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57 次に進みますヨ

ポチリと拍手等、ありがとうございます。

 マルと「それで済ませるな」談義をし、平行線な事に疲れ果てて眠りについた翌日。

 代わり映えのしない色違いの服に袖を通し、ルームサービスがくる前に用事を済ませてしまおうと部屋のドアを開けて、ドアの前に立っていた護衛のゴーレムに声を掛けた。


「ねえ。ちょっと頼みたい事があるから、執事かメイドのゴーレムを1人、呼んできてくれない?」

「了解シマシタ、ゴ主人様」


 片言だけど、ホントにしゃべったよ。しかもご主人様って……。

 頭の中でツッコミを入れているうちに2人立っていたうちの1人が凄まじいスピードで走って消えた。いや、そこまで急がなくていいんですがっ!?


「ゴ主人様、待タセナイ。直グ来ルカラ、中デ待ッテイテ下サイ」

「……ありがとう。来たら直ぐ中に通していいから」

「了解シマシタ」


 ……長文の会話すら可能とは……ゴーレムの成長って、どこまでいくんだろう……。

 そういえば、ゴーレム馬も相当賢かったな……神製だからあれが普通なのかと思っていたけど、もしかして成長していたとか?

 ……マジで、どんな成長をして、どこまで成長するんだろう。


 とか、そんな事を考えて頭が痛くなりかけた時、ドアをノックする音が響き、ゴーレム執事とメイドが1人ずつ入ってきた。

 いや、どちらかで良かったんだけど……まあ、2人でもいいか。

 早速お使いを頼むと、執事もメイドも快く引き受けてはくれた。

 だけど……。


「……テントから出られない?」

「イイエ。出ラレナイ訳デハナイデス」

「てんとノ出入リ口カラ出入リデキルノハ、生命体ダケデス。我々ハ出ラレマセン」

「ゴ主人様ノ御手ヲ煩ワセテ申シ訳アリマセンガ、時空神ノ贈リ物カラ我々ヲ取リ出シテ下サイ」

「コノてんとト贈リ物ノ中ハ繋ガッテイマスノデ取リ出セマス」


 と、いう事らしい。そんな制限があるなんて知らなかったよ。てか、話せるのに生命体扱いじゃないのが謎。感情もあるっぽい――以前、喜んでたし……――のに、生命体の基準は? ゴーレムって、人工生命体だと思ってたけど違うの? 今度じっくりマルにでも聞いてみよう。

 それにしても……流石は神製? あたしの知らない知識をちゃんと持っている様だ。

 感心しつつ、あたしはネス達と共にテントから出て――溜め息を吐いた。


 いやもう何と言うか……念の為(・・・)、借りた宿の部屋にあの(・・)万能結界を張り、安全性(?)確保の為にテントの中で眠ったんだけど……。

 万能結界に引っ掛かってましたよ、1名。あの盗賊の時ほどのインパクトはないが、違う意味でうんざりしてしまう。

 覚えているだろうか。王城にあった青丸の数。そう、5つ。

 1つはアルノーン隊長。残り4つは赤小丸に変化。その内3つ――下衆元国王、愚宰相、捨て騎士。では、残り1つは?

 それが、今、目の前に居る。全身、黒尽くめの衣装を着て、結界に捕まっている。


『看破結果』

 リックン 51歳 メルディ国元国王付き暗殺者

 魔力量・黒・最大129 魔法使いとしては下の下レベル

 加護なし 既婚・1子があった メルディ王家付きの暗殺者の家系に生まれ、幼少期からその手を血に染めてきた

 妻子には暗殺者である事を黙っていたところ、それを弱点と見た元国王ペーテンジィにより妻子がコレクションとして奪われた際、己の手で暗殺。その後も元国王に仕え続けた

 生粋の殺人狂。他人の苦しむ姿や血で興奮する変態

 リジーを殺す様にと元国王の命を受けて侵入したがあっさり捕まった。犯罪者からの暗殺依頼を引き受けた為、魔法の影響で全身に犯罪者の証が浮かび上がっている


 ああ、平民の一番上にあった名前……あれって、あの下衆元国王――面倒くさい。下衆王でいいや――の暗殺者だったんだ。

 途中までは、あの下衆王に妻子がコレクションとして奪われたから仕方なしに従っていたのかと思ったら……こいつもクズでゲスだった。

 しかもあの下衆王の命令って……犯罪者の証が全身に浮かんでいるってのに、妙な部分で元気だな、アレ。しかも、引き受けるこいつも狂ってる――って、ああ。妻子を自分で殺すくらいだ、狂ってて当然か。変態で狂人。末期だ。

