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和国小学校クラブ活動記録 「らんてぃあ」(調整前置き場)  作者: アーギリア
プロローグ 挑戦クラブ「らんてぃあ」
3/17

【君賀洋】 はじめの一歩、すかさず二歩目 【添付資料】君賀イベント一覧

和国歴一二〇年 五月一一日 17:30~

 学校を出たところで時計は5時30分を指している。烏が鳴くまで30分あるな。ふははは、俺ぐらいになると30分あれば何でもできる!ちょっと行動を起こしてみようじゃないか。さて、俺が今優先してやるべきこととは?


「決まっている!クラブのメンバー集めだ!」


 それでは、一時間で話をつけれそうな相手は?当然、咲だ。先生との約束的に、咲の存在が大前提だ。だいたい、咲以外の奴ら今どこにいるかわからんし。

 そうと決まれば善は急げ。その日の発想その日のうちに。俺は咲の家に向かうことにした。


「おーい!咲!ちょっと話があるんだが!」


 どたたたっ……なんかすごい音がしてる。咲が走り回ってるのか?……ははん、家の中だからと完全に油断してだらけてたな?んでもって、髪がぼさぼさで服がよれよれになったのを全力で直しているわけだ。ついでに部屋の片付けもしてるかもな。俺は外で話をつけるつもりだから家には上がらないんだが、咲はそんな事情知らんしな。


「洋、突然来るのやめてよ!こっちだっていろいろ準備があるんだから!」

「すぐ終わる話だからそんなに気を使わなくてよかったのに。あと、待たせるときは一回『待ってて』って伝えてからにしたほうがいいぞ」


 咲は不満たっぷりの顔をしている。うーむ、しくったな。仮にも頼みごとをするために来たのだ。もっと下手にでるべきだったし、できれば咲の機嫌を取る方法を考えるべきだった。まあ、過ぎたことは仕方ない。相手は咲だし大丈夫だろ。


「まあ、こんなとこで話すのもあれだし。うちに入ろうよ」


 咲は優しいな。いきなり訪ねてきてもお小言一つだけだ。その後はしっかり対応してくれる。俺の場合部屋散らかってても気にしないんだけどな。平気で友達入れるよ。まあ、そこは男女の差かな。育ちの差かもしれない。


「あー、悪い。あんま時間ないから、さっくりここで話しちゃいたい」


 自分の状況を相手に伝えるのは話し合いでは重要だ。この場合、相手の好意を相手を傷つけることなく断る効果と、話を早く聞いてほしいという意思を伝える効果が生まれる。もしも、上手くこちらの焦りを伝えられれば、相手も決断を急ごうとしてくれるかもしれない。こうなると、ごり押しが成功しやすくなる。咲みたいな責任感と思いやりが強い奴には割と有効な気がする。


「ん?あー、もうすぐ6時かあ。なに?急ぎの用?」


 時間を把握してない。間違いなくだらけてたなこいつ。まあ、どうでもいいや。ここは間髪入れずに要求をねじ込む!


「単刀直入に言う!咲、俺のクラブに入ってくれ!」

「え?たんとうちょくにゅーって何?」


 あらら。かっこつけたのが裏目に出た。伝わらない言葉を使ったせいで変な方向に咲の意識がむいちゃったよ。

 そうだよなあ。俺もこの言葉知ったの最近だもん。知らん奴は知らんよなあ。


「えっと、あれだ。前置きなしでいきなり相手に要件を言うときに使うんだよ」

「へえ!さすが洋。バカなのに言葉だけはいっぱい知ってるね」


 語彙があるっていうとかっこいいぜ、そういうの。ああ、やべえ。話が脱線した。時間ないってのを印象付けたかったのにこれじゃあ逆効果じゃねえか。


「おほん、話を戻すぞ」

「ええ、洋のくらぶ?に入ればいいの?一応聞くけど何すんの?」


 すげえ。ちゃんと話聞いてる。俺だったら知らん言葉出てきた時点で気になって話に集中できなくなるぜ。そして、この冷静な態度。俺の魂胆なんか真正面からぶち破ってくれるぜ。これが、今後の活動に必要なものなんだ。


「それだ。まさしく、そのキャッカンセーを俺は欲している。よし、聞かせよう!俺の偉大なる野望を!」

「簡単に言ってね。洋の言葉難しくてたまにわかんないから」

「なんか、もっといろいろチャレンジしたいなーって思ってさ。だけど、俺一人じゃ限界があってさ。仲間ほしいなーって思ってさ」


 あれだ。見た目のかっこよさより中身が大事なんだ。どんなに綺麗にカッコよく飾られた言葉も、伝わらないんじゃ意味がないんだ。この、なんか、低レベルな説明も仕方のないことなんだ。


