34 砦は……ですヨ
昨日と同じ様に、マップに赤い点が表示されるとルベルに念話で指示し、撃退してもらう。
ただそれだけでは暇なので、わざと弱そうな赤い点――勿論マル情報――を放置して、こっちに近付いてくるにまかせていたら、ゴーレム馬が喜々として走り出し、蹴り飛ばしたり踏み付けたりと良い仕事をしていた。
荷物? 器用にも立ったまま気絶してた。まあ、動けないんだから立ったままなのは当然だけど。
それと対照的なのが隊長達やネス。もう、普通にルベル&ゴーレム馬達の攻撃を受け入れていた。流石。
そんな、ゆっる~い旅というか移動をしていたら、昼の時間を過ぎたあたりで遠くに町が見えてきた。あれが、カジス村から王都に向かう上で一番最初に寄るルチタンの町かな?
『そうです』
なるほど。
うーん……まだ遠いけど、ルベルに乗っているから、時空神の加護由来である異常視力じゃなくてもどんな感じかなんとなく見える。(因みに、基本的な身体能力の上昇は闘神と獣神の加護の恩恵らしい。最も、元々この世界に来たあたしの身体能力は相当高かったらしく、相乗効果で人間離れしてしまったとマルが言っていた。何だそりゃ)
上空から見るルチタンの町はカジス村と同じく周りは結構高い壁に囲まれ、丁度ど真ん中でクロスする様に十字の大きな道がある。その道と壁が交わる所に門があり、その門はカジス村とは違い、しっかり閉まっている様だ。
家々は、カジス村よりはちょっと立派っぽいけど、なんとなく素朴な雰囲気を感じる。まあ、王都から離れている町だから、見た目の綺麗さより実用性重視なのかもしれない。
あ、でも。なんか、結構多くの人が行き交ってる?
マップを見ると、あたしの考えに反応する様にルチタンの町の地図を表示してくれる。町のメインストリートだろう十字の道の上には、予想より多い青の点が表示されていた。他にも、道沿いにある(多分)店の中とかにも少なくない青い点。買い物か取引かってとこかな?
で。そんな中に入る為の門にも、結構な青い点が並んでいる。
そういえば隊長が、他の町に入るには身分証が必要って言ってたっけ。あたしはまだ持ってないけど、あたしの身元とかに関しては全て隊長が責任持って交渉してくれる事になっている。
『リジーと話がついたその日の内に、通過する町等には護送の事、ネスフィルやリジーの事を伝達の魔法で一斉送信し、便宜を図ってくれるようお願いしたようです』
おおお~。仕事が早いね。ちょっとポイント高いよ(何の?)
『各町や王都からは了承の返事が出発前までに全て届きましたので、しっかり便宜は図られる事になります』
……この国自体が仕事早い? それとも、兵が優秀なのか……。
まあ、了承しているって事は、隊長が言ってた町に入る為の税金? とかって掛からないって事だよね?
『入町税の事ですね。はい。掛かりません』
なるほどなるほど。じゃあ、すんなりと入れそうだね。
『そうでもありません』
は?
『身分証明を持っている、持っていないに関係なく、懲罰等を調べる測定器に触れる必要があります』
……それって……もしかして、加護とか見れちゃう?
『そういう系統の測定器ならば、調べられます』
無開示の魔法で見れなくなるとか、ある?
『ありません』
それは――
『無開示の魔法は情報を見る魔法を使うと、対象の情報が見れなくなる魔法です。見るだけではない調べる系統の魔法やアイテムには意味がありません』
――は!? 何、その妙な辻褄合わせは!?
え? て事は、調べる系の魔法とかだと、あたしの看破結果、バレバレっ!?
『看破魔法ほど詳細には分かりませんが、加護はバレる可能性があります』
うげっ!? それ、やばいやばいやばいやばーーーーーいっ!!
あたし、加減しない過保護な神々の加護が10……いや、9か? いやまあそのくらいあるんだけど!? バレたら色々ヤバくない!?
『ヤバいですね』
おいっ! 冷静に言うなっ!!
『結論』
隠匿魔法推奨。
『隠匿魔法』
他人に教えたくない情報を全て隠す魔法。
魔力色・白以上、魔術神の加護を持つ者のみが使用できる秘中の秘の魔法。この魔法の存在を知る者はいない。
現在、この魔法を使える資格を有するのはリジーのみ。
……。
ほんっとーにっ! なんて都合の良過ぎる魔法! これも過保護か!?