 これはもう、犯罪者のしぶとさに呆れればいいのか、感心すればいいのか、分かんないや。


 あたしは再び溜め息を吐きつつ、ブラウにそいつを縛る様に頼み、トキから先程のゴーレム執事とメイドを取り出す。

 メイドの方に、紙束――取り敢えず、この国に属する犯罪者のもの全部――を渡し、モンド隊長へ「最近の物はないから調べて」という伝言を頼む。まあ、最近の物ならまだなんとかなるだろうけど、過去の事件って証拠とかもみ消されてたらほぼ終わりだからなぁ……。その点、この犯罪記録ってもみ消したという事実すら記載されているから、残された痕跡を調べるのにはうってつけ? やっぱり神の力って凄いし、怖い物だね。

 執事の方には、この暗殺者を追加の犯罪者だと言って届けてくれとお願いする。捕まえた理由も伝えといてくれと言ったら、力強く頷き、暗殺者を抱え上げた。……うん。流石はゴーレム。力持ち。俵担ぎして、颯爽と部屋から出ていったよ。




 他国との緊急ギルド長会議は広がりを見せた。

 メルディ国ギルド本部の報告を基に、まず各国のギルド本部&支部のギルド長達で会議を開いて意見を統一し、各国ギルド本部のギルド長――統括マスター――&副ギルド長で各国の意見をまとめ上げ、漸く結論に至った。

 緊急ギルド長会議での報告に1日。各国での意見集約会議に2日。第2回緊急ギルド長会議で結論を出すまでに3日。つまり、あたしの要望に対してどう答えるかだけに1週間も掛かった。滞在、長くて数日の予定だったんだけどな……。


 結論が出るまでの1週間、本当にやる事がなく、仕方なしにテントへ籠り、烙印の魔道具等の魔道具作りに精を出した。お蔭で、メルディ国から依頼された分+αが出来上がり、早々に納品。

 ハイディアからギルドも欲しいとお願いされたので、格安で譲る代わりに要らない書籍を大量に貰った。マルが言うには、この世界の住人達が不要だと思っている書籍の中には遥か昔の知識等も埋もれており、それを解読できれば、今の世の生活水準の向上にも繋がるらしい。

 ……ん? もしや、あたしに解読しろって事なの? ちょっと! そこで無言はやめいっ!!


 ……結局、暇に負けて解読作業を行っている。魔術神の加護の影響か、異世界転移あるある(やっぱり元の世界基準)か知らないが、どんな言語も読めてしまうのがいけないんだー!!



 暇を持て余していた週の丁度真ん中くらい。つまり、ここに滞在して4日目。モンド隊長とアルノーン隊長が秘密裏にあたしを訪ねてきた。

 まだ捕縛しきれていない犯罪者共にあたしの存在を知られると色々と面倒――捕まえる(・・・・)方じゃなくて、後始末(・・・)の方ね――だから、ギルドの地下通路を使って、本当にこっそりやって来た。

 あたしの部屋を訪ねて早々、モンド隊長が開口一番に言ったのは。


「リジー殿! あの資料は、大変、大っ変、ありがたいのですがっ! 量が多過ぎです! できれば小出しでお願いしたかったですっ!!」


 この数日、兵士や騎士に関係なく昼夜を問わずに走り回り、捕縛や証拠集め、取り調べ等を行っているらしい。

 うんうん。兵士も騎士も烙印の魔道具も大活躍だね! ……いや、すまん、謝る。謝るから! だから、ちょっと涙目で睨んでくるのヤメテ、モンド隊長。

 それにしても、どうやって調べたとか、ゴーレム達に対するツッコミとかないのがモンド隊長らしい。あたし的には楽だからいいけどね。


 モンド隊長とアルノーン隊長がやって来たのは、即位間近の国王……つまり、現王太子と王妃――下衆王の正妃――に頼まれたかららしい。

 預かってきたという書状を読む。そこには、下衆王の所業に気付かなかった事、あたしや神獣の手を煩わせてしまった事を謝罪し、国の膿を出すきっかけを作ってくれた事への御礼が記されていた。


 あの下衆王、実は即位してまだ2、3年だった。先代の国王が王太子であった下衆王に王位を絶対譲ろうとはせず、下衆王の息子――今の王太子が適齢期になったら王太子の首をすげ替えるつもりだったらしい。

 多分だが、先代国王は見抜いていたのかもしれない。下衆王やその弟に王となる器がないと。

 先代国王と王妃が下衆王にバレない様、なにもかも秘密裏に行動していたのだが、ある日、先代国王がいきなり倒れ、亡くなった。直前まで元気に政務を行っていたのに、本当に突然の事だった。


