表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/74

閑話 面白いけど大変だヨ side魔術神

 ※※※ 注意 ※※※


 この話は、前回の閑話と同じく、主人公視点では分からない、本編の裏話のような、ある種のネタバレ的なものを含むサイドストーリーとなっています。

 読まなくても本編の方に変わりはありませんが、人によってはこれを読んだ事により、本編の読み方が変わる可能性があります。

 その為、これを読む、読まないは自己責任でお願いします。

 読了後の苦情等は受け付けませんので、ご了承下さい。





 この話は、『30 だから、違いますヨ』までの神サイドの裏話になります。


 リジーが就寝した事により、その場に集っていた神々からホッとした溜め息が漏れる。

 文句を言いながらも使ってもらえたという『ホッ』ではない。ただ単に――


「これで暫くは、加護の暴走はないな」


 そう。成長神の言う通り、彼女が寝ている時だけ(・・)、私達の加護は暴走しないのだ。

 起きている時は……彼女の思考に反応し、神の所為にしてやりたい放題。後からその事実を知って、私達は頭を抱えるしかない。


「魔術神。現状把握の為にも報告をしてくれ」

「はい」


 確かに、それは大事だ。

 何が『神が遣った事』で、何が『加護の暴走』かはっきりさせておかないと。

 加護の影響が『神の領域』にまで及んだら大変だ。


「では、リジーが起きた時から順番にいきたいと思います」

「頼む」


 成長神以下、全ての神々が頷く。

 加護を通して彼女を知る事はできるが、私の様に直接遣り取りしていないので、その彼女の身に降りかかった全ての物事を把握できる訳ではない。

 その為、この報告会は大事。多分、代わり映えのしない世界の情勢を見るより重要。


「リジーの創造した『無開示の魔法』。これが世界に浸透したのは、間違いなく私の力です」

「そうね。創造された魔法が世界に『馴染む』には、魔術神の力が必要ですからね。ただ……馴染むのに時間が掛かると、なぜリジーに教えなかったの?」

「面白そうだったから」


 幸運神の疑問に即答すると、全員が苦笑した。何よ。退屈な日々の中にちょっとだけ面白さを加えたって良いじゃない。


「魔術神の場合、ちょっとじゃ済まないだろう!」


 成長神が何か言っているけど、気にせずに次へ行きましょうか。


「魔法の創造後、付け加えられた罰は……加護の暴走結果です」


 やっぱり……という空気が流れる。

 それはそうだろう。私達は『地上に直接関われない』。あの罰は地上に直接関われる(・・・・)からこそ可能なもの。

 しかも……


「全員、これを見て下さい」


 そう言って、『無開示の魔法』の情報を空間に表示させる。


『無開示魔法』 (製作者:リジー 非公開情報)

 識別、鑑定、看破魔法など情報を見る魔法から自分の情報を守る魔法。

 魔法使用者の許可が無い限り、見る事ができない。ただし、グゼナ国のモノを除く。(製作者を除く。非公開情報)

 魔力量による効果のあり、なしが存在しない特別な魔法。消費魔力:1

 一度使えば、使用者が魔法を解除しない限り持続する。他人や物にも掛ける事が可能。


 無開示魔法の存在を識別、鑑定魔法等の情報を見る魔法の情報と共に公表しない場合の罰

 成長神の怒りに触れ、成長を奪われる事になる。(奪われた成長は全て製作者へ渡る 非公開情報)

 幸運神の怒りに触れ、幸運を奪われる事になる。(奪われた幸運は……同上)

 時空神の怒りに触れ、時間と空間がとことん奪われる事になる。例:食べ物が腐りやすくなる、家がなくなる等々。(奪われた時間と空間は……同上)

 魔術神の怒りに触れ、魔力が奪われ、魔力量が大幅に減る事になる。(奪われた魔力は……同上)

 闘神の怒りに触れ、戦う術を失う事になる。例:武器を持てなくなる、勝てなくなる等々。(奪われた闘いの力は……同上)

