ジャンケン
ぼちぼち復活
「いいか、恵。隆利はお前の叔父さんだ」
「叔父さん!? え、でも父さんって弟は一人しかいないんじゃ……」
「バカだな恵。修也なんか姉がいきなり4人も増えたんだぞ。だったらオレに弟が1人増えるくらい誤差だろうが」
「いや、その理屈はおかしい」
「とにかくこいつはお前の叔父さんだ」
「ああ、オレが叔父さんだ……! どうやら、叔父さんとして真の力を見せる時が来たようだな……」
「フッ……ならば、オレは兄としてそれに応える他あるまい……」
オレと未来のオレが立ち上がり、相対する。
そして、適当な構えを取って、気合いを籠める。
すると向こうも同じく気合いを籠めると、周囲の空間が歪むほどの闘気のぶつかり合いが始まる。
「往くぞ……」
「来い……!」
そして、全神経を集中させた戦いが幕を開ける。
相手が繰り出して来たのは拳。迎え撃つは掌底。
だが、次の瞬間に相手は二本貫手に指の形を変え、こちらは瞬時に拳に形を変える。
一瞬の間隙を突く戦い。
一手を放とうとするそのさなかにも、最善の攻撃手段を選択し繰り出そうとする。
「くっ!」
「ちぃっ!」
初手は拳と拳がぶつかり合っての相打ち。
そして一瞬で身を引くと、新たな手を繰り出す。
相手の行動を読み取り、命脈を一撃で断ち切る手の選択。
そして、相手の行動に瞬時に対応する素早い反射神経と判断力。
その二つを兼ね合わせる事によって、至極単純な闘争は高度な戦いへと姿を変える。
全身全霊の集中によって、双方の精神は入神の域にまで至る。
一瞬の油断が命脈を断ち切り、断ち切られる。
僅かな油断ですらも決して許されはしない。
そして、今度の勝負もまた、相打ちで終わる。
「やるな……」
「お前こそやるじゃないか……」
これほどまでに気の抜けない勝負、この人生の中で一度たりともなかった。
好敵手に、感謝を。これほどまでの心躍る戦い、そして神経の張りつめた戦い。
それに出会わせてくれた運命に、感謝を。
そして、神に願おう。オレの勝利を。
「今度こそ、往くぞ!」
「来い!」
そして、最後の戦いが始まる。
繰り出される手、それを一瞬で読み取り、こちらが打ち勝つ手を選択する。
一瞬の判断が命運を決する戦い。
その中で、オレは勝利への道筋を確信していた。
「グー!」
「パー……!」
そして、勝負はオレの勝利で幕を閉じた。
「ククク……ハッハッハッハ! で、これはなんだったんだ?」
「いや、知らん」
勝負を始めたオレと、未来のオレにもわからないんだったらどうにもならんな。
などと思っていると、恵とやらが怒気を発散させながら立ち上がった。
「父さん……?」
「うわ、恵おまえメッチャ怖いな」
「そこに正座して。おじさんも」
オレまだ10代なのになんでおじさん呼ばわりなんだろ。
いや、オレがおじさんだと名乗ったからだとは分かってるんだが。
「やめて! 酷いことする気でしょう! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」
などと思っていたら隣の未来のオレがアホな事を言い出した。
「よし、じゃあオレがバキみたいな酷いことしてやろうか」
「R-18Gだね」
シュッシュッとジャブを空中に放ちつつR-18Gな酷いことをする準備をする。
「前々から言おうと思ってたけど、そうやってアホなことやって遊ぶのはいい加減にしてよ。あと、就職して」
未来のオレ無職かよ……どうりで真昼間から家に居ると思ったら。
「就職は無理だな……」
「なんでさ!? まだ30代だし、見た目も若いんだからイケるでしょ!」
「恵……父さんが働かない理由、言いたくはなかったがお前には伝えておかなきゃいけないな……」
「な、なに? いきなり真剣な顔して」
「父さんは……父さんはな……働きたくないんだ!」
「最低だー!?」
本当に最低の事ぶっちゃけたなぁ……。
「それに、別に働かなくてもいいだろ。貯蓄はあるんだから」
「貯蓄食いつぶしたらどうするのさ!」
「その時は諦めて自殺するさ」
「なにポジティブそうな顔しつつもネガテイィブなこと言ってんの!?」
「冗談だ」
「冗談に聞こえないんだよ!」
うん、確かに全然冗談に見えない。
……待てよ。じゃあオレが冗談を言ってても全く冗談に見えてないのか?
面白そうだしこれからは積極的に冗談を言っていくとしよう。
「というか実際問題、父さんには就職口が無いんだ。父さんは中卒だぞ?」
「そう言えばオレもそうだな……」
オレ、完璧な負け組だよな……。
「で、でも、オレ勇者だし……」
「どうした、隆利、メッチャ声震えてるぞ」
「う、うるさいでござる」
ちゅ、中卒がなんだ……あっちの世界に戻れば幾らでも……仕事あるのかな?
……実際のところオレってあちこちの国で爵位貰ってるから、領地くれって言ったらくれると思うが。
王領の割譲になるだろうからいい顔はされんと思うが。
まぁ、いずれにしろあっちならどうとでも生活できる。
こっちのオレも生活に全く困ってる様子が無いし、実際に困ってないんだろうな。
「まぁ、とにかくそういうわけで父さんは働かない。大丈夫だ、宝くじが当たれば一発逆転出来る」
「そんなギャンブル思考でどうにかなるか!」
「分かった分かった。ヤーさん相手に賭け麻雀してくる」
「するな! 負けたらどうすんの!」
「笑ってごまかすさあ」
「ヒューッ!」
でもたぶんコイツはボロ負けしたらヤーさんボコって逃げてくるな、間違いなく。
まぁ、負ける以前に間違いなくイカサマするとは思うが。
カジノとかいけばポーカーでファイブカードとか連発できるだろうな。イカサマで。
「さて、店主さん、オレたちはそろそろお暇しますか」
「そうですね。お茶、ごちそうさまでした」
あんまりここに長くいると恵ちゃん? くん? まぁ、どっちでもいいや。
とにかく恵の説教でオレも致命的なダメージを負いそうだから。
「じゃあな、オレ」
「ああ、また来いよ……ってわけにはいかんかもだが、また会える事を祈ってるぞ」
「あいよ」
店主さんに時間系の転移陣を敷いてもらって、そこに飛び込んだ。
JUSTICEはおいてきてしまったがまぁいいんじゃないかな?




