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29 少しは役に立ちますヨ

「あの、申し訳ありません……」


 暗がりの中から響く聞き覚えのある声。

 それもそのはず。声を掛けてきたのは隊長だった。


 うん、ごめん……本気で存在忘れてた……。


 よく見れば、隊長の後方には他の兵士。そのまた後方。結界の丁度角にあたる部分に牢が置いてある。排泄物は結界の外に出ていくようなポジショニングだ。

 その近くには、小型のテントが二張り。ん? 少なくない?

 馬達も勿論、結界の中。ただ、召喚獣だとは分かっているがルベルの傍には来たくないのか、牢とは違う角に固まっている。その目の前には水の入った桶とエサの入った箱が置かれていた。

 それらを確認し、隊長に視線を戻すと、タイミングよくネスが問う。


「どうした?」

「あ、はい……」


 隊長はチラッとショタジジイなルベルに視線を向け。


「その、そちらに居る子供は、先程の赤竜様でしょうか?」

「そうだよ」


 ネスが答えるのはおかしいので、あたしが答える。

 あたしの答えに隊長は困惑を見せ。


「あの赤竜様は……まだ子供だったのですか?」


 ああ……そう思っちゃうか。うん、そうだよね……。まさか2千歳を超えていながらショタっ子だとは思わんよな……。

 あたしは苦笑すると、いまだ刺身を食べている――既におかわり何杯目か忘れた――ルベルに念話を飛ばす。


(ルベル。彼等にルベルの年齢とか言っても問題ない?)

(うむ。ワシ的には問題ないの)

(……未熟だってバレるのに?)

(うむ……いいのじゃ。ワシはリジーと一緒に居る為に成長するのじゃからのぉ)


 そんな会話を交わしていてもルベルの食べるペースは変わらない。あんた、どんだけ食い意地張ってるの。

 まあ、トキの中身が減る分には問題ないから放っておこう。


「ルベルは2千歳以上だよ」

「えっ!?」

「人化の年齢が子供の姿で止まっているだけ」

「そ、そうですか……」


 唖然としている。そりゃそうか。自分より遥かに年上――という言い方もおかしいが――なのに、見た目は子供。あ、某アニメにちょっと被る。あちらは『大人』という表現だが、こっちは『ジジイ』。その差は大きいけど。

 隊長は何某かをしきりに考えた後、深々と溜め息を零した。


「赤竜様に変わりはありませんので、見た目は気にしない事にします」


 うん。その方が賢明だね。気にしたところで、ルベルのどこかおかしなマイペース具合は変わらないだろう。


「取り敢えず、本題に入らせて頂きます」


 あ、これって軽いジャブかなにかだったの? ……もしや、華麗にカウンター決めちゃった感じ?

 ……うん。隊長自身がスルーすると決めたんだから、なにか言うのはやめよう。

 すまんね。うちのショタジジイが……。


「見張りについてです」


 ああ……そうだそうだ。野宿するんだもん、見張りは必要だよね。

 この結界のお蔭で魔物は防げるけど、人は無理だもんね。夜なんて、盗賊なんかに襲われる心配あるか。


「私達が交代で見張りますので、ネスフィル殿とリジー殿は休んで下さい」


 は? え? それって、護衛の意味あるの??


「それだと、護衛の意味がない」


 あたしの心の内を代弁するかの様にネスが言う。やっぱり、そうだよね。


「いえ。ネスフィル殿とリジー殿には、昼間、万全の態勢で護衛をして頂きたいです。それに、元々メルディ国は盗賊被害の報告がほとんどありません。その為、夜でも我等だけで問題ないと思います」

「だが、三人で見張りをずっと行うのには無理があるだろう」

「いえ。本日さえ乗り切れば、明日、ルチタンの町で兵士の応援を一人付けてもらえます。四人態勢になりますので、さらに問題はなくなります」


 いや、言いたい事は分かるけど……。

 平和ボケしているあたしでも分かるよ。今まで被害がなかったからと言って、今後もないとは言いきれないと。

 しかも、犯罪者を護送中なんだよ? 盗賊なんて、犯罪者の集団でしょ? 仲間を増やす為に襲うのってありじゃない?

 とは思うものの、彼等はその道の本職(プロ)だ。ド素人が口を挟むべきじゃないだろう。

 でもさぁ……あたしの安心・安全、そして安眠の為にも、守りはしっかりしておくべきじゃない?

