【大村咲】 そしてようやく4人が揃う 【添付資料】君賀イベント記録 第2回
和国歴一二〇年 五月一二日 13:00~
さすがに、昼休みだけで2人勧誘は無理だった。あのあと、チャイムがなって強制的にお開きでした。
うーん、ほっとしたような、残念なような。神童様を近くで見る機会なんてほとんどないからね。
で、今から国語の授業です。今日から始まる『光の神童伝』は私も大好きなお話。これは、和国ができたときのお話で、悪い『魔王』が支配していた国を光をまとった『神童』が建て直すんだ。
「あー、この四光神。つまり『月光下』『日光下』『星光下』『無光内』はそれぞれ、知識、力、祈り、技を司る神様なんだ。んで、この神様を従えて神童は魔王を打ち破ったって話」
「神様を従える?神童って神様より上なの?」
「いやー、うむ。文献的には神童が上でよさそうなんだが。でも、神の子が神より上ってのもなぁ」
「いや、しっかりしてくれよ先生」
「だって、確定できる資料ねぇんだもん。お前の解釈に任せる」
いつもの授業風景。洋が疑問をポンポン出して、先生が困る。そして、教えたり、放り投げたりする。これを見てると、先生って何でも知ってるわけじゃないんだなぁって思う。物知りだけど、神様じゃないんだなぁってね。
「で、結局神童を魔王がリンチして倒した、と」
「いや、まて。それはちゃんと資料があったぞ。原典では魔王も巨大な蛇、三つの首の怪物、美麗な悪魔、仮面の武士を四天王として抱えていたらしい。ちゃんと、五対五だ」
「え、なに?この話、もとの記述削ってんの?魔王の四天王とかいう重要なの削ってんの?無能かよ」
「まぁ、うん。否定はしない。原典気になるなら私が大学の時に使ってたやつ見せてやるよ。っと、授業に戻るぞ」
毎回思うけど、先生と洋、仲良しだなぁ。ちょっと羨ましい。私も、先生といっぱいお話ししたいし、洋とも……まあ、それはいいや。それにしても、もとのお話があるんだ。気になるね。後で私も読ませてもらおう。
「ん?そういえば魔王と神童って、東と桜木のあだ名じゃん。先生たちまでそう呼んでるし。なんか繋がりあんのかね」
ぽろっと出た洋の一言に教室が静まり返った。洋が「なんだよ」って口をとがらせてるけど……え?洋、知らないのかな?
「お前、興味ないものはホント何も知らないよな」
「小学四年生だぜ。無知で何が悪い」
「知ってなきゃヤバいこともあるんだぞ。いいか、東の家は『魔王』の子孫の家系で、桜木の家は『神童』の子孫の家系だ」
えー。洋、知らないであの二人に会いに行ってたんだ。何か考えがあったのかなって思ってたんだけど。
「まて、洋。お前、この前その二人を……。知らないで言ってたのか?」
「いやあ、おとぎ話と繫がってるとはな。『光の神童伝』はあんま好きじゃないんだよなぁ。つい見逃しちまった。俺もまだまだだな!」
うわぁ。どう考えてもやばいなんてものじゃない。魔王と神童の二つの家は、神話の時代から続く敵同士。もしかして、あのとき神童様が出てきたのは、京ちゃんを連れてきたことに怒ってたからなんじゃ?そうは見えなかったけど、心の中なんて見えないからね。本当がどうかはわからない。
洋は「まぁ、どうにかなるだろ」なんて言ってけど……どうにかなる気がしないよ。
「待て、ちょっと話すべきことができたかもしれない。放課後のこれ」
「ちょうど俺からも用があったんで、4時頃ここでお願いします」
「4時?掃除終わってすぐじゃダメなのか?」
「ちょうど、その桜木とお話の約束が」
「おっと、頼むから私の『話すべきこと』を増やさないでくれよ?」
「保証しかねる」
先生が苦い顔してる。というか神童様との用事ってクラブのことだよね?私も関係あるよね?わぁ、私も共犯扱いで怒られるんじゃないの、これ?とりあえず、後で洋に文句言っておこう。
それから暫くしてチャイムが鳴った。5時間目の授業終わり。今日は5時間授業だったから、帰りの会が終われば、みんなで仲良くさようなら。そういえば、さっき洋が神童様と何かあるっていってたなぁ。……これ以上、私が怒られることを増やしてはいけない。私もついていかなければ!
「んちゃ☆」
「きゃああああああぁぁぁ!」
悲鳴!?え、なに?刃物を持った男の人が自分の方に走ってきてるのを見たような声だよ!?