でも、いい! これ採用! 早速使う!
取り敢えず、異世界人である事とか加護とか全部隠す!
後は……うん、マル! 隠す情報は任せる! 他人に知られて面倒な事になりそうなモノはぜーーーんぶ隠しちゃって!
『リジーの場合、その情報のほぼ全てが当てはまります』
おい……。
『見た目がそれなのに、実年齢が28歳と知られると面倒です』
う……。
『魔力量の最大値が不明など、その力を利用しようとする者がいくらでも湧いてくる可能性があります』
……。
『しかも、魔法でほぼなんでもできるなど、普通なら有り得ませんので、面倒になる事は間違いありません』
……適当に、嘘の情報で周りを覆っておく事は可能?
『そのような魔法は存在しません』
おーーーい。なんでこう、時々、かゆい所に手が届かないんだよー。
こういう時こそ、過保護を――
『神々の加護が発動しました』
――って、過保護を発揮しなくていい! しなくていいのにっ!!
下手な事を考えちゃいけないって分かってたのに! 過保護な神々は冗談が通じない、なんでも真に受けて行動しちゃうって、知っていたのに――っ!!
ヤバい、ヤバ過ぎるっ!!
うわーーーーあたしのバカーーーーっ!!!
『神々の力により、リジーの偽りの情報が創られました』
『看破結果』
リジー 年齢不詳 人間 出身国不明 ルベルの仮契約主・本契約更新中 ネスフィルの仲間
魔力量・白・10101 魔法使いとしては特の上レベル ただし、魔力量成長の可能性あり
加護不明 独身 魔法において名人レベル
生まれて直ぐに捨てられた為、親を知らない。幼少期は赤竜王に育てられ、成長した今、再会により契約を結ぶ
……はい?
え? 色々とツッコミどころ満載なんだけど!?
何で年齢不詳!?
『神の設定において、リジーは生まれて直ぐに捨てられた事になっています。偶然、赤子のリジーを拾った年齢の概念を持っていない赤竜王――ルベルがリジーを育てた為、リジー自身も年齢を全く気にしていない事になっています』
だから、それがおかしいっての!
ルベルが知らないって言ったら一巻の終わりでしょ!?
『竜神がルベルに加護を通して問い掛け、許可を貰った為、成長神や魔術神、竜神、表裏神がその設定をルベルに刷り込みました。その為、絶対にバレません』
ちょっと待てって!
え、問い掛けた? 許可貰った? 設定を刷り込んだ!? この一瞬でなにやらかしてんの!?
『リジーを守る為と言ったところ、ルベルは快く許可した様です』
は!?
てか、神って、大神殿の神の像を通してしか言葉を聞けないんでしょ!? 地上界に直接関われないんでしょ!? どうやってルベルに問い掛け、設定を刷り込んだの!?
『加護を通してなら、頑張れば何とかなります』
――!!
これかっ! 神の説明をされた時、一番目の理由と二番目の理由の間に、隠されていたのは……!!
何か言葉が隠れている気がすると思ったあたしのカンは外れてなかった!!
『表裏神の力により、偽りの情報が表向きの情報として設定されました。今後、リジーが教えない限り、この偽りの情報が全てに表示される事になります』
うぎゃーーーーっ!!?
最後の砦があっさり崩壊!!?
『諦めて下さい』
あ゛!?
『表裏神はこれまで、地上界に存在するあらゆるモノから冷遇されていました。その為、全てを諦め、感情が死んでいたところに――リジーという、自分を認めてくれる、受け入れてくれる存在と出会い、初めて充たされました。結果……リジーを溺愛しています』
――は?
って、ちょっ、えええええっ!?
いや、『みたされる』の字が変な気がするのもあるけど、え、なぜに溺愛!? おかしい、おかしいよ!?
『自分と加護を受け入れて貰えた事で、タガが外れた様です』
そこはきっちりコントロールするべきじゃないの!?
『表裏神にとって加護とは、甘やかす存在に与えるものです』
それ違うから!?
『他の神々も甘やかしているので、そう言われても説得力がありません』
だから! 過保護も大概にしておけーーーーっ!!
あああああ~。
あたしってば、不憫だからってトンデモナイ加護を受け入れちゃった!?




