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32 やっちゃった……ヨ?

 これ以上、このテントにツッコミ入れていたら時間がいくらあっても足りない。

 さっさと外に出て、証拠隠滅(テントを片付ける)に限る。

 そうと決まれば着替え。今日もルベルに乗って移動なんだから、パンツスタイルでいいか。この世界、服装とか中世後期から近世前期っぽい感じだ――ルベルは除く――が、女性のパンツスタイルに対する忌避感はない。召喚者達がいい仕事をしたんだろう。

 ずらっと無意味に並んでいる服達から一番手前にある物を取り着替えると、あたしは諸々全てを無視して出口に向かう。

 途中、警備員じゃないゴーレムとすれ違ったが……ツッコミ入れたら負けだ。無視。

 やっぱり陽が降り注ぐエントランス――はぁ――から外に出ると、そこには既にネスとルベルが居た。


「おはよう、ネス、ルベル」

「! お、おはよう」

「おはようなのじゃ、リジー」


 なぜか驚いて振り向いたネスと、笑顔全開で振り向くルベル。


『看破結果』

 ルベル 2512歳 赤竜王 総竜王候補 リジーの仮契約獣・本契約更新中


 頼んでも願ってもいないのに出てきた看破結果。

 これはもう、数時間ぶりに復活したマルの仕業だろう。あんた、復活早々、なにやらかしてんの。


『おはようございます、リジー』


 おはよう、マル。……ヘルプ機能って挨拶するんだね、知らなかった。

 というか、1行目だけの表示はまあ、いいとして……最後の更新中(ソレ)って、どういう事?


『リジーと赤竜王。両方の魔力が多過ぎて、本契約の処理作業に遅れが出ている様です』


 ……言葉が、IT用語っぽく聞こえるのはあたしだけだろうか? スペックが足りず、インストールに時間が掛かってま~すと聞こえた。

 妙な所に召喚者達の影がチラつくなぁ……。

 まあいい。放っておこう。更新中って事は、そのうち終わるでしょう。仮契約は済んでるし、現状、困る事はない……筈。


 そして他にも気になる事がある。

 テントから外に出てきたあたしが見た景色。

 なぜかその場に居る全員が同じ方を向いているのだ。街道の逆、森の方。そっちに何が――って、まずはテントを片付けよう。証拠隠滅!


 テントを片付けようと後ろを振り返った時――視界の端に何かが見えた。


 ……うん?


 一旦、見なかった振りをしてテントをトキの中に片付け、深呼吸してその『何か』に目を向ける。

 隊長や兵士達、ネスやルベルが見ていたのは……人だった。それも、何かに張り付いた様に積み重なっている、人。


 ……ああ……心当たり、あるねぇ。

 あの人がピラミッドになっている場所って、昨夜、結界張った所だよねぇ~あはははは~。

 ホイホイ効果、凄いなぁ……あは、あははははは……。


 やべっ! またやっちゃった!?


 いやでも、正しく結界が作動したって喜んだ方がいいのか!?

 だってうん、――大漁だなぁ。赤い点が。よく見るとマップに『盗賊』なんて書かれている。


「リ、リジー殿」

「あ、おはよう、隊長」

「お、おはようございます、じゃなくて! アレ、どうしますか?」


 あたしに気が付いた隊長が焦ってこっちに駆けてくる。

 いや、うん。どうしますかって聞かれても……どうしよう?

 そもそも、初日からセキュリティシステムに引っ掛かる能無しが居るとは思ってなかったから、なんにも考えてないよ!?


 ……困った時のレベルアップ音……またか……。


『荷運用品:New:技工神が腕を揮った!』


 技工神! あんた、腕を揮うのが好きだねっ!?

 というか、設定していない分類が勝手に増えてるんですがっ!?


『荷運用品

 ▽乗:NEW:物を乗せられる

  ▽リアカー:NEW:立たせれば数十人は乗せられる特製品。魔術神協力の元、排泄処理等は完璧である』


 ここでリアカー!? え? 手で引けっての!? って、ここで出てくるか魔術神! あんたも余計な事してんじゃない!!


『荷運用品:NEW:技工神と魔術神が腕を揮った!