「チャレンジクラブ……ってことか?うー、めんどくさそう。これ、洋の面倒見るの私じゃない?」

「そう!お前には俺の面倒を見てほしい!」

「は?」


 正直なところ、俺は興味、関心、好奇心が一定値超えると暴走するからな。自覚あります。んで、下手すると暴走の結果、活動停止させられる可能性あるんだよな。子供はいろいろなものを見て、触って、経験して育つのに理不尽だと思うんだが……まあ、これが現実だから仕方がない。信頼できるストッパー、面倒見役が必要ってわけだ。


「咲、俺のブレーキになってくれ。俺にはお前が必要だ!」

「んぇ?私が……必要。へぇ……」


 おや、咲がなんかニマニマ笑ってる。どうした、普通に気味が悪いぞ。……あっ、必要って言葉が嬉しかったのか?わかるぞ。俺も誰かから必要とされるのは嬉しいし。


「もう一度頼もう。俺のチームに入ってくれ!」

「ふふ……必要、必要ならしょうがないね。洋が、私を。うん。うふふ……」


 やばい。ちょっと怖い。なんだろう、なんというか……こいつ、頼られているって状況の意味をなんかの形ではき違えている気がする。いや、機嫌がよくなったのはありがたいんだけど……うん、こういうのは勘違いを生むからな。早めに訂正したほうがいいだろう。言うんだ!「別に俺は告白したわけじゃないぞ」ってな!


「なあ、咲……」

「わかった!一緒にいてあげる!洋の面倒を見られるのは私だけだからね!」


 まぶしい笑顔だ。俺はこれを太陽にたとえよう。いやあ、咲さん絶好調。え、これ相手に訂正すんの?やだよ。ここで変に否定したらお願い聞いてもらえないかもしれないし。目的を達したのだから、その他面倒なことは見ないふりだ。逃げたら負けだとは俺は言わない。撤退によって得られる勝利もあるのだ。


「じゃあ、明日ほかのメンバー候補に声をかけに行く。咲もついてきてくれるか?」

「ええ!変なことしないか、ちゃんと見ててあげる」


 なんか、保護者みたいになったなぁ。やんちゃでしょうがない息子を見る母ちゃんと同じ顔してる。その裏で露骨に嬉しそうなのがわかってしまって殊更不気味。


「じゃあ、明日」

「ばいばい」


 烏が鳴く前におうちに帰ろう。それが決まりだからね。今日は疲れた。帰ったらご飯だ。そうだな、スタミナ付けに豚肉とか食べたいなあ。


「洋ううぅぅぅ!遅かったじゃないか!お姉ちゃん寂しかったぞう!」

 出た!妖怪『だきつき魔』!またの名をむげん姉ちゃん!

「ただいま、むげん姉ちゃん。引っ付かないで」

「今日も洋君かわいいよぅ!ショタッ子万歳!むしろ洋君万歳!」


 むげん姉ちゃんはうちに居候しているお姉さんだ。なんか俺が小さいころからの付き合いになっている。俺が生まれたときは父さんより早く俺を見にきたらしい。

 んで、なんか俺のことを妙に可愛がってくれる。うざい。いや、俺がうざいっていうの相当だぞ?いろんな人と付き合って学ぼうとする俺にとっては全ての人が尊敬するべき先生だ。そんな俺にうざいと言わせたのは10年の人生でいまだに姉ちゃんだけだ。


「おかえり、洋。……あらあら、仲がいいこと」


 母さん、笑ってないで助けてくれ。姉ちゃん、頬ずりやめろ。ウザい超えてマジでキモイ。俺は両手を両足を駆使し、何とか姉ちゃんから逃れた。


「あん、そんな嫌がらんでも」

「さすがにベタ付かれて、なで回されて喜ぶ年でもねえよ」

「何言ってんの。お姉さんの抱擁を楽しめるのなんか今のうちよ? 大人になってからもっと抱っこされときゃよかったって言ってもただの変態なんだから!」

「需要と供給ってのがあんだろうが!姉ちゃんのは供給過多なんだよ!」


 ちなみに、『需要と供給』は最近覚えた。


「洋!帰ってきたなら、まずすることあるでしょ」


 ああもう!姉ちゃんのせいで怒られたじゃないか。まあ、文句言っても仕方ない。姉ちゃんは病気だ。まともな奴が温かい目をして見守っていてあげないといけないタイプの病気なんだ。