悲鳴の方を見ると、真っ青な顔した優奈ちゃんが座り込んでいた。優奈ちゃんは何かにおびえているみたい。いったいどうしたんだろう。まさか本当に不審者……?
「……!?……よっ」
「ひぃっ!?」
あ、京ちゃんの声だ。京ちゃんが自分から教室の外に出るのは珍しいなぁ。
それにしても、凄いな。京ちゃんの登場でクラスの雰囲気が一瞬で変わったよ。なんか空気が冷たくなったというか、世界が暗くなったというか。これが魔王の力なんだなぁ。……なんちゃって。
「よう、と、さき、は、どこ」
「やっ、え、洋と……咲!?」
まあ、私たちに用だよね。3組の友達なんて私たちしかいないだろうから。しかし、京ちゃん……なんでそんな本当の魔王みたいな喋り方を。すごいしかめっ面で歯を食いしばってて……普通に怖い。
「洋っ、お前今度は何したんだ!」
「巻き添えは御免だって!さっさと行け!」
「いや、行くけども。お前ら本当に薄情だな」
わあ、クラスメートの闇を見た。こんなクラスメートの姿、見たくなかったなぁ……なんちゃって。ところで優奈ちゃん、こっち見てるけど、同じようなことしないよね……?やられたらちょっとショックだよ?
「さ……咲っ!に、逃げてぇ!」
「ぇ、にげ、られたら、こまる……」
なんと優奈ちゃん、勇気を振り絞って立ち上がった!そして、私を隠すように京ちゃんの前に立ちふさがる。ああ、あなたを疑った私を許して!優奈は正真正銘、私の親友だよ!
私は思わず優奈に駆け寄り、むぎゅっとした。
「えぇっ、咲、なんでこっち来るの!?」
「私、優奈と友達で本当によかったよ。私たち、いつまでも親友だからね!」
「そ、そんな!今から死にそうなこと言わないで!漫画とかじゃそういうこと言った人から死んでいくんだよぅ!」
まぁ、大丈夫だと思うけどね。京ちゃん人と話すの苦手だから、あんな喋り方になってるけど……あれでなかなかいい子っぽいし。少なくとも殺しにかかってきたりはしないよ。ね?京ちゃん。
私が笑みを浮かべて京ちゃんの方を見ると……
「ん、ちゃ、ぁぁぁぁぁ…………」
居心地悪そうな京ちゃんの声が……ちょ、泣きそうになってる!わわ、なんか背中から黒いオーラが……出てるわけないけどなんかそんな感じする!早くいかないと、大変なことになる気がする!
「じゃあ、優奈、行ってくるよ」
「さ、咲ちゃん!あ、ああぁぁぁ!駄目っ!いっちゃやだ!咲ちゃん!」
んな、大げさな。
「うーい、わりぃ。準備に手間取った。あいつら、急かすわりに邪魔しかしねえ。いくぞ!京、咲」
「……んちゃ」
「京ちゃん、『んちゃ』を返答に使うのやめよう?それ、きっと京ちゃんが思ってるほど万能な言葉じゃないからね」
「んちゃ」
私たちは、クラスメートたちの警戒の視線を浴びながら、教室を出た。一番後ろに回って、視線から密かに京ちゃんを守ってあげる私、偉い。
ところで……神童様に関係する用事って、さっきの勧誘の続きなのかな?なぜか、保健室に来たけど。
保健室の中からは、養護の先生と……あ、神童様の声がする。
「失礼するぜー」
「おお、暴走少年。桜木氏が待っていたのは君だったのかぁ!」
「あぁ、どうも。今日は保健室を使っている生徒がいなかったので借り受けられましたよ。お話、聞かせていただきましょうか」
保険の鷲島先生の隣にいたのは、やっぱり神童様だった。
私はポカンとするしかなかった。洋は軽く挨拶してるけど……いや、そんな気軽な存在じゃないよね?神童様って。
「本当に、東さんがいらっしゃいますね」
「おう。メンバー第3号だぜ」
私は京ちゃんを見た。神童様を見てどう思うのか気になったから。……あ、『んちゃ☆』のポーズで固まってる。何してるんだろう。……あっ、もしかして挨拶!?『こんにちは』だって教えたのに!