 獣神の怒りに触れ、他種族との一切の関わりを絶たれる事になる。例:獣人やエルフ、ドワーフなどに会えなくなる、その種族が製作した物を手に入れられなくなる等々。(奪われた関係は……同上)

 竜神の怒りに触れ、竜種から敵視される事になる。例:竜に会ったら最後、必ず襲われる等々。(奪われた信頼は……同上)

 技工神の怒りに触れ、作られたモノが一切手に入らなくなる。例:人の手が作り出した物である武器、防具、日用品等々。(奪われたモノは……同上)

 資源神の怒りに触れ、一切の資源が手に入らなくなる。例:材料と呼ばれる物、薬草等々。(奪われた資源は……同上)


『はっ!?』

「ちょっと待てぃ! なぜ増えてやがるっ!!」

「これはまた……」

「……生きていくの、無理ですね」


 騒いだのは竜神。唖然としているのが技工神と資源神。

 まあ、既にできあがっている魔法に干渉するなど普通は無理なのだから、唖然とするのは当然。ただ。


「無開示の魔法は『思考力を持つ存在が創造した』魔法。しかも、製作者は『生きている』。この2つの条件を満たしている為、製作者が(・・・・)手を加える事は可能ですよ」

「だが、リジーは干渉してないよな?」

「ええ、干渉してませんね」

「では、なぜ?」


 首を捻る技工神と資源神。

 やれやれ。その問いは無意味ですよ。


「なぜって、決まっているじゃないですか。貴方達の加護もリジーに付与された途端、意志を持って暴走を始めたんですよ」

「「「はっ!?」」」


 いや、全く同じ顔して私を見ないで欲しい。

 今までの事を考えれば、こうなるのは目に見えていたでしょう。


「どうしてそんな事になるんだっ!!」

「知りませんよ」

「おいっ! お前、知識を司る存在の癖に、分かんねぇとか言うんじゃねぇよっ!!」

「うるさいですよ竜神。怒鳴ったって、分からないものは分からないんです。それだけ彼女が特殊な存在なのだと、貴方の少ない頭の中身にしっかり叩き込んでおきなさい」

『魔術神……』


 一斉に溜め息なんかついてくれちゃって、まあ……。

 貴方達、自分で原因究明しようなんて考えもしなければ行動もしないんだから、私の遣る事に溜め息吐く資格ないっての。

 最も、いつもの事だから放っておく。


「取り敢えず、彼女は加護に何かしら影響を与える怪魔力でも発しているとでも思っておけばいいんじゃないですか?」

「それは――」

「そもそも、彼女が老いた姿で召喚された理由が全く分からないんです。そこに全てが起因している場合、私では干渉も調べる事も不可能ですよ」

「……そちらは、私が調べてみる……」


 成長神が気まずそうに視線を逸らす。

 ふん。言われる前に遣れっての。


「では、お任せして……次は彼女が『マップ機能』と呼んでいる地理表記です。彼女にこの世界の知識を与えたのは私ですが、『マレット』と呼ばれる存在に表示される様になったのは加護の所為です」

「何っ!? あれは、魔術神の力じゃない!?」


 本気で驚いている時空神に私は頷く。


「あの『マレット』は、簡単に言ってしまえば魔法の一種です。まあ、彼女限定ではありますが……。それらを統合して作り上げた『マル』という魔法的な存在を彼女には『丸投げした対価として進化しろ』と言われましたが、私としては、どうすればいいのか分からなかったので放置しようと決めていたんです」

『おいっ!?』


 だから、なぜわざわざみんな揃ってツッコミ入れるんです?


