友達は得難い宝物らしい
………………。
「上がったぞ。時間をかけてすまないな。二人がはしゃいでしまってな……タカネが加わって状況はより酷く……って、何をしているんだ?」
「レン、そこに座りなさい」
自分でも驚くほど冷たく落ち着いた声が出た。
「あ、ああ……どうしたのだ、タカヤ。まるで、昔のお前のようだぞ……」
「いいから黙って聞くんだ」
「わ、わかった」
レンを正面に座らせ、オレは両隣に座る秋穂さんとカーチャンに目くばせする。
レンが誤魔化しそうになったらフォローを頼んでいるのだ。
「レン……学校で友達は出来たか?」
「友達? いや、出来ていないが……」
「そうか……レン、友達というのはな……友達と書いて友達と読むんだ」
「……え?」
「友達は友達と書いて友達と読む……あれ、ごめん、オレなに言ってんだろ」
友達は友達と書いて友達と読むとかそのまんまじゃねーか。
「ともかくも、友達って言うのはな、付き合いは面倒くせぇし、わけの分かんねぇ奴もいるし、こっちに喧嘩腰な野郎も居やがるし、ロクデナシの最低野郎どもばっかりだ」
しかもこの町には頭のおかしい奴もたくさんいる。なんて面倒臭いんだ。
「……で?」
「でもそう言う面倒臭いのが現代社会なんだ。適当に友達は作っておけ。孤立すると友達付き合いするよりもっと面倒な事が起きる」
人間社会ってマジめんどくせーわ。マジで野生動物に生まれたかったな、猫とか。
「あーもー、マジ人間社会めんどくせーわ。なんなんだよホントもう。そっとしておいてくれよほんと」
「お前はもうちょっと主張を一貫させろ……」
ああ? ああ、そう言えばレンの友達いない問題をどうにかしようとしてたんだっけ。
「いいんじゃねえの、友達なんかいなくても。オレは友達多いけど、ぶっちゃけこっちとしては仕方なく付き合ってるって感じだから」
「お前は相変わらず仲間以外には冷淡だな……」
「まぁな」
人間社会マジめんどくせぇわ。なんでわざわざ友達作んなきゃなんねえんだよ。
強がりでもなんでもなしにオレは一人がいちばん気楽なんだよ。
まぁ、友達いなかったらそれはそれで寂しいって言う、面倒臭い性格の持ち主なんだけどさ。
とにかく、そう言うことはおいといて。
レンに友達が必要なら自分から作るだろうし、オレたちがわやわや騒ぎ立てるこっちゃないだろう。
心配ではあるものの、レンの意思を無視したってしょうがない。
「そう言うわけで、レンのぼっち問題は今後もぼっち継続という事で終了しました。これにて閉会」
「ぼっち言うな」
「分かった分かった。総勢一人軍団だもんな」
「言い方を変えただけではないか!」
「あーはいはい分かった分かった」
とりあえず猛るレンは適当に宥めた。
そうこうしているうちに、脱衣場できゃいきゃい遊んでいた幼女たちが戻ってくる。
「すっごいお風呂でしたっ。不思議なものがたくさんですねっ」
「そーだねー」
ちょいちょいと手招きして、シエルちゃんを膝の上に座らせる。
んで、近くに転がったままだったドライヤーでシエルちゃんの髪を乾かす。
「ふわー……不思議な道具ですねー。魔法を使ってないのに不思議です」
「んー、そーだねー」
むしろ魔法で空飛んだりできる方が驚きではあるんだが、もう慣れちまったなぁ。
なんて思いつつも、全体的に頭が乾いたのでドライヤーのスイッチを切る。
「ほい、次はアリシアちゃんおいで」
「うん!」
相変わらず元気いっぱいアホ印のアリシアちゃんを膝の上に座らせる。
アリシアちゃんは髪長いからなぁ、乾かすの大変そうだな。
あっちの世界じゃどうしてたんだろ? 自然乾燥? 髪痛みそうだな。
そんな事を考えながら髪を乾燥させ終えたところで、レンがこちらを仲間になりたそうな……いや、自分にしてほしそうな目で見ている。
「レン」
「なっ、なんだっ」
「ほら、これが欲しかったんだろ」
胸ポケットに放り込んでいた酢コンブを取り出して渡す。
「…………ありがたくもらう」
「ヘルシーで髪にもいいんだ」
釈然としない表情でもそもそと酢コンブを食べ始めたレンに水面蹴り。
その水面蹴りを的確に察知したレンが跳躍して躱し、胴回し回転蹴りを放つ。
その蹴りを腕で受け止め、互いに距離を取って仕切り直し。
「……何をする?」
「膝に座らせて、強制的に髪を乾かしてやろうと思ってなぁ……」
でも避けられた。戦闘力が人外の領域にあるだけはある。
「ほ、ほう。いい度胸だな、女の髪を気安く触ろうとは」
素直じゃないんだから、レンはツンデレさんだなぁ。そこが可愛いんだけどさ。
「ま、まぁ、そこまで乾かしたいというなら乾かしても構わんぞ?」
「あ、嫌ならいいです」
「いやいや、遠慮するな」
「いや、お前こそ気を遣わなくていいって」
「いやいやいや……」
「乾かして欲しいなら素直に言えよ」
「……乾かしてください」
そう言う訳なのでツンデレは陥落した。
膝の上に座らせて、ドライヤーをぶおーっ。
「……失礼ながら、次は私が入らせてもらったもよろしいでしょうか?」
「どうぞどうぞ」
凄まじい勢いで部屋を出て行った秋穂さんを見送る。
そして、レンの髪を乾かし終えたと同時にオレは夜の散歩に行った。
理由? 特にないかな……。
別に秋穂さんに意地悪するのも一興って思ったわけじゃないよ、ホントだよ。




