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桜の咲く頃  作者: naomitiara-tika
13/15

同期の脱落

この物語は創作です。モデルはありません。

美雪の同期連中は、美雪に対してもちろん同情的だった。会社の冷たさに美雪よりも興奮して怒りを露わにしていた。



同じ支社から一足先に所長に上がった同僚も、所長には昇格したものの、厳しい本社検査に耐えきれず、これまた力量不足でげっそりとやつれていた。



美雪より3歳ほど若いのだが、もともと老け顔に持って来て、絶え間ない苦労で美雪より3歳は上に見えた。各県の副所長だった同期も、みな苦労三昧で、上手く行って脚光を浴びているのはほんと何人かだった。



みんな、出来の悪い営業員の尻拭いと、会社の調子の良いハシゴ外しで苦しんでいた。それこそ吐きながら地べたを這いずり回り、血の涙を流していた。




それでも、それでも........



美雪は、変わらず友情の絆の厚い友人達の話を聞きながら思う。



私よりはマシだって。



あんた達は、副所長時代の苦労はイットキにしろ報われてそうやって全国の所長会議に出られたんだから。雑用係じゃ無くて、所長として扱われてんだから、他人様から。



ちなみに、営業所の成績にもよるのだが、副所長から所長になると、平均、年収で200万ぐらい違う。



勿論、成績を上げられない営業員への貸し倒れが多く、ペナルティーも高く、決して優雅に給料を使えるだけでは無いのだが。



それより何より、支社の人の目は、世の中の他人の目は、社会的に成功した人間へ向けられた賞賛の目なのだ。美雪はそれらを浴びた彼女達はやはり選ばれた人間だと思った。仮にすぐに滑り落ちるとしてもだ。



これからも、この人達とこうやって集まって食事したり飲んだり、旅行したり出来るのだろうか?私だけが惨めなこの空間で。



しかし、美雪はやはり根性の人だった。



そうこうしながら2年。支社で一緒に副所長に出た同期のその同僚が、所長を降ろされ、その後、あっさりと会社を辞めてしまったのだ。彼女の場合、配偶者が大企業勤務で当時海外だったので、そちらに一緒に行くと言う名目。経済的な安定が彼女に退社の決心をさせたのだろう。



美雪は内心ほくそ笑んだ。



これで、他人から失敗した人間のレッテルを貼られたのは、美雪だけじゃ無くなったのだ。しかも、片方は保険会社において絶対タブーと言われている途中退社だ。



美雪はその友人の苦労も散々間近で見たり聞いたりして来たので、かなりの同情はあった....

が、ホッとする気持ちの方が強かった。



きっとこれからは、脱落者は美雪じゃ無くて、その同僚だと支社の人間は噂するだろう、そして、美雪のことはあんな目にあったのに、支社に残って頑張ったと、思ってくれるだろう。



しかし、それは甘かった。



確かに支社の連中はその同僚の事を脱落者だ、途中から逃げ出した、出来ない事を引き受けるからあんな目に会うのだと、散々悪口を言っていた。



その反面、悲しいかな、美雪の存在など、いや美雪も何年か前は副所長で、所長候補だったのだなど、思い出す人間もまた誰も居なかったのだ。



美雪はいつの間にか支社で完全に忘れられた人間だった。

同期の同僚も脱落して、自分の惨めさの面目が立ったと思う美雪。悲しいプライドだねぇ。

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