期待してもいいの?
年の差!
直接的な描写はありませんが、単語や状況はあります。ご注意下さい。
よろしくお願いします。
子供の頃、私はお金持ちの家の子だった。家は大きかったし、護衛やお手伝いさんもいた。その護衛の中で、物凄く強い人がいた。その人が、私の専属のボディガードとなった。
私の家が没落し、放火されて一族がほぼ全滅したときから、彼は私についていてくれている。お金も払ってないのに、何もしてあげていないのに。
「サクー」
「どうした?」
「眠いー」
「さっさと風呂入れ。風呂で寝ろ」
「溺れたらどうすんの?」
「ナギが死ぬ前に俺が引き上げてやる」
「きゃーえっちー」
「早く入れ」
昔は、凪さんと呼ばれていた。私はあの時からサクと呼んでいた。しかしあの時から…
「パパもママも皆…死んじゃったんだね。ね、サク。今月分の給料はちゃんと払うから、ちょっと待ってて。私働くから」
「いりませんよ」
「何で?でもほら、働き口がなくなっちゃったんだから、失業代とか」
「私は凪さんの護衛ですので。さて、行きますよ。記者に捕まったら面倒ですし、とりあえず遠いところへ」
「え、サク!私サクにお金払えないって」
「金が欲しくてあなたを守っていたわけではありませんので」
燃え盛る家を見てから、私とサクは遠い町へ向かった。
「サク」
「何ですか。まだ護衛はいらないとか言う気ですか」
「そじゃなくて、さ。それについてはもう諦めた」
「では何ですか?」
「もう仕事の関係じゃないし、私のこと凪さんって呼ぶのやめない?敬語もいらないよ」
「ですが…」
「嫌ならサクのこと萩野さんって呼びますよ」
「ナギ、でいいか」
家族のように暮らしてきた。一回り年齢が離れてるから、多分サクは私のことを妹だと思ってるんだと思う。
「お風呂出たよー」
「だから下を履け」
「どうだ、私の色気を見たか!」
「風邪引くぞ」
サクのことは好きだ。異性として。
いつも一緒にいるし、すごく近い存在だし、それに何年も一緒にいるから言えないけど。だってもし言ったら、気まずくなるでしょ。同じ家に住んでるんだし、気まずくなったら嫌だ。それで一緒にいられなくなったらもっと嫌だ。
多分サクは、私のことを異性として全く見ていない。女の人とラブラブしてるとことか見たことないけど、私のいないとこで仲良くしてたりするかもしれない。
だって12歳も離れてるから。細っちいし色気もないし。
「サクいいなー筋肉あるし背高いし」
「筋肉なんてなくていいだろ。それにナギはチビじゃない」
「身長はともかく筋肉ほしいよ!そっちの方がかっこいいし強くなるじゃん」
「俺が守ってるんだから強くなくていいだろうが」
そういうことを素で言うやつだ、サクは。きっと他の女の人にもそうやって言って、たぶらかしてるんだろうな。
「ナギは好きな男とかいないのか」
「え、やだ。サクから恋バナ振ってくるなんて…まさか好きな女の子でも」
「ふざけるなよ」
「あはは、ごめんごめん。んー…別にいないかなぁ、結婚とかもしたくないし」
結婚したら、サクと別々になるってことだし。もしあの時、本当にサクが好きな女の子がいたとかだったら、立ち直れてなかったはずだ。
知らぬが仏ってやつ。
「サク!一緒に寝よう!」
「部屋に帰れ」
「えーいいじゃん!大丈夫変なことしないし」
「変なことって何だ。二人は狭いだろうが。一人で寝ろ」
「いやほんとにマジで、怖い番組見ちゃって一人が怖いんですって」
「寝る前に見るのが悪い、自業自得…勝手に入ってくるな」
「お邪魔しまーす!」
「邪魔だ!」
ちょっと試してみたんだ。私が隣に寝たらドキドキしちゃうのかなサクでも!とか期待してたのに、すぐ寝るんだもん。
相手にされてないなーって思った。
「おい、こんな遅くまで何…どうした?」
「こっ、こわ、怖かったあああ」
「ちょ、おい泣くな。何があった、何かされたのか」
「おと、男の人がああああ」
あの時のサクは怖かった。私を拉致ろうとしてきた二人組より怖かった。
私を落ち着かせてお風呂に入れ、お風呂から出たら血のにおいがするサクがいた。
何も言わなかったけど、多分二人組を殺したんだと思う。
「サクだーー!おっかえりー!」
「…どうした。何でそんなにテンションが…酒飲んだのか?」
