副所長としてつまずく
この物語は創作です。モデルはありません。
副所長としての仕事は難航を、極めた。
美雪の場合、長い間、営業所から離れており、営業所の雰囲気から遠ざかっていたのもあるが、何と言っても営業員の尻拭いをするのは、正式には初めてだった。
今までは、保険会社に入りたての新人の研修をしてやったり、たまに営業所詰めのトレーナーが足りない時に支援に出かけたり、支社の催しがある時受付をやってり、それらの書類作りを手伝ったり。会議と言う会議の司会をやったり。
つまり、かっこいい雑用はどんな組織にもいくらでもある訳で、またやる人が居ないと困るわけで、仕事は掃いて捨てるほどあり、決して暇に過ごして来た訳ではないのだ。
そして、周りの営業員達に見本を見せる立場の人間なった美雪は、保険も取れて当たり前、育成出来て当たり前、しかも、自分の成績も取れて当たり前だった。
しかし....
美雪は申込書の作り方や、テレアポ、保全(入院手続きや、保険内容に関する細かいフォロー)は完璧に出来た。
しかし、何人もの営業員に付いて、保険を一緒にあげる事は不可能であり、またそこまでの力は無かった。そこが長い間、現場を這いずり回って勝ち残った優績者達と差がついてしまったところだった。
そして、悔しい事に、いつの間にか周りのベテラン営業員や所長や支部長達にすっかり、見透かされ、美雪は徹底的にていのいい雑用係として様々に人間達のパシリをやらされるハメになった。
もちろん、愚痴も悩みも、本社研修でも言ったし、同期の連中にもぶちまけた。しかし、最初はみんな慣れない業務で、同じように悩んでいたが、年数が経つにつれて、個人差が出て来た。
美雪は副所長になった途端、所長に恵まれなかった。あんなに営業員で頑張ってた時にはどの所長も美雪の味方だったのに。
つまり、保険会社の所長という人種は、保険を取ってくる営業員の事はお姫様扱い、しかし、会社側の人間は邪魔だっていう事だ。営業員の支援を必要以上に出来ない人間など自分の足を引っ張るお荷物でしか無い。
しかし、そうは言っても、副所長がもし所長に昇格したら、それは所長の成績になり、大出世となる。なので、一生懸命面倒見てくれる所長もしたまにはいるのだ。
しかし、3年のあいだ、所長が3人変わったが、美雪はことこどく、美雪を悪し様に扱うやつしか当たらなかった。たいした事なにのに支社のトレーナーから副所長に上がった美雪が生意気に見えて仕方ないらしかった。
悔しい事に、美雪が雑用と言う雑用をやらされてボロボロになっている3年の間に、ほかの4人は、決して順調だったわけでは無いのだが、それぞれが所長に昇格して行った。
美雪は焦り、惨めだったが、こればかりはその営業所の所長推薦による、支社長決済なので、どうしようも無かった。
美雪はついに全国20人いた同期の中で、1人だけ副所長のまま、3年の満期が来てしまった。そんな時、美雪は激しい腹痛を起こして緊急病院に運ばれて、手術を受けた。
卵巣嚢腫だった。水がたまっていたそうだ。ガンじゃ無かっただけ良かったが良くここまでほっといたもんだと、担当医に説教された。
3週間入院し、ちょうど来た更新時期にぶつかり、何の相談も無く、病気と言う理由で、美雪は当然のように、副所長から降ろされ、支社のトレーナーに戻された。
48歳になっていた。
副所長を降ろされてしまった美雪。悔しいね。




