02
外は、夕闇に包まれようとしていた。
「どうだ、この話」
ミトリは真面目な顔でそう言って、俺の目の前、大理石の大きなテーブルの上にそろばんを置いた。そろばんの前の面(一部?の人が○級とかのシールを貼ったりしている所)には、小さく王国独自の金色の紋章があった。
事の発端は、あの覚えてない呪文。
あの後、城に招待されて行ってみたら、俺に「防征大魔師(ぼうせいだいましと読むらしい)」というよく分からないけどなんか偉そうな人になってくれと言われた。
俺には、もっと重要なことをする必要がある……現実世界に戻るための方法を探すことだ。だから、そんなことをする暇がない。手掛かりはまだ何一つ見つかっていない。急がないと、現在世界での時間をかなり費やしてしまうかもしれない。
「だから……おい、聞いているのか?カズヒロ、ねがいましては、19円、23円、15円、18円、4円でフォr……」
「とりあえず、一晩待ってくれ」
寝たら、きっと決断できるだろう。そう思って言った。
「メイド、カズヒロを客間に連れて行け」
ミトリは後ろのロングスカートに銀髪パーマのメイドに命令をした。
「姫、分かりましたわ……では、今日こそドレスを着て頂けるのですね?」
銀髪パーマのメイドは黒い笑みを浮かべて言って、他のメイドから銀色で薔薇のモチーフがついた鍵を渡された。
「分かったよ、着ればいいんだろ」
ミトリは少し顔を赤くして、下を向きながらおどおどとしたような感じで言った。いつもとは少しちがう、緊張したような声だった。
..。☆。..
戦火は遠くにちらりと見える。決断をさせなければ、この国は滅びてしまう。
「どうだ、この話」
そう言って、この話を受ければこのそろばんはカズヒロのものになるという意味を込めて、カズヒロの目の前、大理石の大きなテーブルの上にそろばんを置いた。そろばんの前の面についている王国独自の金色の紋章を、カズヒロは眺めていた。
あの呪文、、、
正統なる大魔術師の家系に伝わると言われる、干渉呪文。これがあれば、すべての魔法を断ち切れる、電卓帝国の魔法も効かなくなる。
「防征大魔師」
その称号をカズヒロに与えてさせてくれ、と大臣に頼んだ。さっきの一部始終を話すと大臣はあっさりと許可して、僕はカズヒロにそれを言ったが何も返事がない。
「だから……おい、聞いているのか?」
考えてはいる顔をしているが、防征大魔師については考えていなさそうに見えた。そして僕が言った言葉を絶対に聞いていないなと思って、カズヒロの持ち物となう予定であるそろばんを持ち、魔法で剣に変える。
「カズヒロ、、、ねがいましては、19円、23円、15円、18円、4円でフォr……」
「とりあえず、一晩待ってくれ」
術式の途中で断ち切られた。
一晩待てだと、言われても、こっちが困る。が、仕方ない。断られるよりはまだいいだろう。
後ろにいるメイドに命令をする。
が、今日は運が悪い。腹黒メイドが今日の遅番に当たっていた。言葉を出すのを止めようとしたが、僕の口は命令を拒否した。
「メイド、カズヒロを客間に連れて行け」
「姫、分かりましたわ……では、今日こそドレスを着て頂けるのですね?」
銀髪パーマのメイドは黒い笑みを浮かべて言って、他のメイドから銀色で薔薇のモチーフがついた鍵を渡された。
「分かったよ、着ればいいんだろ」
あれだけは本当に嫌なのだ。あの、セクシードレスは。
あれを好んで着る姉は、きっと頭が狂っているのだろう。
..。☆。..
目覚まし時計の音が部屋に鳴り響く。
…そうだ、今日は予備校のテストだ……
目を開くと、時計の針は7:53となっていた。
「マジかよ、おい、こんままじゃ遅刻だぞ」
テスト開始は8:30、ここからあそこまでは自転車で40分
急いで着替えて、家を飛び出し、自転車に乗って、国道を全力疾走する。
あまりにもスピードを出したせいか、トラックの運転手がクラクションを鳴らす。車の窓から子供が頭を出して、「がんばれー」と声援を送る。信号はちゃんと確認し、赤になったら停まる。
早く、行かなければ。
無断遅刻など、ありえない、追い出されてしまう、今までの金が無駄になる。
スマホのアラームの音、テスト開始10分前を知らせる。
いつもはここからだと3分でつく。ギリギリセーフだ。
と思って油断した。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
..。☆。..
かろうじて意識はあるものの、体が動かない。
さっき俺は、時間に安心してブレーキを踏み忘れ、赤信号に飛び出してしまったのだ。そして、衝突からのひき逃げされた。
…そういえば、夢の中でも動けなかったな
昨日の夢は、俺が天国に行きかけてみたものなのか?とふと思った。
そもそも夢だったのかもわからない。
全てがよくわからなかった。
理解不能だった。
誰かが通報してくれたのだろう、救急車が来た。
とっさに俺の口は思いもよらない言葉、しかもさっきまで目的としていた言葉を漏らした。
「模試が…」
テスト開始の時間を告げるアラームが鳴った。