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49 説明してヨ

ポチリと拍手等、ありがとうございます。

 擬似下水道の行き止まりにある壁へ近付き驚いた。天井付近と扉の左右に各1個ずつ、合計3個の魔法の明かりが扉を照らしている為、はっきり見える。想像以上にデカい。観音開きの扉は大型トラックが平気で通り抜けられるくらいはありそうだ。

 ドアに意匠等は一切なく、やっぱり実用一辺倒っぽい感じだ。ただ材質はかなり頑丈そうで、色も暗い銀色かな? 軽く光を弾いている。


『これは劣化ミスリルの扉です。劣化したものですが通常の金属より強度が高いので、こういう重要な拠点の扉等によく使われています』


 ミスリル――確かファンタジー定番の物で、結構な強度があり貴重な金属だっけ? ミス(灰色の)リル(輝き)という名前の通りの色だね。でも、その劣化版ってどういう事?


『掘り出した後、使う事なく置いておいた為に経年劣化してしまった物や、魔法等により、よくある金属をミスリルと同じ物に進化させようとして失敗した物です』


 経年劣化と、錬金術(多分)の失敗作……ま、まあ、有効利用(リサイクル)している事は評価すべきなんだろう。途中経過に「何をやっているんだっ!」とツッコミを入れたいところだけど……。

 希少金属擬きを眺めていると、モンド隊長が扉に近付き、いくつかあるドアノッカー? のひとつに手を掛け独特なリズムで鳴らした。


 ……あれ? 今度は内側からさっきとは違うリズムで音がする?

 すると。モンド隊長がまたまた違うリズムで扉をノック。

 んー? もしかして、ノックの仕方で相手が誰かを確認している? 暗号とかモールス信号とか、そんな感じ?


 遣り取りを黙って眺めていると、突然、扉の一部が開いた。そう、一部。開いた扉から漏れ出る煌々とした光が、扉にいくつかある溝を浮かび上がらせる。

 漏れる光から推察するに、人1人が通り抜けられそうな溝が一番小さく、最大は扉の大きさ。これは状況に合わせて開くって事かな? 今回は、簡易トイレが通り抜けられそうな小さい方から3番目の溝沿いに扉が開いている。


「お待ちしていました」


 出てきたのは、これぞ王道冒険者! 的なイメージのガチムチ大男。外見は……当たり前だが若い。光が当たっているというのに暗めの茶髪は短く刈られ、意志の強そうな黒? というかこげ茶かな? の瞳が真っ直ぐ隊長達を見ている。

 服装は……RPGとかで見る挿絵の布の服にデザインが似ているが、素材はかなり丈夫そうだ。ザ・村人的な格好なのに、妙な存在感がある。

 マップを見ると、青緑大丸がこの人の様だ。


「ギルドマスター自らの出迎え、恐縮です」


 あー……うん、テンプレだなー……モンド隊長の言葉で分かる様に、このガチムチがメルディ国の冒険者ギルドを統括しているマスターらしい。

 それにしても、一度も会った事がないというのに青緑の大丸を持つってどういう事よ。

 既に友好的な部類に入っている男をちょっとだけ呆れつつ眺めていると、モンド隊長と挨拶を終えた男がこちらを見てきた。


「ネスフィル、ここまでご苦労。協力に感謝する」


 男がネスに声を掛けると、ネスが無言で頷いた。

 ……あれ? いつもより、表情が硬い……?

 ネスの態度を不思議に思うが、男は気にせず軽く頷くだけで返し、次いであたしに向き直ると、軽く頭を下げてきた。


「貴女がリジー殿ですな? 俺はこのメルディ国の冒険者ギルドを預かるグーリアスと言います。この度は数多のご協力、ありがとうございます」


 おやまあ……本当に、普通に友好的(?)だよ……。

 素で驚いていると、グーリアス――マスターの方が? いや、名前呼びでいいや――の顔に苦笑が浮かぶ。


「まあ、詳しい話は中でしましょう。まずは罪人を牢にぶち込んできますので、上の階にある控え室で休んでて下さい」


 そう言って、内部へ促すかの様にグーリアスが体をずらす。

 グーリアスがどいた事で漸く中が見えたけど……地下倉庫というかなんというか、石造りの四角くてデカい部屋がそこにあった。明り取りっぽいスペースも、照明器具の様な物が埋まっている気配もないのにかなり明るい為、隅々が見える。あ、左手奥に頑丈そうな通路と、右手側の壁付近に石造りの上り階段がある。

 みんなで中へ入り、視線を上にずらすと、明かりの正体が分かった。所謂、ライトの魔法というやつだろう。いくつか光が浮かんでおり、部屋一面を照らしていた。うん、眩しい。太陽を見上げた時と眩しさが似ている。