 手洗いうがいを済ませて、リビングのテーブルに着く。すると、タイミングよくおなかが鳴った。うん、腹減った。


「なんだー?腹減ってんのか、洋君?なるほど、だから機嫌が悪かったんだね!」


 それは違う。俺のテンションが低いのは9割9分9毛……9厘?……むげん姉ちゃんのせいだ。言ったところで無駄なんで言わねーけど。


「じゃあ、早めにご飯にしちゃおっか。洋、準備手伝って」

「了解!じゃあ、皿出すわ」

 いやあ、食いたいときにご飯が出てきて、食いたいだけ食えるって幸せだよな。子供の特権。あとむげん姉ちゃん、にこにこしてないで働け。働かざるもの食うべからずだぞ。


 ご飯中、俺はチーム結成のことを話した。

「ほう!チャレンジクラブか!いいね。子供らしい、無邪気な発想だ」

「咲ちゃんに迷惑かけちゃだめよ。日丸先生にもちゃんとお礼言わないとね」


 うちの家族(姉ちゃんは厳密には違うけど)は基本俺がやることに肯定的だ。やりたいならやってみろって言ってくれる。そこんとこ、父ちゃんとキャラ被ってる。


「明日、メンバー集めするんだけど、話したことない奴にも声かけるつもりなんだ。なんか、アドバイスとかある?」


 子供が思い付きだけで突進すると割と失敗する。だから、年長者からのアドバイスは必要。今日の俺にはタイムリーな父ちゃんの教えだ。


「へえ、友達も一緒に増やそうってか。なら、あんまりがつがつ行くと嫌われるぞ。へりくだり過ぎてもだめだ。距離感をしっかり見極めるんだ」

「距離感か。なるほど」

「洋君は興奮すると、難しい言葉を使おうとするからな。相手には威圧的に聞こえるかも。押し過ぎず、相手のことを考えた対話をするんだ。んで、ここだ!ってタイミングを見計らってしっかりひと押しする。人の顔を見るのは得意だろ?」


 俺が成功するためのアドバイスを、俺の性格を考えながら教えてくれる姉ちゃんはなんだかんだ偉大である。ショタコンとかいう病気がなければ父ちゃんと、母ちゃんと、先生の次くらいに尊敬できるのに。


「そうねぇ、挑戦クラブって言ってもどんなことをするかが分りづらいかも?何も知らない子を誘うんだから、『どんなことをするか』と『どんなところが面白いか』、そして、『最終的な目的は何か』をしっかり説明できるようにするといいんじゃない?」


 母ちゃんも助言をくれる。ふむふむ……内容、アピールポイント、目的をはっきりさせておく、か。


「よっしゃぁ!姉ちゃん、母ちゃん、サンキュー!ちょっと作戦練ってくる!」

「ご飯食べてからになさい」

「洋君はあわてん坊だねえ。生き急ぐと碌なことにならんよ?」


 おっと、調子に乗り過ぎた。ご飯の途中だったぜ。仕方がないのでメモを取るだけにとどめておこう。


「いただきます」


 俺は黙々とご飯を食べながら考えを巡らせる。

 東はたった一人で教室を使っているぼっちだ。仇名は魔王。なんか、いっつもどんよりした雰囲気出してるからだろうな。だが、俺はあいつはなんかすごいことができるやつと睨んでいる。……あと、こんな楽しい年ごろに一人でいるのはもったいないから引きずり出してやりたい。

 桜木は、なんかすごい奴らしい。誰からも頼られて、誰からも尊敬の目で見られてる。おかげで、隣にいてくれるやつがいない。文字通り、右に出るやつがいないんだ。つまり、実質ぼっちだ。あいつは間違いなく東と反対……英雄タイプのぼっちだ。誘う理由は東と同じだ。すごそうだし、一人でいるのがもったいないから誘う。

 本当は、藤野ってやつも仲間に引き入れたかった。こいつは目がいいんだ。視力の話じゃない。なんというか、すごい自信を感じる目をしているんだ。たぶん、自分の価値を理解しているタイプだ。自分を惜しげもなく使って、要領よく生活しているのが傍目から見ていてわかる。その要領の良さは咲を超えるんじゃないかとみている。……正直、一番の強敵だ。こいつだけはうまく勧誘する方法が思いつかなかった。桜木にべったりくっついているから、そこを利用できれば……。いや、欲をかくのはよそう。先生にも四人って言ったし。


「ごちそうさま!」

「はい、お粗末様。食器は水につけといて」

「洋くーん、花札やろうぜ、花札!」


 俺は食器を片付けて自分の部屋に入る。さあ、明日のための作戦会議だ。絶対に勧誘は成功させてやる。待ってろよ、東、桜木!