「彼女の知識を探って真似してみても、それは『進化』とは言えません。彼女の意表を突く進化が全く分からない以上、どうしようもないんですよ」

「あいつの知識にない、この世界の知識でなんとかならないのか?」

「無理ですね」


 闘神が首を傾げる。

 やれやれ。闘神といい竜神といい、武力馬鹿はこれだから……。


「彼女の言う『マップ機能』も『ヘルプ機能』も、元々は彼女の知識にある物を私が干渉しやすくなるからと魔術方面で利用させてもらっただけです。大本が『借り物』なんですから、それ以上にするのはかなり難易度が高いです。貴方達なら、何か考え付くとでも?」

『……』


 黙ったまま視線を逸らしやがった。だったら最初からゴチャゴチャ言うんじゃない。


「そんな訳でして。私は何かするつもりはなかったのですが、加護はどうも彼女の助けになるのが生き甲斐の様で、頑張ったみたいですね~『当然』と言われて落ち込むくらいには」

「そこまで……」

「ええ。明確に意思を持っていると言っていいと思いますよ? あの『贈り物達』が勝手に動くのは、加護の所為ですし」

「……物に宿っている加護にまで影響しているのか……」

「と言うより、『彼女のモノ』になった時点で、加護が意志を持って暴走している様です」

「だから、竜神、技工神、資源神の加護も即、意志を持って暴走した、と」

「そうです」


 流石に、意志を持つのが加護を付与した瞬間かどうかまでは分かりませんが、少し経ったら無開示の魔法に情報が追加されていたので、その間に意志を持って何かしらやらかしているのは確実ですね。


「そういえば……」

「なに?」


 幸運神が不思議そうに私を見てくる。


「あの肌って、どうして……?」

「ああ……」


 彼女が大騒ぎしたアレですね。


「リジーにも答えた通り、知りません」

「あら。あの返事は魔術神だったの」

「私です。彼女と会話できるのは私だけ(・・・)です」

「なるほど……加護は意志を持っているかもしれないが、言葉を発する事はできないと」

「はい。マレットに表示される説明は『看破魔法』です。私が干渉しない場合、彼女の欲しい情報だけが表示されているのを確認しています。これにより、加護がいくら意志を持っていても、彼女に何かを伝える事はできないと推測されます。ただ……それが『今は』なのか、『これからも』なのかは分かりませんが……」


 一応、それなりに敏い成長神が唸る。

 加護の暴走は、ここで打ち止めになってくれというのが成長神の本音だろう。




 ……無理だとは思うが。




「次に、彼女の魔法に関して。かなり高度な魔法も念じるだけで発動するのは、私と加護、両方の影響ですね。ただ彼女自身、かなり的確に魔法をイメージできるからこそ可能だ、と言えますが」

「それはそうだな。異世界から召喚された者は、その傾向が強い」

「はい。魔法が存在しない世界もあるのに、不思議ではありますが」


 彼女も、魔法が存在しない世界からきたようだ。

 ただ、想像力というか妄想力? が凄いのか、理論も何もないのに、そういうものが『ある』と違う形で創り上げている。それが、彼女のイメージ力に繋がっている……らしい。

 彼女の知識の中に私の知らない言葉等がかなりある為、『らしい』としか言えないのがかなり悔しい。


「ネスが、簡単に、魔法、使える様に、なる?」

「ええ。私と、私の加護を持つリジーが教える以上、ネスフィルの熟練度は通常より早く上達します。単純な魔法なら、早い段階で唱える必要がなくなります」

「良かった……」


 嬉しそうな獣神にほっこりする。うん、リジー。貴女に同意しますよ。もふもふは癒されます。


「そんで? 赤竜王が召喚された理由は?」


 気の短い竜神が腕を組み、イライラを必死に抑えながら問い掛けてくる。

 指先で腕をトントンと叩いている時点で隠し切れていませんが。


「それは簡単でしょう。完全に加護の暴走です! 召喚魔法初心者に、最高難度の竜王を呼ばせるなんて、いくら私でもやりませんよ!」


 そこで全員、疑いの眼差しを向けるんじゃないっ!!


