歓迎しよう。盛大にな!
修也の不運は未だに続いているらしい。
とはいえ、オレが何か出来るわけでもないので静観している状況だが。
しかし、今日の修也は大変楽しそうだった。
以前に話していた、修也の好きだというホタルイカちゃんがうちに遊びに来るらしい。
「いやー、楽しみだな、ホタルイカちゃん」
「うん、チョウチンアンコウちゃん超楽しみだわ」
ちなみに今日は土日だ。
シエルちゃんたちを含めた幼女らは遊びにいっている。
色恋云々よりも、遊びたいお年頃だもんな。
考えてみりゃ、みんな何の制約もなく自由に遊べる環境にあった子じゃないからな。
たまには羽を伸ばして遊びたいんだろう。
「それで修也、チョウチンアンコウちゃん迎えにいくんでしょ?」
「ホタルイカちゃんいつ迎えに行くんだ?」
「だからホタルイカでもチョウチンアンコウでもないって言ってるでしょうが!」
「ああ……ヒカリゴケ?」
「植物でもない!」
「分かった。じゃあヤコウダケだ」
「それ植物でしょ!?」
「馬鹿野郎! キノコは菌類だ!」
「どっちでもいいよもう! とにかく植物でもキノコでもないから!」
なんか修也めっちゃ怒ってる。これがキレる子供ってやつ? こわいわぁ……。
「はぁ……もういいや。迎えには今から行くつもりだよ。近くのコンビニの前で待ち合わせしてるから」
「待ち合わせ何時だよ?」
「9時だよ」
「今8時30分だけど。早めにいったら?」
「そのつもり。行ってきます」
立ち去って行った修也を見送ると、オレは立ち上がる。
「さあ……歓迎の準備だ」
「そうしようか。トモエさんにも手伝ってもらおうか」
「そうだな」
なんかお菓子でも作っててあげよう。
「というわけで、お菓子を作りたいと思います」
「なるほど。つまり、修也くんの連れてくるだろう女の子を盛大に歓迎するんだね?」
「そうです」
特に意味はない。強いて言うならヒマだから。
「んじゃまぁ、適当にお菓子でも作りますか」
「僕はどうしよっかな……どうせお昼食べてくだろうし、ピザでも焼こっか?」
「うち、オーブンないですよ?」
電子レンジならあるが、生憎とオーブンレンジではない。
それに、レンジはオレがクッキーを焼くつもりなので使えない。
「大丈夫だよ、何とかするから。庭使っていい?」
「別にいいですけど、何するんですか?」
「ピザ窯作る」
超本格的だった。
「んー、タカネはどうする?」
「そうだねぇ。あたしもクッキー作るってのはなーんか微妙だしー……チーズケーキでも作ろうかな。時間ないし、タカヤがレンジ使うだろうから、レアチーズケーキにしよ」
「なるほど」
クッキーにレアチーズケーキ、昼飯はピザか……豪勢だな。
まぁいいや。始めるか。
まずは小麦粉をフィーリングで計量し、そこに砂糖をアバウトに放り込み、バターを適当にいれて、卵黄を叩き込んでから混ぜる。
順番は適当。ぶっちゃけクッキーとか割と適当に作っても何とかなる。
こねて纏まったら、薄く切って、それをくっつけてから棒状に丸める。
そして時間加速魔法をかけてから生地を魔法で冷却。
100倍速に加速したので、30秒ほど経ったら時間加速を解除。
そしたら予熱をしといたレンジに放り込んで終わり。
「どうしよう、5分で作り終わっちまった」
「あたしまだ途中だから話しかけないで」
「すまん。手伝うわ」
タカネのレアチーズケーキづくりを手伝う。
しかし、こっちも10分足らずで終了してしまった。
時間加速魔法マジチート。下手に肉体にかけると自爆技になりかねないので戦闘には殆ど使えないんだけど。
「作り終わったけど、修也まだ帰ってこねーな」
「だねぇー」
「トモエさんの様子見に行くか」
「そうしようか」
というわけで、庭に出るとそこではトモエさんが楽しそうにピザの生地をクルクル回していた。
なんでわざわざ家の外でやってんだこの人。
「トモエさん、家の中で生地こねたらいいんじゃないですか?」
「ん? 大丈夫だよ。それに、ご家庭のキッチンってちょっと狭いからね」
それは確かにあるが。
「けど、汚れとかついたらまずいんじゃ?」
「ああ、結界張ってあるから平気だよ。ゴミは通さないし、無菌室並みに無菌だから、ここ」
結界ってすごい。
そして、その結界の中では立派な窯が鎮座していた。
なぜか3つもある。そして、いい仕事したと言わんばかりの態度で店主さんが汗をぬぐっている。
