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桜の咲く頃  作者: naomitiara-tika
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美雪再び....最終回

この物語筈よね創作です。モデルはありません。

『いつも同じようなやつでゴメン〜。』

10枚セットの毒ヘビ、カタツムリ、アロエと書かれた美顔パックを3セットほど渡す。月一の食事会だ。



例の、もと同期の彼女62歳は、特に趣味の合う5人のメンバーの中の1人とまたソウルに行って来たらしい。



もう1人のメンバーは、現在66歳。遠方の県に住んでいるが、娘が東京でキャリアウーマンなので、しょっちゅう東京に出かけており、60歳で退社し、3000万の退職金と厚生年金を運用しながら、年がら年中、ハワイだ、台湾だ、ソウルだと出向いていた。



美雪のその元同僚は、まだパートも続けながらソウルに行く時だけ東京で待ち合わせて彼女に付いて行く。何でもご贔屓の韓流スターがいるとかで、いつの日かソウルに年の半分は住みたいと大真面目に言っている。




いつまでも夢見がちな少女のような人だ。昔、美雪と一緒に悔し泣きしていたキャリアウーマンだった同一人物とはとても思えない。



美雪は、おっとりと微笑みながらその話を聞いて、内心思いっきり舌打ちする。



チッ!あんた達はなんてお気楽なんだ!



美雪も来年で65歳。まるで閉じ込められたような支社のトレーナー室にいつも1人でいる。新人の指導と、支社の雑用を、毎年毎年減らされていく給料でいいようにこき使われている。



誰も美雪がその仕事をする事に対して感謝などしない。誰も名前も良く覚えていない。下手すると組合の寄付金を募る時だけ案内が回ってくるが、そのお礼に配られた缶コーヒーの一本も回って来ない。



支社にいると、スタッフの積み立てというのがあり、強制的に給料から引かれているが、この前など積み立てしてるのだから誘われるべき飲み会にも声が掛からなかった。昔の美雪なら一発言ってやるところだが、美雪は黙っていた。皮肉を言うの気にもなれなかった。



そんな存在を忘れられているような飲み会に行って何が楽しかろう?



美雪はキッと唇を噛む。



私だって、もう少しで1000万ぐらいの退職金も入る。母親が、死んだの遺産だって少しはある。あんた達には及ばないかもだけど、私だって、優雅に暮らせる筈だ。高給取りな息子だって2人もいるんだし、いざとなったら扶養にぐら入れてもらえるだろう。



それでも美雪は、お気楽に見える同期の連中に腹がたって仕方なかった。一緒に話していると不安でならなかった。



同じスタートに立っていた。同じ苦労をさせられた。みんなで、会社の仕打ちの冷たさを何時間も語り合って、腹の中を吐き出しあった。毎年毎年5人で旅行や食事会をした。



それなのに、副所長任命から20年経って、なんでこんなに惨めさだけが残ったのだろう?何をどうすれば良かったのだろう?



その彼女のようにさっさと会社に見切りを付けて転職するなんて無理だったし、何よりパートになるなんて美雪のプライドが許さなかった。



貴女、美人なんだから再婚なさいな?と、その彼女から良く言われるが、今更、金持ち老人探すのも、イケメンの若い男を掴むのも、絶対嫌だった。遊ぶのさえゴメンだった。没頭出来る趣味も無いし。



いくら考えても答えは出なかった。



でも、と美雪は考え直す。



今日まで、人様に蔑まされても生きて来れたんだから、これからだっていくらでも生きていける。私は美人だし、能力高いんだから。



自分探しなんて、やりたい趣味なんて会社辞めてからいくらでもやってやるわよ!



美雪は暗くなった誰もいない部屋にキーをロックしてから支社ビルの最後の部屋をロックする。指紋で解除だ。このドア私しか開けられないんだから、私がいないと会社も困る筈よね?



そーだ、87歳になる佐藤が入院したと聞いた。久しぶりに米川と一緒におしゃべりしながら、お見舞いに顔出してみよう。




最後の最後まで頑張る美雪。定年はすぐそこだ!

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