「彼女と赤竜王の魔力相性はかなり良かったので、いずれは……と思っていましたが……」


 私が竜神を見ると、竜神は「ああ……」と頷く。


「そういやアイツ、他の存在がかなり苦手だったな……」


 そう。あの赤竜王は竜王の癖に、自分以外の存在が苦手ときた。同族の赤竜達に慣れるのに数カ月、他竜も数年掛かる。用事がある竜達は半泣きの状態で赤竜王の元に行ったものだ。

 アレに言葉を無理強いした召喚者にも、初めて会った時は速攻で逃げ出した程だ。あの召喚者が唖然としていたのは忘れられない。

 まあ、そこでメゲナイのが召喚者。毎日毎日赤竜王のねぐら近くに通い、遠くからではあるが会話が可能になった時、達成感からバンザイ等と大騒ぎしていた。

 そんな最高難度の彼女曰く『ボッチ』を、最初から彼女に与えるなどできるかっ!!

 それなのに――。


「彼女の願った『移動手段になりそうな意思疎通できる生き物』、『会話もしくは念話みたいなものが可能な存在』に、加護達は『彼女を守れる存在』を加味して、『自分好みのモノを引き寄せやすくする』獣神の加護と『望みを叶えやすくする』幸運神の加護が協力し、最も魔力相性のよかった赤竜王を強制召喚した様です」


 まあ、元々、あの赤竜王は召喚される事には同意していたから、完全に強制ではないけれど。

 それでも……突然、見知らぬ人間に呼ばれたのだ。暴れる危険性はあった。

 だけど……。


「……大人しくリジーを見詰めている赤竜王を見た時は、流石に、我が目を疑いましたよ……」

「そうだな……」


 私と竜神が揃って思わず遠くを見てしまう。

 ――『あの』! 赤竜王が! 『大人しく』! 『見ているだけ』! なんですよ!?

 どんな天変地異が起きるのかと思いましたよ。


「召喚された時まだ(・・)『竜神の加護』はなかったので、どうして赤竜王が大人しかったのか不明です。こちらも……幸運神の加護辺りが頑張ったんですかね……」

「……黙って伏せをして、リジーが行動すんのを待ってたからな……」

「撫でるのも許したし、嬉しそうでしたね……」

「おう……あれは俺様もビックリした……」


 私と竜神の会話で、どれだけ赤竜王がおかしかったのか理解したのだろう。他の神々が少し引いている。

 ええ、ええ、分かります、分かりますよ、その気持ち。そんな存在を召喚する加護の暴走っぷり。何があっても彼女だけ(・・)は守れる自信があったのだろう。



 まあ……なにかあったら私達も彼女の加護を通して何かしら遣った可能性はありますが……。



 そ、それはともかくとして。


「おい、魔術神。赤竜王が人化すると子供な姿なのは――」

「ああ。リジーの推察通りだと思いますよ。他の存在とまともに交流できない奴がまともな成長できる訳ないでしょうが」

「だよなぁ……」


 その辺は諦めているのか、竜神が重々しく溜め息を零す。おやまあ。赤竜王を心配するなんて。一応、神らしいところもあるんですね。


「まさか『成長が止まる』に、そんな一面があったとは……」


 ちょっと! 自分が遣った事でしょうが! そこで遠い目をするんじゃない成長神!!

 全く……最高神なのに、どうしてこうも詰めが甘いんでしょう? まあ……だからこそ思わず手を貸したくなるのかもしれませんが……。


「さて! 時間は限られていますのでサクサク行きますよ!」


 感傷に浸ってグチグチされる前に成長神の思考をぶった切り、話しを進めましょうかね~。


「殴られて気に入った赤竜王と召喚獣契約を結んだのは普通の事として――」

「どこが普通だっ!?」

「なぜリジーに『召喚神の加護』がないのかは適当に誤魔化し――」

「流石ですね」

「クズ国の所謂『国民』は貴族と、その寄生虫だけだとリジーに暴露して――」

「でかしたっ!」

「その話の流れでリジーがクズ国を潰すと言い、それを喜んだ竜神、技工神、資源神が加護を与え」

「「「当然!」」」


 いちいち合いの手が入るのは御愛嬌というやつでしょうか?

