回想その2
この物語は創作です。モデルはありません。
さて、話が前回、前々回と遡るが、その頃旦那が離婚しようと言い出して、美雪も参って居た。
すると、支社にトレーナー研修室を新たに発足する事になり、そこの代表トレーナーを美雪にすると言う話が持ち上がった。つまり営業所を離れ、一営業員じゃなくなり、主任と呼ばれながら、営業所に配置されているトレーナー達と、研修に来る営業員を指導する立場になるのだ。
美雪はその代表トレーナーになる事にした。給料は固定だからビックリするような高給は望めまい。しかし、毎月ノルマは申込書一枚で良い。その代わり、研修室に来た新人達が保険を取れるように指導する。もしくはトレーナー達にもっと力を付けさせる。時にはあちこちの営業所に出向く。
見た目も良く、明るくて、元気で、勝気で、常識があって、保険も取れるが、それでいてビックリするような保有(今まで取った成績の蓄積数字)の持ち主でもなく、比較的新しい人が、こんな人になりたいな!と、憧れられる存在。
まさに美雪にうってつけのポジションであった。
東京本社の、大手町にある養成所で研修を何回か受け、美雪は自社ビルの研修室の代表トレーナーに命名された。美雪より先輩が2人。昔、鬼所長、しかし、何人もの優秀な営業員を育成したと言われる研修室長がひとり。
仕事は激務だったが、非常に綺麗な部屋、優雅な空間であった。
佐藤みたいな訳のわからない婆様や、魑魅魍魎の営業員達から解放されたのだ。何か会社のイベントがあるとどんな時でも出席する事は義務づけられだが。
美雪達、支社代表トレーナー軍団は、常には高級スーツを見にまとい、8センチヒールをはいた。膝上のスカート。グッチやコーチのバック。エルメスのスカーフ。
保険や採用を司る支部長軍団と、育成を司るトレーナー軍団は、まさに保険会社の花であった。
そして、会社側にいいように、いいように使われ、持ち上げられ、チヤホヤされ...出来の悪い営業員の指導でほとほと疲れてはいたが、美雪達トレーナーは外見は常に華やかであった。
そして、それと裏腹に少しずつ少しずつ、薄紙を剥ぐように、募集力、いわゆる保険を取る営業力が落ちていった。
不思議だと思われるだろう。人を指導して、現場を回っているのに。口先だけで指導する訳じゃ無く、同行指導するのに。
そこが、営業の恐ろしいところだ。保険営業とは、頑張れば誰にも出来るのだ。その反面、自分のために成績を取らなくなって来ると、途端に勘が鈍る。地べたを這いずり回らなくなった証拠だ。
美雪もその生活10年。会社の顔だ、代表だなんだと言われながら、大した募集力もつかず、かっこよく指導することだけ覚えさせられ、自分でも気づかず、とんでもなく鼻だけ高くなった。プライドがスーツ着て歩いていた。
そんな時、美雪の会社とひとまわり小さな会社と合併する事になった。
美雪はそれからまた別の波に飲まれる事になる。
代表トレーナーになって、華やかな生活。しかし、どうやらまたまた別の苦労が待ってるようね?