 その不自然な死に、当時の王太子――下衆王が毒殺したのではないか等、様々な憶測が飛んだが証拠は何もなく、結局、下衆王が即位し、その弟が公爵位についた。

 ……今回の犯罪の記録から分かったのだが、あの下衆王と弟の公爵――下衆公は、実の父である先代国王を本当に毒殺していた。毒を準備し盛った実行犯は、あの暗殺者リックン。

 実の父殺しの理由は単純。早く王位につきたかったから。そして、先代国王が存命していると、自分達のやりたい事が自由にできない――あの胸糞悪い行いをもっと手広くやりたかった。だから、実の父なのに、邪魔だった。

 下衆公の方も、理由は下衆王と似た様な物。先代国王がいては贅沢出来ない――先代国王は倹約家――為、目障りだった様だ。弟が兄に暗殺を持ちかけ、兄がそれに応えて暗殺が実行された。


 即位した下衆王はまさにやりたい放題だった。その悪政の尻拭いの為、王妃と王太子は四方八方手を尽くし、ギリギリのラインではあるがなんとか国を維持し続けた。

 その為、あの下衆王と、下衆王が大抜擢した愚宰相、捨て騎士と共に悪事に手を染めていた事に気付けなかったと、悔やんでいた。

 大抜擢――。あの愚宰相と捨て騎士。実は宰相や近衛騎士隊長になれる様な実績も、実力もなかった。

 下衆王が即位する前は、昇進等望めない三流役人と見習い兵だった。だが、アレ等は、下衆王の取り巻き――つまり唯一の太鼓持ちだった為、即位と共に一気に昇進。結果、下の者が尻拭いの為に忙殺される事となる。

 忙しい事を言い訳にしたくはないが、それも、犯罪に気付けなかった一因の様だ。


「……救助等で踏み込んだ屋敷の中は、悲惨でした。被害者の中には、既に亡くなっていた方、正気を失っていた方も多く、正気を保っている方も、我々にすら怯え……」

「家族にすら会うのを泣いて嫌がり、中には自殺しようとする人が……」


 それはそうだろう。被害者達の心的外傷は相当なものだ。現時点では、対人恐怖症となっていてもおかしくない為、心理ケア――カウンセリングすらまともに受ける事は出来ないだろう。

 家族にも――会えない、会いたくないのは、これもどうしようもない。家族だから大丈夫。そう思ってはいても、閉じ込められ、虐げられてきたのだ。近付いてくる、抱き締めようと手が伸びる。そんな行動にすら体が勝手に恐怖し、拒絶反応が出る。その事に家族は傷付き――被害者である彼等も、傷付く。分かっているからこそ、会いたいけど会えないし、会いたくない。

 どれくらいの年月、その様な環境に置かれていたのか分からない為、少しずつ少しずつ、安全である事、もう誰も彼等を傷付けない事を理解してもらうしかない。最も、それでトラウマが消える訳ではない為、目を離す事はできないが。


『医癒神の加護が増えました』


 ――は?


『リジーの(正式な)看破結果』

 リジー 28歳 人間? 異世界からの旅人 ルベル・ブラウ・フォスの契約主 ネスフィルの仲間

 魔力量・白・最大計測不能 魔法使いとしては特の上レベル 魔力量はまだまだ成長中

 成長神、幸運神、時空神、魔術神、闘神、獣神、竜神、技工神、資源神、表裏神、農商工神、医癒神の加護 独身 魔術特化の筈が、加護の影響でほぼ何でもできる様になった


『医癒神の加護』

 医療系全般を司る神。

 加護が付与されると、医療分野においての効果がはね上がる。

 医療分野発展の為にリジーの医療知識を欲し、加護を与える。

 過去、医療分野に多大なる貢献をした存在にのみ加護を与えていた。


 ……なんでこのタイミングで加護が増えるの……しかも、加護の理由が医療知識を欲して?

 悪いけど、あたしの持っている医療分野の知識って、元の世界からすると本当に上辺だけって感じだよ? その道のプロからすると足りな過ぎて、もっと勉強しろと言われるレベルだよ?


『リジーが頭の中で考えていた事の一部は、この世界に存在していない言葉となっています』


 え?


『心的外傷。対人恐怖症。心理ケアにカウンセリング、トラウマ。例え表面的な事でも、これ等の事に対する理解が深まれば、多くを救うきっかけになるのではないかと医癒神は考えました』


 この世界には、心の病という概念がないって事?


