暴走族がかわいそう
ぐだぐだ話をし続けて、日も暮れ始めて。
アリシアちゃんとシエルちゃんを連れて買い物に行っていたらしいカーチャンが帰ってきて、レンが学校から帰ってきて、そしてジルも帰ってきて、ついでにオマケも帰ってきた。
「で、オマケ。どうしてそんなズタボロなんだ」
「誰がオマケだよ……。今日は体育がキツかったんだよ……なんで体育で格闘技やらなきゃいけないんだろうね……」
修也ことオマケの学校の体育はキツイからなぁ。
オレが中学の時は問答無用で実戦剣道やらされたぞ。防具なしで木刀で打ち合えという無茶苦茶を要求されたからな。
「しかも、下校中に暴走族に絡まれたんだ……」
「なんでだよ」
というか、暴走族って今時いるの? ちょっと見てみたい。
「ジルさんと一緒に帰ってたら、なんかからまれてさ……」
「あー、目立つからねぇ」
黒髪だらけの中に銀髪だもんなぁ。そりゃ目立つわ。
「でもなんでジルはそんなに帰り遅かったんだ? お前部活入ったの?」
「ううん。見学。色んなところ見て回ってた。相変わらず剣道部あるんだね」
「そりゃ剣道部はあるだろうよ。……死狂ひな剣道部は珍しいけどな」
剣道部とは名ばかりで、木刀で殴り合ってるキ印さんしか入れないような部活だ。
当然入っているのはスーパーチルドレンばっかり。今では顧問が死狂ひ。生徒に与えるのは葉隠れの極意。なぜなら彼らもまた特別な存在だからです。
「で、その暴走族に絡まれたせいでそうなったのか?」
「ううん。私がバイクのガソリン全部盗んだら動かなくなった。そしたら走って追っかけてきてさ」
「そりゃ追っかけるわ」
そもそもどうやってガソリンだけ盗んだんだ? まぁ、インチキなスキルでも使ったんだろうな……。
「ちなみにガソリンはここにある」
ちゃぽん、と音を立ててポリタンクを揺らすジル。どっからそんなもん出した。
「ただね、舐められたって相手が思ってるみたいで、なんだかねぇ……」
「ああ、殺された未来……じゃなくて、奪われた暴走族が復讐にやってくるのね」
「そんな感じ」
「まぁ、どうにかなるだろ」
あっはっはっはっは、と笑う。
「悠長な事言ってる場合じゃないよ! 相手はこの県で一番大きい暴走族らしいんだよ!」
笑ってたら修也に怒られた。
「大丈夫大丈夫。こっちは日本で一番軍事力のある街だぞ。米軍相手に回したって勝てるから」
主にオレが無双するから勝てるのだが。
しかし、暴走族も馬鹿な事したなぁ……この町の人間を敵に回すなんて……。
ケツの毛までむしられるだろうな……。
しかし、なんでいきなり暴走族?
幾らなんでも不自然過ぎる気がしないでもない。
「まぁ、オレが何とかしてやるから安心しろ。で、そいつらはいつ来るんだ?」
「すぐにボクの居場所がバレるよ!」
「そうか……よし、じゃあなんとかしてやるからな」
とりあえず、店主さんに相談して必要なものを用意してもらった。
いまだに家で駄弁っていたローザには、ここらの町民に通達を回してもらうように頼んだ。
そして、その日の夜、オレは暴走族を家の前で待っていた。
早く来ないかなー。
「暴走族まだかなー」
「暴走族ってそんなに楽しみにするものだったっけ……」
「オレはめっちゃ楽しみだぞ」
やっぱり超長い学ランとか着てんのかな? あれって特注なん?
それともあれ? 買ったやつを自分でチクチクと縫って作るの?
「タカヤさん、暴走族さんっていうのは一体何をする人なんでしょうか?」
「んー。抑えきれない青春の滾りとか、社会への不満とかをブチ上げてるんじゃないかな?」
「よくわかりません!」
「大丈夫だ、オレもよくわかってない」
社会に不満があろうがなんだろうが、どうにもならんのが社会ってもんだからあきらめるしかないのに。
それが分からんのか、あるいはわかってるからこそ暴れたくなるのか。
まぁ、そんなことはどうでもいいやな。
「ねぇねぇ、タカヤ。暴走族って暴走するんだよね」
「そうだよ」
「馬に乗ってくるの?」
馬……馬に乗った暴走族か……。
武器は当然刀で……とすると特攻服は鎧で……。
それただの騎馬武者じゃね?
いや、そんなアホなこと考えても仕方ない。
「暴走族が乗ってるのはバイクとかそういう感じの奴でね……まぁ、来ればわかるよ」
「うん。楽しみに待ってる」
暴走族まだかなー、と心待ちにしているアリシアちゃんとシエルちゃん。
一方、落ち着いた様子で刀を研いでいるレン。
どうでもいいけど、その桶とか自分で片づけろよ。
「ふふふ、討ち入りか。楽しみだな。全て返り討ちにしてくれるわ」
こいつはちょっと勘違いしている。まぁ、似たようなもんだからいいか。
そう思いつつもしばらく待っていると、ブオンブオンと喧しい排気音。
「――――来たか」
笑みを浮かべてオレは家の外に出る。
すると、そこには数人の通行人が居た。……手に武器持ってるけど。
そして、こちらへと向かって来たステレオタイプな暴走族たちに、家の中から出て来たカーチャンが拡声器で声をかける。
『貴様らはこの町に騒音公害を撒き散らしている。実力で排除されたくなければ即刻立ち去るがいい』
「うるっせーぞババァ! 黙ってろ!」
『いい度胸だ小僧。貴様らには山ほど説教がある。覚悟しておけ』
そして、カーチャンが家の中に引っ込むと同時、バシャッ、バシャッ、と音を立ててライトが点る。
しかも普通のライトじゃない。ナイター球場とかにあるデカいライトだ。
それに呼応してあちこちの家から人が飛び出してくる。
違法改造された装甲車やバイクなどなど……。
「動くな! 貴様らはこの町の権利を侵害している! 動けば射殺する!」
いや、あんたらにそんな権利ねぇだろ。
などと思っていると、激しく戸惑っている暴走族たちが取り囲まれ、ボコボコにされ始める。
バイクはキーを盗まれて逃げ出せないようにされて、暴走族たちは見るも無残にボッコボコに。
かわいそうに。この町に喧嘩を売るなんて馬鹿な事をしたなぁ……。




