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おばあちゃん(28)は自由です、ヨ?  作者: 美緒
メルディ国編番外
63/74

リジーさんの怒涛(?)の日々だヨ①

 この話は、『42 過保護はめぐるヨ』でサラッと流した3日間――のうちの1日目? の話です。

 確実に長くなるので分けました。3話くらいで終わるといいなぁ……。

「この様な所で申し訳ありません」


 薄暗い廊下の突き当りにある扉の前でカジスの隊長はそう言うと、ルチタンのサージット隊長――ここに案内してくれている間に自己紹介済み――と共に本当に申し訳なさそうに頭を下げた。

 それもその筈。ルチタンの兵士が準備した宿とは――通用門に隣接している兵舎の空き部屋。宿の手配を言い渡された兵士が遣った事とはつまり、空き部屋を使える様にする為の整理整頓&掃除という訳だ。


「護送依頼の協力者は、兵舎近くの宿か兵舎に泊まって頂く事になっているのですが、リジー殿の場合、盗賊に奪われた物を所有していますので、もしもの時の事を考えますと、どうしても兵舎に泊まって頂く選択肢しかなく……」

「いや、普通に寝泊まりできるならあたしは構わないよ。カジスの隊長に任せる」

「ありがとうございます……」


 そうは言いながらもカジスの隊長が微妙そうな顔をしている。なに? どうかした?


「あの……」

「うん」

「……もしかして私は、リジー殿に名乗っていなかったのでしょうか……」

「そうだね。聞いた覚えない」

「もっ、申し訳ありません!!」


 カジスの隊長が再び勢いよく頭を下げる。


「名乗りもせず、失礼致しました。改めまして、私はカジス村の警備隊長に拝命されていますモンドと言います。よろしくお願いします」

「モンド隊長ね。うん、改めてよろしく」


 なんというか、ちっちゃくなっちゃっている感じのモンド隊長にあたしは笑うしかない。


「気にしなくていいよ。普通なら起こらないような事が起こってモンド隊長もいっぱいいっぱいだったんでしょ。今こうして名乗り、謝ってくれたんだからそれで終わり! チャラだよ」

「ちゃ……?」

「気にしなくていいって事!」


 これも通じないのかー。ヤバいヤバい。迂闊な事は言えないなー。


「リジー殿はこちらの部屋を。ネスフィル殿と赤竜様はこちらの部屋をお使い下さい。室内は普通の宿より少し生活がしやすい様な作りになっています。簡易キッチンがありますので、そこで調理が可能です。特にこだわりがないようでしたら、階下――こちらは2階なので、この下の1階にある兵士用の食堂で、時間制ではありますが食べる事も可能です。後は――」


 モンド隊長が寝泊まりする部屋の中の説明を事細かにしてくれる。いや、そこまで説明しなくても、中を見れば分かる気がするが……善意だろうから、黙って受け取っておこう。


「盗品の買い戻し交渉等はここの1階にあります応接室をお使い下さい。念の為、兵士が常時2人、扉の前に立ちますので、何かありましたらその兵士に言って下さい」

「分かった。ありがとう、サージット隊長」


 サージット隊長が、買い戻し交渉の部屋まで融通してくれた。

 んー……テンプレでいくと、アホな貴族が身分を笠に着て嘘八百並べ立てながら品物を巻き上げる――なんて事をしそうだから、そういうアホを引き渡す時の事を考えると丁度良いのかもね~。ありがたくその部屋を借りさせて頂こう。


「盗賊やあの元副隊長の後始末をしないといけない為、出発まで数日あります。その間は自由に過ごして下さい」


 モンド隊長の言葉に頷くと、サージット隊長が恐る恐る、あたしを見た。


「それから、大変申し訳ないのですが、ひとつお知恵を拝借したいのですが――」

「何?」

「その……元副隊長と盗賊の頭は、こちらで割ける兵士の事を考え、あの元ギルド長の護送と同時に出来ないかと考えています。ですがお恥ずかしながら、あの盗賊の頭が乗れる様な護送車がなく……」

「ああ……あの体型だからね……」

「はい。リジー殿にお願いして、あの作りが見事なリアカーをお借りしようかとも考えたのですが……」

「罪人から外が見える、外から乗っている罪人が見えるのは問題あるねー」

「はい……」


 リアカーが見事って……まあ、あれ神製だから、製作レベルが異様に高いのは仕方ない。

 あのリアカーを貸した所で神製だとバレる事はないだろうけど、護送(・・)なのだ。フルオープンはまずい。

 んー……あのレベルを基準にされると困るけど、あの簡易トイレみたいな物で百貫デブを乗せられる大きさの護送車なら、あたしの魔法で作れるかな?


『余裕で作れます』


 あ、そうなんだ。じゃあ、大丈夫だね。


「あたしが作るよ」

「え!? 作れるのですか!?」

「うん。あの百貫デブの大きさもなんとなく分かるから、2、3日もあれば作れると思うよ」

「「ありがとうございます!!」」

「できたら教えるから、確認してね」

「はい。基本はどちらかが隊長室にいますので、兵舎内等を巡回している兵士に案内してもらって下さい」

「分かった」


 そう返事すると隊長2人は頭を下げ、軽やかにこの場を去っていった。

 ……スキップって……なにをそんなに浮かれているんだモンド隊長、サージット隊長……。

 2人の背中が見えなくなるのを待ってあたしは溜め息を吐き、黙って待っていたネスとルベルを見る。


「ネスやルベルはこの後どうする?」

「予定、ない。リジーに付き合う」

「うむうむ」


 何を遣るにしても、あたしに合わせる様だ。


「うーん……取り敢えず、ちょっと(精神的に)疲れたから、部屋に入ってゆっくりしよう。その間に何を遣るか考える」

「分かった」

「うむうむ」


 大人しく頷いたネスとルベルの頭を撫で、あたしは自分に割り当てられた部屋に入る。

 扉を閉める瞬間見えたネスとルベルは、嬉しそうに笑みを浮かべながら自分達の部屋に入って行く所だった。……何がそんなに嬉しいのやら?