 加護を与えたという所で、三神が何言ってるみたいな顔でこちらを見てきたのはちょっと気まずい。

 ……彼女が「クズ国を潰しても平気だよね?」と尋ねてきた時、思わず神界(ここ)で「クズ国を潰す?」と呟いてしまった私。あの『手遅れ』の原因を作った自覚はあります……。


 彼女と会話している私の呟きを耳聡く聞き付けた竜神がどういう事だと詰め寄ってきた時、あ、まずいとは思ったんですよ?

 でも、あの暑っ苦しい神に詰め寄られるのも鬱陶しくて、さっさと彼女を売る決意をし。彼女の言っている事をそのまま神々に伝えた。


『人に擦り付けてきた罪とか言いがかりとか、諸々ぜーーーーーんぶ何十倍にもして叩き返し、生き地獄を味わわせてやるわっ!!』


 この本音を聞いた途端、三神が一斉に加護を付与した。それはもう、考える必要もないと言わんばかりに速攻で。宣言すらもしなかった。

 気付いた成長神が「おいっ!?」とか言っていたけど、この三神達のあの国に対する憤りは私達の比ではないのだから、例えもう少し早く気付いても、誰も止めるのは不可能だったでしょう。


 竜神は――自分が庇護する竜種に対する扱いにずっと怒っていた。

 技工神は――研鑽を積み、技術力が上がっていく者達の成長を楽しみにしていたのに、それらを悉く奪っていくあのクズ共に怒っていた。

 資源神は――自分達の為だけ、自分達の欲しいままに。周りの事を考えず資源という資源を枯渇させんとばかりに好き勝手しているあのクズ共に怒り、呪いを与えた。


 自分が司っている存在を蔑ろにされる。それで怒らない神はいな――あ、普通はいない。うん、普通じゃないのをつい最近、永劫の牢獄送りにしたのを忘れてた。

 アレの事を思い出したら……思わず零れる溜め息。


「はぁ……看破結果でリジーの異常さを伝えたのに、全く伝わらず……」

「そういえばそうだな。なぜ伝わらなかったんだ?」

「……加護が増えた衝撃には勝てなかったんでしょうね」

『……』


 リジーは食いつくと思っていたんですよね……『魔力量はまだまだ成長中』の部分に。

 でも実際は、妙にこだわっていたから表示した『人間』の部分と加護にしか反応しなかった。

 加護で『ちーと』の仲間入りは嫌とか言ってましたが、最初から貴女は非常識な存在だと思いますよ?

 それに、神の面倒事やお願いには関わりたくないと言ってましたが、既に獣神の『お願い』を聞いちゃってますよね? 分かってます?


「それはそうと、あの赤竜王の攻撃はなかなかのものだったな!」

「あー……」


 闘神が楽しそうに言葉を発すると、普段はかなり強気な竜神が困った様に視線をうろつかせ。


「……すまん。赤竜王は、あの『最弱攻撃』か『全力攻撃』しかできん」

『――はっ!?』


 え? ちょっと? それ、私も初耳ですがっ!?


「魔力量は白とかなり多いが、魔力操作が竜種の中でも下手な部類でな……」


 普通は、最弱、全力の他に『手加減』があるのですが……手加減できる程の魔力操作ができない?


「ちょっと待て竜神! あれで『最弱攻撃』なのかっ!?」

「そうだ」


 闘神が焦って止めると、竜神が……縮こまったっ!?