「あのねー、サクが前飲んでたやつ安かったから買ったの!で、ちょーっとだけ飲んでみたらおいしくなかったー!あはは!」
「まずくて何よりだ。つーかお前、一口でそこまでできあがったのか」
「サク残り飲んでいいよ!」
「あぁ。とりあえずナギ、寝ろ」
「やーだー!眠くないよ!」
「だろうな」
無理やり私をベッドに連れていった。もちろん私の部屋の。
お酒でめっちゃ酔ってたけど、記憶ははっきりしている。
「ねーねーサク!」
「何だ」
「ちゅー!」
ベッドに座った私は、酔った勢いでサクにキスをせがんだ。別に付き合ってたわけでもないのに。多分その時、心の底の欲望が出たんだろう。
固まったサクを、あの時初めて見た。
「サク?起きてるー?」
「…寝ろ、疲れてるんだろ」
「サクがちゅーしてくれたら寝るー!はいっ、どうぞー!」
そう。サクが、してくれたのだ。触れるだけのものだったけど、私にとってはすごく嬉しかった。
「…寝ろ、ナギ」
「やったー!寝るー!」
翌朝、ちゃんと記憶があった。すっごい恥ずかしくて、起きても30分くらいリビングに行けなかった。ずっとベッドで呻いてた。そして、覚えてないことにした。
「おはようー」
「…あぁ」
サクは、目を見てくれるどころか、おはようとさえ言ってくれなかった。
ちらりとこちらを見てから、相槌を打っただけ。
嫌われたな、と思った。あんなわがまま言って、そういう対象でもないのに無理やりやらせて。
数日そういう日が続いて、私は外に出掛けることが多くなった。サクと同じ家にいても、喋らないし、見てくれないし。
喫茶店で働いてる人と、仲良くなった。サクと正反対で、細くてよく笑う人で、ふわふわしてる人だった。
その人に告白され、迷った。でもどうせ、サクは相手してくれないから。そう思ってたら、迫られてキスされそうになった。せっかくサクが触れてくれた唇なのにな、と思った瞬間、彼が離れた。
サクがいて、彼の首根っこを掴んでた。夜で暗かったから顔はあまり見えなかったけど、かなり怒ってるような気がした。
無言で私の腕を掴み、家に引っ張っていった。明日あの人に謝らなきゃと思った。あと、断ろう、って。
家に入ってリビングに入り、壁に押し付けられた。サクの身長は高いしいかついから逃げようもなかった。
「今のやつは、ナギの好きな男か」
少し迷って、無言で首を振った。ちらっと上を見ると、すごい睨まれてた。慌てて床を見た。
「じゃあ何で」
「サクが」
「あぁ?」
「サクに嫌われたから。私分かってるもん、無理やりちゅーさせてその次の日からサクが私のこと見てくれてないこと。せっかく諦めようと思ったのに、何で邪魔するの。サクだってこんな年離れた子供といつまでもいるの迷惑でしょ、だから、だから頑張ったのに!何で、何でこんなことするの、う、ううう」
サクの方を見れなかった。とうとう言っちゃった、もう一緒に暮らせない。
きっと、サクも気づかないふりしてくれてたのに。全部水の泡だ。
「俺は、ナギのこと好きだから」
「だからそうやって期待させるようなこと言わないで!ちゅーしてって言ったのは私だけど、本当にしたら期待するでしょ!
あーゆーのは本当に好きな子にしかやったら」
今度は、触れるだけじゃなかった。押し付けられるように、黙れと言わんばかりにされた。
「だから、キスしたんだ」
「だ、だから、って」
「ナギが本当に好きだからした。流されたわけじゃない」
訳がわからなかった。状況整理もできず、今どうすればいいのかも分からず。混乱した私は、どういうわけか。
「うあ、あ、ありがとうございました!」
そう叫んで、サクを突き飛ばして自分の部屋に閉じ籠った。後から考えれば、サクを突き飛ばしたなんてすごい怪力だし勇者だと思う。
翌朝は、どうやって部屋の中でこれから生きていこうか本気で考えた。
食事とトイレとお風呂が問題だなと思った。その時、私が起きた物音が聞こえたのか、ドアがノックされた。
「ナギ?」
いつもと同じ声、トーン。本当慣れてるというか余裕というか。少しムカつく。
スルー。内側からの鍵はかかってるし、多分あと1時間は持つ。
それまでに何か策を。
『バキィッ』
「やっぱ起きてんじゃねぇか」
「ななな何壊してんのー!?」
私の部屋のドアをぶっ壊しやがりました。怪力にも程があるよ。そこまでして壊すタイミングじゃなかったよね?