京ちゃんの挨拶を正そうとした時、鷲島先生に声をかけられた。
「おおっ!そこにいるのは東氏と大村氏!うちの学校が誇る別嬪が二人も!まぁ、うちの学校の女の子はみな漏れなく別嬪なのですが!特に東氏、出会うことがめったにない箱入りの姫ではありませんか。ささ、来なさい。紅茶は飲めるかな?いやぁ、君賀氏。かわいい子二人も連れてうらやましいじゃないか。桜木氏と話があるんだろう?その間、この子たちとお話していいかな?」
わ、いつも通り元気な先生だなぁ。でも、可愛いって言われるのは嬉しいな。
「いつもどおり暑苦しいな!いいけどロリコンもほどほどにな。あと、俺たちにも紅茶くれ」
「グレイト!紅茶くらい、いくらでもあげよう!さあ、愛らしい姫君たち!お兄さん先生とお話ししようっ!」
なんか、勢いが凄い。鷲島先生は……36歳だったはず。お兄さんって年かなぁ。
いや、そんなことはどうでもいい!私は神童様に迷惑をかけないように洋を見張らないと!
「大村氏ぃ!はやくはやく!」
「いや、私は……」
「東氏、紅茶おいしいかい?」
「んちゃ☆」
「そうか!喜んでくれてうれしいぞ!」
「んちゃ」
京ちゃん、すでに席についてる……。そして、「んちゃ」で話が通じている……。繰り返されるマシンガントークと「んちゃ」の応酬。なんか、よくわからない不思議な空間が出来上がっていた。あーどうしよう。先生には呼ばれてるし、洋の事見なきゃいけないし。
「ときに、東氏は『魔法少女ラブリーカルテット』なんてのに興味はありますかな?」
「んちゃ?」
「いやあ、君ぐらいの年の女の子はみんな好きだからね。僕としてはイエローくんが最高だと思うのだよ」
……!?ラブカルの話題っ!
「い、イエローは私も大好きですっ」
「おお!わかってくれるか!」
「はい!周りの子はクールなブルーがかっこいいっていうんですけど、私は断然イエロー押しです!なんか、すごい身近な感じがすると言いますか!」
「いえろー?ぶるー?」
「それ!それですよ、大村氏!あの、手を伸ばせば届きそうな少女が我々では手の届かない大きな悪意と戦っている!応援したくなるのは誰かと問われれば、私は断然イエローを押すね」
実は私、魔法少女『ラブリーカルテット』の大ファンなのです。ああ、好きなものの話を始めると止まらなくなっちゃう……!仕方ないんです。女の子の宿命(参考人数1人)なんです。私は自分の任務を忘れてすっかり話し込んでしまうのでした。
それで、たっぷり30分くらい鷲島先生と語り合った後、やっと自分の役割を思い出した。正気に戻ったともいう。神童様と洋はどうなったんだろう!
「ちょ、ちょっと失礼します!」
「お、なんだい?ああ、彼らが気になるのか。なにやら作戦会議みたいなのをしてるみたいだが……いや、若いね。僕も子供のころは……」
ごめんなさい。先生の話を聞いている余裕はないです。私はあわてて、ベッドの方に飛び込んだ。
「洋っ!どうなったのっ!」
「うおっ!?いきなり出てくんな、ビビるだろ!」
そうはいっても、30分も放置しては洋が何するかわかったもんじゃない。神童様に失礼なこと言ってないよね!?
私は恐る恐る神童様の様子をうかがう。すると、神童様とばっちり目があった。……あ、どうしよう。目が合っちゃったけど、何言えばいいかわからないや。
そんな私の心情を察してくれたのか、神童様の方から喋りかけてくれた。
「そういえば、改めて自己紹介するべきでしょうね。わたくしは桜木菊といいます。このたび、この活動に参加させていただくことになりました」
「あ、はい!私は、大村咲ですっ。その、よろしくおねがいしま、……ん?」
あまりの緊張で聞き流しそうになった。この活動って……私たちのクラブ?に、神童様が?
「おう、思った以上にあっさり仲間になってくれたぜ。ありがとな、菊」
「え、でも……」
神童様と京ちゃんは仲が悪いはず……。あ、もしかして。これもただの噂で、神童様は京ちゃんのことをそんなに悪く思ってないのかな?そうだといいな。
でも、京ちゃんは大丈夫なのかな?神童様からは良くても、京ちゃんからどうかはわからない。辛い思いをしたり、突然怒ったりしないといいけど……私はつい京ちゃんの方を見てしま……うわっ!?いつの間にかすぐ後ろにいた!