「あれが『最弱』って――どんだけ赤竜王は魔力操作が下手なんだよっ! あれは普通の竜種なら『殲滅級』だぞっ!?」

「は? でも、地面とか無事でしたよ?」

「いや、まあ、確かにそうなんだよなぁ……なぜだ?」


 攻撃の威力に関して、闘神が見誤るとは思えないけど、通常の竜種の『殲滅級』なら、普通は焦土とかになってもおかしくない。

 赤竜王が攻撃している時の事を思い出す。

 口から火の玉が飛んでいって、敵を蒸発――ああ、蒸発させる時点で変ですね。高温過ぎます。

 魔力操作が下手なのが何かやれば、被害が大きくなるのは、魔術神である私の管轄内の事なので誰よりもよく知っている。でも、あの時は、何も――?


 ……もしかして、リジーの影響?


 あの加護達は、リジーを守る為だけに暴走する。

 もし、あの赤竜王が攻撃して焦土と化していたらどうなるか……リジーは怒るだろう。そして、そんな事をやらせた自分を責めるかも? いや、この辺はまだ彼女の事をよく知らないので何とも言えないが、そうなる可能性は十分にある。


 それを、防ぐ為に赤竜王に干渉した?


 いや、無理――って、同じ『竜神の加護』があった。

 同じ加護は引き合う。それを利用した可能性は?

 私が散々『加護』を利用して彼女に干渉しているのを加護達は実地で分かっている。干渉する方法を学んでいたらどうなる――?