歴代君賀イベント一覧 


1、全校総力かくれんぼ大戦 1年次、4月

 クラス代表3名が隠れ、他の自動で探すという、どちらかというと宝探し形式のイベント。神童様が連れていかれたことで、貴族クラスは半強制的な全員参加となった。一般クラスの児童たちも大半が参加。学校内での児童の中は深まったものの、神童様を連行したことで一部の児童や保護者から苦情が入った。


2、ドッヂボール必勝法 1年次、5月

 上記の件を受けて、学校側で全校イベントを提案。ドッヂボール大会が行われた。このイベントは、大会前日に行われた1年5組の児童による練習である。この後、1年5組の児童35人のうち、18名が論理的な過程を無視した結果を生み出す未知の投法、回避法を取得。現在はその手法を応用し、投げたものを狙った場所に確実に当てる技術(後方に投げても前方の的に当たるので注意)と、視界に入っている動くものを確実に回避する技術(30センチメートルの距離まで近づいて撃った水鉄砲の水を見事回避して見せた)を身に着けている。


3、君賀の魔術開発実験 そのいち 1年次、7月

 1年5組の児童S君の願いにより、魔術を学び、同級生18名(ドッヂボール必勝法習得者)を集めて大規模な実験が行われた。理科室の薬品が無断で使われようとしていたため、開始後推定30分の時点で日丸先生に止められた。この実験はすべて失敗している。


4、君賀の魔術開発実験・リベンジ 1年次、7月

 「君賀イベントは止めようとすると被害が大きくなる」という性質が明らかになった事件。1年5組全員と貴族クラス11名、鷲島先生が参加した大規模な実験が行われた。今回の実験でS君は魔法を取得。この件は厳しく口止めされ、S君に対しては特別指導が行われた。君賀君には以降の魔術開発実験を禁止した。


追記 なんで禁止するんだ?魔法の開発の成功など、前代未聞だぞ?意味が分からん。 鷲島


5、作業時間は三時間!力の限り最大最高の絵を描き上げよう! 1年次10月

 君賀君の統率力が明らかになったイベント。図工室の道具を無断で使い、1年5組の児童30人が体育館に巨大な絵画(6メートル×6メートル)を展開した。元のイラストはHさんが担当。3時間の利用時間で完成できるよう綿密な準備がされていた。学校のものを無断で使用した件についての指導ののち、作品は一年間多目的ホールの壁に飾られた。この件から、君賀イベントの名が使われるようになった。


6、街をきれいに!ごみ拾い活動 2年次 5月

 一般クラス全2年生が参加した通学路の清掃活動。事前に日丸先生が計画を発見されたため、教師の監督の下で行われた。通学路全域を2日かけて網羅。集めたごみは缶類を除き学校側が処分。君賀君の本来の目的は空き缶を集めることにあったようだ。君賀君は、「カンカンでロボット作るつもりなの」と語った。


7~8、同上 2年次6月及び7月

 第6回と同様の活動は2か月連続で行われた。どれだけ大きなロボットを作るつもりなのか。異常事態の前触れに可能性があるため、低学年の教師陣営に注意喚起を促しました。


9、発進!ワノクニロボ! 2年次9月

 2学期が始まってすぐの日。校庭に突如全長8メートルの空き缶のロボが出現した。リモコン操作で動く予定だったそうだが、完成と同時に暴走したようで、作業場にしていた山から飛んできたらしい。攻撃魔術免許を持つ教師陣と、一部貴族クラスの児童の力、そして偶然居合わせたラブリーカルテット2名の協力で事態は沈静化した。

 ロボットの解体途中、攻撃能力を持つ武器(曰く、超必殺魔力砲)が右腕に装備されていたことが判明。今回の事件では負傷者はいなかったが、正常に起動していれば重傷者、あるいは死傷者を出していた可能性もあった。君賀君には、1メートル以上の大きさのロボットと、攻撃能力を持つ武器の製造を禁止した。


10、正義の名のもとに 2年次、10月

 エニグヌムのメンバーが学校に出現。グラウンドがラブリーカルテットとの戦場となった。君賀君は避難指示を無視し、56名の児童を集め、協力してラブリーカルテットの援護を行った。