「壊さないと出てこないんじゃないかと思ってな」
大正解だけど!よく分かってらっしゃる!
近づいてくるサク、枕を盾にしてベッドに乗る私。
「今まで散々煽ってきてたのに、今更何やってるんだ」
「だ、だってサクが無反応だから煽れたんだもん!」
「俺が何も感じてなかったわけないだろ。どれだけ耐えたと思ってる」
「じゃ、じゃあお風呂のあとのあれとか色気感じてたの!?」
「色気…は分からん」
もう目の前にいるこいつの髪の毛引っこ抜いてやろうかと思った。ちょっと期待したのに。分からんって何だ。色気なしかよ。
「まぁただ、食いたいとは思った」
「へ?」
「悪いが、本当は夜がよかったんだ。待ってやった分許せ」
「は?」
ドサ、と上から覆い被さってくるサク。間に枕があったのに、放り投げられた。
「え、サク?あの、何する」
ぎゅ、と抱き締められた。そしてそのまま、キープ。
「…サク?」
「………………寝る」
抱き枕ですか!?期待した私が変態みたいじゃん!しかももう朝の7時なんだけど!こっから二度寝?
もう寝息聞こえるし…動けないし…
でも、サクからこうしてくれるのは初めてだし、嬉しい、かな。
よし、私も寝よう。
サクはいろんな仕事をしてる。だいたい力仕事か、戦う系だけど。
あの抱き枕事件から約1ヶ月。ふと思ったけど、私達付き合ってない、よね?
付き合ってくださいと言われてないし言ってもない。そして一緒に住んでるけど同棲してるわけではない。
前と変わってなくない!?
あれからちゅーもしてないし、もちろん体の関係もない。
やっぱり、子供体型じゃやる気にならないんだろうな。色気もないと言われ、絶世の美女でもないし。
そんなある日。
夕飯の買い物の帰りに、サクに会った。会ったというか見た。背が高くてスタイルがよくて出るとこ出てる女の人に抱きつかれてた。
サクが抱きついてたわけじゃないからまだいいんだけど、でもやっぱり、できたらそういう人の方がいいんだろうなと思う。
25cm差だし、12歳差だし。
あーやって抱きつけないし大人っぽくないし。首元に抱きついたら、私絶対浮く。物理的に。身長足りないから。
…あの女の人、サクのこと好きなのかな。先に私が好きになったのになあ。でも、私の彼氏なのにって言えないのが嫌だな。
付き合ってくださいって言ったら、サクどう言うんだろう。…言えないけど。
ガチャリ、と玄関のドアが開いた。
「おかえり!」
「ただいま」
この瞬間、夫婦みたいに見えるかなって思う。夕飯、机に並べなきゃ、と思ったとき、すれ違ったサクのスーツから香水のにおいがした。
あ、さっきの女の人のにおいだ、きっと。
「サク、まだ1品できてないから先お風呂入って!」
「あー、分かった」
普段そんなこと言わないから、不思議そうな顔されたけど、少し暑いのかすぐ了承してくれた。
知らないにおいがついたまま、普段通りの会話ができないと思ったから、せめてお風呂にって。
机にご飯を並べ、完璧。お風呂からサクが出る音がしたから、TVの前のソファーに座った。
夕飯が遅くて私が先に食べちゃうときは、いつも食べてるサクを真正面から見てるんだけど。食べてるサクめっちゃ可愛いから!
今日は挙動不審になりそうだから、TVの前の方に移動した。
サクがお風呂から出てきて、席につく。TVを見てる私が、自分の席の前に座るのを少し待ってたけど、私は動かない。視線を感じるが、TVを精一杯楽しむように心掛けた。
諦めてくれたのか、そのまま食べ始めるサク。何か悪いことしてるみたいだけど、でも、サクが女の人に抱きつかれるのが悪いんだもん、とかふてくされてみたり。
本当は、スタイル抜群でもなく絶世の美女でもない私のせいなのかもしれないけど!