 ▽乗

  ▽リアカー:NEW:立たせれば数十人は乗せられる特製品。魔術神協力の元、排泄処理等は完璧である。魔改造され、人力・馬力・竜力のどれでも引けるようになった。

 ▽引:NEW:物を引く

  ▽ゴーレム馬:NEW:魔術神特製の馬型ゴーレム。力強い』


 は!? 待て待て待て! 立て続けになにやってんのっ!?

 え、竜力って何!? ルベルにも引かせろと!?

 てか、ゴーレム馬の説明が雑だな、オイ!?

 というかこれってあれ? もしや、あの山積み人をこれに詰めて運べっての?


『盗賊は全員、賞金が掛かっています。あの人数ですから、かなり良い臨時収入となります』


 また金の話!? マップル、あんた好きだね……。

 ああ、あたしって、そういえばまだ自分で稼いでないんだよね……。視界の端でいまだ増え続ける桁は、大馬鹿の結晶だし……。

 でもさぁ……。

 ちらっと犯罪者ピラミッドを見る。うん、やっぱホイホイ凄い。マップを見ると、森の中のある一点まで赤い点が連なっている。これ、こいつらのアジトだよね?

 で。この何十人いるんだか分からない盗賊をリアカーに積めるの? 積んでどこまで持っていけばいいの? 持っていって直ぐに処理して貰えるの? それに――。

 最大の問題は、あたし、面倒事に巻き込まれないよねっ!? 自業自得なピラミッドの後始末の為、面倒に巻き込まれるなんて冗談じゃないよ!?


『その辺の処理は隊長に任せてしまえばいいのでは?』


 あ、そっか。本職だっけ。うんうん。丸投げしよっか!

 一応、これを運ぶ手段はある事を告げて、その他諸々はお任せってね。


 という訳で、隊長にゴーレム馬やリアカーがあると説明。それを提供するから、その犯罪者を乗せて連れていき、正当に処罰して貰おうと提案。

 処理とかは全く分からないから隊長に任せるからとも笑顔で言っておく。


 丸投げされたのにきちんと気付いたのだろう。隊長の顔が引きつる。

 だがしかし。己の職務をまっとうする為、渋々ながら頷いてくれた! よっしゃ!


 では早速~と、トキからリアカーとゴーレム馬を取り出す。

 どのくらい必要だろう――って、そういえばコレ、どのくらいあるの?

 トキで数を確認してみる。うん、書いてない……これってあれ? 無限とかってやつ。


 ……ある種、イイ仕事ではあるけど……甘い、甘過ぎるぞ! 技工神! 魔術神! あたしを甘やかしてなにがしたいのっ!?

 それよりも、あんた達も一応は神なんだから、己の仕事をしろっての!!


 はぁ……神の過保護が日に日にグレードアップしてきてる様な気がする。

 甘やかすだけの存在なんて迷惑以外の何者でもないんだけど!?

 取り敢えず、あんた達は自重するって事を学べ! 今直ぐ学べ! あたしの為にも学んでくれっ!!


『看破結果』

 リアカー 所有者:リジー

 技工神が造り上げ、魔術神が魔法を施した物。

 犯罪者移送用に、汚物処理、逃走防止、強制搭載、魔力封印、重量軽減が施されている。

 収容人数は最大20人。


 ゴーレム馬 所有者:リジー

 魔術神が魔法により創り出した馬型のゴーレム。

 戦闘力強化、馬力強化、防御力強化が施されている。

 馬1頭につき、リアカー1台が引ける。


 うん。なんで空気読まずに看破結果を表示するかなマルはっ!?

 しかも、なんでそんな色々と魔法が施されてんの!? 強制搭載って何ぞや!?


『モノに意志があろうとなかろうと、強制的に載せて動けなくする魔法です』


 は!? しかも、載せると決めたら逃げられない!?

 これ、あのトイレ型牢と同じ――いや、あれよりもしかして性能良過ぎじゃない!? 見た目はリアカーなのに……。

 それに、またまたオート仕様。ゴーレム馬が進んでリアカーの前に立ち、早く繋げと催促してくる。

 唖然と、ゴーレム馬やリアカーを見ていた隊長は。


「リ、リジー殿……これは一体……」

「あー……」


 流石に神製とは言えない……まあ、言った所で信じないだろうし……。


『では、何かあった時の為にリジーが作り溜めていた物を持ってきたという事にしておいてはどうでしょう。山で暮らしていた変わり者扱いされていますので信じてもらえると思います』


 あんたがその設定を作ったんでしょうがっ!!

