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帰ってくるのがはえーよ! だらり現代生活記  作者: 国後要
なんてことのない現代生活という名の異常な現代生活
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雑技団

予約投稿忘れてたーよ

 しばらく店主さんに付き添った後、店主さんと別れて再び散歩を続ける。

 町は暗い。空に浮かぶ月と、まばらに突き立つ水銀灯の明かりだけが頼りの世界。

 そんな暗がりばかりが支配する町でありながら、この町には未だ活気と生命力が沸々と滾っている。


 この町は夜になっても眠らない。

 ベッドタウンというわけでもなく、さりとて活気がある町というわけでもなく。それなのに、この町は決して眠らない。


 必ず誰かしらがどこかに居る。

 ちょっと目をやれば、近くの家の庭では未だに酒盛りが行われている。

 自販機の前に設置されたベンチでは、数人の男たちが煙草をくゆらせながら何かを話している。

 そんな風に、誰かがどこかに居る。孤独を忘れたがっているようにも見える。


 外に居ないものは家の中に籠っているんだろう。

 家の中で何をしているのかは分からないが、そう大層なことをしているわけでもない。

 何かを忘れるように飲んだくれるもの。

 恥ずかしげもなく盛大に喘ぎ声を響かせている家。

 喧嘩でもしているのか怒号と破壊音が響く家。

 家全体に煌々と電気を灯して静まり返っている家。


 奇妙な町だ。


 オレが変人なのは、奇妙な町の出身だからだろうか?

 ……そう考えたほうが精神衛生上よろしいな。

 つまり、何もかもこの町のせいってわけだ。光化学スモッグもリーマンショックも全部この町のせいだ。


「なんだ、全部この町のせいか」


 完璧だな。さて、家に帰るか。




 家に帰り、居間に入る。すると、秋穂さんがとびかかってきた。

 とっさに腕を掴んで押しとどめ……。


「って、力強っ!」


 なにこれ、異常に力強いんだけど。どう考えても重機並みのパワーを発揮してる。


「ぐ、ぐぐ……ぐぐぐっ」


「ふ、ふふ、ふふふふっ」


「このっ……! 巴投げ!」


 自分から体重を崩し、秋穂さんの腹に足を入れて、そのまま後ろに放り投げる。

 背後に壁などがないことは確認済みだ。


「はぁ、はぁ……なんだったんだ」


 居間のすぐ隣にある和室の中で伸びている秋穂さんを後目に居間に入る。

 すると、そこではトモエさんとタカネがお茶を飲んでいた。


「お帰り。ところでさっき僕のこと投げなかった?」


「投げてません。トモエさんを使って秋保さんを投げました」


「なるほど。わけがわからないね!」


 全く持ってその通りでございます。

 などと思いつつも、タカネの横に座る。はぁ、疲れた。


「幼女ズは?」


「もう寝たよ」


「そうか」


 時刻はもう11時を回っている。子供は寝る時間だ。


「さて……そうなると、オレも寝るか」


 することもないし。

 とりあえず、秋穂さんを客間に寝かせてから……と思ったが、何か怪しいのでタカネに頼んだ。


 なんかタカネの悲鳴が聞こえた気がしたけど気にしない。




 さて、すがすがしい朝を迎えると、今日もまたカーチャンに叩き起こされた。

 今日は鼻から水を注がれて起こされたので、根性焼きよりは穏便な気がしないでもない。

 でも下手したら窒息死なので勘弁してほしいです。


「で、今日は何の用ですか」


「ジルとか言ったか、あの娘を中学校まで送って行ってやれ」


「え? 昨日今日で受け入れ準備出来てんの?」


「私は中学の校長には顔が利く」


 ゴリ押ししやがった……。

 まぁ、義務教育だから仕方ないね……などと思いつつ下に行くと、そこにはすでに制服姿のジルがいた。


 すらっとしてスタイルのいいジルが制服を着ていると、なんとなく空気が引き締まる感じ。

 制服ってすごいよなー。見慣れてない制服姿だと、魅力が4割増しな感じで。


「おはよう、ジル」


「うん、おはよう、タカヤ」


「さて、学校までお前を送っていきます」


「うん。でも、場所分かるけど?」


「カーチャンのお達しなのでオレは逆らえません」


「なるほど。仕方ないね」


 うむ、仕方ないのだ。


「ついでだから、レンも一緒に行くか?」


 どうせ一人も二人も大して変わらん。


「いや、いい。時間に余裕はある。ゆっくりと歩きながら行くのもいいものだ」


「さようで」


 お茶飲んでまったりしているレンは問題ないようなので、ひとまず放置。

 ちなみに残る二人の幼女は、小学校への入校準備ができてない。

 さすがにうちのカーチャンも小学校には顔が利かないらしい。


 そういうわけなので、送っていく必要があるのはジルだけ。

 適当な靴をつっかけて外に出て、自転車に座る。

 そして、続いて出てきたジルも自転車に乗り込み、さっそく出発。


「ところでさ、女の子を自転車に乗せて送り届けるって、やっぱり男の子の夢なの?」


「んー……そうなんじゃね? ただまぁ、オレはあんまり女の子に興味あったわけじゃないからなぁ」


「そうなの?」


「年の近い姉が居ると女性に対する幻想は粉砕されるものだ」


 というか、抱く事すら出来ないというかなんというか。


「まぁまぁ。とにかく今はその女の子を自転車に乗せて送り届けるっていう、青春な事をしてるんだからいいじゃない」


「うん、いいんだけどさ、ジル」


「なに?」


「お前、オレの肩の上に立つのやめろ」


「……見晴らしがよくって」


 これどこの雑技団?

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