TVの内容が右から左に抜けていくけど、ずっとTVを視界に入れておく。気づくと、横にサクが立ってた。
ビクッとしてしまうが、サクは私の隣に座った。そしてなぜか私を持ち上げて自分の足の間に座らせた。
後ろからお腹に手が回され、逃げられない状況。
「食べ終わったの?」
「いや、まだ」
「食べ終わるまでTV見ちゃダメだよ」
少しふざけたようにそう言う。顔がお互い見えないのがラッキーだった。
「ナギがいつもと違ぇから」
「そうかな」
そら、バレるよね。
「何かあったのか?」
「んー、別に?」
「じゃあ、俺何かしたか?」
「…大丈夫だよ?」
答え方間違えたかなと思った。
何かした?と聞かれ、大丈夫はおかしい。
「どうしたらスタイル良くなれるかなーって思ってさ」
「何で?」
何でって何で!
それはまぁスタイル良い方が好かれるから、でしょうよ。
「そっちの方が多分好きなんだろうなって思ったから」
「…誰がだ?」
お前しかいないだろ!?と叫びそうになった。よく考えて、他に私の思い人がいると思いまして?
しかもサクの、誰がだ?って言葉がちょっと威圧的だったり。
「サクが」
そう答えると、少し強まっていた私のお腹に巻き付く腕の力が弱くなった。
「何でそう思った?」
さっきから質問ばっか。
「…そういう女の人が、サクに合うのかなって」
「…さっきの女を見たのか?」
こういう時勘が鋭いのは何でだろう。いつもアホで何も気づかないのに。
「あれは」
「浮気だーとかって疑ってるわけじゃなくて。てか浮気って言葉が使えるのかも分かんないし」
よく分かってないサク。
「だって私達、付き合ってるとかそういう関係じゃないでしょ」
そう言った瞬間、ぐいっと力が強くなり、より強く抱き締められた。
「じゃあどういう関係だ?」
後ろから耳元でそう聞かれる。何か変な感じがする。
「え、どういう、って」
「俺はナギが好きだし、ナギも俺のこと好きだっつってくれたからそういうもんだと思ってたんだが、違ぇのか?できれば結婚だってしてぇし、でもナギが結婚はしたくねぇっていうからまだそれは言ってなかっただけで」
「ちょ、待って!結婚したくないなんて言ってないよ!?」
いつのまにそんなことになってるの!
てかそんなこと思ってくれてたんだ。すっっごい嬉しい。サクがまともに考えてくれてるってだけで嬉しい。
「…昔、結婚はしねぇっつってた」
「え?…あ、あれは…あれは結婚したらサクと離れることになるから嫌だなって思って言っただけでサクと結婚したくないってことじゃないの!」
恥ずかしかったけど一気に言った。無言のサク。そして、あー、という声を出した。
「そういうことか」
「そういうこと」
「言っとくが、俺は別にスタイルが良いとかどうでもいいからな」
「…んー、うん」
「納得してねぇだろ」
あと、あの女は違うからな、とサクがつけたした。それは、納得してる。
「じゃあ結婚してくれ」
「うええっ!?」
何その流れプロポーズ。
「結婚したら、何か生活変わる?」
「…いや、ほぼ変わんねぇな」
だよねー。
もう同棲してるみたいなもんだし。
「あぁでも、ナギが絡まれてたら、俺のものだから触んなっつってぶっ潰せる」
「私も、サクに絡んでる女の人いたら、サクは私のものだからダメって言えるんだ!」
「…そう言われるとちょっとクるな…」
何が!?と聞くがスルーされる。お腹がすいたのか、サクが私を抱きかかえたまま席についた。食べにくそうだけど。
「よし、分かった。結婚しよ」
「ん、良かった」
「その代わり!」
何だ?という目で見てくる。
「まず抱いて!」
んぐ、と詰まった音がした。大きく咳き込み、お茶を流し込むサク。大丈夫か。
「ゲホッ、ゴホン。…酒飲んだのか」
「全く?」
「何でいきなり」
もう一度お茶を飲み、そう聞いてきた。
「女として、私は大丈夫なのかなって心配になったから!サクが、私で欲情できるのかとかそういうんぐ」
口を手でふさがれた。
「ちょっと、黙ってくれ」
本当に困ったように眉間に皺を寄せ、悩んでいた。そんな悩ませるようなこと言ったつもりはないんだけど。
「俺が欲情できないと、困るのか?」
考えた末の質問がそれ?