 戦闘終了後、ラブリーカルテットの一名から叱責を受けている最中にエニグヌムのメンバー一名に君賀君が連行された。しかし、捜索隊が組まれる前に教室内に帰還。後日、今回の勝手な行動に注意がされた。


11、白水晶との接触 2年次、3月

 重要案件として処置すべきとして、例外的に君賀イベント認定を受けた。白水晶(神出鬼没な、外見10歳前後の指名手配者)が校内に出現。君賀君と会話をしたことが判明。白水晶は「彼は実に面白い人間だ。君たち、期待するがいい。いずれ彼は、全世界を巻き込む大ごとをやらかすぞ。僕ができるアドバイスはたった一つ。彼を止めるな。取り返しのつかない事態にしたくなければ」と述べて校内から消失した。この直後の君賀君の様子に変化は見られず、白水晶のことは「面白い奴だった」と評価するにとどまった。


12、コード:光外異譚 3年次、6月

 かつて魔王四天王として君臨していた悪魔「光外異譚」との交友関係があったらしい。君賀君は唐突に光外異譚を解き放とうと試みた。教師陣による鎮圧はことごとく失敗。この事件は、桜木家や傘下4家も動く前代未聞の規模の事件となった。封印解除には5つの過程が必要で、4つの封印が解かれた段階で光上氏が説得に入り、イベントは延期された。君賀家に相応の罰が課されるべきとの声もあったが、光外異譚が再封印をおとなしく受け入れる代わりに君賀の処分を軽くせよと願い出たため、厳重注意で済まされた。


追記 本当に止めてよかったのか?君賀イベントが子供の無謀で浅慮な思い付きとは異なるものであることはすでに明らかになっているはずだ。本当に必要なのは君賀イベントの強制中止ではなく、光外異譚の危険性についての再検討だったのではないか? 鷲島


追記2 そうだったのかもしれません。しかし、我々はこうするしかなかったのです。光信仰が日常に溶け込んだこの現代で、世間は悪魔光外異譚を受け入れることはできません。もし、君賀君がそれを解き放つことに成功してしまえば、真実に関係なく世間は彼を敵とする可能性が高かったのです。あるいは、君賀君は光外異譚の善性を見出したのかもしれません。光外異譚を解き放つのは、彼なりの正義の行動だったのかもしれません。しかし、彼を止めた彼女の言葉を借りるなら、「私たちが君賀君の正義についていくことができない」という状況にありました。今の私たちでは、彼の正義を認めることができない。真実がわかっても、それを世界に伝える手段も、世間の認識が変わるまで彼を守ってあげる手段もありません。今回の対応は、力不足な我々にできる、彼を守る唯一の行動でした。 日丸


13、君賀イベント未発生期間  3年次、10月まで

 第12回の件以来、君賀イベントが発生しない期間が続いた。これが第13回として扱われたのは、日丸先生が、これを異常事態だと宣言したためである。さすがに反省したのではという声もあったが、それに対して日丸先生は、「君賀君の反省はこのような形で出てきません。最悪、大人という存在自体を見限った可能性があります」と主張した。


14、コード:光外異譚 その後 3年次、11月

 このイベントは、日丸先生が自主的に起こしたイベントである。鷲島先生及び3年3組の児童大村さんの4名で、光外異譚を封ずる山へ赴いた。(神童様からの許しが出ていたため、公式に認められての訪問となる)。このイベント以降、君賀君は日丸先生の指導をよく聞くようになった。


追記 君賀君が私の話を聞くようになったというよりは、私が君賀君の話を聞けるようになりました。本イベントの報告を追記として残します。君賀君は終始、光外異譚をメイと呼んでいました。彼は、光外異譚の神話を知らないようでした。以降、彼に対しては光外異譚と『メイ』は別の存在として扱うことを強く推奨します。私は光外異譚に対して口を出すことはできませんが、『メイ』という霊的存在についての証言はできましょう。少なくとも彼女は、我々に対して敵対的な存在ではありませんでした。 日丸


15、弱者の味方:見ているぞ 3年次、2月

 我が校で急速に増加していた「いじめ」に対抗するかのように発生したイベント。15名の隊員が加害者を監視しながら、見ているぞ、いじめだぞと呟き続けるだけの活動。15名の中に本人はおらず、いじめを止めさせるための布石を打つ役割を担っていた模様。なお、教師の一人がいじめの扇動をしていたことが発覚。厳しい処分が下された。

 この活動の対象となった児童は皆軽いトラウマを負うことになったため、その点について君賀他15名には簡単な指導がされた。


16、ランティア 4年次、5月

 本文未作成


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