京ちゃんはじっと神童様のことを見ている。その表情に恨み?とかそういうのは見当たらない。でも、やっぱり思うことはあるんだろうな。無表情でただじっと見つめている。
すっと、京ちゃんの手が動く。それはチョキの形を作り、目元まで持ち上げられて……あぁ、いつものか。
「んちゃっ☆」
「……?んちゃっ☆」
だから!それを万能コミュニケーションツールとして使うのやめて!失礼だから!知らない人にその挨拶は相手が神童様じゃなくても失礼だから!そして神童様の貴重な悪乗り!やめてください、京ちゃんは純粋な子なんです!神童様までそれやったら京ちゃんがまた変な勘違いしちゃうじゃないですか!
「……でも、仲が悪そうには見えないかなぁ」
「はい?どうしました?」
「……?」
「いや、なんでもないです」
噂話を鵜呑みにしちゃいけないって、この前学んだばかりだし。あんまりこのことで突っつくのはよくないよね。喧嘩にならなくてよかったってことで。
「あ!私と京さんが一緒にいることが、気になりましたか?」
「なんで私が気を使ったことを掘り返すんですか!」
京ちゃんは首をかしげ、神童様はにこにこ笑っている。……っと、神童様を怒鳴るなんて失礼なことしちゃった。
「あ、ごめんなさい。神童様を怒鳴るなんて」
「む、せっかくクラブメンバーになったというのによそよそしいではないですか。仇名にしても、神童なんていかにも仰々しいと思いませんか?どうにも愛着がわきません」
「はい?」
「私のことは菊と。その方が親しげで良いです」
とても恐れ多いお願いをされた。どうすればいいんだろう。……下の名前で呼んじゃってもいいのかな?
「ん、んーと、わかりました。菊様」
「菊様……むぅ」
神童様、不満そう。様づけ嫌なのかな?でも、やっぱり神童様だし……。助けて、洋!私どうすればいいのかわかんない!
「なあ、菊。挨拶終わった?」
さらりと神童様を呼び捨てにする洋。やめて!やっぱ助けてくれなくていいから!私、洋が何かするたびにおなかが痛くなってくる気がするの!
「あ!そうです。こんな感じです。咲さん、こんな感じに気軽に菊とお願いします」
「うぇ!?いや、そんな」
「そんなもじもじすんなって。らしくねぇ」
「~~~♪」
笑顔の神童様と固まる私。イライラしてるらしい洋。京ちゃんは無表情で何故かゆらゆら揺れている。え?京ちゃんは何をしているの?ああ、そんなことはどうでもよくて。どうしよう。私の、何かの、限界を超えそう。なんか、わけもなく慌ててしまう。
「にゃ、あ、わ、わかりました!さ、桜木さん!桜木さんで!」
「名字にさん付け……まあ、無理は言いますまい。さん付けはこれはお互い様ですし。いずれ敬称がなくなることを期待しています」
呼び方については何とか納得してもらえた。しかし、なんというか、意外と軽い感じの人なんだね。いつも敬語で話してるから堅苦しいイメージがあったんだけど。
もう少しなれたら、普通に仲良くできるかもしれない。どうしよう、神童様とお友達なんて、ちょっと嬉しい。皆に自慢できそう。
「終わったな。それじゃあ今から場所を移す。今日が最初のクラブ活動日だ!」
あ、ちょっと。展開が早いよ。ついていけない。これ、神童様……桜木さんと京ちゃんも大変なんじゃないかな。誰か、止めてくれないかな、こいつ。
「……あ」
「どうした?咲」
忘れていた、大事なこと。ようやく思い出した。私の役割。
「洋」
「何?」
誰か、じゃないよ。こいつを止められるのは一人しかいないんだ。先生にも任され、洋本人からも言われた私の役割。それは……!
「洋!いくら何でもいきなりすぎ!桜木さんや京ちゃん、ついでに私の都合を聞いてからにしなさい!」
洋の、ストッパー!
「お、おう……?突然だなお前」
「今は約束していたから桜木さんもここに来てくれているけど、この後も大丈夫かなんてわからないでしょう!なんでもかんでも勝手に一人で決めて突っ走るのは駄目!」
「く……、確かに!あれか、距離感をよく考えて、親しき中にも礼儀ありってやつだな!」
洋の言ってることはよくわかんなかったけど、私の言おうとしていることは伝わったらしい。二人の都合を尋ねて、OKを貰い、それから高らかに宣言。あれ?私だけ聞かれてない。
「それでは、これから三組の教室に行く!先生には話を通してあるから大丈夫!もうすぐ約束の4時だ。行くぜ!」
「あ、ちょっと!だから一人で行かないでって……」
「鷲島先生!サンキューな!」
「うむ、リーダーやるならもう少し後ろを見てやるんだぞ、君賀氏!」
「な!?誰もついてきてねぇ!おーい、早く早く!置いてっちまうぞー!」
「なんだか賑やかで楽しいですね。あ、鷲島先生。場所を貸していただきありがとうございました」
「わしじま?んちゃ☆」
「鷲島先生、ありがとう!騒いでごめんなさい!洋、待ってってば!」
……今のところ、計画的に見えてところどころ行き当たりばったりな洋の行動は奇跡的にうまくいっている。でも、これから先はそうはいかないと思う。私がしっかり見ていなくちゃ!
