17 丸投げされたヨ
目と耳と尻尾に負け、ネスフィルに魔法を教える事になり、一緒に居なけりゃ意味がないと護送の協力依頼を受ける事に。
引き受ける事を隊長に伝えたら、泣いて喜ばれた……あんたら、どんだけ魔力低いの……。ああ、見た目おばあちゃんなあたしに縋らなきゃいけないほどか。
……中の下以下……ソウデスカ……。
出発は翌日の朝になるからと、兵――正確にはカジス村警備隊だった……兵士がどこにもかすってないじゃないか――警備隊に宿泊費を負担――必要経費だと強固に主張された――してもらい、村にある結構な高級宿に泊まる事となった。
最上階の完全個室。扉を開けたら、うわっ豪華――なんて事もなく。木製のクローゼットに一人掛けのテーブルとイス、木製のベッドにちゃんと布団みたいな長方形状の物が設置され、清潔な麻のカバーが掛かっている。それだけの、至ってシンプルな部屋だった。
この部屋がこの国――というかこの世界? の一般レベルよりちょっといい部屋なら、一般レベルってどの程度の生活水準なんだろう……まさか、藁のベッド? いやいやいや。もう少しマシだよね?
……マルが答えない……ちょ、何、何なの? 気になるけど怖くて聞けないんだけど!?
へ? い、石ぃ!? 嘘っ、それっていつの時代!?
って、は? じょーだん……。王都から離れた町や村は木枠に藁等を詰め、カバーしただけ……そうデスカ……結局、藁なんだ。
それにしても、さぁ……あたし、自分の性格よくないって自覚してるけど……マルには負ける気がする。いや、絶対負けてる……これ、何をベースにして性格設定されているんだろう……あたしじゃない事を祈る。
と、まあ。どうでもいい話しは置いといて。
実は、すっごい今更なんだけど、大丈夫かと思う訳で。
そう――鑑定や識別魔法の使用が遠距離からも可能だと教えていいのか、だ。
現状、これらを防げる魔法は隠蔽や拒絶魔法だけ。それなのに、魔法の使用者より魔力が低ければ情報を見られてしまう。
これ、まずくない? 個人情報云々言ってるけど、あたしみたいにバレなきゃオールオッケーって事にならない?
魔力量によらないで防ぐ魔法ってないの? あるなら、それも教えておくべきじゃない?
……マルに断言された。『ない』と。一言で終わり……。
って、ちょっと! ふざけんなっ!!
ないなら、何で遠くから魔法使って情報見れちゃうよ~って教えていいって言ったの? あの絶望高年オヤジと同じ犯罪者を量産する事になっちゃうじゃないっ!!
あたしが面倒事に巻き込まれる可能性大じゃない!
――……?
……。
うん、あたしには何も見えない。異世界言語などシラナイシ……。
って、自己主張するなっ! 見ろって拡大表示までしなくていい!!
ああ、もうっ!! 何それ何それ何それっ!! 軽ーく『作って』って書くなっ!!!
え? 異世界知識を総動員して作ればいい? 異世界知識って言っても、あたし程度じゃ高が知れてるっての!
って、言いたい事だけ書いて消えるなぁーーーーーーーーーーーーっ!!!
あああああぁ……マレットが消えると同時に、今まで頭の中にずっと表示されていたマップまで消えた。
何これ、ストですか? え、ヘルプ機能って反逆するんだっけ? 異世界おかしくない?
うん? マップやヘルプがある方がおかしいのかな? でも、あれ? あたし、これが普通だと思っていたけど? もしかして普通じゃない?