「だって結婚するってことは、私以外としたらダメってことで、つまり私がサクのことを満足させなきゃいけないんだよ?」
「今でも満足してる」
「嘘だ!ちゅーとかぎゅーとかしかしてないじゃん!」
「それでいい」
「何で!はっ、もしかして本当はゲイ」
チョップされた。痛い。ひどい。
サクのことを思って言ってるのに。
「ナギが俺としたいわけでもないだろ」
「したい!」
「ん、なっ」
サクにとっては予想外の答えだったらしく、目をぱちくりさせながらこちらを見た。体の向きを変えて、サクに向き合う形でサクの太ももの上にまたがる。胸ぐらに掴みかかるように言う。
「サクとしたいです!」
「おま、だから、そうやって煽るなって」
「サクを満足させたいで」
んむ、と口をふさがれた。今度は唇で。そしたら、口の中に舌が入ってきた。どうすればいいか分かんなかったから、そのままされるがままになってた。
「っ、ぷは…」
「ナギは、初めてだろ」
「ん、うん」
「だから無理させたくねぇんだよ。こっちは、知らねぇで煽ってくるお前を流すのに必死なのに、こんな体勢で煽りやがって」
こんな体勢?
どんな体勢?
「対面座位ってんだよ、これ」
「何それ?」
「する体勢だ。くっそ、ナギが無駄にいろんなこと言うからいけねぇんだ。今日は一人で寝とけ」
「えー!何で!」
「何でもだ!そんで今からすぐに寝ろ!そうしねぇともう相手しねぇぞ」
「やだ!寝るから!だから明日やろう!」
「だーからそういうこと言うなっつってんだろアホ!」
あんまり大きな声出さないサクが大声を出す。仕方ないから部屋に素直に戻った。
無理やりでも明日やってもらうんだから!
ナギが部屋に入ったのを確認し、トイレに入る。あんな体勢で濃い方して、しかもナギにあんなこと言われたら勃つに決まってんだろうが。
30のおっさんが何流されてんだか。
俺の理性に感謝してほしいくらいだ。
自分の息子を静めてから、ため息をつく。どっから知識溜め込んでくるんだか。無駄な知識増やす前に、教え込んだ方がいいのか?
だが、あんまり痛くさせたくねぇしな。
最初は入れねえ方が。
…あー、でもそこまでしたら、さすがに俺の理性も持たねえだろうな。
くそ、ったくどうしろってんだ。
流され続けて1週間。
町で、久しく会ってなかった友達に会った。
「ナギ!久しぶりー、元気してた?」
「リルケ!うん、元気元気!てかリルケ可愛くなった?」
「えっ、そうかな?…実はね、ずっと好きだった人と付き合うことになったの」
話を聞くと、ずっと片思いしてた人に告白されたらしい。
だんだん深い話になっていき、とうとう、そういう話になった。
「そんでこの前、やったのー」
「付き合って1週間で!?」
1ヶ月以上経っても気配すらないんだけど。むしろ避けられてるんだけどその話題。
「ど、どうしたらその気にさせられるかな?」
そう聞くと、いろんな話の持って行き方を教えてもらったけど、うまくできそうになかった。そしたら。
「じゃあもう、ベッドに潜り込んで押し倒してキスしちゃえば?」
「な、なるほど、私からってことか」
「そ。一緒に住んでるし、できるっしょ」
できるだけ露出多めでねー、という声を聞きつつ、急いで家に帰った。
夕飯をつくってからお風呂にさっさと入る。念入りに。
もう!私は我慢なりません!
サクが帰って来て、夕飯後、今お風呂に入ってる。できるだけ露出多め、か。
もう下のショーパン履かないくらいしかないけど。
サクを先にベッドに行かせる。ちなみに、いつも同じベッドで寝てる。そういう雰囲気は全くないけど。
あ、あの日は別々だった。
よし、頑張れ、私。
ベッドで寝転がりながら、本を読んでたサク。失敗しないように、真剣に近づいた。
「…ナギ?どうした?」
今だ!と、本を置いたサクの上に乗る。は?という声を無視し、ちゅーする。この前サクは舌入れてきたから、それに習って私もやる。
「な、ナギ!」
「サク、好き」
そう言うと、チッとサクが舌打ちした。怒った、と思ったら、いつのまにか私が下になってて、サクが上に乗ってた。
「あのなぁ、ここまで煽られたら我慢できねぇからな。後悔すんなよ」
頷くと、少し笑ってもう一度キスをした。
何だかんだでナギのことずっと大好きです。
年の差大好きなので載せられてよかったです!
読んでくださってありがとうございます。
精進します。