本当の強さ
さて、全巻持ってきてシエルちゃんに布教して、かつオレも三部からちょっと読み始める。
んー、やっぱりいいね。まぁ、オレは二部が一番好きだけど。
「トモエさん、このスタンド・バイ・ミーなのってマネ出来ませんかね?」
「え? オー・ロンサム・ミーがなんだって?」
「ミーしかあってないんですが」
「まぁまぁ」
なにがまぁまぁなんだ。
「でも、精神力で自分の魂の本質を体現するのって、割と魔法なら当然の領域だよね。出来るんじゃない?」
「というと?」
「魔力をまとめ上げて、人型を構築しようとすれば自然と出来ると思うよ」
「ふむ……」
言われた通りに魔力を練り上げて、高密度に圧縮。この世に像を成すレベルにまで高めた魔力を人型にして顕現。
魔力は根本的に一人一人の性質を纏っているから、特に意識する事もなく魂の本質は現れる。
現れたのは、全身甲冑姿の人型。
「うお、マジで出来た。オレってすげぇかも」
「僕もやってみよっかな」
トモエさんも同じく魔力を練り上げて空中に人型を構築。
現れたのはローブを纏った何か。顔のあたりが真っ暗で何も見えない。
「んー……やってみたはいいけど、これって何の意味があるのかな?」
「さあ……?」
自分の使い魔と同じようなものなので自由に動かす事は出来るが。
「僕のこれは、普通にいろんな魔法が使えるみたいだけど……別にそれって自分でやればいいしね……」
「オレの奴は超強度の防御フィールドを作れるみたいだけど、やっぱり普通に魔法でやればいい気がしてきた……」
まぁ、ただ魔力を練り上げて、自分の魔力だけで造った使い魔みたいなもんだから、自分以上の事は出来ないのが当たり前なんだけど……。
でも、仮に時間系の魔法に適正があったとしたら、ラスボスよろしく時間とか止められたりしたんだろうか。
「やっぱり所詮はロマンなのか……ロマンなんだ……」
「悲しいね」
またひとつ大人になった。
さておき、再び漫画を読んでいて、ふと気になった。
「最近のジャンルで女体化とか擬人化ってザラじゃないですか」
「うん、そうだね」
「女体化と擬人化全部組み合わせて、歴史上の人物総女体化+擬人化されるもの全て擬人化した世界ってどうなるんですかね?」
「男女比が狂って世界が滅ぶ」
まぁ、うん……確かに……そうなのかな?
「オレどんな世界か気になります!」
「わたし気になります、って?」
「いえす」
「なるほど……タカヤ君はグミ撃ちになりたいんだね?」
「その気じゃないです」
破ぁっ! とかの方の気だから、それ。
「というか、そんな世界に行ったら大変だと思うよ? 僕、男女比が狂った世界に居た事もあるけど、大変な世界になっちゃってたからね」
「というと?」
「男性の出生率が著しく低下しちゃって、子孫を残すために男性は一家に一人、っていう感じで」
「あー……出生率が狂ったから、女系家族なっちゃうんですね。で、その家に一人だけ男性が……」
「うん。凄い世界だったよ。ディストピアまっしぐらだった」
怖すぎる。
「並行世界にはいろんな世界があるもんですねぇ。店主さんは酷い世界っていうと何が思いつきます?」
「宇宙人が攻めてきて滅びかけた世界とかありますよ。滅ぶ一歩手前だからよけい悲惨です」
「うわぁ……」
ほんとに悲惨だな……。
「まぁ、永遠に戦争を繰り返し続けてる世界とか、ヤバすぎる世界もたくさんありますけどね」
「ヤバいですね、それ」
「第七次世界大戦までいっちゃってる世界もありますよ」
ヤバイにも程があるだろ。
「それでも人間はあさましく生き残り、何度でも争いを繰り返す。そして、そのたびに強くなっていく。それがどんな形であれ。それが人間の強さなんです」
「そういうものですか」
「そういうものです」
「そうですか……」
ふむー……人間の強さ、ねぇ……。
護りたい者を護るときにどんなことでも出来るのが人間の強さだって、オレはそう思うけどなぁ。
まぁ、そういう考えは人それぞれだもんな。わざわざ口に出すこっちゃない。
「しかし、強さ、ねぇ……店主さんは、本当の強さってあると思いますか?」
「信じる事。信じ続ける事。それが本当の強さです」
「……棒読みされても説得力ありませんことよ?」
「このあいだやったゲームのパッケージ裏に書いてありました」
適当な事をいうな……。
「まじめな話、あると思います?」
「あると思いますよ。さっき言った通りです」
争いを繰り返し、何度でも生き残り、そしてまた争う。それが人間の強さ、ねぇ……。
よくわからんなぁ。
「トモエさんはどう思います?」
「そうだね。本当の強さっていうのは、手を差し伸べられること、じゃないかな」
「人を助けるってことですか?」
「ううん。人を助けるっていうのは、とっても難しい事だよ。手と手を取り合って、一緒に立ち向かえる。そんな関係になれる事。それが僕の思う強さ」
「それがトモエさんの思う本当の強さ、ですか」
「うん。ほんのちょっとの優しさを持っていれば、互いに手を取り合って、誰もが笑える世界が創れる。肌の色や、生まれの違い、そんなくだらないものに左右されないで、誰もが友達になれる世界。ほんのちょっとの優しさを持っていれば、その優しさを忘れさえしなければ、きっと、そんな世界はいつか来るよ」
そう言ってトモエさんが微笑んだ。とても儚げだけど、力強く。
「それが僕の思う本当の強さ、だよ」
「なるほど……いいお話でした。さすがはトモエさん」
外面美少女の精神的イケメンとは惚れる。実際にタカネが結婚にまで至ってしまったからな。




