03 都合が良過ぎですヨ
2話中2話目。
う~ん……失敗したなぁ……。
あたしはマップに従い、ちょっと薄暗く狭めの廊下を歩いていた。通るべき道が光って見えるマップって、どんな便利機能付きなんだろう。他人に全く会わないし、万能過ぎない?
ただ、問題が無い訳でもない。
あたしが進む廊下の壁とか柱なんかは白基調なんだけど、窓が小さいというか明り取りみたいな小窓っぽいものが天井近くにしかない為、昼間だろうにホント暗い。パッと見、レンガ2,3個分の空間しか空いてないけど機能してるの? もしかして、明り取りじゃなくて空気の通り道とか?
足元もゴツゴツした石だか岩だかを手作業で削り平らにした感じの物が敷き詰められていて、ヒールのある靴で歩くたびにカツンカツンいってちょっとうるさい。仕事帰りだったからなぁ……これが休日だったらスニーカーかスポサン、ゴムサン辺りを履いていた筈。そうすると、このうるささとは無縁でいられたんだけどねぇ……ちょっと残念。
まあ、そういった事は置いといて。
うん、ホント、失敗したなぁとか思う。
あいつらに投げつけた「追い掛けて来たら死ぬから。よろしく~」の言葉。これ、「追い掛けて来たら死ぬから(ハート)よろしく(ハート)」みたいな感じで言った方が良かった気がする。
そうすれば、脅すと同時にバカにしている感がアップしない? ああ、失敗したぁ。
よし。この反省を次に生かそう! って、またあんなのに会いたかないから、生かす場がない方が良いけど。
とか考えている間に目的地へ到着。
何と言うか……宝物庫への入り口って感じ? 多分、両開きの扉で高さは2メートルはある。装飾は質素系ながらも意匠がこらされている。ただ、高さに対して横幅がないのは、仮に侵入されたとしても1人しか通る事が出来なくする為なのかな? 民家のドアくらいの幅しかない。
ドアの素材は金属なのかな? 鉄みたいに赤茶けていないから、鋼? でも、触った感じ――安全である事はマップが断言している――少し温かい。これって、異世界特有の金属とかかな?
マップ情報によると、鍵はかかってないし、トラップもない。……安全管理、大丈夫か?
まあ、気にせず開ける。そう、開けちゃう。
あのじいさん軍団が困ろうと、あたしには関係ないしね。
あ、引っ張って開くタイプのドアだった。全開すると、やっぱり普通の民家のドアくらいの幅しかない。
で、中を覗くと……う、わぁ……きたなっ! 全く整理整頓されておらず、何か色々と無造作に山積みされてるよ!!
多分、目の前にある金色の丸い物体って金貨だよね? 貨幣だよね? お金だよねっ!? なんで鍵のかかっていない部屋に山積みにしてあるの!?
その奥には、由緒正しそうな鎧甲冑や剣、盾、槍等々。立て掛けたりとかはされているけど、無造作に放置!?
あたしから向かって右側には古そうな本が、本が……床に直置きな平積み。ねえ……本棚ないの? 地震がきたら雪崩起こしそうなんだけど?
左側には……何だろ? 何かのアイテムかな? 様々な形や色の瓶とか、樽とかが押し込められている。その上とかには、布製の何かがこれまた山積み……これって……何が入っているか、既に管理する気皆無?
……国として、それで良いのか? 大丈夫なのか!?
ハハハ……要らぬ心配、思わずしちゃったじゃないかっ!!
はあ。
取り敢えず、気を取り直してっと。
さて、何を持っていこう……とか考えた途端、マップが切り替わった。部屋全体が表示され、何がどこにあるかエリアごとに詳細に記されている。
……うん。ホント、あたしに都合が良過ぎるよ。何だろこのマップ。異世界召喚特典か何かなのかな? まあ、便利だから深く考えない事にしよう。
そのマップがまずあたしを誘導したのは左側。ちょっと奥まった所にある布製のアイテムバッグを激しく矢印でプッシュしてくる。何? それがあたしの役に立つの?
……マップが進化したよ!?
あたしの疑問に合わせるように、そのアイテムの詳細が表示された。
『時空神の贈り物』 種類:アイテムバッグ
時空と空間を司る時空神が友と認めた人間の為に作り、贈ったアイテムバッグ。時空神の加護が付与されている為、収納は無限。時間経過無し。アイテム整頓機能付き(任意)。生きているものは入れられないが、何某かの理由で活動停止していればなんでも入る。
リュックサック&ショルダーバッグの2WAYタイプ。
おおおおお! アイテムチートきた! これ便利! 採用! 貰っていこう!!
『時空神の贈り物』を手に入れますか?
→はい
→いいえ
頭の中に浮かんでいたマップが存在を自己主張するかのように、あたしの目の前にタブレット状の物を表示させる。
ナニコレ。ゲームですか??
……マップよ。遊ぶな。