36 次の敵ですヨ
ポチリと拍手等、ありがとうございます。
お手軽に貰った贈り物――いや、貢ぎ物? ――に頭を抱えている間にルチタンの町にかなり近付いていた。
あ~……なんか、騒がしい? あれ? もしやこっちを指差してる?
大人しく並んでいた筈の人達や検問? している兵士達。みんな揃って上空――あたしの方を指差し騒いでいるけど……。
ああ、そうだった。あたし、ルベル――赤竜に乗ってるんだっけ。この世界での竜の位置付けは分からないけど、カジス村での隊長達の態度や馬達の怯え具合なんか見ると、物語あるあるな生態系ピラミッドの頂点辺りにはいるのだろう。
うん。そりゃ騒ぐか。
でもまあ、何ともしようがないしね~とか思っていたら、馬に乗っていた兵士が一人、門に向かって全力疾走していった。
その背中を見るとはなしに見ていると、騒いでいる兵士の元へ到着した兵士が身振り手振りでなにかを伝え、伝えられた兵士が大慌てで奥に引っ込み――違う兵士が出てきて、そちらも身振り手振りで何某かを兵士に伝え。
其々の兵士が元いた所――つまり、先行した筈の兵士がこちらに戻ってきた。
「隊長! 真っ直ぐ、通用門の方へ回って下さいとの事です!」
「分かった」
どうやら、護送の事とかを伝えに行った様だ。
「それから……」
言葉を濁し、兵士がこちら――ルベルとあたしを見る。
「赤竜様が、先に説明をしておいたリジー殿の召喚獣だと言っても信じて貰えず、『竜の幻覚を見せるなど非常識だ』と騒がれています」
「……リジー殿が上ランクの魔力保持者であると説明してあるのに、か?」
「はい……」
隊長と兵士が揃って溜め息を漏らす。
「まあ……これまでの歴史で、竜を召喚獣に出来た者等いないから、分からないでもないが……」
隊長がボソッと呟いた言葉を拾い、あたしは天を見上げるしかない。
うげげげげぇ~。初! 竜の召喚獣化なんて、神の加護チート面倒過ぎ。要らん所で頑張られたしわ寄せがここにきたか。
隊長やここにいる兵士がルベルの事を『あたしの召喚獣である』とすんなり受け入れたから、お初だとは思ってなかったよ。
な~んか、面倒な事になりそうだね……。
溜め息吐きつつ先に進む隊長達に続き、あたしもどっぷり溜め息を吐いた。
結論! やっぱり! またまた面倒な事になりやがりましたよこんちくしょうっ!!
通用門に回ったあたし達を待っていたのは、このルチタンの町の隊長以下、兵士の上層部。
ルベルから飛び降り――背中をつたうのが面倒になったから、魔力操作で風を操り着地を決めた。結構簡単でビックリすると同時に、あの崖から落ちた時にこうすればよかったと後悔――ネスの誘導に従い隣に並んだ途端、この町の副隊長とかいう奴が怒鳴りだした。
「おい、ババアっ! 不謹慎だと思わんのかっ!!」
その言葉に、ネス、人化したルベル、隊長、同行してきた兵士、ルチタンの隊長が不快を示す。
あたし? あたしは勿論、即・敵認定。マップも最初からこいつだけ赤表示。なんでだろうと思って威圧的な怒りを飛ばしてくる男を観察していて気付いた。こいつ、チラッとリアカーを見た?
『看破結果』
ベリジアズ 49歳 メルディ国ルチタン警備隊の副隊長
魔力量・黒・最大50 魔法使いとしては下の下レベル
加護なし 独身 年齢の割に出世できない事から悪事に手を染めた カジス村とルチタンの町を結ぶ街道に出没する盗賊の頭と協力関係
はい、アウトー! マル判定もアウトー! なにもかもアウトーっ!!
備考欄(?)の説明を見るに、こいつは国や町など、国民を守る立場にあるにもかかわらず人を襲う盗賊と手を組み利を得ていた、と。
うーん……あるあるパターンでいくと、街道を通る旅人の情報を盗賊に流し、分け前を貰っていたって感じかな? ヤバそうな相手の場合は襲うなよとか言って安全パイを取っていたと思われる。
あれ? そうなると、なんでネスを襲った? マップル曰く、無害なもふもふなのはあたしにだけなんでしょ? 本来はAプラスランク――しかも、Sランク間近な接近戦特化の冒険者。普通、襲う?
『獣人等は人間以下の存在。人間の奴隷だと思っているクズです』
うわお。マルがディスったー(棒読み)
いや、うん。でも、マルの気持ちは分かる! めっちゃ分かる! 勝手に優劣付けんなっ!
人間以下なんて誰が言った? 神? そんな訳ないでしょ。獣神や竜神がいる時点で、神がそんな事を言う訳ない。
協力して過保護を発動しているんだから、神はみんな平等って事でしょ。まあ、最高神とかいるけど、ストッパーにはなってないようだから、委員長とか生徒会とか? 会社でいう所の中間管理職。そのレベルの雑用係ってのが正解だと思う。そう考えると、この世界に生きる全ては神と同じく平等。
それを忘れ、得手・不得手で上下を決め、ランク分けしたのが今の世界の姿だろう。
自分とは違う存在。違う見た目。違う生まれ。ただそれだけの事で線引きし、違う事を認められない視野の狭さ。器ちっさい!!
そもそも、あたしから見れば、お前等みーーーーーんなっ! 『異世界人』一択だっ!!!
『大雑把過ぎです』
でも、間違ってないも~ん。
『も~んって……』
ふふ~ん。
って、まあ、それは置いといて。
こいつが街道を通る人の情報を流していた――断定――とすると、犯罪者を護送中の兵士を襲った理由は……クズだとしか思えない。
うん、多分、間違いない。『犯罪者を助けて恩を売り、協力者に引き込む』。これだと思う。
あの犯罪者が使える鑑定魔法は、こいつからすれば使える。相手の情報が分かるって、すっごいアドバンテージ。一人いれば、襲撃の成功率はグンと上がり、実入りが増える。
出発前に隊長が護送の事を伝えたとマルが言っていた。つまり、こいつは護送対象者を知っていた。なんらかの方法で盗賊にその犯罪者の事を伝え、襲わせたのだろう。
こいつにとってネス――獣人は『人間様には逆らえない』的な考えがある為、歯牙にも掛けなかった筈だ。あたしも――身分証明を持たない(見た目)年寄りって事で同じく無視。
それなのに――。
協力者である盗賊を一網打尽にされ、焦っただろう。
自分より下に見ていたネスやあたしがそれをやったのだ。『下等生物がなにしやがる』って感じかな?
で、その怒りとか蔑みなんかが今のこいつのこの態度。うん、クズ。あのクズ共と同等。
ふ、ふふふふふふ……こいつ、どうしてくれようか?
あのクズ共を潰す為の小さな小さなリハーサルでも、しましょうかね?
『協力しますか?』
うん? いや、大丈夫だと思う。
あたしの考えが間違っていないなら、この程度、簡単に潰せる。
ただ問題は……。
『問題、ありますか?』
うん。あたしってば結構短気だからさー。
じわじわじわじわと、真綿で首を絞める様に追い詰めるってできるかな~と。
『……』
うん。ブチッと切れて加護が発動し、老化しちゃったらごめんね?