 ルベルに本体に戻ってもらい、ここで寝てもらう? ああでも召喚獣は、召喚主の所に残るか、元の場所に戻り、必要に応じて呼ぶかを選べるようになるんだっけ。ルベルはどうするつもりだろう?


(ルベル。あんた、自分のねぐらに戻る?)

(む? リジーが許してくれるならば、リジーの傍にずっと居たいと思うておるが?)

(寝床に帰って、片付けとかしなくていいの?)

(片付けする様な物はないのじゃがのぉ)

(あれ、そうなの? 竜って自分のねぐらに宝物なんかを溜め込んでいるイメージなんだけど……)

(……)


 ん、無言? いや、手と口はしっかり動いているから、何かを考えている?


(ワシの宝はマグマの中に隠してあるから問題ないのじゃ)


 はっ!?


(バッカじゃないのっ!? マグマの中に何かを隠して原型を留めていると思ってんのっ!?)

(む?)

(マグマの温度はおよそ1千度。普通の物なら溶けて消えるっての!)

(……では、ワシの宝は……)

(何を隠したか知らないけど、既に存在しないでしょうね)


 おい。ご飯を食べながら項垂れるなっ! ってか、食べるの止めないって、あんたの食い意地凄すぎなんだけど!?


(なくなってしまったものはしょうがないのぉ。だがこれで、本当に、寝床に戻る必要がなくなったの)


 こいつの『仕方ない』のレベルがよく分かんない。それでいいのか? とも思うけど、本竜が納得してるなら、もう放っておこう。


(じゃあ、ルベル。竜の姿に戻って、この付近で寝てない?)

「何を言っておるのじゃ! ワシはずっとリジーと居るのじゃ!」

「無理」


 バッサリと切って捨てるとルベルが項垂れ――また食に走った。こいつのストレス(?)発散法は食べる事?

 それはともかくとして。

 正直な話、あの(・・)テント内に誰かを入れるのは色々、いろいろとヤバい気がするんだよね。

 神が頑張って改造したテント。あたしはその神の加護があるから被害は最小限で済むだろうけど、他の人はどうなるか……現時点では不明。怖くて入れられないっての。

 まずは安全性を確認してからでしょ。なにもかも。


 さてと。これでルベルが拗ねてしまったようなので、元の姿に戻って――というのは望めない可能性が高い。

 じゃあやっぱり、魔法でなんとかするしかない?

 さっきからずーっとマルが出てこないので、どんな魔法があるか分からない。分からないから、対処のしようがない。

 でも……今までの事を考えると、願えば大抵の事は何とかなるんじゃね? と思う。

 唯一、願っても何ともならなかったのが魔法を作った時。でも、結界とか、そういった系統の魔法は自分や仲間なんかを守るものだから研究とかされてて、種類も豊富にあると思うんだよね。

 人が自分を守る為に考え得る魔法を複数使っておけば、安全確保できるよね? 多分。

 うん、そうしよう。取り敢えず、何を願うかだけど……。


 対人って考えると、頭に浮かぶのはセキュリティーシステムみたいなもの。

 この世界じゃ警備員が遣ってくる事はないから、逃げられない様にしておけばいいよね? あ、イメージはあの害虫ホ○ホイ? うん、その場に捕まって逃げられないって事で、それでいいか。

 後は、近寄ってこられても面倒だから、ある程度の距離まで近づくとホイホイ発動。ついでに、離れていても、そいつの仲間なら連帯責任(?)で動けなるというのがいいかな。

 あ、普通の人――真夜中に移動する物好きもいるかもしれないし――か、こちらに害を与える者かで発動する、しないを分けないと。基準は……マレットのマップ機能とリンクする感じで。敵が赤だから、赤いのは捉えるっと。

 こんな感じでいいかな? 仮に問題があっても、次の野宿で改善すればいいか。よし、発動――。


 あたしが願った途端、この野宿地から倍ほど離れた場所にドーム状の淡い光が輝き、次の瞬間には見えなくなった。

 うん。見えないけど、ちゃんと結界が張られているのが分かる。


『看破結果』

 複合結界

 複数の結界が合わさり、ひとつとなったもの。最上位魔法の一種。

 術者に害を与える者を捕らえ、逃がさない。効果範囲は魔力に比例する。


 まずまずだね、うん。


「……リジー?」

「ん?」


 なんか、恐る恐るといった感じにネスが問い掛けてくる。どうした?