 あの元副隊長の自爆に付き合っていた所為で、時刻的にはそろそろ夕方。できる事なんて限られてくる。

 あたしは正面にある窓から夕日が差し込む室内を見渡し、簡素な作りにホッとした。うんうん。テント部屋が豪華過ぎるから、こういう簡素な部屋は嬉しいかも。


 まず、入って直ぐ右側にあるのが、モンド隊長の言っていた簡易キッチンだろう。1人暮らし用みたいなミニキッチンがある。携帯ガスコンロっぽい物が置かれているが、これの燃料はガスではなく魔石。粗悪な魔石――低ランクの魔物が落とす欠片の様な魔石の事――をはめ込む穴があり、その穴に魔石をセットすれば使える。サージット隊長にここへ来る間にいくつか貰ったから、お湯を沸かそうと思えば直ぐできるけど……トキの中に様々な種類の飲み物が――ホットもアイスも常温も――入っているから、必要性を感じない。

 左側には扉。中を覗くと、トイレとシャワールーム。ユニットバス形式?

 で、このキッチンとの間に間仕切りがあり、奥に1部屋。間仕切りから見える部屋の感じから、間取り的には6帖の1Kって所かな?

 部屋の中に入ってちょっとビックリ。窓は正面に1つだけ。ベッドは備え付けの2段ベッド。クローゼットが2つ、テーブル1つ、椅子2脚。全て木製。

 つまりここは、2人部屋という事だ。


 ……結構体格のいい兵士が2人でこの部屋使うの? ……狭くね?


 ああでも、寝る時と休憩する時だけ使うなら、この程度でも十分なのかな?

 まあいい。ルチタンの兵士の問題だ。なにかあれば彼等自身がなんとかするだろう。……多分。


 それはさておき。

 あたしは2段ベッドの下の段に腰掛け、今後の事を考える。

 百貫デブ用簡易トイレは夜にテントの中へ行って、魔法の鍛錬エリアか錬金エリアで作ればいい。完成した物はトキから出せるから、そのままにしておいて問題なし。

 問題があるとすれば、アレの中がどうなっているか知らないって事と、かなりの大きさになるだろうって事だ。中については後で隊長達に頼み、未使用の本物を見せてもらってそれを参考に作ればいい。

 大きさについては……これはもう仕方ない。普通サイズに作って中を空間魔法で広げるって手もあるけど、普通サイズの入り口では、あの百貫デブが通れない。だったら手間が掛かる事なんてやる必要もない。

 そして、そんな巨大サイズの簡易トイレを、馬に引いてもらうとなると多頭引きとなる。護送の方に馬を融通してもらうのも悪いからなんとかしたいけど……。


 ……ゴーレム馬に頼んでみようか?


 あたしはそう思い、室内にある全ての物を一時的にトキへ収納し、先程のゴーレム馬を取り出す――というより、出てきてもらう。

 不思議そうに首を傾げるゴーレム馬を見詰め、あたしは口を開いた。


「あのね、お願いがあるの」


 ゴーレム馬が再び首を傾げる。


「さっきリアカーを引いてもらっていた時、目の前には普通の馬が引いている細長い箱があり、君が引いていたリアカーにはひとりだけ、横にデカい百貫デブがいたでしょ?」


 ゴーレム馬が頷く。


「あの細長い箱って、犯罪者を入れて運ぶ物でね。あの百貫デブも犯罪者だからあの箱に入れて運ばなきゃいけないんだけど、アレに合う大きさの箱がないから、あたしが作る事になったんだ」


 ゴーレム馬がジッとあたしを見てくる。


「ただ、あのデブさ加減の所為で、大きさが半端なくてね。普通の馬だと難しいかもしれないから、君に引いて欲しいんだけど、いいかな?」


 あたしがそう問いかけた瞬間。

 ゴーレム馬の目がキラキラに輝き、勢い良く縦に首が振られた。


「いいの?」


 ぶんぶんぶん。高速で頷く。


「……」


 まだ頷いている。


「……」


 ぶんぶんぶん。


「……首、疲れない?」


 ぶんぶんぶん。


「……」


 ずっと頷きまくっているんだけど……。


「もしかして、荷物を引っ張るのが気に入った?」


 あ、ゴーレム馬が頷くのを止め、今度は横に首を振った。……馬って横に首を振れるの?


「えーと……」


 ゴーレム馬が下に振動がいかないよう、ゆっくり足を踏み鳴らす。

 あれ?


「じゃあ、荷物を引っ張りながら自由に走り回れるのが気に入った?」


 うわお。今度は踊り出しそうな勢いで頷き、足をバタバタさせてる。

 いや、まあ、うん。リアカー引っ張りながら、喜々として魔物退治していたからもしやとは思ったけど……流石は神製? ゴーレム馬すらも自由だ。

 はあ……楽しそうだし、ゴーレム馬が問題ないなら、良いか。


「あの箱が完成したら試運転してもらうかもしれないからよろしくね」


 ゴーレム馬が再び嬉しそうに頷き、足取り軽くトキの中へ。

 ……賢過ぎじゃないか?

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