『はい。だからこそリジー。その知識の一部をモンド隊長やアルノーン隊長に与え、心の救済を促して下さい。医癒神の加護により、その知識は隊長達の心に強く残り、医療従事者に確実に伝わります。そこから漸く、被害者達の心と向き合おうとする精神が始まるのです』


 ……。

 専門家じゃないから本当に足りない知識ではあるけど、少しでも被害者達の救いになるのならば、あたしに否やはない。


 あたしはさっき考えていた事をモンド隊長やアルノーン隊長に伝える。

 話が進むに従い、隊長達も何かしらの心当たりがあるのか、一言も口を挟まず真剣に聞き、最後には力強く頷いてくれた。

 大変だろうけど、被害者の事、頼むよ?


 これで用事は終わりと、隊長達が席を立つ――が。思い出した様に革の袋を取り出し、あたしへと差し出してきた。

 看破魔法を使ってみると、中はお金の様だ。迷惑を掛けたお詫びと出ている。

 あたしは首を振り、持ち帰る様に隊長達へ言う。


「しかし……」


 食い下がろうとするが、あたしはもう一度、首を振る。


「それの使い道は、別にある。一番迷惑を被ったのは、この国の民でしょう? 彼等の為に使うのが何より正しい」

「それはそうですが……」

「そもそも、あたしに迷惑料という名の口止め料払うって、人の気持ち考えずにホイホイ言いふらす様な人間だと思ってるって事でしょう? ふざけんな。失礼だろが!」

「「……」」


 あ、歯に衣着せぬ言い方過ぎた? まあいいや。これが正真正銘、本音だし。

 隊長達も手に持つ革袋を見て眉をひそめている。


「確かに、おっしゃる通りです」

「失礼しました。これは持ち帰り、リジー殿の『被害者のためにこそ使え』というお言葉を伝えておきます」

「そうして」


 隊長達はどうも、裏の意味には気付いてなかったようだね~。真っ直ぐというか、腹芸には向かないというか……。


「それではリジー殿。今回は色々とお世話になりました」

「我々はこれで失礼させて頂きます」

「うん。今後も大変だろうけど、頑張って」

「ありがとうございます。リジー殿も息災で」


 アルノーン隊長が部屋を出て、続いて出て行こうとしたモンド隊長が、ふと何かに気付いた様に足を止め振り返る。どうしたの?


「リジー殿と出会えた事。それがこの国にとっては何よりの幸運だったのだと思います」

「モンド隊長……」

「私自身も、リジー殿と出会えた事で本当に大切な事とは何かを知る事が出来ました。ありがとうございました」


 きっちりと頭を下げるモンド隊長。ギルド長室での時に続き、また礼を言われちゃったよ。


「……あたしも、この国で最初に出会った人がモンド隊長で良かったよ。この国にがっかりせずに済んだ」

「リジー殿……」


 あのクズ国で出会った人間はみんな最低だった。まあ、あたしも褒められた性格ではないけど、あれよりはマシだと思いたい。

 あれ等に利用されてなるものかと出てきてメルディ国に着き、ギルドの騒動に巻き込まれ――というより、あたしが巻き込んだ? まあいい。

 面倒な事にまたなったな~と思っていた時、普通に会話を交わした最初の人。職責をまっとうする為、あたしにお願いしますと頭を下げた人。

 その後も、面倒事を丸投げしているのに、気が付いたら怪しさ大爆発なあたしを信じてくれていた人。あたしのやる事に理解を示してくれるものだから、あたし的に凄く楽だったしね! これはもう、天然記念物並みに貴重だと思う。

 最初に出会ったメルディ国の住人がモンド隊長だったからこそ、鬱陶しい犯罪者に絡まれながらも、この国を見捨てずにここまで来た。最初って本当に大事だとシミジミ実感する。


 あたしの言葉に、モンド隊長は随分と嬉しそうな顔をする。ギルド長室で見た朗らかな笑顔より何倍も嬉しそうだ。

 なんかもう、達観した様な表情ばかり見ていたからこれも新鮮だ~。


「リジー殿と出会わせてくれた神々に感謝致します。では、リジー殿。失礼します!」


 モンド隊長……それって、言い逃げ……。しかも、最後の一言は滅茶苦茶余計だからっ!!

 あああああ……あたしに加護を付与してる神々がドヤ顔してる気がする……。

 ちょっとちょっと! 勘違いしないようにね! あたしがこの国に来たのは召喚してきたクズ国の隣だったから。つまりは偶然! 偶然なんだから!

 マル! きっちり伝えといてっ!!