でもでもでも! ゲームにマップやヘルプは――って、これ、ゲームじゃなくて現実じゃないかっ!! こ、根本的な事を忘れてたよ……。マルの意思誘導の所為だぁー。
思わず項垂れならが椅子に腰掛けると、テーブルに立て掛けたマチが勝手に動き、あたしの肩をポンポンと叩く。まるで、ドンマイ。めげるな、頑張れとでも言っているかの様に……って、動くなよ。あたしの中の常識が崩れていくうぅ~。
はぁ……。
マルに振り回されるのも癪だから、あたしに丸投げした対価を要求してやる。
次に表示される時は、必ず今以上の機能になっている様に! 確実に進化してなきゃ許さん。
基準は……あたしが進化していると認めるレベルで。どのくらいで認めるかは分かんないけど。
さて。課題を出してやった所で、あたしも丸投げされた事を真剣に考えてみよう。
どうにも誘導された感が拭えない……というか、完全に誘導されたけど、今後のあたしへくる面倒くささを考えると、真剣に何とかしないとまずいレベルでしょ。
鑑定魔法に対抗する魔法って……物語の定番は偽装魔法が多い。でも偽装魔法って、偽りを装うの言葉通り、ニセの情報を張り付けておくだけ。物語なんかだと、魔力量とかに関係しちゃうのがパターンだよね。
後は隠蔽魔法だけど……こっちは既にこの世界にあり、効果は微妙だ。誰だ。この程度で『隠蔽』とか言い出したバカは。
そうなると……後は言葉のニュアンスで作るしかないのかな? でも、鑑定の対義語って……あるの? 何も思い浮かばないんだけど?
鑑定……意味は確か、分析結果に基づいて評価や判断を下す事、だったような気がする。鑑定士とかって、モロそういう人だよね。これの反対の意味? ……犯罪臭しかしないんだけど。まあ、言葉が思い浮かばないから、実際どうかは知らないけど。
うーん……鑑定で考えるからダメなのか? じゃあ、上位魔法の看破?
看破の意味は……隠された物事を見破る事……これも対義語が思い浮かばないんですが……。てか、鑑定と微妙に違う系統の魔法な気がするけど、同系統扱いでいいのだろうか?
ああ、ダメダメ。現実逃避してしまった。言葉、対義語……うーん……?
――やばしっ! 28年も生きてきて、このボキャブラリーの少なさ! 何も出てきませんよ!?
って……あれ? 難しく考える必要ないかもしれない。あれだ。打ち消しの言葉を使えばいいんだ。確か、非とか無、未、不ってやつ。
えーと……非看破、無看破、未看破、不看破……って、どれもダメそうで、どれでもよさそうな気がする。
うわー、あたしってば、やっぱりダメダメじゃないかー。正しいニホンゴが分かんないって……。
頑張れあたし、知恵を振り絞れ!
えっとえっとえーっと……打ち消しって、否定する言葉で、不……不運、運がない……単純に否定している感じ。非……非常識、常識がない……こっちも否定しているけど、少しだけ強く否定している印象がある。あたしの個人的な印象だけどね。
未……未公開、いまだ公開されていない……否定はしてるけど、可能性を残しているっぽいな。無……無関心、関心がない……いまもこれからもないって言ってるような……全否定って感じだよね。
じゃあ、無看破? 無鑑定? いや、鑑定は未鑑定に聞き覚えあるけど、他あるの??
もう面倒だから『無魔法』にでもしちゃう? 全否定しちゃいますよって感じで。
あ、それいいかも。単純に、情報を見る魔法系は許可しない限り、み~んな否定しますよという効果。しかも永続可能にしておけば、面倒なトラブルも避けられる……と思われる。
ただ、『無』という言葉が持つ意味ってかなり広いから、無開示……造語な気がするけど、これいんじゃない? 情報開示などしてやるか! って感じで。
それから、消費魔力は1にしておこう。魔力量が少なくても、誰でも使えるのがベスト。あ、0の人はゴメン。魔法である以上、魔力ない人には対応できんよ。あ、できる! 仲間とか家族とかに掛けてもらえばいいんだ。じゃあ、他人や物にも掛けられる魔法って事で。
決まり決まり! あ~良かった。
……あれ?
……決めたのはいいけどさぁ。
……魔法って……
どうやって作るの……??