 私はそこまで考え、体中がひやりとした感覚を味わう。

 いやもう……あの加護の暴走っぷりを考えると、なんでもありな気がする。

 もし本当に干渉したのなら……神同様、加護もかなり過保護という事になる。

 過保護と過保護が合体したらどうなるのだろう……。


「か、考えちゃいけない……」

「魔術神?」

「いえ、なんでもありません」


 流石に、この推測を口にするのはヤバい。

 これ以上、彼女に対する過保護を増やしてはいけない。なにせ、どいつもこいつも本来なら面倒見のいい――いや、良過ぎてダメダメな存在なのだから。

 彼女と繋がっている時、自重しろと何度言われた事か。あの叫びは結構心に響く。私も、自重しろよと思う事が多々あるから……。


 こほん、とひとつ咳払いし気分を変える。

 さて。本日最大級の『過保護』について説明しますか。


「では、宿泊地に着いてからの話に行きましょうか」


 そう言うと、神々が一斉に黙った。

 そのうち何神かは気まずそうである。


「まず、私がリジーの傍から消えたのは、完全に『全ての加護の所為』です」

「拒絶でもされたか?」

「いえ。拒絶というより、『これ以上リジーを占領するな』という完全なる嫉妬ですね」

『嫉妬……』


 加護が嫉妬……と誰もが呟く。

 信じられないのも分かりますが事実です。

 彼女と会話を可能にしたあの『マレット』が何かに弾かれた時、確かにそんな感覚がありました。加護はもう完全にリジー至上主義のようです。


「さて、と。あの『テント』についてですが……私が説明するより適任がいますよね?」


 気まずそうにしている時空神、技工神、資源神を一斉に見る。適任なのはこの三神。あのテントとは言えない物体を造り上げた張本神達。

 全員それは分かっているのか、渋々口を開いた。


「……どうせなら、加護を与えた存在が少しでも快適に過ごせればと思い、中の空間を両手を広げても大丈夫なくらいに拡張したんだよ」

「それを知って、どうせなら地面に直に寝るよりベッドの方が良いだろうと思って、時空神に頼んで、あのクズ国から回収した寝具を配置した」

「古くなっていましたので、わたしが素材を提供し、寝具を新しくしました」

『それだけであの異常なテントは出来上がらない』


 そう。私達はきちんと気付いていた。技工神と資源神は彼女に加護を付与した後、時空神の元へ行って、なにか話をしていた事に。

 それが何だったのか。彼女がテントの事を言い、確認して気付いた。こいつら、やらかしたよ!? と。


「た、たかが寝るだけかもしれんが、旅の最中なんだ。快適な方がいいだろう!?」

「オレの加護を与えたんだ! イイもん使わせたいと思って何が悪い!!」

「あのクズ国から没収した資源だから、世界の資源が減った訳ではないのよ? だから問題ないでしょう?」

「だから、そういう事を聞きたいんじゃないんですよ」


 問題をすり替え様とする三神に呆れるしかない。


「そんな可愛らしい理由で、あのどこかの小国の城並みに広大な空間を持つ『テント』が出来上がる訳ないですよね?」

「……そんなに広いのか?」

「ええ。彼女は奥まで行っていないので、見えた範囲だけでは広さが分かりにくいでしょうが……リジーの部屋だけでも、どこかのお屋敷ひとつ分の広さだと言えば、全体の広さも何となく分かりませんか?」