 こんな、ちょっとした騒動(?)があった2日後。

 グーリアスとハイディアからギルド長会議の結果が伝えられ、何の条件もなくあたしの要望は通り、これ以外の要望も、余程の無理難題でなければ飲むと伝えられた。大盤振る舞いだね……。

 そんな訳で、あたしと神獣達、そしてネスもSランクになった。ネスの場合、既にSランクとなる試験はクリアしており、後は規定回数、依頼をこなせばいい状態だったらしい。今回の護衛依頼でその規定回数をクリアし、あたしと共にランクアップだ。

 ついでに、あたしとネス、神獣達でパーティーを組み、余計な勧誘が発生しない様に自分達より弱い奴はお断りとしておいた。ハイディアがイイ笑顔で「それがいいです!」と言っていたから、面倒事は回避できた模様。


 これで、この国での用事は済んだ。

 あたしの旅の目的は、元の世界に帰る方法がないか、元の姿に戻る方法がないか探す事。

 ハイディアに譲ってもらった書籍を読んだ限りでは、今のところ、それらしい記述はない。もしかしたら他の国には何かあるかもしれないから、色々な場所を回ってみるのがいいだろう。

 他の国に行こうと思うと伝えると、神獣達はあたしに任せると言い、ネスも問題ないと頷いた。チラッと聞いた話だと、ネスは何かを探しているらしい。この国にはなかったから、もういい様だ。

 じゃあどうせだから、ネスの行った事ない国にでも行こうか。


「じゃあ、アーショナル国、だな」


 アーショナル? へえ。メルディ国より内陸にある国で、芸術が盛ん? この世界の芸術って、どんなのかちょっと楽しみかも。

 じゃあそれで決まりって事で、グーリアスやハイディアに出発する事を伝えた。メルディ国にはあたしが魔法無双(笑)をする様な緊急事態はないらしく、お気を付けてと笑顔で送り出された。


「リジー様。もしお願いしたい事が発生しましたら、ギルドを通してお知らせします。その際は、出来れば受けて頂けると嬉しいです」

「まあ、善処するよ」


 とか言うけど、もし本当にそんな事があったら……多分、引き受けるんだろうなぁ、あたし……。

 なんだかんだ言っても、結構ハイディアもグーリアスも気に入っているし、なにより、モンド隊長達の暮らす所だからね。情が移っちゃっている以上、助けたいと思っちゃうじゃない?

 まあ、そんな事、教えないけどね!


 メルディ国の王都に別れを告げ、アーショナル国に向けて旅立ったあたし達の耳に、ある知らせが飛び込んできた。

 王家から、国民に対する告知。新国王の即位と、あの下衆王の犯した罪。これからどうするか。どうなるか。犯罪者に対する処罰。被害者救済の為の新政策。そういった事、全て。あたしの事以外、何も隠さず公にした。


 メルディ国は、蜂の巣をつついた様な大騒ぎとなった。

 国王が国民を害していた。その事に怒りの声を上げ、一時、どこの町や村も剣呑な空気に包まれたらしい。

 だが、その町や村を守る兵士達の真摯な務め。知らせを持ってきた国の役人の誠意ある態度。それらを通していつの間にか、国は落ち着きを取り戻していった。

 新国王は、隠さない事で信頼を得る事に成功した様だ。まあ、厳しい目で見られるのは変わりないから、今後も大変だろうけどね。

 後の事は、良くも悪くもこの国に住む者達の問題だろう。

 どうなるか。遠くから時々、眺めてみよっかな。


 それにしても……なんて濃ゆい約1カ月半だったんだろう。

 この世界に召喚され、召喚国のアホ共を蹴り飛ばして隣の国に移動し、この世界用の名前を決めて冒険者登録しようと思ったら面倒事にぶち当たり。

 そのお蔭か知らないけど、旅の仕方とか魔法の使い方、戦い方を学び。

 冒険者ギルドのアレやコレなんかをなんとかし、漸く、この世界で行動できる下地ができた。


 ……あれ?


 名付けに冒険者登録。旅の仕方。戦い方に魔法の使い方?

 ギルドの事、依頼の事、システムも知った。

 この世界での目標もはっきりした。神々との付き合い方も、そこはかとなく学んだ。

 この世界の生活水準なんかも目の当たりにした。


 ……。


 名前、冒険者、旅、戦い、魔法。

 ギルド、生活……。


 ……ちょっと、これって――





 チュートリアルかよっ!?

という訳で、メルディ国編改め(?)、とっても長いチュートリアル編、終了です。

ここまでお付き合い、ありがとうございました。

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