 まさかこれを狙ってた? え、まさかでしょ!?

 あの時はまだ、神の過保護がこんな方面にまで広がるなんて分かってなかったんだけど!?


『ただの偶然です』


 オイ……。

 ダメだ。やっぱりマルに付き合ってたら時間がいくらあっても足りない……。

 取り敢えず、またまたマル創作の話を隊長にして……うん、納得された! どうも『山に変人あり』説は根深いようだ。

 まあ、最初から冒険者登録して世界回ろうとか思っていたなら、こういう事を想定して準備しててもおかしくないとか言っている。ああ、確かに。そんな考え方もあるか。


 さて。隊長が創作話を納得してくれた所で、あの盗賊達をリアカーに載せなきゃだけど……何人いるんだろう?


『アジトのを含めて57人です』


 うん。妙な所で本当に良い仕事するねマル。

 じゃあ、3台出して、19人ずつ――


『いえ。2台に20人ずつ載せて下さい』


 ……なぜ?


『……アジトにいるボスが3人分です』


 なるほど。重量軽減があるとはいえ、面積はどうしようもないか。

 じゃあ……なんか結界内にあの集団を入れて順番にリアカー載せるのも嫌だから、こっちから近付いて強制搭載しますか。

 そう、隊長に伝えると。


「一緒に行きます!」

「いや、あんたの仕事、その犯罪者の護送でしょ? 持ち場を離れるのはおかしくね?」


 速攻で却下したら項垂れた。なんなんだ?

 まあいいや。

 ネスやルベルが護衛代わりについてくると言うから一緒に行く事に。ゴーレム馬は、大人しくあたしについてくる。


 見えない結界の外側に張り付いている盗賊達に近付くと、「助けてくれ~」というなんとも情けない声が。

 うん。あんた達、何をしようと思っていたのか知らんが、危害を加えようとしていた対象に助け求めるって情けないを通し越して呆れてくる。

 まあいいや。助けた所で、こいつらの行先は監獄だし。

 という訳で。リアカー! お仕事ですよ!


 ……すっごいわ……。

 リアカーの後方にある板を下げた途端、それまで積み重なっていた人間が吸い込まれる様に中に入り、直立不動になった。

 逃走防止って……つまり、直立にしたまま動けなくするって事? ちょっとえげつない……。

 あ、20人収納したと思ったら、下がっていた板が勝手に動いて施錠した。……この世界の物って、勝手に動くの多いね……。

 ゴーレム馬があたしを見ていたので、隊長の所に戻って待機する様に言ってみる。すると、ゴーレム馬は……鳴くんじゃなくて頷き、リアカーを引いて歩き出した。

 ……なんとも人間くさいゴーレムだ……あ、野宿地帯な結界内には入らないようにね。……また頷いた。意思疎通できるゴーレム……ま、魔法がある世界だからいいのか? いいとしよう!


 取り敢えず、移動しながら2台目にも載せていく。いっぱいになったら1台目と同じ指示を出し、ゴーレム馬が器用に森の中を抜けていくのを見送る。

 ……時々、リアカーが木にぶつかって悲鳴が――うん、気の所為だよね。多分、きっと。


 3台目に点々といる人を載せながらアジトらしき場所に向かう。

 すると。木々が途切れ、ちょっとした空き地に出たんだけど……。

 うん。アジトはやっぱりというかなんというか……洞窟でした。

 パターン過ぎてつまんない! 神が過保護なんていう世界だから、ちょっとした意外性を期待しちゃったじゃないかっ!!

