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帰ってくるのがはえーよ! だらり現代生活記  作者: 国後要
なんてことのない現代生活という名の異常な現代生活
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なんだ鏡か

 並行世界から帰還して、我が家の地下に急遽造られてしまったドッグにTHE JUSTICEを収めて外に。


「ふぅ……なんか、長いこと戦ってた気分だ……」


「亜光速戦闘してましたし、実際に長いこと戦ってたのは間違いないですね」


「そんなもんですか。ただいま」


 がらりと家のドアを開けて中に。

 すると、見知らぬ少年が家から出てくるところだった。

 茶髪でシエルちゃんによく似てた。


「あれ……? 父さん、さっき部屋に……あれ?」


「おいおい、穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士、一文字孝也さまが二人もいるわけがないだろ」


「そうだね。わかったから。恥ずかしいから家に戻って」


「あはい」


「朝菜さんもバカやってないで入って」


「はい、お邪魔します」


 そういうわけで家の中に入るが、何やら様子がおかしい。

 家電製品が何やら見た事がないし、見覚えのない家具が色々とある。あと、ぼろい。

 近くのリモコンを手に取ってテレビをつけてみると、なんと21世紀も半ばを超える時期だった。


「あるぇー?」


「そういえば、亜光速行動した時間経過を計算しないで移動してしまいましたね」


「いわゆるウラシマ効果かぁ……」


 どうりでなんかおかしいと思ったら。という事は、ここはオレの知ってる世界の遥か未来か。

 などと思っていると、リビングの戸がガラリと開いてそこからオレが入ってくる。


「あれ?」


 向こうのオレが右手を上げる。オレも同時に右手を上げていた。

 左手を上げてみると、相手も左手を上げていた。

 荒ぶる鷹のポーズをしてみると、相手も同様に荒ぶる鷹のポーズ。

 そして笑顔でダブルバイセップス。


「なんだ鏡か」


 やれやれ、鏡なら何の問題もないな。

 そういうわけで、座ってくつろぐ。


「いや、鏡なわけがねえ」


「全くだ。ふざけんなや」


 というか、行動が全く同じなあたり、オレって進歩ねぇな。


「三行で状況を説明しろ」


「それもこれも乾巧ってやつの仕業なんだ」


「なんだって? それは本当かい?」


「加えて孔明の仕業だ」


「げえっ、孔明!」


「というわけだ。分かってくれたか?」


「わかるわけねえだろ」


「それもそうだ」


 むしろ分かったとしたらこの世界のオレの頭の具合を心配したところだ。


「唯一分かったのは、並行世界に店主さんとスーパーロボットの試運転に行ったらウラシマ効果で未来の世界に来ちまったってところだ」


「全部分かってんじゃねーか!」


「バカめ。オレから見てお前は過去のオレだ。昔の事を頑張って思い出せば手に取るように全てわかるわ!」


「な、なるほどな……」


「無論、この後の行動もな……」


「なん……だと……!」


 その予測を外したくなったのでおもむろに店主さんを押し倒した。

 そして乱暴に服を引きはがした。


「へっへっへっへっ! スケベしようや!」


「別に構いませんが。優しくお願いします」


「なにやってんだ過去のオレェェェェ!」


「うるさい黙れ未来のオレ! オレは店主さんとイサキを取るんだ!」


「ところでどっちがネコでどっちがタチですか」


「やめろ! お前10分くらいしたら絶対に後悔するからやめろ!」


「後悔しない! オレは、お前の予測を外すためならホモにだってなってやる!」


「やめろぉぉぉぉぉぉっ!」


 どったんばったんと激しくもみくちゃの争いをして、最終的にオレがノックアウトされた。

 未来のオレには勝てなかったよ……。


「はぁ、はぁ……なんてトンデモねぇ野郎だ……いや、自分だったな、コイツ……自分ってこんな面倒くさい奴だったのか……」


「ようやく気付いたか、未来のオレよ……」


「なんでお前に偉そうに言われなくちゃならねえんだ……」


 なんでだろうか。オレにもよくわからない。


「ったく。オレも未来の自分の予測を外そうとしたけど…………あー、うん」


「外そうとして?」


「性転換薬を呑んで未来の自分に迫った。お前と大差なかったわ。なんかごめん」


「バカじゃねえのお前?」


「その言葉、そっくりそのままお前に返してやる」


 ごもっともで。

 オレたちって救いようのないバカなんだなぁ。


「しかし、さっきオレの事を父さんとかいう少年が居たが、あれは?」


「あれは恵と言って、オレの娘だ」


「なん……だと……!?」


 たしかに童顔気味で女の子っぽい顔立ちしてたけど、男だろ、あれ。

 ……いや、ボーイッシュな女の子なのか、もしかして。

 もうちょっとよく見ておけば男か女か明確に分かったんだが、自信がない……。


「いや、娘のような息子だったかな」


「どっちなんだよ」


「ああもう面倒くさいから息子と娘をあわせて息娘だ」


「新しい概念だな」


 息娘か……なにやら不思議とアホなアトモスフィアを感じるぜ……。


「で、誰の子なんだ?」


「シエルちゃんだよ。似てたろ」


「まぁ似てた」


「でも、将来的に生まれるかは定かじゃねえな。お前がさっきオレの予想を外す行動を取ったから、もうお前とオレは直系の過去未来じゃなくて、時間軸の異なる並行世界になったから」


「なるほどなー」


 まさかオレのアホな行動で並行世界がまた新たに生まれちまうとはな。


「しかし、なんでまだここに住んでんの?」


「子供育てるにはこっちの方が都合いいから」


「あー……異世界の方は?」


「あっちはあっちでタカネとトモエさんがいるから、なんかあったら教えてくれる」


「なるほどなー」


 よくわからんがうまく回ってるのならまぁいいんじゃないだろうか。

 オレが偉そうなことを言えた口じゃないのは分かってるんだが。


 なんて思ってると、部屋の戸が開いて恵とやらがお盆にお茶を乗せて現れた。


「え……? 父さんが二人?」


「ああ、恵。紹介しておこう。コイツは一文字隆利。二つ名はジャガイモの千切り、通り名は神速の遅漏だ」


「いや、二つ名はサツマイモのチップ、通り名は牛歩の早漏だ。覚えておけ」


 どうやらオレはいつの間にか一文字隆利になっていたらしい。

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