「えーと……」


 内部を確認していたあたしの耳に、グーリアスの困惑した声が届いた。

 声の出所を確認する為に振り返ると、ゴーレム馬を前に立ち尽くしている。何遣ってんの。

 あたしはゴーレム馬に近付き、その頭を撫でた。


「このグーリアスについて行って、その引っ張っているモノの中身を捨てて、あたしの所まで戻ってきて」


 あたしの言葉にゴーレム馬は頷くと、軽い足取りでグーリアスに近寄り、まるで行くぞと言わんばかりにその体を鼻先で押す。

 そんな態度に、グーリアスは益々困惑した様だ。


「この馬は、あたしの所有しているゴーレム馬だから普通とは違うよ」


 あたし所有の神製ゴーレム馬です。普通な訳ないって。

 あたしの説明にグーリアスは納得したのか、うんうんと頷きながらゴーレム馬と共にここを離れる。


「なるほどなるほど。話には聞いていたが、凄い実力者だ。ゴーレムは製作者次第で強さも賢さも変わる。これ程の物を作れるのだ、魔法だけでなく、知識も技術も戦闘力も予想以上だ」


 おいっ! 爆弾発言だけ置いていなくなるなぁーーーーーっ!?


 遠ざかる背中をただ呆然と見送る。

 え? あれ? ゴーレムの性能って、製作者に由来するの!?


 ――というか、後から後から、色々いろいろぶっこんでくるね!? ゴーレムの事とか、先に説明しようよ!

 いや、聞かなかったあたしも悪いのかもしれないけどさ、あたし、成人――というかおばあちゃん――な姿で召喚されちゃった、この世界の初心者よ? アフターフォローは大事でしょ!? ってああこの言葉は違うか。商売なんて、取引なんてしてないから……と、とにかく!


 き・ち・ん・と! 説明しろーーーーーっ!!!


『混乱してますか?』


 誰の所為だーーーーーっ!!?


 あ、グーリアス! そのゴーレム馬で勘違いしないでよ!?

 あたし、それを『所有している』とは言ったけど、『製作した』とは言ってないよ?

 それをあたしの実力と勘違いされては困る! それ、魔術神製だから! この世界最高峰の代物だからね!?


『リジーならできるのでは?』


 要らん! 不要な技術も魔力も評価も要らないっ! あたしは自分が平和ならそれでよし!!


『……既に不可能な状況に居ると思いますが?』


 何が――――って、あああああ~~~~~~っ!?


 そ、そうだった……モンド隊長達には、あたしが何かあった時の為に作り溜めていた物だって説明して納得されているんだった……。

 その話が、王都と連絡を取っている時等にされていたら――まあ確実に報告されているだろうけど――こうなる?

 あたしは、恐る恐るモンド隊長達を見る。


「リジー殿、神獣様方。グーリアス殿が言ってました控え室はこちらになります」


 モンド隊長達は何事もなかったかのように階段の方を指差し、歩き出した。

 あー……うん。彼等にとっては常識だから、グーリアスの言葉に驚く訳がない。


 そういえば……初めてリアカーやゴーレム馬を出した時、モンド隊長達は唖然としてたっけ……。

 マルの作り話をして納得されたから……あの時から、『あたしだからなんでもあり』が標準搭載されたのかな……。


 気付かないうちに、あたし、色々と自業自得になってたよ……。


 深々と溜め息が零れる。


「……リジー?」


 すると。

 直ぐ隣に居たネスが、なぜか不安そうにあたしを見てきた。何? 何なの? 何かあった? 溜め息くらいで普通、不安になんてならないよね?

 なんか、その強張った、不安そうな表情を見上げていたら――自然と手が伸び、ネスの頭を撫でていた。


「大丈夫、大丈夫だよ」


 何が? と、自分自身で思うけど、何となく、何かを言わなくちゃいけない気がして零れた言葉。

 でも、これで一応は正解だったのか、ネスの顔から強張りが消え、少しだけいつものネスになった。少しだけの意味は、やっぱりどこか違和感――というか、初対面の時に見せていた、何かに警戒している様な無表情に近いからかな? ふにゃっと笑うネスばかりを見ていたから、どうしても『違う』気がしてしまう。


 隊長達が向かっている階段へと歩き出しながら、何となくネスを見る。

 やっぱり、どこか厳しい顔をしており、真っ直ぐ前だけを見ていた。いつもなら、あたしが見ると気付くのに、今は気付いた様子がない。


 ……『獣人だから』という以上に、もしかしてネスは、色々なモノを抱えているのだろうか?

 態度だけ見ると、警戒している様には感じない。だが、表情が消えるという事は、やっぱり警戒しているという事なのだろう。長年、冒険者生活をしてくる中で、態度に出さない様になっていっただけなのかもしれない。

 普段は神獣達のキャラの濃さに隠れて大人しいネスだけど、もしかしたら、自分を出すのが苦手で、中に入ってくる方法が分からないのかな?


 んー……もしそうなら、もっとネスを構おう! 妙な不安なんて消し飛ぶくらい、構っちゃおう!

 何より、なんかネスって可愛いし! もふもふだしっ!!(笑)


 決意を込めてネスの背中をパンと軽く叩く。

 ネスは驚いた様にあたしを見下ろした後――ふにゃっと、笑った。

 うんうん。やっぱり、この顔が良いよね!!

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