 ちっ。やっぱり、この辺は黄金パターンの様だ。どうせなら、神もありきたりでよかったのに。


 洞窟内部は縦にも横にも広かった。ゴーレム馬もネスも楽々通れる。あ、ルベルの本体は無理か。あれは規格外。

 目的地はマップに表示されているけど、そこにボスがいると知らせるかのように盗賊達がポツポツと固まって立っていた。

 ……こいつら、揃いも揃ってアホだ。ボスの所に逃げ込む事しか考え付かなかったんだろう。

 ついでに、もう一カ所、盗賊が固まっていた場所があるんだけど、そこは盗品の山だった。盗品は、盗賊を捕らえ、回収した者にその権利が移るらしいので全て回収しておく。トキが張り切って吸い込んでた……。

 で。ボスがいる広間っぽい所に来たんだけど……。


「うん。縦はともかく、洞窟が横に広い理由が分かった!」


 あたしの言葉にネスが黙って頷く。その目は、思いっ切り呆れている。


 盗賊達のボス。

 普通、盗賊なんてやっているんだから、身軽――それこそ、やせ細っている系だと思うじゃない? でもこれ、事前のマップル情報通り、かなりの重量級。確かにこれは3人前。

 身長は……あたしよりかなり低い。150あるか?

 体格は……標準体型な大人を横に3人並べたのと同じくらい? これは肥満というより……完全なる百貫デブというやつだろう。これを太めとか言ったら、他の人に失礼だ。

 それにしても……この世界って『力』が最盛期の時で成長が止まるんでしょ? つまりこいつは、この姿が最盛期な訳?


『違います』


 おっと。突然、出てきたねマル。で、どういう事?


『この者は世界の法から逸脱した行為を繰り返し、闇黒(あんこく)神の怒りに触れ、犯罪の数だけ様々な力が奪われ、この姿となりました』


 ん? 闇黒神? 名前だけ聞くと闇黒神って、暗闇とか不安とか、そういったものだけを司っている様に聞こえるんだけど?


『違います。闇黒神は光と闇、秩序と混乱など――』


 ああ、つまり、正反対の性質を持つモノを司っているんだ。でも、そんな事を言ったら、全ての神がそうな気がするんだけど? なんで闇黒神だけ、マイナスイメージを彷彿とさせる呼び方なの?


『闇や混乱等を司っている為、いつの間にかそう呼ばれる様になりました』


 うっわ……最悪じゃないか、それ。

 自分にとって嫌なモノを司っているから、つまりは『排除』したって事でしょ?

 それって、闇黒神って呼ぶようになった奴が何かしら後ろ暗い事をしていたから、正反対の性質を恐れ、差別したんだよね?

 つまり、その神自身は何も悪くないじゃん。最低な奴も居たもんだ。

 ん~……どうせだから、『表裏神』とかに改名しない? 誰かが勝手に呼び出したんなら、改名も勝手でしょ?


『表裏神?』


 うん、そう。表と裏。つまり、正反対のもの。

 これで少しは司っているモノが分かるし、なにより妙なマイナスイメージが付かないと思うんだけど?


『……』


 おーい? マル?


『リジーの看破結果』

 リジー 28歳 人間 異世界からの旅人 ルベルの仮契約主・本契約更新中 ネスフィルの仲間

 魔力量・白・最大計測不能 魔法使いとしては特の上レベル 魔力量はまだまだ成長中

 成長神、幸運神、時空神、魔術神、闘神、獣神、竜神、技工神、資源神、表裏神の加護 独身 魔術特化の筈が、加護の影響でほぼ何でもできる様になった


 はあっ!?


『表裏神の加護』

 光と闇、秩序と混乱等、他の神々が司れない部分を司る神。

 加護が付与された時の影響は不明。

 改名が嬉しかった為、感謝を込めて加護を与える。

 過去、加護を付与した事はなかった。


 え? 不明? というか感謝? ええ??


『表裏神は自分の司るモノが与える影響を理解しています。その為、闇黒神と呼ばれるのも仕方ないと諦めていました。ですが今、リジーが改名を勧めた事で、自分の司るモノは悪いモノではないのだと実感した様です』


 いや、だからって、初めての加護を与える? えええー??


『表裏神は悪くない。その言葉が嬉しかったようです』


 ……どんだけ冷遇されてたの表裏神……。

 なんか不憫だから、影響が不明なのは恐ろしいけど、その加護、貰っておく。


 それにしても……なんか知らんが、またあたしってばやっちゃった?

 いや、うん。これは仕方ない、の、か?


 百貫デブをリアカーに載せ、隊長の居る場所に戻りながらあたしは首を傾げるしかなかった。

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