「今の光は……」

「うん? 結界」


 効果を説明すると、ネスと隊長、そして後方で聞いていたらしい兵士達が一斉に引きつった。


(リジーもとんでもないのぉ)

(は?)

(魔法を複数同時に使用するのはかなり難しい。というよりもじゃ。人間でそれができる者など、数えるほどしか居ない筈じゃ。それを詠唱もなしに軽く発動させるなど……有り得んのぉ)


 いや、有り得るでしょ。実際、できちゃっているんだし――。

 などと反論などできるはずもなく。


 あはははは~。いっやー。この世界の常識知らないのって、ホント、まっずいねー。

 めっちゃくちゃ、やっちゃった? という感じだ。

 いや、うん。笑い事じゃないけど……。


 あたしが内心、冷や汗だらだら状態でいる間に、隊長やネスなんかは何某かを悟ったのか。


「今日はもう、休みましょう」

「そうだな」


 隊長は疲れた様に兵士の元へ戻り、もう休めとその場に寝袋を置いてごろ寝してしまった。

 ネスは、自分のテントに入――ろうとして、一緒に寝るとか騒いでいたルベルを引き摺り、自分のテントの中に放り込んだ。ルベルのいた場所には、汚れが見当たらない食器類。……もしや舐めた?


「寝る前に、リジーと本契約をするのじゃー」


 あ、ルベルが飛び出してきた。

 ネスはそのルベルの言葉に仕方ないと頷き、何故かルベルの真横を陣取る。……終わったら、またテントに放り込む為、かな? いや、うん。そんな気がする。


「リジー! 血をくれんかのぉ」


 ……オイ。


 あたしが思わず冷ややかにルベルを見ると、ルベルが突然慌て出した。


「本契約には血の契約が必要だと言った筈じゃー。ワシ、ワシ、危ない趣味はないのじゃっ!」

(それを言っちゃう時点で、そういう趣味があるって邪推しろって意味にならない?)

「違うのじゃ~~~~~」


 本気で慌てるルベルも面白いけど、このままじゃ話が進まないか。仕方ない。弄るのはこの辺にして……。


「指とかから血が滲む程度でいいの?」

「い、いいのじゃ!」


 ホッとした様にルベルが頷く。

 じゃ、早速――って、自分の指を刃物で切るとか遣りたくないな。しかも、あたしが持つ刃物って、包丁か隠し刀……使えない。

 仕方ないから魔法で。ちょっと痛いが、紙や包丁で切った時ほどじゃない。不意打ちか、心構えをしてたかの差かな?

 あたしがそうやって準備している間に、ルベルも手に傷を付けて血を――って、ドバドバ出すなっ! 見ているこっちが痛いわっ!!


「リジー。早くするのじゃ! 竜の治癒能力は高い故、直ぐに傷が塞がってしまうのじゃ」

「はいはい」


 言われるがままに血の滲んだ指をルベルに差し出すと、ルベルは自分の血が出ている傷口を近付け。


「ワシはリジーを主と認めるのじゃ!」


 いや、その一言、余計じゃね? 必要ないよね、それ。

 って、おやまあ。ルベルの宣誓に合わせたかの様にお互いの血が混じり、体が赤い光に包まれた。


「これで本契約の準備は完了じゃ。明日の朝にはしっかり本契約になっている筈じゃ」


 その『筈』がすっごい不安……。いかんいかん。妙なフラグは立てないに限る。


「では、お休みなのじゃ」

「おやすみ、リジー」

「あ、うん。おやすみ、ルベル、ネス」


 へにゃっとした笑顔を残し、ネスがルベルを引き摺ってテントに入っていく。ルベルが何故かニヤニヤし、ネスがすっごい嫌そうな顔をしているが……。

 ……ルベルとそのテントで寝るの? 狭くない? いや、片方はお子様だから大丈夫か?


 兵士達も既にテントの中なのか、野宿地には誰も居ない。馬達も寝る態勢に入っている。

 じゃあ、あたしも、テントの中に入りますか……。


 見た目は普通のテントの入り口をめくる。

 内部は……普通にテントっぽい? あれ? 看破結果間違っていた?


 疑問に思いながら中に入って知る。あたしは神の過保護を甘く見ていたのだと。


「ちょっ、なんなのっこれぇーーーーーっ!?」

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