12 敵ですヨ
隠蔽と拒絶の魔法を使って、問題ないかマルに確認していると、奥の扉から慌てていた受付嬢とすこーしだけ身なりが整っている若い男が出てきた。
……何かもう、若い男とか女ばかりな所為か、年齢分からないし、立場分からないしで面倒だねーこの世界。
『看破魔法』を習得しました。使用しますか?
→はい
→いいえ
――は? 看破? へ? 何それ?
『看破魔法』
鑑定魔法の上位に位置する魔法。使用できる者は数百年に一人いるかいないか。
魔法使用者の望みに合わせて情報を見通せる。
……はぁ。便利だねぇ……魔術神の加護。痒い所にちょこちょこっと手が届く。孫の手みたい。
ただちょっと気になるのは……さっきマルは『本人の許可なく鑑定魔法を掛ける』とか説明していたよね? つまり、黙ってに鑑定系の魔法を使うのってタブーって奴なんじゃないの?
でも……マルが無意味にこの『はい・いいえ』選択を出すかというと……付き合いは短いが――というより数時間程度だが――有り得ない、と言い切れる気がする。
つまり、マルが使えという事は、何かがあるのだろう。じゃあ、使ってみますか。
そんな訳で、使用よろしく。
『看破結果』
名前/ガゼル 年齢/53歳 立場/メルディ国ギルド・カジス支部の支部長
魔力量/橙・最大1,002 魔法使いとしては中の上レベル 鑑定魔法が使える
加護なし 独身 既婚の受付嬢メリーナと不倫関係
名前/メリーナ 年齢/33歳 立場/メルディ国ギルド・カジス支部の受付担当
魔力量/緑・最大604 魔法使いとしては中の下レベル
加護なし 既婚 支部長ガゼルと不倫関係
――……い……。
要らんわ! そんな不倫情報っ!! あたしはそんなの望んでない!!!
って、マレットに『……ただのお茶目です』と表示が……誰だ。こんな性格設定したのは。
不良品につき返品希望! もうちょっと有能なマップ&ヘルプ希望っ!!
――無理って言うなぁーーーーーっ!!!
はあぁ~~~~っ。
取り敢えず、知りたい情報はあったから今はマル達をスルーしとこう。ツッコミ入れるから、面白がってこんな性格になっていった気もするし。
あ、今度から情報表示する時、名前とか『/』の前の部分要らない。あ、でも、魔力量の文字はあった方が良いかな? 『魔力量・色・最大値』みたいな表示でよろしく。
で、その魔力量の所にある色って何?
『魔力光』
魔力の量によって色が変わる。
『魔力色と数値の目安』
下の下レベル 黒 0から199
下の中レベル 紺 200から399
下の上レベル 青 400から599
中の下レベル 緑 600から799
中の中レベル 黄 800から999
中の上レベル 橙 1,000から1,199
上の下レベル 桃 1,200から1,399
上の中レベル 朱 1,400から1,699
上の上レベル 赤 1,700から1,999
特の下レベル 銀 2,000から4,999
特の中レベル 金 5,000から7,999
特の上レベル 白 8,000以上、上限・現時点では10,000だと思われている
……説明長いなぁ……読むの面倒。
つまりは、上レベルまでは三段階に分かれ、数値の幅は200刻み。特レベルになると一気に上がって3,000刻みって事だね。
それでいくと、あのガゼルって支部長は中の上ギリギリレベル。メリーナって受付嬢も中の下ギリギリレベル、っと。
で、あたしは? 隠蔽魔法使って、どの程度に見えるの?
『リジー(梅木里子)の隠蔽済み結果』
白・最大計測不能 魔法使いとしては特の特レベル
ちょっと待て! 3分の1隠蔽したのに、結局、計測不能なんかい! しかも、特の特レベルって何? 上限は特の上レベルでしょ!?
は? 計測不能だから上レベルに入れる訳にはいかない?
――入れろやっ!! この世界の住人みたいな、くだらない差別をするなっ!!!
ごめんなさい?
謝るんだったら、最初からあたしを怒らせるような事するんじゃないっての。全く……。
とかくだらない事をマルと言い争っている(?)うちに、ガゼルとかいう男があたしの目の前に立ち――
あたしの周りで『何か』が弾けた? これって……あのゲス国の王に魔法を使われた時に似ている?
あ、鑑定魔法が使われたんだ。そういえば、使えるって書いてあったね。
……なるほど。ホントに断りなく見ようとするんだ。
最低、最悪、ふざけんな。
計測不能になったんですとか、そんな感じの事を受付嬢に言われたんだろうけど、だからって何も言わずに人の力を見ようとする? 何の為にギルド登録時、名前以外任意にしてんの? ギルド全体が決めている個人情報保護どこいった。
仮にも支部長に就いてる奴がこうって事は……このギルド全体の個人情報への認識が低いって事かな?
まさか鑑定魔法が弾かれるとは思っていなかったのか、呆然としている男をあたしは睨み付ける。
こいつ、平気でルール破る奴――不倫してる所からも断言しちゃう――のようだから、あのゲス国のアレ等と同類。あたしの敵決定。
そう、認識した途端。
辺りに野太い悲鳴が響き、本日何度目かの老化現象が目の前で起こる。
うっわー……それなりに見れる顔していたのが……完全にくたびれ中年オヤジ――よか酷い。人生悲観レベルな高年オヤジだわ。
隣に居た受付嬢がその変わり様を見て数歩下がった。
――ん?
『看破結果』
ガゼル 53歳 メルディ国ギルド・カジス支部の支部長
魔力量・緑・最大731 魔法使いとしては中の下レベル 鑑定魔法が使える
加護なし 独身 既婚の受付嬢メリーナと不倫関係
メリーナ 33歳 メルディ国ギルド・カジス支部の受付担当
魔力量・緑・最大604 魔法使いとしては中の下レベル
加護なし 既婚 支部長ガゼルと不倫関係……だったが、今後それはなくなった
早速、あたしの要望に応えた表示ご苦労様。
なるほど……老化すると魔力量が減るんだね。
それに……うん、女って変わり身早いね~。同じ女だけど、速攻で手の平返した受付嬢には引くわ……。
取り敢えず、マルもマレットも――グッジョブ!




