではないですか?」

「おもしれーから放って置け!」

「そうそう! 面白いは正義!」

「それは大事です!」

「いけいけ~っ!!」


 闘神の言葉に幸運神が首を傾げるが、ノリと勢いで竜神がゴーサインを出すと、技工神、資源神、農商工神が悪乗りした。


「……表示……分ける?」

「そうですね……個別に、任意で表示を隠せる様にしておきましょう」


 獣神が呟いた言葉に魔術神は同意し、悪乗り三人衆を睨みつつ口を開く。


「……技工神」

「おう! 資源神! 材料!!」

「はいは~い。これを使って下さい!」


 どこからともなく資源神が出してきた『銀』。これは普通に銀鉱山から産出される物と違い、魔力含有量が極めて高く、滅多に取れない『魔銀』と呼ばれる物。魔力と相性が良く、持ち主の魔力を微かにではあるが底上げする特殊な性質がある。

 それに加えこの魔銀は、最低でも数百年間、太陽と月の光を浴び続け、強力な魔力溢れる地に在り続けなければ成されない希少な銀である。

 どうやって太陽と月の光を浴びているのか、強力な魔力とはどの程度かが全く分かっていない為、人工的に作るのは不可能。偶然『山』で見付ける以外、手に入れる術はない。その為、ほんの欠片程度でも、金や宝石等とは比べ物にならないくらい超高額で取引され、中には極薄細身の指輪だというのに、国宝級の代物となっている物すらある。

 そんな物を材料としてポンと出し、カードにする。国宝な指輪等、目じゃない程の使用量。これが犯罪を厭わないアホ共に知られたら、何があるか分からない。その前に、材料とかがリジーにバレたらヤバい。また神は怒られるだろうが……何故、気付かないのやら。


 ツッコミを覚えてきた魔術神だが、まだリジーの思考には不慣れな為、魔銀を見ても反応しない。逆に、魔銀を使用するなら更に複雑な魔法を施し、リジーの助けになろうとか考えている。

 そうこうしているうちに、技工神は地上で一般的に出回っている討伐カードと同じ大きさ、厚さにした物を作り出し、表に『討伐カード』の文字を入れた。


「ほれ! 出来たぞ!」


 ドヤ顔である。


「闘神」

「おう!」


 魔術神に促され、闘神が出来上がったばかりのカードを受け取り、そのカードに討伐表示の条件『リジーが何かしらの攻撃を加えた存在が表示される』を入れ込む。


「魔術神」

「はい」


 闘神からカードを受け取り、魔術神が条件を魔法で定着、リジーの魔力をカードに覚えさせて所有者登録する。

 その後、これまで何かしらの攻撃を加えた対象がきちんと表示されるか確認してから成長神へとカードを渡した。


「これで良いですか?」

「ふむ……」


 成長神はカードの表と裏を見、きちんと個別に表示を隠せる様になっている事を確認すると、そのカードを両手で挟んだ。


「魔力相性が良いからな。何かしらの助けになるように、私の力を少し与えておこう」

「あら。成長神ばかりズルいですわ。わたくしにも貸して下さい」

「次、自分にも」

「俺にも寄越せ!」

「オレも……」

「おい、獣神! 俺様にもだ!」

「はいはーい! こっちにも回してくれ!」

「技工神、わたしにも下さい」

「仲間外れ、はんた~いっ!!」


 成長神に続き、幸運神、時空神、闘神、獣神、竜神、技工神、資源神、農商工神が順番にカードへ力を注ぎ。


「ほい! 表裏神!!」


 農商工神の手から、表裏神へとカードが渡る。


「……」


 表裏神はそのカードをジッと見詰め。


「加護……『それは遣り過ぎ!』


 リジーを守る為だけにカードにすら加護を与えようとし、流石に全神が止めた。


「そもそも、既にそのカードには9神の力が加わっているのです。加護は容量が大き過ぎて、カードが壊れる危険性があります」


 ダメ出しした理由を魔術神が説明すると、渋々、表裏神は頷き、力を分け与えるだけに留めた。

 そのカードを魔術神が受け取り、カードに含まれる魔力残量を確認し、自分の力を少し与えた後、徐に魔法を施す。


「取り敢えず、盗難防止は必要ですね。後は……」

「情報隠蔽」

「普通のカードに見える様に偽装は必要か?」

「そうですね。一応、遣っておきましょう」


 魔術神、成長神、表裏神が真面目に話し合っている横では。


「どうせだから、他のカードも作っておくか?」

「何か必要になりそうですか?」

「あって困る事はないだろう」

「身分証になる物以外、全部作っとけば~?」

「そうしとくか」


 他の神々――獣神を除く――が遣りたい放題、言いたい放題である。


「出来ました。時空神、これを贈り物の中に――って、何を遣っているんですか、貴方達は」

「リジーに不自由はさせたくないからな!」

「必要そうな物、作ってみた!!」


 必要な魔法を施し振り返った魔術神が見たのは、大量のカード類。表面には、其々違う文字が並んでいる。


「……現状、まだ必要ありませんので、それは保留でお願いします」

「ちっ、仕方ねーなー。必要になったら魔法を施してくれよ!」

「そうですね、必要になったら、ね……」


 溜め息を吐く魔術神から討伐カードを受け取り、時空神が贈り物の中にカードを入れる。


「これ、備品扱いで良いか?」

「良いんじゃない?」

「使い捨てって訳じゃないし、それで良いんじゃないか?」

「じゃあ、そうしておく」


 備え付けてある物ではないのだから、携帯品にでもしておけば良いと思うのだが……神的には別に備品で良いらしい。判断がかなりアバウトである感は否めないが。


「よし! 時間を元に戻すぞ!」


 こうして、『リジーに加護を与えた神々がリジーの為だけに作った最高の逸品』が出来上がり、リジーの手元に届き。


「あたしを思っての行動はありがたいけど、何度も言ってるでしょ! 過保護は要らんっ! 自重しろっ!!」


 そう思われ、神達が少しだけ遣り過ぎちゃったかもしれないなぁ~と落ち込むまであとわずか。

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