元のポジションに戻される
この物語は創作です。モデルはありません。
惨め?悔しい、情けない、会社のせい、病気になったせい、底意地悪い所長連中のせい、自分の運の引きが悪かったせい.............
いや違う。
自分が会社に認めてもらえなかっただけの話。
認めて貰う以前の問題。基礎力、現場の毛経験値、素質の欠如。努力する前の基本の欠如。
美雪は元の支社代表トレーナーと言う位置に戻され、毎日毎日悶々と、しかし淡々と、積み上がった仕事をこなした。
幸いな事に、美雪が副所長として西営業所に行かされている間に、先輩トレーナー2人は辞めて、室長も本社に戻って居なかった。美雪はその部屋に1人。たまに支社のスタッフが顔出すだけ。
あの頃はなんて優雅だと思った部屋が、戻って来てからは、座敷牢のように思えた。誰も哀れんで近付かない空間。
仕事も雑用も相変わらず山のように有り、忙しさがあの頃の美雪を救ってくれていた。何も考えず、ボロボロになるまで体を動かしていたかった。
じゃ無いと、自分を責める気持ちが強くて、美雪は街中で突然、叫び出しそうだった。
でも一体どうすれば良かったのだ?支社の代表トレーナーになれと会社が言った。そして次は副所長になれと会社が言った。
お太鼓叩いて上の地位に次々に上がらせられたものの、やっぱり実力無いから元の位置に戻りなさい。私達は知らないよ?チャンスは与えてあげたよね?他の同期はちゃんと所長に昇格したんだから。あんただけ能無しって事が証明されたんだよ?
ってところだろうか?
美雪は毎日毎日、同じ思考回路をたどった。
夜、寝付く時、明日の朝、このまま死んでいればいいと何回考えたことか。嫌がらせのように県境にまたがる営業所の支援に行かされながら、何回このまま失踪してしまおうか?と考えた事か。
しかし元来、美雪は意地っ張りであり、会社にも支社にも、その辺で会う、元の西営業所の支部長連中にも、冷たく扱われれば扱われるほど、美雪は会社にしがみついた。
知らん顔して耐えに耐えた。
離婚して出て行った旦那にこの時だけは感謝した。もし旦那って人間がいて経済的に懐に転がり込めたなら美雪だってその時に辞めていた。しかし、美雪はバツイチ。働かねばならない。少なくとも、厚生年金が貰えるまでは....
上の息子達は心配してないが、末っ子の娘もいる。せめてこの子が嫁ぐまでは。
そんな時、あの佐藤から連絡があった。
『西営業所で散々苦労したのは聞いたよ。大変だったね。良かったら米川も呼び出して久々に食事しらがら騒ごうよ!』
美雪は佐藤の電話の声で泣いた。あんなに自分をいたぶった佐藤だけが、自分を心配してくれている。いや、それは美雪が順調に出世しなかっから安心したのもあったろう。でも、美雪は素直に嬉しかった。
それぐらい寂しかったのだ。
降格したけど、会社を辞めれ無い美雪。そう言う苦しい時って、必ず有るよね!




