エルヴィス・プレスリーはロカビリー
晩ご飯が終わった後、幼女組が揃って風呂に入りに行き、みんな揃ったままリビングでお茶をしていたところ、修也が尋ねて来た。
「あのさ、タカヤ」
「なんだ」
「えーっと、さ……お嫁さんが3人もいるなら、恋愛とか、詳しいよね」
「たぶん」
でもあれってなし崩しで結婚したような感じがするから、恋愛に詳しいのかは自分でも分からない。
「あ、あのさ、実はクラスの子と遊びに行くことになったんだけど」
「マジで? え、なに、前にオレが必殺ヒーローソートグラフィーで念写した人?」
「うん、そうなんだけどさ」
なるほどな……デートか……。
「よし、オレに任せておけ。トモエさん、手伝ってください」
「なにするの?」
「服を作ります」
「分かった。任せておいてよ」
というわけで、作業し易い部屋に移動して、材料及び道具はオレの提供で作業を開始。
裁断などはオレ、裁縫はトモエさんの担当。
その分担作業と、魔法を併用した高速作業で服は僅か20分で完成した。
完成した服を持って部屋に戻ると、洗い物をしていたカーチャンが洗い物を終えたのかリビングに戻ってきていた。
そしてなにやら修也がもじもじしているが、男がもじもじしててもキモイだけだな。
「さあ、修也。この服を着て、これを背負って行けば大丈夫だ」
先ほど作った服と、アイテムボックスから取り出したものを差し出して言う。
「待ち合わせ場所に相手が来た時にこういうんだ。『オレはギターを背負った旅から旅への旅烏、人呼んで弾き語りの蛇。フーテンの修也と呼んでくんな』って」
「……その一昔前のスーパースターみたいな服は何なの?」
「エルヴィス・プレスリーを参考にしてみた。この白いびらびらがロカビリーだろ」
とてもロカビリーだ。ロカビリーがどういう意味かは知らないが、とにかくロカビリーだ。
「……なんて言うか、ビックリするくらいダサイんだけど」
「はぁ……なに言ってんだ。この服はカッコイイだろうが」
「本気で言ってるならタカヤの美的センスを疑うんだけど。僕が着ても100パーセント似合わないよね」
「あのな、エルヴィス・プレスリーはカッコイイだろ? けどお前はカッコよくない。この服はエルヴィス・プレスリーが来たらカッコイイ。お前が来たらダセェ。それだけだ」
「……だったら僕に相応の服を用意してくれた方が嬉しかったかな」
言われてみればその通りだった。
「じゃあ、せめてギター背負ってくか?」
「それ、どう見ても三味線なんだけど」
「三味線しかなくてな」
生憎と持ってる楽器の中にギターは無かった。
ギターの形をした武器ならあるんだが、あれは危ない。
「せめてもうちょっと近いものなかったの……」
「マンドリンとかリュートならあるぞ。でも、日本人なら三味線かなって」
「和で攻めても仕方ないから! 第一にデートに三味線背負ってくる奴が居たら大馬鹿野郎だよ!」
「それもそうか……」
これ背負って和服着てたら琵琶法師だもんな。これ琵琶じゃなくて三味線だけど。
と、そこで今まで静観していたカーチャンが口を開く。
「なんだ、修也。女とデートか。お前も色を知る歳か」
「わ、悪い?」
「構わんだろう。お前ももう中学生だ」
そう言えばカーチャンは中学生の頃にトーチャンに言い寄った人だもんな……。
修也の相手が幼稚園児とかでも許容するんじゃあるまいか。
だってオレの嫁さん小学生だし……。
さておき、服装についての助言がオレには無理だとすると……カーチャンに聞いてみるか。あれでとーちゃんを落とした人だからな。
「カーチャン、デートの時の服装についてなんか意見ない? ほら、トーチャンがどんな服着てたらときめくとかそんな感じ」
「うん? 私はお父さんがどんな格好をしていても愛しているからな、気にした事はない」
ダメだ、別の意味で参考にならねえ。
「うーん……まぁ、とりあえず清潔感のある服装をしておけばいいだろ。お前が変に気取った服とか着てても面白いだけだから」
「ああ、うん……」
「で、相手の女の子はどんな感じなんだ?」
「なんていうかさ、こう、キラキラと光ってるような……そんな雰囲気があるんだ」
わかりづれぇ。でも何となくわかった。
「つまり、ホタルイカ的な」
「違う!」
「じゃあチョウチンアンコウか」
「魚介類から離れろ!」
「ああ、ホタル?」
「そう言う意味でもない!」
じゃあなんだって言うんだよ。
「とにかく、ボクの質問に答えてってよ。タカヤに主導権握らせると果てしなく脱線してくから」
「はいはい」
「じゃあ……そうだね。なんか不良とかに絡まられたらどうすればいいかな?」
今どきそんな奴居るんだろうか。
……この町ならいそうだな。
「いいか、修也。不良とかに絡まれたら、速攻で土下座して財布を差し出せ。差し出すための財布をもう一つ用意しといて、中に小銭ばっかり入れておくと有効だぞ」
「もうちょっと別の方法ないかな……まだ格好のつく方法で……」
「警察を呼べ。注意点が一つ。誰か助けてと叫ぶのはだめだ。火事だと叫ぶと野次馬がガンガン集まってくるから、火事だと叫ぶんだ」
「別の方法……」
「おもむろにスカウターで戦闘力を計って、ほほう、これは凄い、42000まで上がりましたよ。私の戦闘力は5です。冷静に話し合いで解決しましょう。って言うんだ」
「結局冷静に見えて凄い情けないじゃんか」
「これが私の本気ですとか、実力を隠していましたとか、拘束具を外すとか、秘められた力が覚醒するとか、そう言うので意味不明なパワーアップして力づくで倒してもいい」
「そう言うの無理だから」
「しょうがねぇなぁ……」
アイテムボックスから拳銃を取り出してテーブルの上に置く。
「絡まれたら壁に向かってぶっ放せ」
「無理だよ!」
「じゃあ、バズーカか?」
「規模の問題じゃないよ! 銃刀法違反だよ!」
「分かった分かった……うーむ……」
よし、こうしよう。
「まず頭を剃って、和服を着て、腕と顔に刺青入れれば誰も近づいてこないぞ」
「そうだね! 誰も近づいてこないだろうね! 本当に誰も!」
「じゃ、それで行くか」
「いやだよ!」
あれもこれも嫌だって我儘な奴だな……。
「もういっそのことデートじゃなくてうちで遊べよ。お前の部屋でゲームするとかそれでいいだろ」
「そ、その手もあったか……」
「んじゃ、その手で行くか?」
「う、うん……そうするよ。デートはもうちょっと計画を練って……」
「で、いつ呼ぶんだ?」
「週末の土日だよ」
なるほど。ちゃんと用意しとかないとな。
盛大に歓迎してやろうじゃないか、盛大に。