『……時空神……』

「しかも、其々の部屋に設置されている物等は、過去に存在した匠達の最高傑作と同等以上」

『……技工神……』

「壁や家具等に使われている素材も、一級品どころか、二つとない逸品」

『……資源神……』

「まあ、そこまでが三神の過保護です」

『は?』


 小さくなっていた時空神、技工神、資源神までポカンとする。

 いやいやいや。貴方達なら分かるでしょう? 自分が遣っていない部分が『どこ』かは。


「あの見た目が豪華な、一人には無用の長物な物を造り上げたのは三神ですが、その細かい部屋の『中』に何を置くかを決めたのは『加護達』です」

『――――は?』

「だ・か・ら! あの案内板も、警備員や使用人(ゴーレム)も、魔力充電施設も。加護が『リジーを守る為に』作り上げたものです」

「……どの『加護』だ?」

「全てです」


 成長神の疑問に答えると、彼女に加護を与えた神々が一斉に頭を抱えた。

 ついさっき時空神、技工神、資源神を非難したが、自分達が与えた加護の暴走結果はその上をいってしまったのだ。頭を抱えない方がおかしい。


「ただし――」


 私は神々を見渡し。


「神殿だけは、手付かずです」

『……』


 なんでそこだけ……と、みんながみんな項垂れる。

 一応、加護も『神の領域』に手を出す事は遠慮したのだろうか? おかしな気遣いだとしか言えないけど。


「そんな訳で。どうせですから、あの加護に負けない物をみんなで造り上げませんか?」

「は?」

「あのテントの中に、各国の首都と同じ機能を持たせるんですよ」

「……神殿を造る、と?」

「はい。そうすれば……いつでもリジーと会話ができる様になるかもしれませんよ?」


 私の言葉に乗り気になった神が何神か。

 流石に成長神と幸運神は躊躇っているようだけど――。


「彼女と直接交流する方が、彼女に起きている異常を調べやすくなる気がしますが?」

「う……」

「彼女の望み、願いが、分かりやすいと思いますよ?」

「あら……」


 うん、単純。落ちた。楽勝。

 と。神殿を造りに行く前に、片付けなければいけない事がまだあった。


「そうそう。彼女に食べ物を送ったのは資源神で、食器等を送ったのは技工神ですよね?」


 そう私が問い掛けると、そういえばまだそれがあったと誰もが思い出した様だ。


「必要最低限の物を送ろうかと思って、時空神に頼んであのクズ国から没収した物を置いてある倉庫と時空神の贈り物の空間を繋いでもらったんだが……」

「……必要な物を送り終わり、空間を閉じようとしても閉じなかった」

『……つまり』

「はい。どうも加護が強制介入したらしく、倉庫と贈り物内部が繋がったままです」

「繋がったままっ!?」


 私の驚きに三神が頷く。


「ちょっと待って。じゃあ、あの『時空神の贈り物』は、神の倉庫とリジーのテントと繋がってるの?」

『あ……』


 その『意味』に気付いたのか、何神かから乾いた笑いが零れる。

 それもそのはず。なにせ彼女は意図せずして『無限の空間』のみならず『無限の資源』を手に入れ、最高峰の『技術』で自動的に物が作られる様になったのだ。

 テント内にいる警備員や使用人なんかも、仮にテントの空間が拡張され人員が足りなくなったら自動補充される事になるだろう。

 どこへ行こうと、快適に過ごせる家? があり、食べ物に困る事がない。これで着る物――


 ハッとして時空神に詰め寄る。


「時空神! 急いで贈り物の中身を確認して! 私が回収した物、今言っていた物以外で増えている物ないっ!?」

「お? おう……」


 首を傾げつつも時空神は贈り物に付与している加護に干渉して、中を確認し――。

 ヒクリ、と、顔を引きつらせた。


「増えてる……」

「やっぱり……」


 意味が分からない他の神々は互いに顔を見合わせている。


「そういやリジーは……」

「ええ……新しい下着を見付けて買わないととか言ってました……」


 それで全員が察した。

 そう、住む場所、着る物、食料の全てが揃った。――加護が『揃えた』。


「それから……今気づいたのですが、良いのか悪いのか分からない知らせがあります」


 私が口を開くと、全員が不安そうにこちらを見てきた。


「……加護が暴走する度に、彼女の魔力が飛躍的に上昇しています」


 彼女に付与している私の加護に干渉する。今の彼女の魔力は――


「既にこの世界で地上最高の魔力を持っていた赤竜王の2倍近く上ですね」


 召喚されてきた時はほぼ同等。様々な事を知る事で少し上くらいになってはいたけれど……。


「まだ成長中です。最終的にどこまで上がるか……私にも推測不可能です」


 はあ……と溜め息が零れる。

 もう本当に、どこまで規格外? 『ちーと』やだとか言って、結局はその『ちーと』に自分から足を突っ込んでいるじゃないか。

 しかもそれに気付いていないって……自分の事に鈍過ぎない?


「魔術神……」


 色々と考え込んでいた私に獣神が声を掛けてくる。

 顔を上げて目を合わせると、真剣な声で言われた。


「お願い、ある」


 獣神の『お願い』。

 それを聞いて、全ての神が驚いた。勿論、私も。


「無理?」

「え、いや、無理かどうか聞かれましても……」


 リジーの魔力を考えてみる。

 その『お願い』を叶えるのに――


「って、そうじゃなくて!」


 私は慌てて首を振って、獣神を軽く睨む。


「自分が何を言っているか分かっているのですか?」


 こくん、と頷く獣神。

 その途端、仕方ないなぁといった空気が神々から流れてきた。――オイ。


「諦めろ、魔術神」


 そう、本当に諦めきった顔で言ってきたのは成長神。


「獣神が守っているのは『人間とは違う進化を遂げた種族』。この世界の人間は獣神が守る者達を、余程の功績が無い限り、自分達より下に見る。だが、彼女は違う。まあ――愛でるのも何か違う気はするが、同じ『生き物』として同等に扱う。それを獣神が喜ばないなど有り得ん」


 それは知っている。


「獣神にとって彼女の存在は『望みのひとつ』だ。その上で考えて出した『お願い』なら、我等が否定する事はできない」

「……」


 望みのひとつ。

 その言葉の意味も、知っている。


 はあ……と、再び溜め息が零れる。


「……今直ぐは無理ですよ?」

「うん。待つ」


 獣神が、心の底から嬉しそうに笑う。

 あーあ。こんな顔見ちゃったら、お願いを叶えるしかないじゃないか。


 獣神のお願いを叶えた時、彼女がどんな顔をするか。

 想像するとちょっと面白いけれど……


 やっぱり、ちょっと大変そうです。


 ああ、また言われるんでしょうね。


 ――『自重しろっ!』と。




 私は気付いていなかった。

 この後から獣神に「まだ?」、「まだ?」と纏わりつかれる事になる、と。




 ああああーーーっ、もうっ! 鬱陶しい!!


 リジー! このもふもふ、引き取ってっ!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