「おや、おはようございます、一文字さん」
「おはようございます」
「阿久津高音さんもおはようございます。今日も相変わらず美人ですね」
「あたしに惚れるとトモエさんが激怒すんぜー」
「ふむ……トモエさんは激怒した。地球が砕け、宇宙が軋みを上げて圧壊してゆく」
「トモエさんSUGEEEEEE」
「そこで颯爽と現れる鋼の救世主!」
「なんとそこに乗っていたのは私!」
「世界を救え! 時雨坂朝菜! ヒロインはだれだ! あたしじゃないよ!」
「なんとヒロインはツンデレを勘違いした暴力ヒロイン! 意味もなく店主さんをぶん殴る!」
「しかし私は慣れっこなので、骨折レベルでないと暴力と認識できない!」
「なんてこった! ヒーローはドMだ!」
「君たちうるさいよ!」
店主さんとオレとタカネでアホな話してたらトモエさんに怒られた。
「ところで、なんで店主さん居るんですか?」
「窯作るから手伝ってと言われて、私が材料を用意し、私が組み立て、私が仕上げをしました」
「既に手伝いではない」
「まぁいいんですけどね」
いいんだ。まぁ、店主さんの能力的に一瞬で終わっちゃうだろうしな。
「トモエさん、ピザなに作ってんのー? あたしペパロニピザが食べたーい」
「いいよー。作ってあげるね。タカヤくんとアサナくんは何がいい?」
「お、いいんですか? じゃあ……オリーブ抜きのピザで」
「ストロベリーサンデーも要る?」
「トモエさん大好き。理解してくれてうれしい」
「あははー」
ニコニコ笑いながらピザ生地をクルクル回すトモエさん。
「アサナくんは?」
「じゃあ、雪がどうして白いか知ってる人の食べるようなピザで」
「いや、そんな限定的なピザ作れないから」
「アニメの方は実在の会社と提携してたはずです」
「アサナくん。それ僕に頼むより、その会社に注文したほうが楽だよね?」
「それもそうですね。じゃあ、私はシーフードピザをお願いします。エビたくさん入れてください」
「分かった。任せて。じゃ、材料お願い」
「はいはい」
パチンッ、と店主さんが指パッチンをすると、どこからともなく材料が現れ、テーブルの上にどさどさと落ちる。
「こんなもんでいいですか」
「うん。上等上等。これだけあればたくさん作れるよ」
うーん、我が家の調理工程はどんどん変な方向に向かっていくなぁ。
などと思っていると、ピザ窯とは違う形の調理器具を店主さんが作り始める。
どっからともなくレンガが現れ、それがどんどんつみあがっていく。
「なに作ってるんですか?」
「ドネルケバブの調理器です」
「作れるんですか?」
「大体なんでも作れますよ」
考えてみりゃ並行世界にまたがって存在してるとかいうわけのわかんない存在なんだし、そんくらいは楽勝か。
「しかし、なんかどんどんとメシが豪勢になってくな」
「確かに。今日ってなんかお祝いだっけ?」
「修也が女を家に連れ込んだお祝い」
「なるほど。あたしもなんか作りたいな」
「んー……バーベキューでもするか」
たしか、金網はあったと思う。
店主さんにレンガ貰って、その下で火炊けばいいだろう。
「店主さん、レンガプリーズ」
「なにするんですか?」
「バーベキューグリル作ります。バーベキューっていうか、むしろ焼肉?」
「なるほど。では用意しましょう」
先ほどと同じくすごい速度で窯が出来る。
金網と蓋も用意されていて、至れり尽くせりというか。
「よーし、火炊くか。あ、火種がねえや」
炭はあるんだが、火付きがよくないからなぁ。
「世界樹の木材でよくね?」
「ああ、あれ火付きいいし、火が長持ちするしな」
というわけで、アイテムボックスから世界樹の木材を出して、それに火をつける。
超お高い木材でバーベキューという死ぬほど勿体ない調理方法である。
「よーし、肉乗せるぜー。どんどん載せるぜー」
牛とか豚とか、適当にアイテムボックスから取り出して載せていく。
色んなゲームのアイテムがあるもんだから、割とアイテムボックスの中は食材だらけだったりする。
「タカヤ、この霜降り肉は鉄板の上でじっくり焼いたほうがいいんじゃね?」
「あー、んじゃそれはお前に任せるわ」
「おっけー。こんくらいならあたしにだって出来るぜ」
ちょっと不安だがタカネに任せる。
さて、修也はいつ帰って来るんだろうか。




