31 疲れますヨ
ふかふかのベッドの上で目覚めたあたしは、一瞬、どこにいるのか分からず混乱し。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ~」
思い出した途端、盛大に溜め息を漏らした。
ああ、最悪。なんで朝からこんなに憂鬱な気分にならなきゃいけない。
それもこれも、この無駄に豪華過ぎるベッドルーム――というより、このテント全体の所為だ。
起き上がり、周囲を確認してみる。うん、昨日寝る前と変わらない。
天蓋付きのデカ過ぎるベッドに暖炉、天井にはシャンデリア。窓に掛かっていたカーテンはいつの間にか開けられ、窓の外に広がるのは朝日が差し込む庭園――って、それ、どこの風景っ!?
ベッドから飛び降り、慌てて窓際に駆け寄る。外に広がる庭園は……本物? え? まさか、この、どこかの家の手入れ済みっぽい庭もあたしの部屋エリアの一部? え? これ必要っ!?
「……無駄過ぎる」
果てが見えないテントの内部に普通の一軒家? テント内がどこかの町になってない?
これってホント、無駄過ぎだよね? あたししか居ないんだから、空間の無駄遣いとしか言えないよね?
ほんっとーにっ! なに考えてんだ時空神に技工神ーーーーーーーっ!!
あああああ~~。昨日、現実逃避したツケがこんな所にっ!
速攻でダメだしして、修正させれば良かったーーーーっ!!
こんな所で実感するとは……後悔先に立たずぅ……。
「……」
あれ? こんな時、何かしら意思表示する存在が……いない?
昨日、ルベルの背中から降りた時からマルが出てこない。
いるならいるで、鬱陶しいけど、いなきゃいないで、知りたい情報等が即返ってこなくて困る。うん、矛盾。
まあ、もしかしたら今は消費したエネルギーの充電中かもしれないし、放っておこう。……おや? ヘルプって充電とか必要だっけ? まあ、いいや。
先ずはとっとと着替えますか。
この部屋――うん、隣のメインルーム? とベッドルームは、本当に普通に暮らせるよ的な設備が揃っている。
昨日はベッドルームとメインルームを繋ぐドアしか気付かなかったけど、よく見れば他にもドアがいくつか。開けてみれば、正面にかなり広めの洗面台。左右にはスライドタイプのドアがあり、片方はバスルームで片方はトイレ。
メインルームから廊下へ続くドアの付近には、簡易キッチン。魔法で何でもできるらしく、手をかざせばお湯が沸く。冷たい水もある。棚には各種茶葉? 多分、紅茶やコーヒーなんかの他、砂糖とか色々。隅にはミニ冷蔵庫に菓子置き場まで……誰だ、これを据え置いたのは。勿論、食器類も完備してある。
取り敢えず、面倒な事は後回しにして――これで失敗したけど気にするだけ無駄な気がしている――洗顔。昨日と同じく艶々ぷるんなお肌は気持ちいい。
据え置いてあるタオルを使って顔を拭きつつメインルームへ続くドア――ベッドルーム直通のドアもある――を開ける。えーと……トキはどこに置いたっけ? あれ? こっちの部屋じゃない?
仕方なくベッドルームへ戻るんだけど……あれ? こっちにもない?
んんんんん? 他の場所にトキやマチを置いた筈はないんだけどなぁ?
周囲を見渡していたら――あれ? なんにもないと思っていた壁に……違和感?
近寄って確認すると、そこには壁と保護色になっている……これもスライド式のドア?
左から右へ動く様なのでスライドさせてみる。うん、開いた。
……あ~……。
閉める。
うん、あれは見間違い。見間違いに違いない。
朝から溜め息吐いて疲れたのかなぁ……コーヒーでも飲んでしっかりと目を覚まそう。うん、そうしよう。
メインルームに続くドアを開けようと手を掛け――。
おいっ! なんで開かない!?
ガタッとすら動かない。まるでドアノブの絵が描いてある壁を必死に押しているかの様な手応え。
ちょっと! 開かなきゃドアの意味ないでしょっ!
え、もしかして、やっぱアレ、ツッコミ入れなきゃダメ!? それやらなきゃ移動できないのっ!?
思いっ切りスルーしたいんですけど!?
あたしの意思はまるっと無視の様だ。くそう……。
仕方なく保護色ドアを開ける。
……はぁ……やっぱり見間違いじゃない、か……。
ドアを開けた先は、まあ予想が付くだろうが所謂『衣裳部屋』というやつだ。隠し部屋っぽくなっていた癖に、クローゼットやワードローブという言葉が可愛らしく感じてしまう広さがある。こんなのまで作り付けるなんて、ホント、どこのお嬢様、お貴族様だっての。
まあ、それだけならあたしがスルーしたかった理由にはならない。うん。
この衣裳部屋の中にトキやマチがあったのも、まあ、こいつらいつの間にか勝手に動くから、これもスルー案件ではない。うん。
あたしがツッコミ入れなければいけないのは……。
「な・ん・でっ! ぎっしりみっしり服が詰まってるんだぁーーーーーーーっ!!!」
あのクズ国から迷惑料代わりに貰ってきた色違いワンピ達しか持っていないあたし。それなのに、この部屋の中には……スカートからパンツ、長袖からノースリーブまで、多種多様な色彩の衣服達が詰め込まれていた。
看破を使ってみれば、やはりというかなんというか、ワンピとかと同じ体温調整、形状記憶、自動浄化、サイズ調整機能付き。ついでに所有者登録はあたしでされており、攻撃、魔法、状態異常無効もスタンバイオーケー状態だ。過保護が先回りし出した……。
しかもあるのは服だけじゃない。随分立派なドレッサーに、全身を見れる鏡。ドレッサーの上には使い掛けの化粧道具。ドレッサーの横には棚があり、そこに並ぶアクセサリーケース。蓋、開けたくないー。見たくねー。
足元には箱型の収納ケースが並び、そこには多種多様な室内履き……こんなにあっても使わんだろ……。
で。この衣裳部屋の奥の方。そこにはアンティークっぽいクラシックなチェスト。わざわざこんな物をここに置いて、なにを入れてんの?
引き出しを開けると――
「……下着?」
そう。見慣れた下着の数々。うん、ヒモパン系じゃなくてよかった。
――じゃなくてっ!!!
な・ん・でっ! あたし愛用系の下着なのっ!?
ちょっと、コラ、神共! 覗いてんじゃないでしょうねっ!!?
うがぁーーーーーっ! もうもうもぉーーーーーっ!!
〆る! 絶対に〆てやるぅーーーーーーーっ!!!
もし顔を合わせたら、過保護神共、全員、〆るーーーーー!!!
はぁあああぁ~……。
ヤバ、朝から本気で疲れた……。
……。
チラッと、チェストの中を見る。
うん、間違いなく、ヘビーローテーションになるだろうなぁ~と思った下着の色違い達。
あ、違うデザイン発見。こっちも違う。あ、これも。
おや、これはシンプルで結構好み――って、あ……。
……馴染んでしまった……。
……うん、物には罪、ないからね。使わなきゃ勿体無いよね。うん。
……王都の神殿行ったら、一応、お礼、言わなきゃね。
それ以上に、苦情もしっかり入れるけど。
覚えてろよ――。




