獣耳美少女の獣耳がなくなったら価値は半減どころじゃない
ローザにオレの嫁こと、レンを見せつけてやろうと、リビングのレンの元へと。
「レン! 来い!」
「む? どうしたのだ? 今はテレビを見るのにいそがしいのだが」
「テレビは後でも見れるだろ。お隣さんに行かなきゃいけないんだ」
「よく分からんが、仕方ないな」
というわけで、レンを確保。
次は台所でお茶を飲んでいたトモエさんのところに。
「トモエさん、お隣さんに挨拶しに行くんでついて来てください」
「どうしてこの時間にお隣さんにご挨拶に?」
「この時間に行くって約束したんで」
「そっか。じゃ、いこっか」
何も聞かれないのは信頼されてる証だと考えていいんだろうか。
まぁいいや。とにかくローザのとこに行くとするか。
ローザの家には屋根を通していくことは出来んので、普通に玄関からお邪魔する。
ローザのお母さんに要件を告げて中に入れてもらい、さっそくローザの部屋へ。
「おいーす!」
扉の前で大声でそう言う。すると、殆ど待つことも無く扉が開かれる。
「八時だからと言って、その挨拶は無い」
サーセン。
「で……お前の画面の中の嫁とはどれだ?」
「ククク、画面の中の嫁ではないが、コイツこそがオレの嫁だ」
そういってレンを差し出して見せる。
「ほう…………一文字孝也。自首しよう。幼馴染のよしみだ。私もついていってやろう」
ああ、冷静になって考えればこの反応は実に真っ当でした。
だって、レンってどう見ても10歳くらいだもんね。淫行条例だね。
「でも大丈夫。どんとうぉーりー。いかがわしいことはやっていませんっ!」
「それ以外はやっているのか?」
「ははは、そんな、ば、かなぁぁぁ!」
そう言えば、オレはレンが風呂に入ってる所に乱入した記憶がある。
これは言い逃れのしようが無い悪行……!
なんてこった……オレはなんて馬鹿な事を……!
「まぁいい。お前の趣味が何であろうと私は関知しない」
「え、マジで? お前の部屋の盗撮が趣味とかでも?」
「死にたいのか?」
わあ、笑顔が怖い。
「まあ、それはさておき。これがオレの妹と思わしき生命体です」
「……どう見てもお前の嫁とやらより年下だが?」
「いいえ、これでも18歳です」
「分かったぞ。本作の登場人物はみんなまとめて18歳以上という奴だな?」
「イグザクトリー(その通りでございます)」
「ははは、こやつめ」
ただいまローザの拳骨によって悶絶中です。少々お待ちください。
「で、一文字孝也。この小娘は何処から誘拐して来た」
「ノンノン。あたしは別に誘拐されたわけじゃないぜ」
「ほう。ではどのようにして一文字孝也の妹になったと?」
「タカヤがあたしに体をメチャクチャにする薬を複数投与して、今後は妹という事になった」
「ちょっと警察呼んでくる」
「おいぃぃぃい! 誤解を招く言い方はやめろ!」
確かにその通りではあるんだが、その薬って性転換薬とか獣化薬の事だし。
って、獣化薬で思い出したがタカネの耳ってどこ行ったんだ?
あの猫耳も尻尾も何処にもないように見えるんだが。
「まぁ、色々と複雑な事情はあるけど、あたしがタカヤの妹なのはマジ。犯罪性とかもないし」
「ふむ……まぁ、いい。で、そのお前の旦那というのは?」
「ここにさっきから居るじゃないか」
そういってトモエさんを指し示す。
トモエさん、笑顔で手を振ってアピール。
「……旦、那?」
「始めまして。安久都巴です。よろしくね」
「ちょっとこっちに来い」
ローザがトモエさんを拉致して何処かに消える。
そして、数秒後に、トモエさんの悲鳴とローザの悲鳴が聞こえてきた。
なにやってんだアイツ。
「うぐぐ……なんだったんだアレは……スタングレネードでも隠し持っていたのか……」
「あのねぇ……幾らなんでもいきなり人の服を脱がせるのは犯罪だよ?」
そう言いつつ二人が部屋に戻ってくる。
コイツ、トモエさんの服脱がして性別確認したのか……。
「しかし、本当に男なのか……なるほど、美少女夫婦とは確かにこのことだ……」
「だろ? 美少女夫婦だろ?」
オレの表現は間違ってなんか居なかった。
これこそが真に美少女夫婦である。
「しかし、不思議な事が幾つかある」
「なんだ?」
「お前は一体どこで嫁と妹と、妹の旦那を発掘して来たのだ?」
「異世界」
「ほう、異世界。一文字孝也、そう言う戯言をほざくのは中学生までにしておけ」
これが正常な反応ですよね。
「でも、マジで異世界で見つけて来たって言ったらどうする?」
「よし、分かった。一文字孝也、病院に行こう。いや、この際だ。父に見てもらおう。あれでも医者だ。専門は外科だがな」
「別に頭おかしくなってるわけでもないから」
「では本当に異世界に行ったとでも言うのか?」
「そうだとしたら?」
「さすがに信じ難くはある。しかし、お前は信頼に値する男ではある。私が三度否定しても主張を続けるのだから、異世界はあるのだと信じてやろう」
「あー、うん。なんかいきなり納得したな。フツー信じなくね?」
言っておいてなんだが、信じて貰えるとは思ってなかったのだが。
「世の中には割合信じ難い事が起きやすい。ならばありえるのやもしれん。私は私の判断を信じる。異世界はある。そう認める」
よく分からんが、コイツはコイツなりに考えた結果、オレを信じたんだろう。
信じてくれたのなら重畳。過程は気にしない事にしよう。
「所で話は変わるが、その異世界で戦争はあったか? 今も続いているか?」
「戦争なら数か月前までやってたけど終わった」
「そうか。口惜しいな」
なにがどう口惜しいのか気になったが、予想の斜め上の答えを返されても困るので聞かなかった。
だって、コイツ、色々と頭おかしいし。