君賀イベント記録 第2回 「ドッヂボール必勝法」
第一回の事例を受けて、学校全体でのレクリエーションが提案されました。結果、ドッヂボール大会の開催が決定されました。当イベントは大会の前日、運動場にて発生しました。
当時1年5組だった計35名が、君賀洋主導での「最強の投げ方とよけ方」の研究がされました。3時間の思考錯誤の末、君賀洋は未知の超自然的条件に合致する投法、回避法を発見し、35名のうち18名がその技術を習得しました。
ドッヂボール必勝法の効果は次の通りです。
・投げたものが、狙い通りの軌道を描き、狙ったものに命中します。
・視界にとらえることができた運動する物体を確実に回避することができます。
・投法を用いて回避法を行う人物に物を投擲した際、受け手は必ず投擲された物体をキャッチする形になります。
事例1
君賀君に、ハンドボールを手渡し、100メートル先に置いた的をできる限りかっこよく打ち抜いてくださいと指示しました。君賀君の投げたボールは螺旋を描きながら上昇し、地上推定8メートルの位置で一旦静止、間もなく的に向かって高速で飛んでいきました。
この際、魔力の発生は一切確認できませんでした。
桜木神童の考察
「この世界がそういう風に成り立っているのでしょう。あの投げ方をすれば、誰が投げてもああなるんです。あの投げ方をした時だけ、物理原則とかそういうのが無視されるようですね。信じられないことに、私がやってもできました。理論的……という言葉をここで使うことが許されるとは思いませんが、距離と軌道に応じて応用するだけで、どんなものでも好きな軌道で好きな場所に投げることができます。これは、正直身につけた人にしかわからない感覚でしょう」
※和国小学校の教師の中で、当技術を身に着けることができたものはいませんでした。
事例2
技術を会得した内の、2人の男子児童が喧嘩をしていました。殴り合いのけんかになっていたようですが、お互いの攻撃はすべて回避されていたため、怪我はありませんでした。話を聞くと、2人から共通して「俺、ドッヂボールは得意なんです」という意味不明な証言を得られました。
桜木神童の考察
「これ、すごいですね。言ってしまえば、物体の動く軌道を読んで、一定の動かし方で体を捻るだけの技術なんですが、なぜか完璧に回避できます。きっと、投法と同じ理屈なんですね。しかもこれ、相手のことを見てさえいれば、どんな体制からでも躱せるようになっています。ドッヂボール必勝法などと言っておいて、遠隔攻撃以外にも対処が可能なのは魅力ですね。恐ろしいのは、この技術を身に着けた児童全員が瞬時に物の動く軌道を予測できるようになるという謎の副次効果があることでしょうか」
重要
・18人の取得者を捕獲する必要がある際、必ず2人以上で、一人が対象児童の死角に入るように動きながら捕獲してください。対面で逃げる彼らを捕獲することは不可能です。
・当技術を許可なく人に伝える広げることを禁じています。その代わり、あまり目立たないようにするのであれば、当技術をに日常で活用することを認めています(見ただけでこの技術を習得できるのは桜木神童ぐらいのものです。普通に用いる分には手品のようなものなので、特別禁じる必要はないと判断しました)。
――― こんな、いかようにも悪用できそうな技術を禁じる必要はない?大きめの石をこれを使って投げるだけで人が殺せるぞ? 麓郷
――― 大きめの石を人に投げた時点で犯罪です。そこにこの技術の有無は関係ありません。それをしない道徳心を育むのは我々の仕事であり、使命であります。この技術は、児童たちの発明です。これを大人の勝手な推測だけで禁止するのは理不尽です。この判断が間違いにならないよう、我々は誠意を尽くして彼らを教育していく必要があります。 烏羽玉
・第1回ドッヂボール大会がこの18名の独壇場となったことで、本校のドッヂボール大会でのこの技は反則となりました。




